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少女の時代が終わるよりも早く、世界の終わりは告げられた。
今、この時に叶えたかった夢【トップアイドル/シンデレラ/あなたのとなり】は山程あるし、
大人になってから叶えたかった夢【お嫁さん/あなたのとなり/わからないけど素敵な未来】も山程あったはずだった。

手が届きかけた夢は、結局掴めないまま終わる。
掴んだはずの夢は、全てが無意味になってしまった世界で嘘みたいにすり抜けていく。
今、目の前にあるしあわせも、世界まるごと巻き込んで何もかも夢だったかのように消えてしまう。

「ボクは嫌ですよ……プロデューサーさん」
世界は十二時を迎え、魔法は解けてしまった。
かつて、数多のアイドルを抱えていた■■プロダクションにも、今となってはかつての賑わいはない。
ほとんどのアイドルは、かつてアイドルだった女の子になり、かつてあった日常を無理矢理に演じるために家族の元へと帰っていった。
今この終焉の時代にもアイドルを続けようとする女の子は、やはり事務所を飛び出して――自分が立ちたかった舞台でライブを行っている。
かつての憧れであったドームも、今となってはそこで歌い踊ることに資格はいらない。

今、事務所に残っているのはプロデューサーと、そして唯一人のアイドル輿水幸子のみ。

「けどなぁ、幸子……」
「だって、だって……ラストライブに行ってしまったら、諦めてしまったみたいじゃないですか。本当に世界が終わってしまうみたいじゃないですか」
プロデューサーは困ったように溜息をついた。
本当に世界は終わるし、どう足掻いても■■プロダクションのアイドルとしては今行われているものがラストライブになってしまう。
普通の女の子に戻るならば、それでいい。
けれど、輿水幸子はアイドルとしてプロダクションに残った。
ならば、世界の魔法が解けてしまうまで――アイドルとして最後の舞踏会で踊って欲しい。
アイドルでいようとするならば、最後までアイドルとして終焉を迎えさせてやること。
それがプロダクションの総意でであったし、プロデューサー個人としてもそれは理想だった。
けれど、目の前の少女は――自分が世界の終焉の最後の鍵であるかのように、まるで自分が否定すれば世界は終わらないかのように振る舞う。
そうだろうとプロデューサーは思った、虚無が突き付けられているというのに、未だに世界の終焉は冗談としか思えない。
それならば、目の前の十四歳の少女は尚更だろう。
普段、散々に大人【レディー】ぶってみせても、結局はプロデューサーから見れば未だ子どもなのだ。
無限大とは言わない、けれど――素晴らしい未来が待っているはずだった。

終わらないと言ってあげたい。
世界は明日も、明後日も、明々後日も、一週間後も続いていくし、幸子には幸福な未来が待ち受けていると言ってやりたい。
けれど、それは無理だ。
プロデューサーは世界の終わりをわかりきった大人で、正義のヒーローが虚構であると知ってしまった大人で、
そして待ち受ける終焉に対して何の力もない大人だ。

「幸子」
だから、プロデューサーは幸子に向けて手を伸ばすことしか出来ない。
「世界は終わるけれど、俺達は皆消えてしまうかもしれないけれど、
それでも……幸子はアイドルで、俺はプロデューサーで、舞台があって、観客がいて、あぁ……っと、つまり
一緒に行こう、幸子。カボチャの馬車は無いけど、そこそこ速い車は持ってるんだ」
「……キス」
「え?」
「キスしてください、プロデューサーさん」

言っている意味がわからなかった。
幸子は女の子ではなく、アイドルのはずだった。
女の子だとしても、相手は自分ではない――もっと、若い、幸子と一緒に学校へ行くような少年だと思っていた。

「あは、プロデューサーさんはダメダメですね」
幸子は瞳を潤ませていた。
どんな演技よりも真に迫る彼女そのものが目の前に立っていた。

「やっぱり……女の子の扱い方を知らない。気づかなかったんですか?」
142cmしかない背を精一杯伸ばしても、プロデューサーの顔は未だ遠い。
今までずっと、この近くて遠い数センチの距離が縮まらなかった。


「ボクは……自分が思っていたよりも女の子で、
最後までプロデューサーさんの側にいたかったずるい女の子で、プロデューサーさんのことが大好きな、カワイイ恋する女の子なんですよ」
幸子は女の子の力でプロデューサーを思いっきり抱きしめる。
身長は変えられないから、だから自分に出来ることをする。
プロデューサーが、自分へと距離を縮めてくれるように。

