世界観などの設定



マナエネルギ、魔法化学技術

 コーネリア共和国が独自運用に成功した、全く新しいエネルギー源。及びそれを活用する技術。
 魔力の源である大気中の「マナ」を吸収し、それを動力として活用するという物。
 エネルギーとして活用すれば、原子力さえも凌駕する程の高い出力を叩き出す事が可能である。
 それに加えて使用する際に汚染を一切発生させないという、非常にクリーンなエネルギー源である。
 しかも大気中に大量に含まれているだけでなく、動力として使用されたマナエネルギーの残りカスは大気中に放出されると再びマナエネルギーへと変換されて自然へと還るので、余程無茶な使い方をしない限りは基本的に枯渇する心配は無い。

 マナエネルギーの存在自体はかなり昔から世界中で解明されてはいたのだが、それでも非常に繊細で扱いが難しい代物であり、実用化に成功したのは世界中でコーネリア共和国だけである。
 これはコーネリア共和国において広く使われている精霊魔法を近代科学と融合させた、他国では活用出来ない全く新しい技術による物で、「魔法化学技術」と呼ばれている代物である。

 エミリアはコーネリア共和国の王妃に就任した際、この魔法化学技術を世界中に提供してしまえば、今の戦乱の世の中が確実に加速してしまう、下手をすると人類滅亡の危機に直面する恐れまであると危惧し、魔法化学技術の外部への流出を一切禁じ、コーネリア共和国だけで独自運用する事を発表。
 実際にシュナイダーや建民のような世界征服を企てるような馬鹿に魔法化学技術が渡ってしまったら、とんでもない事になってしまう事は明白である。エミリアのこの判断は結果的には正解だったと言えるだろう。
 だがこれが世界中の国々からの大反発を招く事になってしまい、コーネリア共和国は技術提供を求める各国から、強い圧力を掛けられ続けている羽目になってしまった。

 シュナイダー「あれだけの技術をコーネリア共和国だけで独占するなんて、そんなのずるいじゃないですか。」

 実際にグランザム帝国やジャパネス王国のように、この魔法化学技術を欲するあまり戦争まで起こす国まで存在する始末である。いずれもコーネリア共和国軍に圧倒的な強さで返り討ちにされているが。
 汚染を一切発生させないだけでなく理論上無限に使用出来る、しかも原子力以上の強大な出力を叩き出すという凄まじい代物である以上、他国が「戦争を仕掛けてでも」と必死になって技術提供を求めるのは仕方が無い事だろう。

 ただしマナエネルギーを動力に変換する工程でどうしても精霊魔法が必要になるので、仮に技術を盗んだ所で他国がそう簡単に実用化出来るような代物では無いのだが。
 ジークハルトはこの事に気付いており、魔法化学技術を手に入れた所で実用化は不可能だと、それどころか下手に手に入れてしまうと自分たちが他国から圧力を掛けられ、最悪戦争を仕掛けられる羽目になると判断したので、他国の王たちと違いコーネリア共和国に技術提供を求めなかった。
 そもそもコーネリア共和国は中立国であり、圧力を掛ける行為自体が国際条約に思い切り抵触してしまうのだが…ほとんどの国の王たちは、そんな事は一切お構いなしである。それ程までに魅力的な代物だという事なのだろう。

国際条約、国際法

 世界中で定められている法律のような物。
 国や自治体が独自に自治権内でのみ適用される法律を作る場合でも、この国際条約だけは最優先で守らなければならず、守らなければ世界中から強い非難が浴びせられるどころか、最悪国際裁判にかけられ領主が罪に問われる可能性もある。
 …のだが、実際には完全に形骸化してしまっており、ほとんど守られていないというのが実情である。

1.敵国の捕虜を捕縛した際は、丁重に扱わなければならない。
 だが実際にはミハルを人質に取られたマチルダたちが、シュナイダーの命令でコーネリア共和国への侵攻を強要されてしまっている始末である。
 この件に関してはシオンもシュナイダーに思い切り突っ込みを入れていたのだが、シュナイダーは「いずれ私がこの世界の王になりますからねえ」と全く意に介さなかった。

2.洗脳や人体実験などの非人道的な行為は一切禁止。
 グランザム帝国ではスティレットが記憶を消されたり洗脳されたり、大臣たちがシルフィアを洗脳しようとしたり。
 ジャパネス王国でも強化人間を作り出し、兵士として実用化する研究が秘密裏に進められている。

