マリちゃん教授 プロローグSS「柳川ラボへようこそ!」

最終更新:

dngsspb

- view
管理者のみ編集可

<マリちゃん教授 プロローグSS「柳川ラボへようこそ!」>


「カーカカカカッ! なんという素晴らしい能力じゃ!
肉体変化自体はポピュラーな効果なんじゃがのォ……『狼』という変化対象が実にいいッ!
よかったのぅ! 大当たりじゃ!」

「ぽぴゅ……当たり? え? え?」

「優れた耳や鼻を活かして音楽をやってよし、ソムリエをやってよし……警察犬のように、
災害救助も天職かもしれんなぁ! オススメはせんが、魔人警察にも向いとる!
……そうだ!! げ、言語はどうなんじゃ!?
狼の言葉が理解できたりはせんのか!?」

「……聞いたことないからわかんない」

「なんとッ!? それは勿体ない!
今度ワシと動物園に行ってみんかね!? ……いや、今度と言わずすぐに行こう!
もし狼や他の動物とも意志疎通ができれば大変なことじゃぞ!?
カカカッ! 【獣の教授】なぞ、泣いて喜ぶに違いないわい!」

「おじいちゃんは……わたしがこわくないの?」

「はぁ、なんだって!?
いいから動物園! 動物園に行くのじゃ!!
あああああもう待ちきれん~~~~! はやく~~~~~!!」

「でも……今日は……おうちに帰らないと」

「ぬぅッ!? じゃったらーー








「……ん」

まどろみから覚めた女ーー柳川 凛(やなかわ りん)は小さくため息をついた。

「ごめんね、青川さん」

灰色の獣耳がしゅんと垂れる。

どうやらいつの間にか眠ってしまったようで、
顔の下にあった添削途中の卒業論文はじっとりと湿ってしまっていた。
明日にでも印刷し直してもらう必要があるだろう。

マウスの傍に貼り付けられた付箋に目が止まる。

『お先に失礼します。 部屋の鍵は閉めていきます』

記名の無いメモではあるが、この字の具合は土田さんだろうか。
恥ずかしいところを見られてしまった。

ぐっと伸びをして壁の時計に目をやる。
誰も居なくなったラボにおいても勤勉に働く針は深夜を示していた。

ーー先生が消息を断ってから3日が経った。

これまでもフィールドワークと称し、ふらりとどこかへ出かけて行ってしまうことは頻繁にあった。
きっと今回も何かに夢中になって連絡を忘れているだけに決まっている。

どんな状況でも外部と連絡がとれる……それが先生の魔人能力の長所だ。
便りが無いのは良い便りとはよく言ったもの。
何かアクシデントがあれば必ず連絡を入れてくるはずだ。

ただそんな予想がたっていても、心配なものは心配だ。
募った不安が懐かしい記憶を夢として見せてきたのだろう。

そんなことを考えながら冷め切ったコーヒーに口をつけかけた柳川凛は、
目前のPCディスプレイの異変に気付きマグカップを取り落しそうになった。

開きっぱなしにしていた文章ファイルタブがチカチカと点滅していたのだ。
それは恩師であり義父である柳川 真理(やなかわ しんり)からの連絡に他ならならない。

待ち望んでいた知らせに歓喜した凛は手早く文章ファイル「柳川レポート.docx」を最大化した。


□□□□□□□□□□
【鎖の教授】の招待で鳥取県にある私邸を訪れた.晩餐の折,氏の校区にて人攫いが頻発しているとの相談を受け,氏と共に調査をすることとなった.到着から2日目, 【水の教授】の助力を受け,件の犯人を特定,町外れの廃病院にて対峙する.間も無く説得により和解.攫われた者は全員無事であったためーー
□□□□□□□□□□


ーー文章を読み進めていた最中、バンと大きな音がラボに響いた。
凛の耳と尻尾がピンと逆立つ!