「キスしてください、プロデューサーさん。
ボク、今だけはアイドルから普通の女の子に戻ります。キスしてくれたら、アイドルに戻ります」

――キスしても、アイドルには戻れない、戻れるわけがない

――けれど、輿水幸子はやっぱりずるい女の子で

――プロデューサーさんが大事にしていたアイドルという自分を人質に取ることが出来る

――普通の弱い女の子だった

「……」

法律はもう意味が無い、14歳も16歳も20歳も変わりはない。
今ここでキスしたところで、誰もスキャンダルにはしないし、されたところで意味は無い。
だから、世界はプロデューサーが目の前のカワイイ女の子の思いを受け止めることを咎めも妨げもしない。

プロデューサーは、キスして、髪を撫ぜて、愛の言葉を囁いてやることも出来る。
そうやって、目の前の女の子をアイドルに戻すことが出来る。

何より、終わりゆく少女に――すぐに消えてしまう大切な思い出を一つだけ渡すことが出来る。

「幸子……俺は……」

自分自身。
幸子。
幸子のファン。
他のアイドル。
■■プロダクション。
自分の中のアイドル。

「出会った時から、お前を愛していたよ」

プロデューサーは全てを裏切った。

「プロデューサーさん……」
幸子は女の子で、プロデューサーは大人で、

好きでもない女の子に愛していると囁くことが出来るずるい大人で、
好きでもない女の子に口づけを交わすことの出来るずるい大人で、

幸子はそんな思いに気づきながらも、信じたフリが出来るずるい女の子だった。



「ボクは幸せです」
「ああ、俺も幸せだ」



――この一瞬だけの愛情が永遠に続けばいいのに。



■■プロダクションを抜けだして、二人はそこそこに高級なホテルへと訪れた。
その行いを誰も妨げはしないし、誰も咎めはしない。

「プロデューサーさん」
「どうした幸子」
「ボク怖いです」
「怖いか」
「どうせ終わるなら、世界で一番幸せな女の子になって、幸せの絶頂で終わりたいと思ってました。
でも……嫌です、こんなに幸せなのに……何もかも終わってしまうのは嫌です」
「そうか……俺も怖いよ」
「プロデューサーさんも怖いですか」
「みんな思い出作りに励んでるけどさ、結局自分が終わってしまうことを必死に忘れようとしてるだけなんだ。
だから……思い出してしまうと、叫び出したくなるぐらいに怖い」
「プロデューサーさんにはやりたいことがありますか?」
「山程あるよ……なぁ、俺、子どもの頃にやりたかったことは、大人になるとほとんどどうでも良くなってた。
けど、大人になってから初めて見つかるやりたいことって言うのも、山程ある。幸子、お前は……そういうものを見つけられないんだな」
「…………」
「幸子、俺はお前をトップアイドルにしたかった。
誰よりもカワイイアイドルにしてやりたかった。ああ……いや、いいさ。愛してるよ、幸子。永遠に愛してる」
ボソリと、プロデューサーが言った『死にたくねぇな』の一言を幸子は聞き逃さなかった。
誰もが皆、死という言葉を避けていた。
終わるだとかそういう言葉で遠ざけたかった、ふわふわとしたものに包んで誤魔化したかったのだ。
事実を目の当たりにしてしてしまうことは、何よりも恐ろしいことだから。

「あぁ……」
「プロデューサーさん……」
幸子はプロデューサーを抱きしめた。
体温が直に伝わる零距離。
二人で溶けて混ざってしまいそうな、ぬくもり。

「ごめんな……お前が一番怖いのにな」
「……いいんです、ボク」

――幸せですから
その言葉を、幸子は飲み干した。
幸せであればあるほどに、終わる時が怖い。
ただ、麻薬に溺れるようにしてぬくもりに溺れてしまうしか無い。

ただひたすらに終わりを待っていたい。
溶け合ったままのハッピーエンドマークが付くような終わり。

けれど、そうはいかないだろう。

「幸子……お前」
プロデューサーが幸子の肌を撫ぜる。

「タトゥーなんかしてたんだな」
幸子に刻まれた三枚の悪魔の羽根の文様。
サーヴァントへの絶対命令権――令呪。

普通の女の子が世界の終わりに抗うための空想の弾丸。

「どうせ……終わっちゃいますからね」
そう言って、幸子は笑ってみせる。

いつかは戦わなければならないと思っていた。
終焉の時代に現れた無限の願望機、聖杯を巡る争い――聖杯戦争。
聖杯を手に入れることが出来れば、世界は何事もなかったかのように再び時を刻み始めるだろう。
来週にデートの約束を取り付けることだって出来るだろう。

