小説フレームアームズ・ガール

後日談「繰り返される戦争」


1.例え意味など無くとも


 『我らが偉大なる最高指導者・呂建民皇太子殿下からの、大いなる求愛を反故にした愚帝シルフィアには、冷酷無比なる神罰が下されるであろう。』

 チャイナ王国軍の国営放送でのニュース番組において、女性キャスタの力強いナレーターに鼓舞されながら、チャイナ王国軍がグランザム帝国城下町に進撃する映像が映し出されていた。
 そして迎撃するグランザム帝国軍が、チャイナ王国軍による砲撃で壊滅させられるCGも。

 『我らが偉大なる最高指導者・呂建民皇太子殿下が下される秀英無双の戦術に導かれ、我らが誇る精鋭最強のチャイナ王国軍が、脆弱なるグランザム帝国軍の連中を必ずや一網打尽にするであろう。』

 逃げ惑い、泣け叫ぶグランザム帝国軍の兵士たちを、チャイナ王国軍の兵士たちが一網打尽にするCGを、チャイナ王国城下町の市民たちが固唾を飲んで見守っている。
 そんな彼らを監視するチャイナ王国軍の兵士たち。恐らくはこの国営放送を国民全員が必ず視聴するように、建民からの命令が下されているのだろう。

 『脆弱なるグランザム帝国軍は我らが誇る精鋭最強のチャイナ王国軍によって、何も抵抗出来ずに大量虐殺されるであろう。奴らが誇る自称精鋭部隊・フレームアームズ・ガール共も、我らが偉大なる最高指導者・呂建民皇太子殿下の御前の下で、惨たらしい死を遂げるであろう。』

 フレズヴェルクを纏ったカリンが、ゼルフィカールを纏ったリアナたちが、銃で撃たれ、剣で斬られ、戦車に踏みつぶされ・・・挙句の果てに戦場で身ぐるみ剥がされて兵士たちに犯され自害するなど、次々と惨たらしく戦死するCGが映し出される。

 『愚帝シルフィアを王と崇めるグランザム帝国の愚民たちよ。心せよ。此度の戦は愚帝シルフィアの愚かさが招いた物である。あの愚かな女のせいで脆弱なるグランザム帝国軍の者どもは、我らが精鋭最強たるチャイナ王国軍によって大量虐殺されるのだ。』

 最後に映し出されるのは処刑台に拘束され、無様に命乞いをするシルフィアが、チャイナ王国軍の兵士たちに銃殺刑に処されるCGだった。

 『だが安心せよ。我らが偉大なる最高指導者・呂建民皇太子殿下からの大いなる愛によって、貴様たち愚民共は我らがチャイナ王国の保護の元、希望に満ち溢れた新たなる人生を歩む事が出来るであろう。』

 最後にファンファーレで締めくくられたこの国営放送は、チャイナ王国だけでなくネットの動画サイトでも全世界に放送されていた。
 その国営放送を城の訓練施設の大型モニターで厳しい表情で見つめているのが、チャイナ王国軍のフレームアームズ・ガール部隊隊長、雷春麗(レイ・チュンリー)大尉だ。
 年齢はシオンやアーキテクトと同じ20代だろうか。彼女から発せられるその雰囲気だけでも、数多の激戦を潜り抜けて来た歴戦の猛者だという事が伺える。
 そんな彼女をじっ・・・と見つめる、ジャージ姿の10人もの少女たち。
 彼女たちにもまた市民たちと同じように、訓練を中止してでもこの国営放送を必ず観るように、建民からの命令が下されているのだ。

 「・・・とまあ、見ての通りだ。皇太子殿下はどうあってもグランザム帝国に戦争を仕掛けるおつもりのようだ。こんな無意味な戦いが我が国に利益をもたらすとは、私には到底思えないのだがな。」
 「あの、隊長・・・殿下に対してそのような暴言、もし殿下のお耳に入るような事があったら・・・。」

 春麗に対して不安そうな表情を見せているのは、半年前にチャイナ王国軍に入隊したばかりの新兵の少女・呉翆玲(ゴ・スイレイ)上等兵だ。
 そんな翆玲に春麗は、とても穏やかな笑顔を見せる。

 「私を心配してくれているのか?何、今この場には我々しかいないから大丈夫だ。お前たちもくれぐれも殿下に告げ口だけはしないでくれよな。」
 「いえ、もし万が一この場に盗聴器や監視カメラなどが仕掛けられていたら・・・。」
 「その時は不当な人権侵害を犯されたとして、国際裁判で殿下を提訴するまでの事だ。」
 「隊長・・・。」
 「お前たちも仮に自分の部屋の風呂場に監視カメラが仕掛けられていたら、どう思う?それと同じ事だ。」

