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 昭和二十年四月二十日
 
 大本營陸軍部
 
 國土決戰教令
 
 國土決戰教令目次
 
 第一章 要旨
 第二章 將兵ノ覺悟及戰闘守則
 第三章 作戰準備
 第一節 要則
 第二節 教育訓練
 第三節 築城
 第四章 決勝會戰
 第一節 要則
 第二節 沿岸防禦戰闘
 第三節 機動
 第四節 攻撃戰闘
 第五章 持久方面ノ作戰
 第六章 情報勤務
 第七章 交通、通信
 第八章 兵站
 
 第一章 要旨
 
 第一 國土作戰ノ目的ハ來寇スル敵二決戰ヲ強要シテ絶對必勝シ皇國ノ悠久ヲ確保スルニ在リ
 之ガ為國土作戰軍ハ有形無形ノ最大戰力ヲ傾倒シ猛烈果敢ナル攻勢ニ依リ敵上陸軍ヲ殲滅スベシ
 
 第二 國土ニ於ケル決勝作戰ノ成否ハ皇國ノ興廃二關ス
 仰イデ國體ノ無窮ヲ念ヒ俯シテ建軍ノ本義ニ稽(かんが)へ學軍一心匪躬(ひきゅう)ノ節ヲ致シテ一死君國ニ報イ絶倫ノ努力ヲ傾倒シテ作戰目的ノ必成ヲ期スベシ
 
 第三 凡ソ戰捷ハ之ヲ確信シテ最後ノ瞬時迄敢闘スルモノニ歸ス 宜シク全軍相信椅(しんき)シ至難ニ處シテ愈々鐵石ノ團結ヲ堅持シ上ハ大命ヲ拜シ下ハ國民ニ魁ケ仇敵ヲ大海ニ排擠(はいさい)シ以テ戰捷(せんしょう)ヲ發得スル為最後ノ一人迄敢闘スベシ
 
 第四 神州ハ盤石不滅ナリ皇軍ハ自存自衛ノ正義ニ戰フ
 即チ將兵ハ皇軍ノ絶對必勝ヲ確信シ渾身ノ努カヲ傾倒シテ無窮ノ皇國ヲ護持スベシ
 必勝ノ信念ハ作戰準備ノ完整就中(なかんずく)周到適切ナル訓練、築城、後方兵站ノ整備等ニ依リ培養セラル 各級指揮官ハ身ヲ以テ之ガ完整ニ努力スベシ
 
 第五 戰場ハ悠久ノ皇土ナリ此處ニ父祖傳承シテ倶ニ生ヲ享ケ民族永劫ノ生命ト共ニ存スベキ地ナリ
 萬策ヲ盡クシテ國民皆兵ノ實ヲ發揮シ且一切ヲ活用戰力化シ以テ皇土總決戰ニ参與セシムベシ
 
 第六 平常的生活環境卜之ニ伴フ消極的諸條件及國土國民ニ對スル感情ノ諸作用トハ動(やや)モスレバ決戰氣魄ヲ消磨シ断乎タル統帥ノ實行ヲ躊躇セシムルノ虞アリ 故ニ指揮官ハ自ラニ鞭チテ勇斷宜シキヲ制シ克ク軍隊ヲシテ百事戰闘ヲ基準トスル野戰軍ノ本領ヲ發揮セシムルヲ要ス
 
 第七 國土決戰ニ於ケル作戰、職闘及訓練ハ典令ヲ活用スルノ外本教令ニ準據(じゅんきょ)シ且戰闘要領に關(かん)シテハ更ニ「上陸防禦教令(案)、橋頭陣地ノ攻撃」等ヲ参考トスルモノトス
 
 第二章 將兵ノ覺悟及戰闘守則
 
 第八 國土決戰ニ参ズル全將兵ノ覺悟ハ各々身ヲ以テ大君ノ御楯トナリテ来寇スル敵ヲ殲滅シ萬死固ヨリ歸スルガ如ク七生報國ノ念願ヲ深クシテ無窮ナル皇國ノ礎石タリ得ルヲ悦ブベシ
 