 ドゼー「バレなければ犯罪では無いのですよ。」

3.中立国に対しての侵略行為、並びに過剰な圧力を掛ける行為は一切禁止。
 実際には魔法化学技術の項目にある通り、ほとんどの国が全く守っていない。

4.核兵器や細菌兵器などの大量虐殺兵器の使用は一切禁止。
 実際にはシュナイダーが核ミサイルを何の躊躇いも無く使用している。

5.除隊を希望する軍人に戦闘行為を強要してはならない。
 実際にはヴィクターが除隊を希望するスティレットを洗脳してまで、無理矢理シオンと戦わせている。

6.金融法。
 借金の連帯保証人になれるのは20歳になってから。
 本人の同意無しに勝手に連帯保証人にしてはならない。これは債務者の親族だろうと例外では無い。
 だが実際には、これも全く守られていないのが実情である。

 他にも色々あるのだが、作中で描写されているのは大体これ位だろうか。
 これでは一体何の為の国際条約なのかと、突っ込みを入れたくなる物なのだが。

惑星アルテミア

 本作における舞台となっている惑星。地球ではない。
 地球と同じく生命が住める環境ではあるのだが、マナエネルギーが星全体を循環しているという違いがある。
 実際に名前が出たのは後日談「繰り返される戦争」になってから。
 こういうのは一番最初に説明しろよ、っていうツッコミは無しの方向でお願いします(泣)。

ルクセリオ公国

 本作における物語前半の舞台。
 国の代表はジークハルト。
 隣国のグランザム帝国と戦争状態になってから10年が経過していたのだが、新型兵器のパワードスーツが開発された事で戦況は一変。一時はグランザム帝国を降伏に追い込む所まで来たと思われていた。
 だがそのグランザム帝国も新型兵器のフレームアームを実戦投入した事で、戦況はさらなる泥沼化を迎える事になる。

 国王のジークハルトは非常に有能な統治者なのだが、側近となる大臣たちが無能かつ身勝手な連中ばかりであり、ぶっちゃけそれが原因でシオンという超有能で貴重な人材に、コーネリア共和国に亡命されるという事態を招いてしまう。
 例を挙げると…。

 1.ジークハルトからの命令でオルテガ村までクリスタル強奪任務に赴くシオンに対し、「薄汚い孤児風情が」などと散々罵声を浴びせる。
 ←最早人権侵害とも取れる発言である。

 2.そのシオンがスティレットの妨害にあってクリスタル強奪に失敗しても、またブータラ文句を垂れる
 ←シオンが村人の命と安全を最優先した結果。そもそもジークハルトは任務失敗を一切咎めていない。

 3.進軍したグランザム帝国軍が後退した際、実戦経験豊富なシオンが「陽動だ」と忠告しているのに無視して軍に攻撃命令を下し、それに難色を示すシオンに対して抗命罪で投獄するとか意味不明な脅しをする。その結果スティレットたちの中央突破を許してしまい、危うく城を制圧される寸前にまで追い込まれてしまう。
 ←シオンが気を利かせて別動隊を警戒していなければ、間違いなく城を制圧されて戦争に負ける所だった。
 ←アーキテクトも「まさかこんなに簡単に陽動に引っかかるとはな」と、大臣たちの無能さに呆れてしまった程。

 4.スティレットと共にコーネリア共和国に遭難したシオンに対し、何故スティレットを殺さなかったのかと罵声を浴びせる。
 ←そもそもコーネリア共和国は中立国であり、そのコーネリア共和国の領地内で戦闘などしよう物なら不当な領地侵犯と見なされてしまい、間違い無くルクセリオ公国は世界中から非難される。

 5.グランザム帝国軍からの謀反を宣言したスティレットたちを殺す気マンマン。
 ←謀反したのだから殺す理由など最早存在しないし、スティレットの事情を考慮すれば、むしろ盛大に歓迎するべき案件である。
 ←そもそも「敵軍の捕虜は丁重に扱え」という国際条約に思い切り抵触している。
 ←シオン「もうやってられるか!!コーネリア共和国に亡命する!!」

 6.我が身可愛さと富を目当てに、あっさりとシュナイダーに寝返る。混乱に紛れてジークハルトを拘束したばかりか、民間人であるミハルを犯そうとまでする。
 ←逆に拘束されて全員国外退去処分となる。
 ←ジークハルト「まあ最初から分かってたけどなwwwwww」

 その結果、戦時中というクソ忙しい時にも関わらず、大臣たちのほとんどが失脚するという異常事態に陥ってしまう。
 こんな連中が大臣という重役に付いていた、しかもこいつらのせいでシオンまでエミリアに奪われたとなれば、ジークハルトも色々と気苦労が絶えなかったのではないだろうか。
 まあグランザム帝国の大臣たちもシルフィアの洗脳やカリンの抹殺を企てるようなクソ虫共ばかりなので、似たような物なのだが。こちらはこちらで色々と複雑な事情があるのだが。

