削除人 でぃ > 仕事の前に

■仕事の前に■

あたしが訪れたのは、どうやら個人運営の板である。無料レンタルの掲示板、というのはこの時代珍しくはない。
尤も、無料レンタルで個人運営であるがゆえに、大量の書き込みには追いつけないし、大量の荒らしにも手が回らない。
というのは良くある話らしいけど…。

でぃ「管理人さん(マスター)、仕事の前にここの規約を確認させて?」
管理人「基本的には虐待・虐殺行為は荒しとみなし削除、但し、荒らされる側にも原因がある場合は――」
でぃ「最初のそこだけでいいわ。つまりゆっくり側にも荒らしがいたら、容赦なく削除していい、でしょ?」
管理人「…そのとおりだ。」
でぃ「…報酬はあなたの言い値で構わない、安くてもあたしは文句は言わない…その代わり、狩(や)りがいのある相手だといいわね…。」

という感じに、依頼内容の確認をし終えたあたしは、「ゆっくり保護区」と書かれた、板への入口の扉を開け、中に入る。
…早速、悲鳴が聞こえてきた。

でぃ「やれやれ…人はいつまでも同じ過ちを犯す者なのかしら…?まあ、そういうのを狩るために、あたしのような「削除人」が呼ばれたわけだけど…。」

一人つぶやきながら、あたしは悲鳴の聞こえた方へ向かう。

削除人、それは「荒らしに対する削除依頼」を受け、荒らしを駆除する仕事。
つまりは、その板の治安を担う仕事とも言える。
しかしあたしは、報酬や名声のために削除人をやってるわけでもなければ、正義とか大義とかを掲げてこういう仕事を選んだわけでもない。

あたしが削除人という仕事を選んだ理由…。
かつて、同族たちを虐げ、あたしに癒えない傷を負わせた「荒らし」たちに対する
あたしなりの、「復讐」。ただそれだけだった。