 チャイナ王国は建民の絶対的な統治の下、徹底的な恐怖政治による社会主義を貫いている。
 建民の命令は何があっても絶対、建民に対して不平不満を言う者がいたとしたら、間違いなく有無を言わさず拘束されて、強制収容所送りにされてしまうだろう。
 だからこそ翆玲は、いや、翆玲だけでなく今この場にいるフレームアームズ・ガール部隊の少女たち全員が、平気な顔で建民に対して文句を言う春麗の姿に不安そうな表情をしていたのだが。
 それだけ春麗が、彼女たちに慕われているという事なのだろう。

 「だが殿下は我々にグランザム帝国軍と戦えと仰られた。ならばこそ我々はこの国を守る為、例え意味など無くとも、この国の民たちに戦う姿勢を見せつけなければならんのだ。」

 殿下を守る・・・仮にも軍人である春麗の口からその言葉が出ない事自体が、あまりにも歪(いびつ)だと言わざるを得ない。
 シオンならエミリア様を守る、カリンならシルフィアを守る、アルフレッドなら陛下をお守りすると、同じ状況に置かれたのなら何の迷いもなくはっきりと宣言するはずだ。
 だが春麗の口から『殿下を守る』という言葉が出ない・・・それが建民の人望の無さを表していると言えるだろう。

 シルフィアに一方的な、最早命令と言っても過言ではない求婚をした挙句に、それをシルフィアに拒絶された途端に、今度はグランザム帝国に戦争を仕掛けるなどと言い出したのだ。
 10年戦争が終わったばかりで、グランザム帝国軍が戦力の多くを失った今からこそ、こうして建民も強気でいられるのかもしれないが。
 シオンも終戦協定式の際にカリンに話していたが、そんな下らない理由で戦場に出されたのでは、現場の兵士としてはたまった物ではないというのが本音なのだろう。
 いや、建民はシルフィアの事を、たかが小娘だと完全に馬鹿にしているのだ。
 そんな建民を命懸けて守りたいと願う者が、果たしてこの国に何人いるのだろうか。

 「殿下もシルフィア皇女も互いに譲らない今のこの状況だ。近い内に私たちに出撃命令が下されるのは避けられないだろう。ロールアウトしたばかりのジィダオの存在が、殿下を強気にさせてしまっているのかもしれないがな。」
 「隊長・・・。」
 「だがそれでも私はお前たちに言う。こんな下らぬ戦で死ぬ事は絶対に許さんぞ。必ず全員が生きてこの国に戻り、その手に幸せを掴むのだ。これは私が隊長としてお前たちに下す命令だ。いいな?」
 「「「「「「「「「「リージェイ(了解)!!」」」」」」」」」」

 決意を秘めた瞳で、春麗に敬礼をする少女たち。
 春麗もまた、そんな彼女たちに敬礼で返した。 

 「翆玲。お前は確か今回の戦が初の実戦だったな。」
 「はい。」
 「こんな軍人としての誇りを汚すような、あまりにも愚か極まりない侵略行為をお前の初陣にしてしまい、私は本当に申し訳なく思っている。」
 「いえ、私は我が国の女傑とまで呼ばれた隊長の下で働かせて頂けるだけでも、とても光栄に思っています。」
 「そう言って貰えるだけでもありがたいがな・・・だがシオン・アルザードではないが、自分の命を粗末にするような真似だけは絶対に許さないからな?」
 「リージェイ!!」
 「よし、私からの話は以上だ。総員訓練に戻れ。私は殿下に呼ばれているので一旦席を外すが、絶対に怪我だけはするなよ?させるなよ?いいな?」
 「「「「「「「「「「リージェイ!!」」」」」」」」」」

 敬礼する少女たちに見送られながら、春麗は部屋を後にする。
 軍人としての誇りを汚すような、あまりにも愚か極まりない侵略行為・・・こんな事が建民の耳に入ろうものなら厳罰は避けられないだろうが、それでも春麗は言わずにはいられなかったのだ。
 今回のグランザム帝国との戦争に・・・いいや、一方的な侵略行為に、果たして何の意味があるというのか。
 建民のシルフィアに対する一方的な求婚、そして威圧的かつ挑発的な態度に、ただでさえこの国は各国から強い非難が浴びせられているのだ。
 仮にこの戦争に勝った所で、カリンやシルフィアを討ち取った所で、果たしてこの国に何の利益があるというのだろうか。

 だがそれでも春麗は軍人だ。上層部からの命令とあれば戦場に出なければならない。
 ならばこそせめて、必ず生きてこの国に戻る・・・そして翆玲たちを自らの手で守り抜く・・・春麗はその決意を顕わにしていた。
 その決意を胸に秘め、春麗は部屋の扉をノックする。

 「殿下。雷春麗大尉、ご命令により出頭致しました。」
 「よく来たな雷大尉。入れ。」
 「はっ、失礼致します。」

 部屋を開けるとそこにいたのは、ソファにどっかりと腰を下ろす建民の姿。
 威風堂々と、春麗の事を睨み付けている。
 そんな彼の傍に下着を付けずに透明な服を着た、その美しい裸が顕わになった使用人の女性たちが寄り添っている。
 その内の2人が建民の隣に座り、左右から建民に抱き着いている。
 相変わらずの歪な光景・・・春麗は思わず厳しい表情になってしまっていた。 