 第九 高級指揮官ハ夫々其ノ地位ト責務トニ即応スル統帥指揮ニ専念シ心魂ヲ盡クシテ敵ヲ撃砕スベキ方策ノ確立ト之ガ實行貫徹ヲ期スルヲ要ス
 各級指揮官ハ自ラノ信念ト熱意トヲ以テ部下將兵全員ニ決死必勝ノ信念ヲ透徹セシムルヲ要ス
 
 第十 指揮官ハ火力、制空力等戰場ノ實相ヲ正當ニ認識シ之ガ對策ヲ研究、創意シ熾烈ナル砲爆撃、戰車、火焔、瓦斯攻撃等激烈凄惨ナル情景ニ對處(たいしょ)シ冷静沈着毅然トシテ之ヲ凌駕、堅倒スベキ手段ヲ講ジ靭強ナル戰闘ヲ遂行スルヲ要ス
 
 第十一 決戰間傷病者ハ後送セザルヲ本旨トス 負傷者ニ対スル最大ノ戰友道ハ速カニ敵ヲ撃滅スルニ在ルヲ銘肝(めいかん)シ敵撃滅ノ一途ニ遙進スルヲ要ス 戰友ノ看護、付添ハ之ヲ認メズ 戰闘間衛生部員ハ第一線ニ進出シテ治療ニ任ズベシ
 
 第十二 戰闘中ノ部隊ノ後退ハ之ヲ許サズ
 斥候、傳令、挺身攻撃部隊ノ目的達成後ノ原隊復帰ノミ後方ニ向フ行進ヲ許ス
 
 第十三 作戰軍ハ全部隊、全兵種悉ク戰闘部隊ナリ
 後方、補給、衛生勤務等ニ任ズル部隊モ常ニ職闘ヲ準備シ命ニ應ジ第一線ニ進出、突撃ニ参加スベキモノトス
 徒手ノ將兵ハ第一線戰死者又ハ敵ノ銃器ヲ執リ戰闘ヲ遂行スベシ
 
 第十四 敵ハ住民、婦女、老幼ヲ先頭ニ立テテ前進シ我ガ戰意ノ消磨ヲ計ルコト在ルベシ  斯カル場合我ガ同胞ハ己ガ生命ノ長キヲ希ハンヨリハ皇國ノ戰捷ヲ祈念シアルヲ信ジ敵兵撃滅ニ躊躇スベカラズ
 
 第十五 敵ハ住民ヲ殺戮シ、住民地、山野ニ放火シ或ハ悪宣傳ヲ行フ等残虐ノ行為ヲ到ル處ニ行フベシ 將兵ハ常ニ敵愾心ヲ昂揚シ烈々タル闘魂ヲ発揮シ斷ジテ撃タズバ止ムベカラズ
 
 第二節 教育訓練
 
 第二十 敵ノ物的戰力ヲ墜倒撃滅スル為作職準備間最モ努力ヲ傾倒スベキハ決戰即應ノ訓練ナリ
 各級指揮官ハ寸陰ヲ惜シミテ部下軍隊ノ訓練ニ邁進スベシ
 
 第二十一 教育訓練ノ對象ハ指揮官ヲ重點トス
 上級指揮官ハ任務完遂ヲ第一義トシ自ラノ脳漿ヲ搾リ研鑽創意スルト共ニ隷下團隊長、幕僚ノ教育ニ最大ノ努力ヲ傾注スベシ
 
 第二十二 教育訓練ハ凡テ戰地教育ノ要領ニ據リ特ニ現地、現場ニ即スル實地教育ニ徹底スベシ
 
 第二十三 高級指揮官ハ其ノ作戰計畫ニ基キ速カニ隷下司令部、圃隊長ヲ訓練シテ作戰、戰闘ノ要領ヲ徹底ス
 此ノ間軍隊ハ基礎ノ訓練ヨリ逐次綜合訓練ニ入リ兵團ノ實兵演習ヲ以テ訓練ノ完成ヲ期ス
 特ニ新ニ編成セラルル部隊ニ在リテハ其ノ素質ヲ精査シ之ニ適應スル訓練ニ遺憾ナカラシム
 
