明水 紫


【 キャラクター名 】:明水 紫
【 性別 】:女


特殊能力 『シネックビューティ』

自称、世界を楽園に変える能力
その能力の内容は、人々の中二力や英語、あらゆる魔人能力から筋力・知力・言語等の危害を加えようとする力、はては殺意や敵意、他人に危害を与えようとする思いまでもを無害な花に変える能力
この能力の前では、あらゆる暴力的行為・意思が花と消える
殺意や害意を持たないものであっても、他者を傷つけるような行動を起こせばそれが花となり、肉体的にも精神的にも絶対に他人を傷つけることが出来ない、この世の何処よりも優しい空間を作り出す
また、この能力は常に本人とその周りに適用されているためゆかりさんはあらゆるものを傷つけたことがないと言われている


キャラクター設定

明水 紫(あけみず ゆかり)
通称:ゆかりさん
外見はゆるふわロング、シルバーヘアの愛され系少女。目の色は黒みがかった銀で、頭に花の髪飾りを付けているが、毎日違う種類のものに付け替えるお洒落さん
普段から風光縁学園(希望崎に転向する前に通っていた学校)の制服を着ており、休みの日でも学校のある日でも、私服姿・希望崎の制服姿を見た事のある者はいない


プロローグ

―――貴女が世界にあるのなら、地獄さえも楽園に成るでしょう。

風光縁学園、そこは魔人生徒が数多く通う荒れ果てた不良校。
割れた窓ガラス、校舎には落書き、女生徒は問答無用でレイプされ、番長グループによる支配は圧政の限りを尽くし、生徒会は形だけしか存在しない。そんなどこにでもある学園だった。
ある日、そこに一人の少女が転校してきた。
「はじめまして。私は明水 紫(あけみず ゆかり)って言います。気軽にゆかりさんって呼んでくださいね」
そんな自己紹介をした少女は、こんな不良校に来るのが似つかわしくないほんわかした雰囲気の美少女だった。
ただ一つ気にかかることと言えば、転校する以前の制服を着ている事だったが、それも急な転校だった所為で制服の採寸がまだだから、という説明でみんな納得した。