 「遠慮せずにそこに座るがいい。何か飲むか?」
 「いえ、勤務時間中につき、控えさせて頂きます。」
 「相変わらず生真面目な女よのう。まあそれがお前の良い所ではあるのだがな。」
 「は・・・では失礼致します。」

 建民に敬礼し、ソファに座り姿勢を正す春麗。
 そんな彼女の凛とした姿を、使用人の女性たちが一斉に見つめている。

 「まあそんな事はどうでもいい。話と言うのは他でもない、今回の戦における作戦の最終確認と・・・あと金(キム)リンダの様子はどうだ?」
 「先日拘束した、あのカリン・ラザフォードの母親の事ですね?現状では丁重に扱っております。部下たちにも決して彼女を傷付けないよう念を押してありますが・・・。」
 「それで良い。下手に傷付けてしまえば人質の意味が無いからな。」
 「ですが殿下、敵国の兵士の母親を人質を取るなど・・・もし世間に知れてしまった場合、我が国は他国からどう思われるのか・・・。」
 「あくまでも念には念を入れてだ。まあ今回の戦でカリン・ラザフォードを脅さなければならないような状況に陥るとは、私には到底思えないのだがなぁ。はっはっはっはっは。」

 確かに今回の戦いで建民が考案した奇襲作戦が上手くいけば、グランザム帝国軍を抵抗する暇も与えずに一網打尽に出来るかもしれないが・・・果たしてそう簡単に行くのだろうか。
 幾ら何でも建民は、楽観視し過ぎなのではないだろうか。
 そんな不安を見せる春麗とは対照的に、建民は『勝てる』という確証を得たと言わんばかりに、傍に寄り添う2人の使用人の女性たちを抱き締めながら高笑いする。

 「では早速本題に入るぞ。今回の作戦の最終確認だ。お前たちジィダオ部隊の役目は、あのカリン・ラザフォード率いるゼルフィカール部隊の最悪足止め、可能であれば撃墜だ。」
 「は、承知致しております。」
 「お前たちが奴らを指定ポイントに追い込んだ後、『例の作戦』を実行する・・・上手くいくかどうかは全てお前たちジィダオ部隊の活躍にかかっているのだぞ?それを肝に銘じておけ。いいな?」
 「リージェイ!!」
 「まあ我が国の女傑とまで呼ばれたお前がジィダオを身に纏うのだ。その時点でまず間違いはないとは思うがな。まさかシルフィアもインペリアルが我が国のスパイに盗まれていたとは、夢にも思うまいて。はっはっはっはっは。」

 高笑いする建民を春麗が姿勢を正しながら、厳しい表情で見つめていたのだった・・・。

2.真の自由と平和を勝ち取る為に


 それから3日後・・・シルフィアからの度重なる警告や抗議も空しく、遂にチャイナ王国軍がグランザム帝国城下町へと侵攻を開始した。
 指定ポイントに到達後、建民からの命令と同時にいつでも攻撃出来るよう、その場で待機するチャイナ王国軍。
 迎撃する立場のグランザム帝国軍も城下町周辺に部隊を展開。チャイナ王国軍が侵攻を開始してもいつでも迎撃出来るよう、着々と準備を整えていた。

 もういつ開戦してしまってもおかしくない緊張の最中、城下町では今回の戦争に異を唱える非戦派の市民たちが、プラカードを手に一斉に城まで押しかけ、シルフィアに対して激しい抗議活動を行っていた。
 そんな彼らを帝国軍の兵士たちが、城の内部にまで侵入されないよう必死に押さえ込んでいる。

 「シルフィア皇女殿下は直ちに呂建民皇太子殿下に降伏し、今回の政略結婚を受け入れるべきだ!!それだけで戦争は回避され、両軍共に無駄な犠牲を出さずに済むのだ!!」
 「そうだそうだ!!それが皇女として成すべき政務なのだ!!国の頂点に立つべき皇女に、自由恋愛をする資格などあると思っているのか!?」
 「今回の戦争で、私の息子が再び戦場に駆り出されてるのよ!!傷だらけになりながらも10年戦争を生き延びてくれたのに、もしこの戦争で死んでしまったらと思うと、私は・・・!!」
 「シルフィア皇女殿下は10年戦争の悲劇を再び繰り返すつもりなのか!?そんな事は断じて許されない!!何としてでも戦争を回避する道を探るべきだ!!」

