大房 泥土


【 キャラクター名 】:大房 泥土(おおふさ でいど)
【 性別 】:男


特殊能力 『情事へのメロディ』

死体をゾンビとして蘇生し、使役する能力。
人間の死体であれば制約なく対象とすることが出来るが、ゾンビの性能は大房が生前の対象のことをどれだけ知っているかに依る。
名前も知らない赤の他人のゾンビであれば立ち上がることすらできず、逆に肉親のような知ったよく関係の人物のゾンビであれば生きているかのように過ごさせる事ができるし、場合によっては生前の魔人能力を発動させることも可能である。


キャラクター設定

高校2年魔人探偵部副部長。
大房泥土は死体を操る。
彼は自分で作った動く死体が大好きである。だが、一方で死体を愛することは異端であると自覚もしている。
だから、「より生きている人間に近い死体」を作成することが彼の目的であり、死体と暮らしながらも誰にも何も言われない平穏な生活を送ることが彼の目標である。

かつて、病死した兄をゾンビにした。兄のゾンビは学業も家事もこなし、腐敗することもなく、実に一年もの間彼が死体であることに気づくものはいなかった。
だがその生活も大房が”そうさせた”ものである。最も親しいと思っていた兄ですら、死んだ後は個人ではなく、思考もなく、発する言葉もなく、ただ大房の操り人形であった。

生前の兄のことを、わかったつもりでいたけれど、実際は何もわかっちゃいなかったのだ。
だからこそ、だからこそと大房は考える。いつか、本当に俺と分かり合える人が現れたら、その時その人の死体は、死ぬ前とまったく同じ状態に蘇らせられるんじゃないかと。

そして今日も彼は探偵部で人間観察に勤しむ。”真に生きている死体”を作るために。


プロローグ

 学園の東棟、三階の一番隅の部屋。
 本棚に囲まれた狭い部屋に所狭しと積み上げられた書籍、書類、CDROM、その他中身のわからない大量のジャム瓶。
 それらに囲まれて眼鏡をかけた少年が座っている。ボリュームのあるぼさぼさの髪に、丁寧に切られた爪、だらしなく開いた襟元。ズボンもシャツも清潔だがしわだらけで、机の上には冷え切ったコーヒーの入ったカップが置かれている。
 どちらかに専念すればいいものを、左手で文庫本を開き、目線はそちらをむきながらも右手はせわしくパソコンのキーボードを叩いている。当然、視点は頁の上を空すべりしているし、文字カーソルは遅々として動いていない。
 彼が探偵部副部長、大房泥土であり、この部屋は探偵部室、書籍は主に図鑑や事典、書類とCDROMは調査資料、瓶の中身は過去の証拠品が処分もされず詰め込まれている。

 メールが届いた。大房は読書を諦め、文庫本を机に伏せ、そしてパソコンに向き直ったその時、部室のドアが勢いよく開いて小柄な少女が飛び込んできた。
 「先輩、見つかりました! 見つかりましたよ!」
 彼女は上州芳子(じょうしゅうよしこ)。可憐な一年生であり、魔人探偵部二人目にして最後の部員である。
 「見つかったって、いったい何が見つかったんだ」
 「猫ですよ、猫! 飼い猫がいなくなったってこの間依頼を受けたじゃないですか! 先輩が『この件はお前に任せる』なんていうからずっと探していたんですよ!」
 大房はそのようなことをまったく覚えていない。物事に集中すると周りが見えなくなるのは彼にとって常であるが、そんな時に頼まれごとをされると二つ返事で請け負ってしまうのは彼の悪い癖である。
 そして後に面倒になって後輩に丸投げしたことを彼はまったく覚えていない。
 「……それはよかったじゃないか。おめでとう」
 大房泥土お得意の適当な、当たり障りのない返事である。返事をしながら目線はパソコンの画面に向いている。今回は大房の瞳がきちんと文字を映している。
 「いやぁまさか依頼人の寮のベランダに締め出されていただけとは。私じゃなきゃ見逃していましたね」
 「それはよかった。おめでとう」
 二度目である。プリンターのスイッチを入れ、印刷を開始する。
 「とにかく、これで美少女探偵上州芳子、第一の事件解決です! 私が探偵として一歩踏み出した記念すべき日ですね」
 上州は心の底から嬉しいのだろう、身体全体が小刻みに上下している。彼女のこの純粋さは大きな美点だなと大房は思う。
 「あなたが事件を解決したから、今日は探偵記念日、だな」
 「そうですよ! 来年のこの日は二人でケーキを食べましょう!」
 「それはいい。期待していよう。ところでだな……」
 大房は真剣な顔つきになり、プリントアウトされた一枚の紙を上州に差し出した。中身はメールで、差出人は「魔人警察部部長、江南A(かわみなみ はじめ)」、件名は「調査依頼」となっている。
 「少女探偵上州芳子クン。第二の事件は強姦殺人だ。行くぞ」
 カップの中身を飲み干し、魔人探偵部副部長は立ち上がった。
最終更新:2017年01月11日 17:14