ロアールには魔術教団の支部がある。
こじんまりした建物だ。中に入れば受付らしきカウンターが、埃くささと共に出迎えてくれる。
少し奥に進めば、喫茶店よろしくテーブルと椅子が雑に置かれていた。
その部屋の片隅には暖炉がひとつ。横に置かれた棚には、湯沸かし用の鍋やら安物の茶葉がこれまた雑に並ぶ。
茶をいれるなら勝手にしろ、ということだろう。
談話室めいた部屋にある扉をくぐれば、書庫らしき場所へ出る。
薄暗い、窓のない部屋。蔵書量は支部の大きさ相応のものくらいしかないが、たまにすごい本が置いてあったりもする。
そして書庫に机や椅子はない。ただ本のために存在している部屋だった。
魔術教団ロアール支部にある部屋はこれがすべて。
受付と、談話室と、書庫。
分かりやすく単純で、悪い言い方をすれば小さな支部だった。
ここは田舎町。魔術師の少なさも相まってか、同じ支部でもギルドの支部と比べると多少見劣りはする。
それでも受付近くに設置されたボードには、魔術師ならではの依頼や相談ごとを書いたメモが何枚か貼られているのだ。
魔術師たちの情報交換の場所として、一応の機能はしているらしい。