 一見するとあまりにも無茶苦茶な事を言っているようにも取れるが、シルフィアの皇女という立場から考えれば、彼らの抗議内容はある意味では決して間違っているとは言えないのだ。
 皇女という国の最高指導者という立場にあるシルフィアには、国を守る為、国民を守る為、最大限の努力をする義務がある。
 だからこそシルフィアには建民との政略結婚に応じるべきだと・・・それだけで戦争を回避し、無駄な犠牲を出さずに済むのだと、彼らはそう主張しているのだ。
 彼らの主張にはシルフィア本人の人権が全く尊重されていないのだが、そこにシルフィア本人の恋愛感情など挟む余地など無い。言わば建民に対する生贄も同然・・・だがそれが皇女として果たさなければならない義務なのだと、彼らは全く容赦してくれなかった。

 一斉にシルフィアに罵声を浴びせる彼らだが、その声は城の指令室にいるシルフィアには届いていない。
 この戦争をどうやって効率よく勝利に導くか・・・シルフィアは今、それだけで頭が一杯なのだ。
 シルフィアの目の前の巨大モニターには、両軍の現在位置や戦況を示す膨大なデータが映し出されている。
 そして城の外でシルフィアに対して、抗議活動を行っている市民たちの姿も。
 指令室の女性士官たちが一斉に部隊に指示を出す最中、シルフィアは意を決して突然立ち上がった。

 「これより演説を行います。私の姿を全世界に流して下さい。」
 「はっ!!」

 シルフィアの命令で、女性士官の1人が機器を操作。
 世界中の人々が今回の戦争に注目する中、シルフィアの姿が動画サイトの生放送コーナーに映し出された。
 あっという間に視聴者数が数百万を超える中・・・女性士官からのOKの合図と共にシルフィアが世界中に演説を始めたのだった。

 「この母なる大地・惑星アルテミアに住まう世界中の皆さん。私はグランザム帝国皇女シルフィア・グランザムです。既に皆さんもご存じの通り、残念ながら私からの建民殿に対する度重なる抗議も空しく、今回の開戦へと至ってしまいました。」

 コーネリア共和国ではシオンたちが・・・ルクセリオ公国ではジークハルトたちが・・・待機中のカリンたちグランザム帝国軍の兵士たちも・・・そして世界中の人々の多くが、テレビやパソコン、携帯電話やスマートフォン等を通じて、一斉にシルフィアの演説に傾注する。

 「そして今回の開戦に異を唱える我が国の城下町の市民の方が、今も私に対して激しい抗議活動を行っていらっしゃいます。私が建民殿との政略結婚に臨めば戦争は回避出来るのだと。今すぐに建民殿に降伏するべきだと。それが私の皇女として果たさなければならない政務なのだと。」

 そうだそうだ!!と、プラカードを手にした非戦派の市民たちが、一斉にシルフィアに対して激しい罵声を浴びせ続ける。
 その話題の真っ只中にいる張本人である建民もまた、旗艦からシルフィアの演説の様子をニヤニヤしながら見据えていたのだが。

 「確かに彼らの仰る通り、私が建民殿との政略結婚に臨めば、今回の戦争は確実に回避出来るでしょう。そうすればこの戦争で両軍共に、確かに1人の犠牲も出さずに済むのかもしれません。それが皇女として私が果たさなければならない政務だという彼らの主張も、あながち間違ってはいないのでしょう。」

 シルフィアの言葉にプラカードを手にした非戦派の市民たちが、まさにその通りだと一斉に盛り上がりを見せる、その最中。

 「・・・ですが。」

 そんな彼らを問答無用で黙らせるかの如く、シルフィアが突然強い口調で彼らの主張を否定したのだった。
 突然のシルフィアの強い口調に、彼らも思わず一斉に黙り込んでしまう。

 「今ここで私が建民殿との政略結婚に臨んでしまえば、我が国に決して明るい未来などありません。その果てに待ち受けるのは、建民殿による我が国への圧政です。仮に戦争を回避したとしても、それで我が国が果たして本当に平和だと言えるのでしょうか?」

 シルフィアの演説に熱が帯びる。力強い言葉で、人々に強く訴えかけるように、シルフィアは自らの想いを紡いでいく。
 建民による徹底した恐怖政治による、絶対的な社会主義・・・そんなチャイナ王国のような偽りの平和を、シルフィアは決してグランザム帝国の人々に味合わせる訳にはいかないのだ。

 「先日のチャイナ王国からの国営放送で、あのニュースキャスターの方はこう仰いました。仮にこの戦争で我々帝国軍が敗北したとしても、残された国民の皆さんには希望に満ち溢れた未来が待っていると。ですがそんな事は断じて有り得ないと私は断言します。」

 シルフィアの力強い演説の前に、プラカードを手にした非戦派の市民たちの抗議も次第に少なくなっていく。
 このシルフィアの演説を前にしても、未だにシルフィアに抗議を続ける者たちも少なからずいるのだが、それでもシルフィアは決して引かなかった。

 「考えてもみて下さい。一方的に私に求婚を迫り、それを私が断った途端に、それが気に入らないからという下らない理由で戦争を仕掛ける・・・そのような愚劣な男が統治する国に、果たして本当に真の平和など有り得るのでしょうか。」