バン、バンと更に2度の音。
動転していた凛がその音が窓を叩く音だと気付くには少々の時間を要した。
緊張で胸を痛めながら、凛は窓の方を見る。

「ワシじゃあ! あけとくれ! 誰かおらんのか~~!」

スモークガラス越しに中庭からそんな声が響いてきた。

「先生……ですか?」

待ち侘びた恩師の帰還だというのに、凛が訝しんだのには理由がある。
声が幼過ぎたのだ。

口調こそ師の者に違いなかったが、その鈴の音のような声色はまるで幼い子のものだ。
それに、窓の外の相手が先生だと言うのなら堂々と入り口から入って来ればいい。

ーー時刻は深夜。本当に窓の外の存在は先生なのだろうか。

「おおっ! 凛くんがおったか! 遅くまでえらいのう!」

そう言うが早いか、白濁色の窓ガラスがクリスマスのイルミネーションのように7色に瞬きはじめた。

「先生!」

身構えていた凛は、その現象をもって慌てて窓の鍵を解いた。
それは勝手知ったる先生の魔人能力に違いなかった。

窓の外の存在を目視し、凛は驚愕の声を上げた。

「え、かわいい!?」




















マリちゃん教授 プロローグSS

「柳川ラボへようこそ!」


















「うおおおおおおっ!? 何か貰ったぞ!?
うさぎか!? うさぎなのか!!?」

「よかったですね」

大学最寄りのショッピングモールに柳川親子はいた。
ベンチに駆け寄る幼女の手にはバルーンアートが握られている。

「すごいのう! かわいいのう!
……じゃが、割れそうで少し怖い気もするわい」

つんつんとおっかなびっくり風船をつつく幼女ーー柳川真理を見て、
柳川凛は微かに笑んだ。
固い笑みとは裏腹に尻尾は大きく揺れている。
多忙極まる義父と買い物にでかける機会など、少なくともここ数ヶ月は無かった。
義父が魔人研究の結果、何故か幼女になって帰ってきたという異常事態にあっても、
その嬉しさは揺らがない。

……というか、このくらいの異常はもはや平常であった。
去年はロボットになって帰って来たし、ひどい時はトイレットペーパーの芯になって帰って来た。

「『果物ナイフ』『自由帳』『ビー玉』……これで目当てのものは全て買えましたね」

「うむっ! せっかくの休みだというのに、付き合わせてすまんなぁ。
幼女一人じゃナイフは買えんからのォ」

「いえいえ、いい気分転換になります。
この後、少し早いですがお昼でも……あっ、そうだ」

「なんじゃい」

「あの……よろしければ、お洋服を見に行きませんか? その……なんというか」

凛は教授の格好をチラチラと見て言い淀む。
だぼだぼが過ぎて、もはや園児服のようになっているYシャツ、
何度も折ってなんとか引き摺らないように保っているチノパンと白衣。
レンズの大きさが合っていない色付きメガネ。

獣耳を生やした自分が言うのもなんだが、ちぐはぐな格好であった。

「服か……ううむ。着替えてしまうと戻った時に不便じゃからのォ」

ああ、と凛は頷いた。

「もうじき元の姿に戻られるのですか?」

「さぁの! 戻り方を含めて今まさに研究中じゃ!
だいたいアタリはついとるんじゃが……しばらくはこの姿でおりたいのぅ!
まだ試したいことが山ほどあるでな!」

「そうですか」

教授の楽しそうな様を見て、また灰色の尻尾が揺れた。

「ぐはっ!? ハァーッ! ハァーッ!
ぬおおおおおおおおおおおおおおん!!?」

「先生!?」

突如胸を抑えて苦しみだした幼女。

「カカッ! カカカカカカカッ!!
アイスじゃ!! 今……猛烈に、アイスが食べたい!!」

「はぁ……?」

「ああ、すごいぞ!? ああ、ああ……こんなにも体がアイスを欲しておる!!」

興奮した様子で幼女は立ち上がった。

「さてはこの能力……姿形だけを幼女にする能力ではないな!?
精神まで徐々に幼女になりつつあるというわけか!
カーカカカッ! なんというユニークな仕様じゃ、効果値いくつなんじゃあコレは!
カカッ! カカカカカッ!」