けれど、幸子はカワイイだけの普通の女の子で、とても殺し合いが出来るとは思わなかった。
だから、勇気を振り絞って――プロデューサーに告白して、いっそ終わってしまっていいと思い込もうとして、
それでも無理だった――幸せであれば、幸せであるほどに、世界の存続を望んでしまう。

当たり前だ。
誰だって死ぬのが怖いし、輿水幸子に心中の趣味は無いのだ。

だから、幸子は戦いに赴く。
眠るプロデューサーの頬にキスをして、プロデューサーのぬくもりに別れを告げて、

そして世界が再動を始めれば、きっと――この愛は壊れてしまうことを知りながら。



「それで、いいのかい?」
「ええ、大丈夫です」
ホテルの外には、如何にも魔女然とした少女が立っていた。
美少女であることを除けば、百人が百人思い描く魔女のイメージそのままのクラシックスタイル。
つまり、魔女のとんがり帽子、魔法の箒、そして魔女のワンピースだ。髪は二房の三つ編にまとめてある。
丈の長い紫地のコートと首から提げたお守り袋だけが一般的な魔女のイメージに反しており、
コートの背中には大きく金字で『御意見無用』と刺繍されている。
その魔法少女こそが、幸子の召喚したライダーのクラスのサーヴァントであった。

「……ボクは聖杯戦争に参加します」
幸子が聖杯戦争への参加を表明した時、ライダー何かを思い出すような物憂げな表情を浮かべて、手を差し出した。
「とりあえず握手な、よろしくマスター」

ライダーに叶えたい願いはある。
今更どう足掻こうとも、どうにもならない願い。それでも、聖杯ならば叶えられるであろう願い。
けれど、それは――戦うことを望まない少女を巻き込んでまで、叶えようとは思わなかった。
今でも思い出す。
十六人の魔法少女が殺し合うこととなった、地獄。
自身も命を喪い、そして――大切な人の命を喪ったあの魔法少女の試験。
ライダーは己の腹を撫ぜた、今となっては痛みも何も無い。
全ては終わってしまったことなのだ。
だから、魔法少女のようにカワイイ目の前の女の子を無理に戦場に引きずり出す気はなかった。
世界は終わる、だが安らかな世界で死ぬことを望むというのならばそれで良かった。

「よろしくおねがいします」
幸子が手を握る。
幸子――幸せな子ども。
良い名前だとライダーは思った、親の望みというのは結局子どもの幸せなのだろう。
自分だってそう思う。

「んじゃあ、とりあえず飛んでみよっか!幸子は空飛ぶの初めて?」
「スカイダイビングの経験ならありますよ、ボクはアイドルでしたから」
「えぇー」
アイドルというものはスカイダイビングを経験するものなのだろうか、
少なくともトップスピードにはそうは思えなかったが、世界が違うのだ。深くは気にしないことにした。

初めて乗る空飛ぶ箒は、バイクのような風防やハンドル、マフラーや推進装置がゴテゴテと盛られていた。

「魔法の箒って、みんなこんな感じなんですか?」
「いやー、俺だけだと思うよ。なにせ俺は――」

トップスピード【最高速度】それが魔法少女としての彼女の真名だ。
もちろん、人間としての真名もある。
だが、それを知っているものは英霊にはいないだろうし、人間としての自分を覚えているものだけが知っていればいいと思っている。
だから、自分の名はライダーのトップスピード、それでいい。

魔法の箒が浮かび上がる。
ビルよりも高く、月よりも低い場所――幸子は空を飛んだ。
魔法少女に憧れなかった女の子はほとんどいない、そして幸子は魔法少女に憧れた女の子だった。
世界は滅ぶ、戦いに挑む、落ちたら死ぬ、でも――すごい、空を飛んでいる。

「~~~~~!!!」
だが、それは声にならない叫びになるばかりであった。

「大丈夫、大丈夫、しっかり掴まってれば後部座席からは落ちない……と思う」
「本当に大丈夫なんですか!?」
「なんなら曲技飛行をやってもいいよ」
「嫌ですよ!」
「はは、ジョーダンだって」
箒の後部座席に乗った相手と会話をするのは久しぶりのことだった。
共に戦った相棒――素直じゃない忍者の魔法少女のことを思い出す。
彼女はあの戦いを生き延びたのだろうか、今でも元気でやっているだろうか――出来れば、そうであって欲しい。
自分が生き延びることの出来なかった半年を生きているのならば、嬉しい。