 今現在グランザム帝国城下町に侵攻する為に部隊を展開している、春麗や翆玲たちチャイナ王国軍の者たちも、複雑な表情でシルフィアの演説に耳を傾けていた。

 「現にチャイナ王国の人々は、建民殿の圧政によって今もなお苦しめられています。社会主義という大義の下に徹底した監視体勢が敷かれ、誰もが自由を奪われています。言わばディストピアの典型例だと言えるでしょう。私はグランザム帝国を、そのような息苦しい国にする訳にはいかないのです。」

 建民に忠誠を誓えば一定の生活は保障されるが、少しでも逆らえば強制収容所に送られ、最悪の場合はその場で銃殺刑にされてしまう。
 この徹底した恐怖政治による社会主義制度のお陰で、確かにチャイナ王国の犯罪発生率は他国よりも相当低い水準にあるのだが、それが果たして本当の意味で平和だと言えるのか。本当の意味で人々は豊かだと言えるのか。
 シルフィアはグランザム帝国の人々に、そんな辛い目に遭わせる訳にはいかないのだ。
 そしてシルフィアの力強い演説は、今度はカリンら帝国兵たちにも向けられたのだった。

 「勇敢なる我が帝国軍の皆さん。皆さんが帝国軍に入って下さった動機は何ですか?国の為?家族の為?大切な人の為?自分の為?あるいは収入がいいから?それとも合法的に戦闘が楽しめるから?・・・理由は人それぞれでしょう。私はそれらを全て否定するつもりはありません。」

 帝国兵たちの誰もが、シルフィアの言葉に注目する中・・・シルフィアの言葉に一層力が込められ・・・そして・・・。

 「ですがどうか、どうか今この時だけは、私の剣となり、盾となって下さいませんか?この国の人々を守る為、そしてこの国の真の自由と平和を勝ち取る為に、どうか皆さん、私に力を!!」

 うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
 シルフィアの演説によって帝国兵たちが鼓舞され、一斉に歓声が沸き起こる。
 そして抗議活動を行っていた者たちのほとんどが、シルフィアに説得されてしまったかのように、すっかり黙り込んでしまったのだった。

 『行ってくるわね、シルフィア。』
 「・・・カリン・・・。」

 演説を終えて溜め息をついたシルフィアに、新型フレームアーム・レイファルクスを身に纏ったカリンが、まるでシルフィアを励ますかのように穏やかな笑顔で通信を送って来た。
 ヴァルファーレを参考にして作ったとカリンがシオンに語っただけあって、その姿はまさにヴァルファーレにそっくりだ。
 カリンの意向によりファンネルの搭載は見送られたが、代わりに新型武装のアーセナルアームズが変形、合体して翼の形状となり、カリンの背中に取り付けられている。
 その美しくも神々しい純白のレイファルクスを身に纏ったカリンは、まさにグランザム帝国を守護する純白の天使であるかのようだ。

 そんなカリンをモニター越しに、複雑な表情で見据えるシルフィア。
 出来ればカリンには危険な戦場の最前線に出向いて欲しくなんかない。この安全な指令室で自分の傍にいて欲しい。
 だがシルフィアは皇女として、戦場でカリンだけを特別扱いする訳にはいかないのだ。
 今回の作戦においてレイファルクスを纏ったカリンは、まさに戦略の最重要の『要』・・・カリンがどれだけ迅速に制空権を制圧出来るかに、作戦の成否がかかっているのだから。

 「カリン、作戦通りお願いしますね。それと・・・死んだら殺しますよ?いいですね?」
 『・・・了解!!』

 意を決した表情で、カリンはシルフィアに敬礼をして通信を切る。
 そんなカリンを見つめるリアナらゼルフィカール部隊の少女たちに、カリンは力強く呼びかけた。

 「皆、聞いてくれる?これはいつもの模擬戦や軍事演習じゃない。紛れも無い実戦よ。これから出向く戦場では皆の命を賭けて貰う事になるわ。」

 とても真剣な表情で、リアナたちはカリンの言葉に耳を傾ける。
 カリンはそんな彼女たち1人1人の顔を見据えながら・・・力強く彼女たちに呼びかけたのだった。

 「だけど、敢えて言うわよ・・・死んだら殺すわよ!?いいわね!?」
 「「「「「「「「「イエス・マム!!」」」」」」」」」

 そしてシルフィアの演説を聞き終えた建民もまた、ニヤニヤしながら兵たちに出撃命令を下したのだった。
 やはり建民はシルフィアの事を、たかが小娘だと馬鹿にしてしまっているようだ。

 「どこまでも愚かな娘だ。大人しく私に従ってさえいれば、我が第6夫人としての輝かしい未来が待っていた物を・・・全軍進撃開始!!奴ら帝国軍を一人残らず叩きのめすのだ!!」