幼女の手に握られた自由帳に猛烈な勢いで文字が浮かび上る。

「大丈夫ですか? 【命の教授】か【魔法の教授】に連絡して、今すぐ解除して貰った方が……」

「イ~~ヤ~~~じゃ~~~!! こんな面白い能力を手放してなるもんか!
限界まで挑戦するぞ! ぐっ!? ぐああああお!! 唐突におもちゃ屋さんに行きたい!!」

小さく凛は溜息をついた。
教授は時折魔人や魔人能力研究の為に自身をないがしろにすることがある。

「ハァーッ! ハァーッ! カカカカッ!!
アイス食べたい欲とおもちゃ屋さんに行きたい欲に打ち克ったぞい!
どうじゃみたか! まだまだワシは幼女をやれるぞ!!」

「流石です、先生」

「ぐ……ぐぐぐぐぐっ……!
すまん凛くん、つまらん注文をつけてもよいかの?」

首を傾げる凛。

「ワシの内なる幼女スピリットが語り掛けて来るのじゃ……!
『先生』呼びは可愛くないとな……! もっとこう、プリティな呼び名はないかのォ」

「教授……お義父さん……真理(しんり)さん……真理(しんり)ちゃん……?」

「もう一声! 語呂が悪くて可愛いくないと魂が言うとるわい!」

真理(まり)ちゃん……?」

「マリちゃん!? なんじゃそりゃかわええ!
よいぞ! カカカカッ! 実に馴染む!!」

「マリちゃん」

「うむ!」

「マリちゃん」

「うむ!!」

ーー館内に轟音が響き、防犯ベルがけたたましい音を上げ始めたのはちょうどその時だった。
火災発生を知らせるアナウンスが流れる。
屋上から発火、階段を使い外に出ろ……と。