 その後、新たな皇帝となったシルフィアがジークハルトに降伏を申し出た事で、ルクセリオ公国は長きにわたる10年戦争に勝利。後にグランザム帝国と和平を結ぶ事になる。
 …のだが、それを不服とした者たちに今度はクーデターまで起こされるなど、戦争に勝利してからも色々と気苦労が絶えなかったりする。

グランザム帝国

 10年近くもの間、ルクセリオ公国と戦争を続けてきた国。
 本編においては「敵」、実質的にカリンが主人公となる後日談では主要舞台となる。
 国の代表はヴィクター→シュナイダー→シルフィア。

 統治者だったヴィクターやシュナイダーが色々とアレな人物だったせいで、本編では悪質な侵略者というイメージが強いのだが、2人が戦死してシルフィアが皇帝になってから、ようやくまともな国に生まれ変わっている。
 …のだが、シルフィアが王家の娘とはいえ、まだ17歳の少女だという事から、完全に他の多くの国々に舐められてしまっており、チャイナ王国のように無茶苦茶な理由で戦争を仕掛けるような国まで存在する始末である。
 その全てがシルフィアの優れた戦術の前の前に、ことごとく返り討ちにされてしまっているのだが。

 軍事力、技術力共に非常に高いレベルにあり、主力となるカリン率いるゼルフィカール部隊ばかりに目が行きがちだが、シュナイダーがルクセリオ公国から鹵獲したパワードスーツの恩恵もあり、並の軍勢では到底太刀打ち出来ない程の戦力を誇る。
 だが外側からの脅威よりもむしろ、事ある毎に勃発する内乱騒ぎのせいで、自滅のような形で何度も国を混乱させてしまっている。例を挙げると・・・。

 1.ヴィクターが戦闘を拒絶するスティレットを無理矢理洗脳した挙句に彼女の暴走を招いてしまい、証拠隠滅の為に派遣した抹殺部隊を彼女の手によって壊滅させられるどころか、部下に見限られて射殺される。
 ←やる事成す事が全部裏目に出た形。完全に自滅である。

 2.シュナイダーが完全に私利私欲の目的で中立国であるコーネリア共和国に侵略する、条約で禁止されているはずの核ミサイルをぶっ放すなどの暴走をした挙句、表舞台に姿を現したシルフィアに断罪の名目で射殺される。
 ←後から尻ぬぐいをさせられるシルフィアも大変である。

 3.シルフィアがカリンと恋仲になる事を良しとしなかった大臣たちが、シルフィアの洗脳やカリンの抹殺を企てるものの、その全てがシルフィアにバレてしまい、全員もれなく逮捕され、裁判で有罪判決を受けて刑務所送りになる。
 ←本来なら即刻その場で処刑されても文句は言えないだろう。シルフィア優しいね。

 本当に大丈夫なのかこの国は・・・まぁヴィクターとシュナイダーの場合は完全に自業自得ではあるし、シルフィアなら問題無くこの国を良き方向へと導いていけるだろうが。

コーネリア共和国

 本作における物語後半の舞台。
 国の代表はエミリア。
 ヴィクターの死後、ルクセリオ公国騎士団からスティレットたちを守る為に、裏切り者の汚名を着せられる事を覚悟の上でシオンたちが亡命した事から、本作の物語は一気に急展開を迎える事になる。

 前述の通りマナエネルギーの運用技術の確立に成功した唯一の国であり、マナエネルギーの恩恵を受けたその技術力は他国の数世代も先を行っており、シオンも驚きを隠せなかった程。
 また急激な都市化が進む他国と違い、緑溢れる大自然に囲まれた非常に美しい国であり、観光スポットとしても人気が高い。
 その上で自然を壊す事無く近代技術も活用出来ている。これもマナエネルギーの恩恵による物である。

 軍事レベルも他国のさらに上を行っており、特にシオンたちが加入してからは最早チートレベル。
 マナエネルギーによる恩恵もあるが、何よりもこの国が独自運用している「精霊魔法」や「召喚魔法」の力も非常に大きい。
 実際にグランザム帝国軍もカリンがシオンに敗れるなど無様に敗走を余儀なくされ、10年戦争終結後に戦争を仕掛けて来たジャパネス王国軍に至っては、強化人間たちを実戦投入したにも関わらず、まるで歯が立たなかった。
 仮にシオンたちが亡命せず、コーネリア共和国軍に加入しなかったとしても、これらの国から充分に国を守り切る事が出来た程の戦力と軍事技術を有しているのである。