 チャイナ王国軍が進軍を開始する。その様子が城の指令室に・・・そして戦場カメラマンを通じて世界中に映し出されたのだった。

 「チャイナ王国軍、進軍を開始しました!!」
 「全軍、迎撃を開始して下さい。」
 「了解!!全部隊、迎撃を開始して下さい!!アーバレスト、バリスタ、コキュートス、全砲門オールグリーン!!照準チャイナ王国軍に合わせ!!くれぐれも味方を巻き込まないよう注意して砲撃を・・・」

 シルフィアの命令で城からの援護射撃が行われる最中、巡洋艦からカリンらフレームアームズ・ガールたちもリニアカタパルトで次々と出撃していく。

 『進路クリア、ゼルフィカール部隊、発進どうぞ!!』
 「リアナ臨時小隊、テイクオフ!!」
 「「「「「「「「イエス、マム!!」」」」」」」」
 『ゼルフィカール部隊出撃完了。続いてレイファルクスの発進シークエンスに移行します。』

 リアナたちが巡洋艦から出撃してから、カリンもまたリニアカタパルトで出撃準備を整える。
 そしてカリンの傍には、60機近い大量の小型無人戦闘機・キラービーグの姿も。
 今回の作戦ではカリンはリアナたちとは別行動となり、独立遊撃手として大量のキラービーグを従え、単独で出撃するようだ。

 『リニアカタパルト接続、レイファルクス全システムオールグリーン。発進シークエンスをカリン隊長に譲渡します。』

 女性オペレーターの言葉と同時に、カリンの身体がリニアカタパルトで宙に浮く。
 必ずこの国を、この国の人々を、そしてシルフィアを守る・・・カリンはその決意を顕わにしていた。

 『進路クリア。レイファルクス、発進どうぞ!!』
 「カリン・ラザフォード、レイファルクス、出るわよ!!」

 その決意を胸に、カリンが再び戦場へと飛翔したのだった。

3.繰り返される戦争


 「行くわよ!!チャイナ王国軍!!」

 両軍の地上部隊が放つビームが戦場で乱れ舞う中、レイファルクスを纏ったカリンが凄まじい速度で上空を飛翔し、制空権を掌握しようとするチャイナ王国軍の航空部隊を迎撃した。
 翼の形状をした背中のアーセナルアームズからベリルソードを分離させ、それがまるでファンネルのように飛翔し、ぴったりとカリンの右手に収まる。
 カリンに無数の戦闘機からのビームマシンガンが襲い掛かるが、レイファルクスのあまりの機動性の前にロックオンすらままならない。

 「はあああああああああああああああああああああっ!!」
 「う、うわあああああああああああああああああああっ!!」

 カリンのベリルソードが、情け容赦なく戦闘機のコクピットを貫いた。
 そのまま首を貫かれたパイロットは即死し、制御を失った機体が地上へと落下していく。
 他の戦闘機が必死にカリンをビームマシンガンで撃とうとするものの、オートパイロットで自動制御されたキラービーグが死角から襲い掛かり、次々と戦闘機を撃墜していった。

 「何だあの機体は!?純白のヴァルファーレだと!?」
 「少佐!!我が軍の戦闘機がラザフォード中尉に次々と撃墜されています!!」
 「怯むな!!全艦全砲門開け!!砲火を奴に集中させい!!」
 「リージェイ!!」

 何とか制空権を確保しようと、チャイナ王国軍の無数の巡洋艦からも次々とビームキャノンが放たれるが、それでもレイファルクスを纏ったカリンを捉える事は出来なかった。
 放たれるビームキャノンを次々と避け、カリンは巡洋艦の群れに突撃。
 背中のアーセナルアームズが次々と分離、フォトンランチャーへと合体。
 それを手に取ったカリンが巡洋艦の砲台や推進部に次々と砲撃し、キラービーグの援護を受けながら、あっという間に巡洋艦を次々と無力化していく。

 「2番艦、3番艦、損傷甚大!!推進部を破壊され制御不能!!」
 「砲撃をランダム掃射せよ!!あの小娘に的を絞らせ・・・!?」
 「少佐ぁっ!!ラザフォード中尉がもう目の前にぃっ!!」
 「馬鹿な!?何と言う機動力なのだ!?う、うわああああああああああああああああああっ!!」

 カリンが上空を蹂躙する中で、地上でもまたリアナらゼルフィカール部隊が躍動していた。
 襲い掛かるビームマシンガンをビームシールドで防ぎ、チャイナ王国軍を次々と撃墜していく。
 あっという間に戦場に、チャイナ王国軍の兵士たちの死体の山が出来上がったのだが。