「なぁ、プロデューサーさん、どうだって?」
幸子は女の子で、相手は大人で。
幸子はアイドルで、相手はプロデューサーで。
分厚い障壁に妨げられた告白を、ライダーは背を押すどころか箒に乗せて壁の向こう側へ放り込んだ。
戦わないにしても、世界が終わるならば後悔はしてほしくなかった。
彼女がいなければ、幸子は――アイドルとプロデューサーのまま、世界を終えていただろう。

「愛してるって言って、キスしてくれました」
照れたように、そして世界一幸せな女の子であるかのように幸子は言う。
だが、その声色に若干の悲しみが混ざっている。

失恋したわけではないのだろう、けれど完全無欠のハッピーエンドではなかったのだろう。
容易に推測のできることだった。
けれど、無理やり事実を聞き出す必要はない。

「そうか、良かったな!」
「はい!」



「やっぱり、ボクはプロデューサーさんのこと、大好きなんですよ!!」

ほんの少しだけ、トップスピードは
幸せな子どものことを可哀想に思った。


【出典】
アイドルマスターシンデレラガールズ

【マスターとしての願い】
世界が続くこと

【weapon】
カワイイ

【能力・技能】
カワイイ

【人物背景】
中学二年生の十四歳。
「ボクが一番カワイイに決まってますよ」と事あるごとに自分を「カワイイ」と発言するなど自意識過剰な性格の髪の右側に緑と赤のヘアピンをした薄紫のショートヘアの少女。
髪の両端の一部が少しハネている(持ち歌の歌詞では寝癖)。一人称は「ボク」。口癖は「ふふーん!」。どこか慇懃無礼な口調だが、
分が悪くなると強がりつつも弱腰になる。元の世界ではエスカレーター式の私立に通っている。
現在の所CDデビューを除いたすべてのレア名には「自称・」が付く。自称・マーメイドでカナヅチであることが判明。
そしてプロデューサーと結ばれた、世界で一番幸せな子ども。

【方針】
???

【真名】
トップスピード(室田つばめ)@魔法少女育成計画
【クラス】
ライダー
【属性】
中庸・善

【パラメーター】
筋力:D 耐久:C 敏捷:C 魔力:C 幸運:D 宝具:C

【クラススキル】
対魔力:D
 一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

騎乗:E++
 自身の持つ魔法の箒を操ることのみに特化している。

【保有スキル】
魔法少女:C
 『魔法の国』から与えられた力。魔法少女『トップスピード』に変身できる。
 魔法少女時は身体能力や五感や精神が強化され、容姿や服装も固有のものに変化する。
 通常の毒物は効かず、食事や睡眠も必要としない。その影響かサーヴァントとしての現界に必要な魔力量が通常時よりも低下している。
 気絶や死亡などで意識を失ったら変身は解除される。
 俺だって、魔法少女だ。

人間観察:E
 人々を観察し、理解する技術。
 人間時の経験が、魔法少女化によりブーストされている。

【宝具】
『猛スピードで空を飛ぶ魔法の箒を使うよ(ラピッドスワロー)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1-飛べるところまで 最大捕捉:2人
 空を飛ぶ魔法の箒、最高速度【トップスピード】は敏捷A++
 取り付けられた風防にはある程度の物理攻撃、魔法攻撃を防ぐ効果がある。
 後部座席が付いており二人乗りが可能となっている。

『後部座席の相棒(――)』
ランク:C 種別:対魔法少女宝具 レンジ1 最大補足1人
 大虐殺の中で戦った二人の魔法少女に対する牙なき民衆の祈り、箒に二人乗りの魔法少女のイメージを強化する宝具、
 ラピッドスワローの後部座席に誰も乗っていない際、その後部座席にくノ一の姿をした魔法少女を具現化する。
 英霊の座からの召喚ではないため、くノ一の姿をした魔法少女は、
 トップスピードがよく知る魔法少女と、同じ姿をして、同じ声で喋り、同じ戦い方をし、同じ心根を持った他人である。

【weapon】
『ラピッドスワロー』


【人物背景】
魔法少女の試験で自分の命と大切な人の命を喪った魔法少女。

【サーヴァントとしての願い】
 大切な人を蘇らせたい。