 第二十四 教育ノ期ハ作戰上ノ要求、編成著手順序、初年兵入隊ノ時期、築城トノ關係等ヲ彼此考慮シテ之ヲ定ム
 教育ノ課程ヲ定ムルニ方リテハ速成教育ノ要領ニ依リ先ヅ對米戰闘喫緊ノ課目ニ限定シ且分、特業ノ内容ハ更ニ之ヲ専業ニ分課シテ速カニ年次兵ニ伍シテ戰闘任務ニ服シ得ル如クス
 爾後時間ノ餘裕ヲ得ルニ従ヒ戰場諸般ノ任務ニ就キ得ル如ク教育スルモノトス
 
 第三節 築城
 
 第二十五 築城實施ニ關シテハ大陸指第二九一四號國土築城實施要綱ニ據ルモノトス
 
 第二十六 築城ハ機宜ニ適スル我ガ戰力ノ發揚ヲ本旨トス 故ニ之ガ利用ハ戰闘法ニ即應セシム
 又動モスレバ既設築城ニ戰力ヲ膠著セシメテ攻撃精神ヲ消磨シ戰機ノ補足ヲ躊躇スルノ弊ニ陥ラザルコトニ留意スルヲ要ス
 
 第二十七 築城ハ高級指揮官ノ鞏固(きょうこ)ナル意志ニ基ク適切ナル戰闘指揮卜守備軍隊ノ敢闘トニ依リ始メテ其ノ價値ヲ發揮ス
 
 第二十八 軍隊ハ作戰上ノ要求ニ基キ自己ノ築設シタル築城ヲ離レテ他方面ニ於テ戰闘シ或ハ他ニ再ビ築城ヲ實施セザルベカラザルコトアリ 斯クノ如キ場合ニ於テハ指揮官以下心機一轉新任務ニ向ヒ遙進スルノ覺悟ヲ必要トス
 
 第四章 決勝會戰
 
 第一節 要財
 
 第二十九 決勝攻勢ニ任ズル兵團ハ猛烈果敢ナル攻勢ヲ遂行シ一擧ニ敵上陸軍ヲ撃滅スベシ 特ニ高級指揮官ハ終始強烈不撓(ふとう)ノ意志ヲ堅持スルヲ要ス
 沿岸防禦ニ任ジアル兵團卜雛モ機ヲ見テ獨力攻勢ヲ断行スルニ躊躇スベカラズ
 
 第三十 對上陸作戰成立ノ要件ハ沿岸防禦ニ任ズル兵團ノ長期ニ亙ル靭強ナル戰闘卜攻勢兵團ノ神速ナル機動及果敢猛烈ナル攻撃トニ在リ
 
 第三十一 高級指揮官ハ敵ノ上陸企圖ニ關スル判断ニ基キ戰備ノ度ヲ定メ作戰及戰闘準備ニ關スル準據(じゅんきょ)ヲ示スト共ニ随時ノ奇襲ニ對應スルヲ要ス
 
 第三十二 戰備轉移(てんい)、機動及戰闘閉始等ハ本作戰ノ特性ニ鑑ミ特ニ雋敏(しゅんびん)神速ナルベシ 之ガ為簡単明瞭ナル傳達法(例ヘバ略號發令ノ形式)ヲ準備シ置クヲ要ス
 
 第二節 沿岸防禦戰闘
 
 第三十三 沿岸防禦ニ任ズル兵團ハ優勢ナル敵上陸軍及空挺部隊ノ進寇ニ對シ長期克ク其ノ陣地;之ヲ拘束シ為シ得ル限リ甚大ナル損害ヲ與へ以テ主力ノ攻勢ヲ容易ナラシメ或ハ支作戰方面ノ持久ヲ擔任(きょにん)ス
 戰闘ノ遂行ニ方リテハ戰機ヲ補足シ勉メテ攻勢的ニ任務ヲ達成スルヲ要ス
 
 第三十四 防禦戰闘ハ各種ノ手段ヲ盡クシテ積極主動的ニ實施シ敵ノ物的戰力ヲ封ジ其ノ弱點ニ乗ズルヲ要ス
 之ガ為火力及逆襲ニ依ルノ外挺身奇襲、誘致、伏撃、逆上陸等溌剌果敢ナル戰闘ヲ遂行スルヲ要ス
 