 「来たなゼルフィカール!!ジィダオ部隊を迎撃に向かわせろ!!自らの技術で滅びるがいいわ!!小娘共がぁっ!!」

 建民からの命令で巡洋艦のリニアカタパルトから戦場の最前線へと突撃するのは、新型フレームアーム・ジィダオを身に纏った春麗、翆玲らフレームアームズ・ガールたち。
 ジィダオ・・・建民がグランザム帝国の城下町に送り込んだスパイが軍事施設から盗み出した、かつてシグルドが使用していたインペリアルを下にチャイナ王国軍が作り出した、量産型のフレームアームだ。
 インペリアルの量産機というだけあって、その形状はインペリアルにそっくりだ。

 「貴官らに私怨は無いが、これも国の為、民の為・・・貴官らにはここで死んで貰うぞ!!総員突撃せよ!!」
 「「「「「「「「「リージェイ!!」」」」」」」」」
 「あのフレームアームの形状・・・インペリアルの量産型か・・・!!総員迎撃開始!!」
 「「「「「「「「イエス・マム!!」」」」」」」」

 春麗とリアナの号令と共に、両軍のフレームアームズ・ガールたちが戦場で死闘を繰り広げる。
 だがゼルフィカールの圧倒的な火力をもってしても、強固な防御力を誇るジィダオを傷付けるには至らなかった。
 放たれるビームマシンガンを、ジィダオ部隊の少女たちはガンシールドで次々と無力化していく。

 「そんな豆鉄砲、このジィダオには通じないんだからぁっ!!」

 翆玲がガンシールドから放ったビームが、情け容赦なくリアナに襲い掛かった。
 それを何とか避け続けるリアナに、春麗がビームランスで斬りかかる。

 「トラヴィス少尉!!お命頂戴する!!覚悟!!」
 「ここで死ぬ訳には行かないわ!!死んだらカリンちゃんに殺されるんだからぁっ!!」
 「何を訳の分からない事を言っているのだ貴官はぁっ!?」

 春麗とリアナがビームランスとビームサーベルを何度もぶつけ合う。2人の周囲に糸状の閃光が走る。
 その様子を上空からカリンが、厳しい表情で見据えていたのだが。

 「チャイナ王国軍がフレームアームを!?しかもあの形状、まさか盗まれたインペリアルのデータを・・・!!」
 『カリン。彼女たちはリアナたちに任せて、貴方は作戦通り制空権を掌握して下さい。』
 「了解!!」

 シルフィアからの命令で、カリンは再び上空の戦闘機や巡洋艦の群れへと突撃していく。
 ベリルショットライフルにベリルソードを連結させ、イーグルハントへと合体させる。
 銃剣へと変形、合体したアーセナルアームズが、襲い掛かる戦闘機を次々と切り裂き、撃ち抜き、撃墜していった。
 近距離、中距離、遠距離と、あらゆる状況での戦闘に適した様々な形状、出力の武装へと変形、合体させる事が出来る・・・それがこのアーセナルアームズの最大の強みなのだ。
 それがヴァルファーレと互角の性能を持つレイファルクスと、それを身に纏うカリンの圧倒的な戦闘能力と合わさり、凄まじいまでの戦果を叩き出していた。

 だがカリンの奮闘も空しく、地上ではリアナらゼルフィカール部隊が、完全に春麗率いるジィダオ部隊の猛攻の前に押されてしまっていた。
 放たれる攻撃をガンシールドで易々と防がれ、圧倒的なジィダオの防御力の前に傷一つ付けられない。
 その両軍のフレームアームズ・ガールたちの凄まじい戦闘の最中、春麗のビームランスが遂にリアナのビームマグナムを真っ二つにした。
 完全に押され気味のゼルフィカール部隊・・・それを見かねたのか、シルフィアの命令で城から放たれた閃光弾。

 「後退命令を確認、一時撤退する!!」
 「「「「「「「「イエス、マム!!」」」」」」」」

 ジィダオ部隊に敗れ、リアナの命令で撤退していくゼルフィカール部隊の無様な醜態を目の当たりにした建民が、高笑いしながら両手をバンバンと何度も叩いたのだった。

 「ふはははははははは!!見たかシルフィア!!これが我らが誇るジィダオの圧倒的な性能よ!!いかにゼルフィカールと言えども、ジィダオの強固な装甲の前では所詮は紙屑も同然だ!!総員そのまま突撃!!奴らを追い込みつつ指定地点で待機せよ!!」

 カリンもそうなのだが、リアナらゼルフィカール部隊もまた、グランザム帝国軍にとっての絶対的な「エース」・・・その勝敗自体が戦局を大きく左右してしまう。
 そのリアナたちの敗北がきっかけとなったのか、劣勢だったチャイナ王国軍が一気に湧き上がり、一斉にグランザム帝国軍を押し返し始める。
 パワードスーツを纏った帝国兵たちでさえもチャイナ王国軍を抑え切れず、次々と自陣へと撤退していくグランザム帝国軍。
 だが春麗だけはこの状況に、強い違和感を覚えたのだった。

