狂気のエメラルド煮込み◆3SNKkWKBjc


スノーフィールドにいくつか点在する教育施設、その一つに所属するある女性教師は途方に暮れていた。
何かの因果か、彼女も『白紙のトランプ』に導かれて聖杯戦争に巻き込まれた一人。
だけど、彼女は『白紙のトランプ』が原因で見知らぬ場所で、いつの間にか授業を請け負っていたなんて異常事態に巻き込まれたなど。
予想だにしてしなかった。
きっと彼女は『白紙のトランプ』に触れた事すら記憶にないくらい。
おっちょこちょいで、そそっかしい性格なのは自覚していたから、どうにか元居た場所へ帰ろうと試みた。

……が、成果なし。
彼女のサーヴァント曰く「アンドロイドの夢に溺死したのだな。ご主人は金槌だったらしい」とのこと。
割と納得していた。
別世界なのは頭で分かっているが、空は不自然で下劣な青に染められているし、木々の緑は悪質な汚染で侵食されている。
パキメリ爬の抽瘴画みたいな場所だ。
彼女の知る世界とは、異世界。だから元の世界へ戻れない。

だがしかし。
親切にも自分を臨時教員として雇ってくれている学校に、有難味を感じていたし。
サーヴァントも、自分が働いている最中。家事、料理、掃除etcetcをこなしてくれていた。
だったら、聖杯戦争にも積極的でなくては……
彼女はそのような回想を脳裏で浮かべつつ、帰路についた。



「ただいま帰りました、バーサーカーさん」

授業を終えた女性教師・ホンナイキが質素なアパートの扉を開ければ、派手な赤色の着物を纏った半人半獣の女性が出迎えた。

「うむ、御苦労であったぞご主人。残念だが布団は既に広げ、風呂もぐつぐつ煮詰めてある。
 本日のメニューは『ハリー・ポッターと賢者の石~マンダリンオレンジソース添え~』
 『天文学とエントロピー法則のサラダ』『夏目漱石・作 こころ鍋』だ」

「バーサーカーさん。お食事まで作って下さったんですね!」

「腹が八分目ならなんとやらだ。英気を養うがいい」

疲労の色があったホンナの表情も、明るく変化する。
何も半人半獣のバーサーカーは、嫌みでビニール封を破かれたばかりの新品ピカピカの本で、おどろおどろしい料理を製作したのではない。
これはこれで立派な『ごちそう』なのだ。
ホンナは、満足に『本料理』を平らげてしまった。
人類としては異常であっても、人類とは逸脱したホンナにとっては常識なのだ。
食事を終えたホンナは改めて話す。



「何から何まで面倒みて下さって、本当にありがとうございます。バーサーカーさん」

「我々の関係は金を稼ぐものと家を守るもの……つまり夫婦なのだな」

「はい! ですから、私もバーサーカーさんに協力させて下さい! えっと、聖杯でしたっけ。一緒に頑張って手に入れましょう!!」

「噂に聞くゴールデン猫缶で祝おうとは粋なご主人だ。マゼンタインクで乾杯したいものだな」

「あぁ、いいですね! えっと、具体的に私はどうすればいいのでしょうか? 窓突きとかトイレ弔意でも何でもします」

支離滅裂だが成立している不可思議な会話を繰り広げていた双方。
良心からの姿勢で目を輝かせるホンナに対し、バーサーカーの方が「うむむ」と唸った。

「申し訳ないがご主人。鼻には鼻を、良薬には良薬を、だ」

「え……私、そんなには頼りないのでしょうか………」

「雨の日に黒猫を見たときに抱く4番目の感情にならないで欲しい」

「どちらかと言えば、深夜の遊歩道で狸と遭遇した瞬間に生じる5番目の感情ですね……」

「これはご主人に限った話ではないのだ」

「あっ、そうだったんですね」

彼らは彼らで納得した様子。
解説すると、サーヴァントはサーヴァントでしか対抗できない。
ならばマスターはただの飾り物扱いなのか? 否、そういう訳じゃないのだ。
それに、ホンナ以外のマスターだってサーヴァントに成す術はない。だから安心しろ――という会話である。
ホンナは冷静にバーサーカーへ問う。

「でも……私、このまま働き続けていいんでしょうか。いえ、働きたくない訳じゃないですよ?
 校長先生も親切に私を雇って下さって……私、学校で精一杯働いてから聖杯戦争に励みたいです」

