松堂弾三&折橋千種


【 キャラクター名 】:松堂弾三&折橋千種
【 性別 】:男性&女性


特殊能力 『太陽は僕の敵&天使たちの死因』

松堂は吸血鬼以外の「太陽を嫌うもの」へ自在に変身できる。解除の条件は日が昇ること。知性や行動は変身後に準ずるが、感情・感覚は己のことのようにはっきりと理解している。
また、松堂は千種の素肌に触れることで融合、「吸血鬼」と化し、殺戮の限りを尽くしてしまう。

松堂と千種は「分割された吸血鬼の肉宿」であり、松堂には吸血鬼の変身能力が、千種には吸血鬼の負うべき業が宿っている。

千種は「万物の殺意」が見える。
また、千種は全ての生物を殺さなければならないという希殺念慮を持ち、殺意の低いものを見ると強い殺衝動を覚える。


キャラクター設定

松堂弾三(まつどう・はずみ)
26歳独身の男性。
深い眠りを心から愛する営業マン。
小さい頃からやんちゃで、刺激を求める。だが、どんな現実も夢には敵わないと3歳の頃に悟り、ニヒルに育った。
仕事に励むのは「疲労を蓄積するついで」であるが、千種との時間だけは「ついで」と割りきれないようだ(内心、千種と過ごす時間を「白昼夢」とよんでいる。彼女と会う時間はいつも夜であるのに)。
「眠るもの」「恋人と夜を過ごすもの」として太陽を嫌っている。

折橋千種(おりはし・ちくさ)
年齢不詳の独身女性。元名家の才女。
全身を日焼け対策の黒い装いで固めており、彼女の素肌は一切隠されている。
幼少の頃に実家が火災にのまれ、両親と弟を亡くした。右腕半ばから切除され、体温調整機能は狂い、全身に火傷痕が残った。
痕は決して消えることはなく、成長とともに大きく広がった。
現在は敷地内で唯一災禍をまぬかれた離れに隠遁する。日なが、すべてを業火で燃やし尽くしたい衝動を押さえている。
「素肌を隠すもの」「醜いもの」「焼かれたもの」として太陽を嫌っている。


プロローグ

「夢を見ずに目覚めると、まさしく一日をふいにした気になっちまう。どんな夢を見たとしても、いい夢だったと思い、今日という日に満足してしまう。もうあとにはなにもない、という気分になる。日がどれだけ昇ろうとも、知ったことない。つまらないから。
 僕が最初に「退屈さ」を覚えたのは、歯が生え始めた頃かな。
 歯が生えて、母の乳首を、したたかに強くかじった。母は叫び、床を殴り、僕を置いて部屋から出ていったんだ。これが僕の最古の記憶だ。よく覚えているよ、血の味を。
 本当はもっと「致命的な台無し」にしたかったんだ。まだ子供だったから、たぶんまだ二本足で歩けなかったんじゃないかな。僕が追いかけるより早く、母は遠くに行っちゃった。もったいないことしたな。今ならもっと楽しめるのに。
 それで、まあ、家族と遊んでさ、大人になっていくわけだよ。ちゃんと小学校にも行って。遠足はさ、バスにのって遊園地に行くんだけど、みんなを乗せて事故っちゃったのよ。あれは見ものだったな。僕は四十九日で欠席したんだんだけど、ちゃんと、あの事故が見える場所にいたんだ。日頃の行いの成果が出たんだなあ。まあ、つまり、その頃には警察の目を欺けるくらい「いたずら」が上手くなったってことなんだけど。
 中学はスポーツにのめり込んだ。分かる? 勝負を決める白熱した場所に水をさすってのは、笑えるよ。ルール内で「白熱」したり、「爆発」させたりさ。不慮の事故ってのが起きやすくて、困っちゃうよね。
 高校はどうだったかなあ。ちょっと陰湿だったね。生徒全員の靴を入れ換えたり、図書館の本をかたっぱしから一ページ破いていったり。あんまり面白くない? 確かにね。でも、あの本を手に取った誰かさんの顔を思い浮かべると、今でも笑えるよ。なかなかにね。
 大学は行けなかったなあ。センター試験のペーパーを誰も配りに来ないんだもの。試験官がなぜだか来ない。まったく想定外だよね。同じ会場に、18年間を勉強に捧げたような人も、いたかもしれないのにね。
 それで、営業マンになったってわけ。スーツで固めたり、ネクタイで首をしめたり、ベルトでしめたり、ノルマを達成したりさ。やりがいみたいなのは、なかったなあ。
 今? 今は君と話してる。それだけ。あとは寝るだけ。それ以外は、別に、なんにもいらない。
 よかったら君も話してくれない?」

 夜道を歩く、ランニング・ウェアを着た男は、影に向かって話している。時おり街灯があると、彼の傍らに、黒のドレス手袋帽子ベールブーツストッキングに身を固めたものが姿を現す。


「私は……」
 その声はひどく掠れて嗄れていた。
「すみません、人と話すのは久しぶりで。
 私の目はなにか人の悪意というか、どれだけ世界に害を成すかがはっきりと見えます。そして、善良な、無辜の民を見ると、私が彼らを害してしまいたくなるのです。狂おしいほどに。だから私が平気なのは、あなたみたいな最悪の人だけなんです」
「何人目?」
「え?」
「だから、君が気を許したという最悪の人って、何人くらいなのさ」
 女の目には、男の殺意が、肌を刺すように感じられた。殺意が自分に向けられていると感じられた。
「…………最悪の人に心を許すほど、愚か者ではありませんよ。
 でもまあ、向こうから近づいてきたのが二人、ですかね。そんなにビッチってわけでもないでしょう?
 ちなみに、その二人を足した以上に、あなたは最悪です」
「光栄だね」
最終更新:2017年01月08日 13:48