 「おかしい・・・彼女たちの実力は本当にこの程度なのか・・・?」

 あの究極最強のフレームアーム・ヴァルファーレを纏った英雄シオンさえも苦しめたゼルフィカールの性能が・・・敗れたとはいえ精鋭を誇るスティレット・ダガー部隊の少女たちとも互角に渡り合った彼女たちの実力が・・・本当にこんな程度の代物なのか。
 幾ら何でも、あまりにも手応えが無さすぎるのだ。
 そう・・・まるでわざと春麗たちに敗北し、撤退したかのような・・・。

 「殿下!!この戦、何か変です!!彼女たちの力はあんな物では無い筈!!それなのにこんなにあっさりと引くはずが・・・!!」
 『何を躊躇っておるか雷大尉!!それだけジィダオの性能が圧倒的だという事だろうが!!』
 「しかし!!」
 『いいからそのまま突撃しろ!!このまま例の作戦を実行する!!貴様らは指定ポイントで待機せよ!!これは命令だ!!』
 「くっ・・・リージェイ・・・!!」

 国の最高指導者たる皇太子からの命令とあれば、たかが大尉という身分でしかない春麗には従う以外の選択肢は残されていなかった。
 ここで自分が建民に逆らってしまえば、仮にこの戦闘に勝利したとしても、彼女の部下たちやその家族までもが抗命罪や国家反逆罪に問われ、強制収容所送りに・・・最悪その場で銃殺刑にされてしまう事にもなりかねないのだ。
 絶対的な社会主義国家であるチャイナ王国は・・・そういう国なのだから。

 「仕方が無い。お前たち、聞いての通りだ!!このまま指定ポイントまで奴らを追い込むぞ!!」
 「「「「「「「「「リージェイ!!」」」」」」」」」

 確かに戦況はチャイナ王国軍が優勢だ。だが果たしてこのまま作戦通りグランザム帝国軍を追い詰めてしまっても本当にいいのか。
 心の中で不安を抱えたまま、春麗は部下たちに突撃命令を下す。
 その様子を満足そうな笑顔で見据える建民だったのだが、女性オペレーターからの航空部隊劣勢の報告を受けて、一転して不満そうな表情を見せたのだった。

 「何?ラザフォード中尉の機体がフレズヴェルクではないだと?」
 「はっ!!ライブラリーに該当データはありません!!帝国軍の新型と思われます!!」
 「何だあの機体は?ヴァルファーレによく似ているな。」

 上空を縦横無尽に駆け巡るカリンが次々と巡洋艦や戦闘機を撃墜していくのだが、それでも建民は余裕の態度を崩さない。

 「だが、まあいい・・・奴らがどんな新兵器を用意しようが、我が戦術の前では全て無意味と化すのだ!!このまま例の作戦を実行する!!大型ミサイルを城下町に向けて発射せよ!!」
 「リージェイ!!」

 旗艦から放たれた大型ミサイルが、一直線にグランザム帝国の城下町へと突撃していく。

 「チャイナ王国軍の旗艦から大型ミサイルが射出されました!!真っすぐにこちらへと向かっています!!」
 「ヴンダーガストでミサイルを破壊して下さい。」
 「了解!!ヴンダーガスト1番機、照準を大型ミサイルに合わせ!!」

 シルフィアの命令で、指令室の女性オペレーターが大型砲台の照準を大型ミサイルに合わせる。
 かつてスティレットの故郷と家族を全て奪った忌まわしい兵器・ヴンダーガスト・・・だが兵器というのは結局は、使う者次第で善にも悪にもなる物なのだ。
 スティレットにとって忌まわしい存在であるヴンダーガストが今、その凄まじい威力を発揮する。
 戦場で命懸けで戦う帝国軍の兵士たちを、そして城下町の人々を守る為に。
 ヴンダーガストの砲身にエネルギーがチャージされ、放たれた大型ミサイルを正確にロックオン。

 「ヴンダーガスト、発射!!」

 女性オペレーターの合図と共に放たれた超威力のエネルギー波が、正確無比の狙いによって大型ミサイルを直撃。
 直撃を受け、大破した大型ミサイルなのだが・・・これは建民が仕掛けた狡猾な罠なのだ。

 「馬鹿め、まんまと我が術中にはまったな、シルフィア!!」

 破壊した大型ミサイルから、大量の赤色の粒子が撒き散らされる。
 その赤色の粒子は、人体には全くの無害なのだが・・・巻き込まれた帝国軍の兵士たちが所持するビーム兵器の威力が、粒子の影響を受けて大幅に威力が減退されてしまっていた。
 粒子攪乱による、ビーム兵器の大幅弱体化・・・それが建民の狙いだったのだ。

 「総員実弾装備に切り替えよ!!慌てふためく帝国軍の奴らを大量虐殺するのだぁっ!!」

 建民の命令でチャイナ王国軍の兵士たちが一斉に実弾兵器に持ち替え、マシンガンやロケットランチャーといった実弾武器を次々と赤色の粒子に向けて乱射したのだった。

最終更新:2018年02月11日 08:50