「なら、ご主人は『すてきなせんせい大作戦』の総指揮となるのだ」

「成程……情報収集ですね。わかりました、やってみます!」

教師の立場を利用すれば、教員・生徒からサーヴァントに纏わる情報が入手できるかも……しれない。
何もしないよりかは全然マシだろう。

「時にご主人。願いはあるのか?」

突然改まって。
狂った文法表現は演技で、実は正気じゃないかと疑わしい態度でバーサーカーが問う。
ホンナも、戸惑いながら答えた。

「聖杯のこと……ですよね。はい。私にシュルバツな願いはありません。
 それに、聖杯は所謂ベベドロ原理を利用した潤琴製に近いものと私は判断しております。
 だったら尚更、私個人のジャカナポルタみたいな真似はしないですよ」

翻訳すると。
ホンナ自身に突出した願いはない。
聖杯は奇跡の聖遺物なのだから、ホンナの私利私欲の為だけに使うのは恐れ多い。といった内容だ。

しかし。
確固たる願いを持たないというのは、聖杯の固執する意思すらないのだ。
聖杯戦争は、ある意味。気力の問題も関わる。
バーサーカーは改めて言う。

「ご主人がこの先生き残るのは―――まずは、健康的な生活習慣を死守することから始まるのだ!」

つまり、ホンナが生き残るには『生きる意思』が必要不可欠なのだ。
ホンナはちょっとばかし親切にして貰ったら、お礼をしなくちゃ申し訳なさで一杯になる善良な性格である。
故に、卑劣な主従が彼女を良いように利用するのを目論むのを想像可能だった。

バーサーカーは、ぶっちゃけ個人的な願いはない。
ただ、主人兼マスターであるホンナを死なせない為、彼女は奔走するだろう。
一つ欠点があるとすれば………


ホンナも、バーサーカーも人間の概念でいう『正気』から外れた存在である事だ。





【クラス】バーサーカー
【真名】タマモキャット@Fate/Grand Order
【属性】混沌・善

【パラメーター】
筋力:B+ 耐久:E 敏捷:A 魔力:A 幸運:B 宝具:D

【クラススキル】
狂化:C
 全パラメーターをランクアップさせるが、理性の大半を奪われる。
 はじめから理性が薄めのタマモキャットなので狂化とは言いがたいが、まあ似たような状態なので誰も気にしない。
 たまに含蓄のある言葉を呟いてまわりを驚かせる。


【保有スキル】
怪力:B
 魔物、魔獣のみが持つとされる攻撃特性で、一時的に筋力を増幅させる。
 一定時間筋力のランクが一つ上がり、持続時間は「怪力のランク」による。

呪術:E
 ダキニ天法。
 過去に懲りたのか、そういった術を使いたがらない。

変化:B
 借体成形とも。玉藻の前と同一視される中国の千年狐狸精の使用した法。
 殷周革命(『封神演義』)期の妲己に憑依・変身した術。
 過去のトラウマから自粛していたものだが、タマモキャットに自粛・自重・自制の文字はない。
 あるのはただ自爆だけである。


【宝具】
『燦々日光午睡宮酒池肉林(さんさんにっこう ひるやすみしゅちにくりん)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1~40 最大補足:30人
 酒池肉林は「林に虎を放し飼いさせ、そこに人間を放って楽しむ」拷問遊戯だが、現代ではその意味合いは変化している。
 タマモキャットが野生の力が爆発することで巨大な猫っぽい姿に変化して敵に攻撃。
 その後は寝っ転がってゴロゴロしてしまう。その間、傷が癒えたりする。


【人物背景】
タマモナインのひとり。
玉藻の前が千年鍛錬によって神格を上げた後、もとの一尾に戻る際に切り離した八つの尾。
それがそれぞれに神格を得て分け御魂として英霊化したもの。
玉藻の前が持つ(わりと)純真な部分の結晶。


【サーヴァントとしての願い】
ご主人の為に頑張るワン!







【マスター】ホンナイキ(SCP-022-JP)@SCP Foundation

【人物背景】
ガガフチ大学大学院卒業の教師。
普通に見れば若い女性に見えなくないが、実は頭部が書籍で構成されている。
普段は『メイク』で化粧して頭部を普通の人間女性にしている。
性格はこちらで言う『善良な』部類に属する。親切にされれば、お礼がしたいと積極的に働く。
書籍が主食。


【能力・技能】
彼女は人類にとって意味不明な授業をするが、授業を受けた生徒・授業を目にした人々に不信感は生じない。
授業を終えて、生徒はしっかりと知識を身につけるのだが、後に異常性を発生させてしまう。
無論、サーヴァントにこれらの影響は与えられない。

【役割】
スノーフィールドにある、某学校の臨時教員です。

【捕捉】
クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、
SCP Foundationにおいてshinjimao氏が創作されたSCP-022-JPのキャラクターを二次使用させて頂きました。

ttp://ja.scp-wiki.net/scp-022-jp


【マスターとしての願い】
本来の出勤場所に戻りたい

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最終更新:2017年01月27日 02:19