「カカカカッ! 今日はついとるのぅ! フィールドワークの時間じゃあ!」

それがダミーの知らせであることを場慣れした柳川親子は即座に看破した。
凛の耳がピクピクと2度揺れた。

「屋上で……大きな何かが……っ!
急いだ方がよさそうです……!」

カカという笑い声を残し、二人は人の波に逆行した。








「カカカカカッ! 全部わかった! 凛くん頼む!」

「はい! 魔人能力発動! 強きを挫く牙となれーー≪ラディカルファング≫」

屋上に到達した柳川真理は瞬時に全てを察した。
目の前には巨大なマスコットキャラクター。
それは多くの子供達が愛する児童文学のヒーローのような形をしていた。

しかしその形は不明瞭。
まるで幼児がクレヨンで描いたイラストのようであった。

そしてその巨大な手には、黒い着ぐるみを着たデパート職員が収まっていた。
気絶しているのか、ぐったりとしている。

直後、銀の影が奔り、クレヨンヒーローの手から職員を奪った。
獣の濃度を高めた柳川凛の動きは巨人を翻弄するに足る。

「カカカカカッ! 召喚型の能力じゃのお!
デっっカい図体じゃあ! FS振りの術師と見たわ!」

ヒーローの足元で泣きじゃくる幼子をチラリと見て、マリは叫んだ。

「おおかた、ヒーローショーを見とる時にびっくりして目覚めちまったんじゃろがい!
おい! でかいの! こっちを見ろ!!」

歪な巨体がマリの方を向く。

「カカカカカッ! 聴覚はあるようじゃな!
本体とリンクしておるのか、それとも独立しておるのか……!
カカカッ! カカカカカカカカッ!」

たんと小さな足がコンクリートを踏んだ。

「魔人能力・発動ォ!! 未来を紡ぐ叡智の軌跡!
綴れーー≪プロフレポート≫!!」

マリの足元を起点とし、コンクリートに魔法陣のような図柄が展開される。
よく見ればそれは細かい墨字で構成された数ヶ月分の近況報告だ。

「カカカッ! ほれ、正体不明のフィールドじゃあ! 怖かろう!?
まともな知性があれば踏み込んではこれぬおおおおおおおおおおお!!?」

船の汽笛のような咆哮と共に、鉄球の如き巨拳がマリ目がけて振り下ろされた。
ごろんごろんと転がって回避するマリ。

「ぐおおおおっ!! 猪め! 知性に振っとらんアタッカーじゃな!!
なら、こいつはどうじゃ!!」

俊敏に移動し、買ったばかりのビー玉をふんわりと投げた!
対象は泣きじゃくる幼女。

巨人の腕が伸びてそれを防ぐ。

「本体が見とらんでも防げるのか! つまりーー」

轟音。

次々に打ちおろされる巨人の拳をフィールドワークで鍛えた体術でひらりひらりと躱しながら、
それでも口は朗々と回り続ける。

「ーーつまり、操作型ではなく自立型! カカッ、死亡非解除じゃったら困るのう!」

マリは懐から自由帳を取り出した!

「カカカッ! 照らせ! ーー ≪プロフレポート≫」

自由帳の表紙が銀色に染まり、鏡の要領で陽光を反射し巨人の目に刺した。
ほんの数瞬、猛攻が止んだ。

「カカカカカッ! 視覚があるのは確認済みじゃあ!」

的を絞らせないよう、マリは円を描くように巨人の周囲を駆ける。

「さぁて、も少し実験したいのはやまやまじゃが、
その子の未来のためこれ以上物的損害を出すわけにもいかんしのう!
悪いが消えて貰うぞ! ……ぬっ!!?」

マリの動きが止まる。
足元には小さなサイズの落書き達が蠢き、マリの足を地面へと縫い止めている。

「なんじゃあこの数は!? 見誤ったわい! こりゃあFS20じゃきかん!
さてはおぬし、ガイドライン外能力じゃな!!?
カカカッ! カカカカカカッ! 素晴らしい! 素晴らしい能力じゃ!!」

巨人の腕が振りかぶられる。

「カカカカカッ! じゃがのぅ、ワシを誰じゃと思っとる!!」

マリも右腕を引き、拳を固める。

「ワシは!」

猛烈な勢いで風を切りながらマリへと一直線に向かう巨拳。

「物理の!」

幼い瞳に百戦錬磨の鈍き炎が灯った。
タイミングを見計らい、マリの拳も加速する!

「柳川……ぐああああああああ!!?」

巨拳一閃。
巨人の拳がか弱い女児を弾き飛ばした。

盛大に何かが砕けた。

灰色のコンクリートに円形の破壊跡を残し、マリの体は落下防止のフェンスを飛び越えかけ、
すんでのところで銀の影に攫われた。

「頼まれた通り、避難誘導完了しました」

巨人の追撃を躱しながら、人狼は屋上を駆ける。

「カカッ……ゴボッ……かっ……!
なんちゅう脆い体じゃ……!」

何かを伝えようとしたマリは咳き込んだ。
酷い損傷であった。

「一旦引きますか? もうじき魔人警察も着きます」

「ハァーッ! ハァーッ! いかん!
警察は……ゴホッ、加減を知らんのが混じっとる。
ワシらの手でカタをつけた方が穏便に済む」

「ですが、そのお怪我では……」

「案ずるな、既に闘いは終わっておる!
魔人能力発動! 真理を覆う襤褸と化せーー≪プロフレポート≫!」

柳川親子の体表・衣服が瞬時に灰色へと変色した。
二人を追っていた巨人が硬直する。

頭上に視点を持つそれにとって、灰色はアスファルトと同化し、
目視困難な迷彩と化す。

「カカッ……ゲホッ……カーーーッ!
どうじゃ、能力応用による色調変更じゃ!
文字色変更にはこういう使い方も……ごぽっ……うっ……!
ゴホッ、ゴホッ! ハァ、視覚依存の攻撃には……ハァ、辛かろう!」