 だがエミリアの意向もあって技術の外部流出を一切禁じている事から、他国から厳しい圧力を掛けられ続けている、その技術を巡ってグランザム帝国やジャパネス王国から戦争まで仕掛けられるなど、色々と苦労の絶えない国でもある。
 エミリアはこの国の王妃に就任後、どこの国とも同盟を結ばない中立の立場を貫いており、10年戦争が始まってからもルクセリオ公国とグランザム帝国軍のどちらにも加担しない事を公式発表していた。
 …のだが、止むを得ない事情があったとはいえ、結果的にルクセリオ公国騎士団を二度も手助けする羽目になってしまう。この件に関してはカリンからも苦言を呈されていた。

 またこの国にはエミリアの意向によって

 「いかなる種族、経歴、出身の者であろうとも差別行為は一切禁止」

 という厳しい掟が課されており、これに違反すれば問答無用で厳しい処罰が課される事になる。
 ただ暴言を浴びせる程度なら罰金や厳重注意程度で済まされるのだが、あまりに度が過ぎると最悪国外退去処分となる。
 バンパイアであるマテリアがこの国で安心して暮らしていけているのも、この厳しい掟があるからこそである。
 アリューシャも「この掟のお陰で私は救われた」とカリンに語っている。
 実際にこの国に亡命してきたシオンたちを厄介者だとして暗殺しようとし、さらにはマテリアをバンパイアだからという理由で迫害したダランは殺人委託の罪に問われ逮捕され、釈放後に国外退去処分となった。
 これはエミリアの

 「この国を誰もが穏やかに暮らしていける国にしたい」

 という意向による物なのだが、これも他国から「バンパイア(マテリア)を庇うとは何事か!?」などと厳しい批判を浴びせられ続けている。

チャイナ王国

 グランザム帝国に隣接する国。
 国の代表は呂建民→雷春麗。
 10年戦争の際、ヴィクターが未だ健在だった頃から、グランザム帝国から傘下に加わるよう圧力を掛けられ続けてきた。
 当時の皇太子であった建民はそれを良しとせず、幾度となく政治的な争いを続けてきたものの、そのヴィクターが内乱騒ぎで戦死し、シュナイダーが新皇帝となった際、カリンらゼルフィカール部隊含む主力部隊がコーネリア共和国に侵攻してボロ負けした事で、チャンスとばかりにグランザム帝国に侵攻。
 だが条約で禁止されているはずの核ミサイルを撃ち込まれた事で侵攻部隊の大半を失ってしまい、無様な敗北を喫してしまう。

 それだけで済めば良かったのだが、今度はそのシュナイダーが内乱騒ぎで戦死してシルフィアが新たな皇帝となった事で、またしてもチャンスとばかりに攻め込むも、シルフィアの神がかった戦術、そしてレイファルクスを纏ったカリンの圧倒的な強さの前に、またしても無様な敗北を喫してしまう。
 その戦いで皇太子の建民は戦死。シルフィアの計らいで、一介の軍人でしかない春麗が女王に就任する羽目になってしまう。

 春麗「私は政治に関しては全くのど素人なんだぞ!?本当にいいのか(泣)!?」

 まあ政治に関しては素人ながらも、見事に国を立て直すなど頑張ってはいるようで、誰にでも細かな気配りが出来る春麗の人柄もあって、国民からの信頼は厚いようである。

 そんなこんだで春麗が女王になってからようやく平和な国になったチャイナ王国ではあるが、前皇太子であった建民が国を治めていた頃は武力による圧倒的な恐怖政治によって、国民を強制的に従順させていた。
 そのせいでこの国の犯罪発生率は他国と比べて極めて低かったのだが、それでも国民たちの不満は高まる一方であり、いつクーデターが起きてもおかしくない状況にまでなってしまっていたのである。

 シルフィア曰く「ディストピアの典型例。」

 事実、建民が戦死した直後、これまでの鬱憤が爆発したと言わんばかりに各地で暴動が発生、白昼堂々と犯罪を犯す者たちまで多数現れるなど、相当荒れた状態になってしまっていた。
 結局すぐに新たな女王となった春麗が国を立て直した事で事無きを得たのだが、無能かつ身勝手な統治者が国を治めるとどういう結果を招く事になるのかという典型例だと言えるだろう。 


最終更新:2018年09月23日 08:05