美少女転校生のことはすぐに噂になり、その日のうちに上級生達に校舎裏に呼び出される事になった。
「あの、なんで私は転校初日に呼び出されたんでしょうか」
上級生や同級生、はては番長グループの幹部たちに囲まれながらゆかりさんは問う。
「げっへっへ、カマトトぶってんじゃねえよ。こんな場所ですることと言ったら一つだろ、レイプだよ!!」
それに答えるように上級生の女の一人が、ゆかりさんにドスの利いた声で凄む。
どうでもいいが、風光縁学園は女子高であり、全校生徒の95%が女子で、残りの4.9%が男の娘である。
制服が可愛いことでも有名で、可愛い制服を着たいからという理由で通っている生徒が多く、ゆかりさんもその一人である。
「レイプはいけないことなんですよ?」
上級生の剣幕に動じることなくゆかりさんは諭す。しかし、それが女の逆鱗に触れた。
「うるせえ!おら、お前なんてこうしてやる!!」
そう言って胸倉を掴もうとした上級生――――しかし、その手は空を切る。
「あ、あれ……?」
空を切った手の中には一輪の白い花がきれいに咲いていた。
「ぎゃっはっは。何やってんだよお前ダッセえな」
別の上級生が笑いならが、さっきまで凄んでいた女生徒の肩を乱暴に叩く。
「おら、私に任せな。こんな奴は一度引ん剥いて黙らせちまえば―――」
そう言って、手を伸ばしたところで女は硬直する。
「あっ、あっ、あっ、なんだ、これ……?」
新たな女の手の中にも、先ほどの女の物と同じ白い花が咲いていた。いや、今度はそれだけでなく―――
「あっ、あれ?私、一体何を……?」
先程までの剣幕はどこへやら、女はすっかり毒気が抜けた顔でボーっと辺りを見回していた。
笑いながら一部始終を見ていた取り巻き達も、これは流石にただ事ではないと気が付く。
「レイプは、いけないことなんですよ?」
そんな中、ゆかりさんが再度同じ言葉を変わらない抑揚で繰り返す。
「ましてや、暴力なんて絶対にダメです」
「お、お前何をしやがった!!」
得体のしれない恐怖に駆られ、取り巻きの一人がゆかりさんに飛び掛かる。だが、結果は変わらない。
「あっ、うっ、あっ……」
今度は、女の着地した足元に白い花。そして女は、白目を向くとその場に倒れ伏してしまった。
騒然とする取り巻き達の間には大きな動揺。だが―――
「ふっ、面白れぇ。こいつ、魔人能力者か!!」
それまで様子を見守っているだけだった番長グループ幹部、空 風凛(くう ふうりん)がそう言って前に進み出る。
「空さんが出るだって!?この転校生、終わったな」
「おい、お前。早く謝った方が身のためだぞ」
「フウちゃんが興味を持った時点でもう遅いでしょー。あーあ、可愛い子だったのに残念だなー」
「げへへ、死体でもいい。むしろ、死体の方が犯しがいがある……」
それを受けてより大きくざわつく取り巻き達。そんな周りを意に介さず、空は手に持った槍を構える。
朱槍使いの男の娘、それが番長グループの幹部の一人、空風凛だった。
「悪いな。あたいもこう見えて番長グループの幹部、番ちゃんの脅威になりかねないあんたを見過ごすわけには行かなくてね!」
「……暴力は、いけない、ことなんですよ?」
なおも表情を崩すことなくゆかりさんは淡々と言う。
「ふっ安心しな。この槍は、あんたが痛みを感じる前にあんたの命を絶つ……いや、痛みを感じるころにはもう死んでいるからなぁ!!」
そう言って空は朱槍を投擲しようとする。
空の能力は因果逆転。刺すという経過の前に、刺さったという結果を作り出す、必殺必中の一撃。
今までに、その能力を喰らって生きのびたのは彼の敬愛する番長ただ一人、それはこの先も変わらない事実。実際、能力が発動さえしていればゆかりさんは死んでいただろう。
「なっ、なんだとっ!?」
―――そう、発動さえしていればの話だが。
彼女の手の中の朱槍は、いつの間にか白い花の束へと姿を変えていた。
「バカな、バカなっ、バカなッ!!!こんなことが起きるわけが!!」
なおも能力を発動しようともがく空。だが、もがけばもがくほど、花は成長し、空の腕に絡みついてくる。
「くそがっ、くそがっ、くそがっ!!!!」
必死に腕を振り、花を払いのけようとする空。その目からはまだ闘気は失われていない――――もっとも、それが自分の首を絞めているのだが。
「なんっなんだよっ、この花は!!」
払っても払っても白い花は絡みつき、次第に空の全身が覆われていく。
「フウちゃん!」
誰かが叫ぶが、その声はもう空には聞こえない。ただ、そこには白い花が集まって綺麗に咲いているだけだった。
「……だから、暴力はだめだって言ったのに。最期まで敵意を捨てられなかったんだね」
ぽつり、とゆかりさんが呟く。
「あ、あ、あああああああ!!!!!」
それを聞いて取り巻きの一人がゆかりさんに飛び掛かるが、白い花に阻まれて何もできない。
「くそっ、殺してやる。よくも、よくもフウちゃんを!フウ、ちゃん、を……あれ?ボク、一体……」
「ひぃっ!!」
とうとう耐え切れなくなり、取り巻きの一人が逃げだす。
そこから先は呆気なかった。あれだけ集まっていた取り巻き達は、蜘蛛の子を散らすように逃げ惑っていた。
「あ、あれ?みんな、どうしたの?ボクも行くよー」
そして、その場にはゆかりさんと、最初に気絶した女生徒、そして白い花畑だけが残ったのだった――――


それから数か月後、風光縁学園は大きく変わった。割れた窓ガラスはそのまま、校舎の落書きもそのまま、けれど校舎はそれ以上の白い花で溢れていた。
圧政を敷いていた番長グループは壊滅。その半数が白い花となり今日も校舎内で咲き誇り、半数は害意など欠片も持たない品行方正な生徒として学園に通っていた。
もう、レイプされる女子生徒も、いじめられる男の娘も、迫害される女の子もいない、不良校は完全に更生されたのだ。
ただ、問題も一つあった。行方不明の生徒や、不登校の生徒が数多く出てしまい、どても学園としての体をなさなくなってしまったため、今月一杯で廃校になることが決まったことだ。
「うーん、折角採寸も終わって可愛い制服を着れると思ったのに残念だな」
ゆかりさんは、そう言って残念そうに笑う。だが、すぐに気を取り直すとぐっと上を向いた。
「よし、次の学校も制服が可愛いところを探そうっと!」
そう意気込んで、ゆかりさんは新たな学園を探すのだった。

これは、希望崎学園希望崎学園恒例の冥王星祭が開催される、ほんの数か月前のお話。
ゆかりさんこと明水 紫が希望崎学園に転向してくるのは、このお話の、ほんのわずか後の事である。
最終更新:2017年01月08日 13:41