巨人の足が、声を頼りに親子を踏みつけにかかった。

「ふっ!」

人狼が一段深く獣となり、その戦速を以て攻撃を躱す。

「(マリちゃん、どうかお口にチャックを)」

「(カカ、すまんのぅ、つい。 ……凛くん、あそこへ行っとくれんか)」

教授の指示に従い人狼が地を蹴る。
一陣の風が屋上に吹いた。

「今じゃ! 鳴けッ!」

「え、鳴く!? ……わ、ワン!!」

「なぁ~~にを恥ずかしがっとるか!!
人命がかかっとるんじゃ……ぞっ!」

教授ちいさな手が伸び、獣耳をギュッと掴んだ。
神経の集中した部位を握り込まれてはたまらない。

「ギャゥーーーーーン!!?」

文字通り、獣の咆哮が屋上にこだまする。
泣きじゃくっていた幼女が、びくりと人狼の方を見た。

しかし、その目前には自身が召喚した巨人の姿がある。
二ィとマリは笑んだ。

「プロフレポートォォ!!」

瞬間、巨人の色が凄まじい勢いで連続変化。
ストロボのような明滅を繰り返す。

「さっき触れた時にのぅ!
5年分、刻んどいた!」

色眼鏡越しに幼女を見る。
くらりと、へたり込む様を見届ける。

「手荒な方法を許しとくれ。
だが安心せい、光過敏性発作で人は死なん!
さてーー」

マリの視線は抜け目なく天突く巨人に向けられる。
幼女の意識に呼応するように、巨人も透き通り消滅していく。

「カカカッ! 死亡解除じゃったか!
フィ―ッ! 助かったわい!」

戦闘終了を見極め、人狼の腕の中で幼い教授はぐったりと脱力した。








□□□□□□□□□□
買い物の最中,【呪いの教授】の能力により魔人化間もない女児と遭遇.交戦の末,無事に保護.その場に居合わせた母親と共にラボに招き,魔人化との付き合い方を説く.
□□□□□□□□□□


「あいたたたた……幼女はつらいのう」

外れた関節をハメ戻しながらラボの隣の自室にてマリちゃん教授は独り言つ。
傍に侍る義理の娘はいつもよりやや不機嫌そうだ。

「半日経っても全快せんとは……!
世の幼女はみんなこうなのかね?」

「ええ」

そっけない返答に、さしもの教授も異変を察したようであった。

「あー……凛くん、ちょっとちょっと」

手招きに応じ、寄って来た義理の娘にやわやわと手を伸ばす。

「あっ……ん」

灰の耳を労わるように優しくなでる。

「昼のことはすまんかったのぅ。
つい、こう……久方の負傷でテンションが上ってしまっての……?」

そうではないのだけれどと、喉元まで出かかった言葉を凛は呑み込んだ。
それがごく個人的で醜い感情であるという自覚があったからだ。

だが代わりに口から出た言葉は決して嘘ではなかった。

ねだったことは無いが、柳川凛は義父に撫でられることが好きだった。
だから、醜い感情なんてふた撫でされた頃には吹き飛んでいた。

ブンブンと忙しなく振れる尻尾に反して、
凛は固い笑顔を浮かべて言った。

「どうか、お気になさらず」


☆☆☆


『はぁ、なんだって!?
いいから動物園! 動物園に行くのじゃ!!
あああああもう待ちきれん~~~~! はやく~~~~~!!』

『でも……今日は……おうちに帰らないと』

『ぬぅッ!? じゃったらーー


☆☆☆


「とにかく凄まじい能力がきみには眠っとる!
平均的な召喚能力の5倍の出力は固い! 訓練次第ではもっと伸びるかもしれん!!
だからこそ、早急に扱いを覚えねばならん!
伸ばすにしろ、抑えるにしろ、まずは能力の全容を把握して、不慮の事故を防がねばならんからのォ!」

「……?」

「カカカッ! わからんか、じゃったらーー


☆☆☆


『「ーーまた柳川ラボ(ここ)に遊びにおいで。」』


☆☆☆


柳川凛は言えなかった。

齢二桁にも満たぬ女児にかけた言葉に嫉妬心を抱いたなどと。
未来のライバルに対抗心を抱いて機嫌を損ねたなどと。


人気記事ランキング
目安箱バナー