 第三十五 集中スル兵團ノ戰場到着ニ伴ヒ沿岸防禦ニ任ジアル兵團ハ攻勢ノ為ノ支トウ(扌に党のにんにょうをとって牙)ヲ確保シ攻勢準備ヲ掩護ス
 攻勢開始ニ方リテハ攻勢兵團ニ連繋シ攻撃ヲ敢行ス
 
 第三十六 當初沿岸防禦ヲ命ゼラレタル兵團ニ在リテモ其ノ一部又ハ主力、状況ニ依リテハ全力ヲ他方面ニ轉用シテ防禦ニ任ジ或ハ攻勢ニ参與セシメラルルコトアルヲ豫期スベシ
 廣大ナル正面ヲ擔任(たんにん)スル兵團ニ在リテハ其ノ擔任地域内ニ於テモ屡々(しばしば)兵力機動ヲ必要トスルコトアリ 兵團編成ノ特性ニ依リ機動力十分ナラザルモノハ自ラ所在ノ資材等ヲ利用シテ豫メ所要ノ機動力ヲ準備スルヲ要ス
 
 第三節 機動
 
 第三十七 敵ノ制空下軍隊及軍需品ヲ神速ニ決勝點ニ集中スルハ戰捷ノ基礎ナリ 而シテ之ガ整斉神速ナル實行ハ事前ニ於ケル交通路ト通信網ノ整備、確保、後方兵站ノ確立竝ニ適切ナル訓練等周到ナル作戰準備ニ依リ始メテ期シ得ラルルモノトス
 神速ナル戰力集中ヲ圖(はか)ル為主決戰方向ノ決定機宜ヲ制スルハ高級指揮官ノ重責トス
 
 第三十八 機動ノ實行ニ方リ敵ノ砲爆撃、交通遮斷、疲勞困苦等ノ障碍ヲ克服シ戰機ニ投ズル行動ヲ遂行スルハ各級指揮官ノ積極敢為ノ意志ニ俟ツモノ多キヲ銘記スベシ
 
 第三十九 軍隊ノ機動ハ作戰時ニ於ケル交通網破壊ノ状況ニ鑑ミ集中及職場付近ノ機動共ニ主トシテ行軍ニ依ラザルベカラズ 然レドモ鐵道、水路其ノ他ノ輸送機關ヲ利用シテ機動ノ神速ヲ圖ルヲ必要トス 軍需品ノ移動ハ勉メテ鐵道、水路ヲ利用スルヲ要ス
 
 第四十 機動二關スル訓練ハ高等司令部以下之ヲ行フモノトス卸チ情報、通信、集合、機動發起、交通統制、行軍力ノ増大、對空部署、陽動、欺編等二關シ綜合的ニ演練スルヲ要ス
 
 第四十一 行軍間ノ傷者、患者ハ萬難ヲ排シテ同行シ決戰ニ参加セシムベシ 落伍ハ軍人ノ本領ヲ辮(わきま)ヘザル非行ト知ルベシ
 
 第四十二 行軍部署ハ對空戰備ヲ主トシテ之ヲ定ム
 高級指揮官ハ防空部隊ノ配置、運用ニ萬全ヲ期スルト共ニ軍隊ハ自ラ對空戰闘ノ處置ヲ講ジ敵機ノ執拗ナル妨害ヲ排除シツツ行軍ヲ敢行スベキモノトス
 
 第四十三 地障特ニ河川、湖沼、海峡ノ神速ナル渡過ハ周到ナル事前準備ニ依リ期シ得ルモノトス 高級指揮官ハ渡過ノ為徒渉場、夜間架橋晝間撤収、河底橋等ノ施設ヲ實施スルト共ニ防空、欺騙等ノ處置ニ遺憾ナキヲ要ス
 軍隊ハ縦ヒ配當渡過材料ノ不十分ナル場合ニ於テモ自ラ應用材料ヲ利用シテ地障ノ克服ニ勉ムベキモノトス
 
 第四十四 軍管區(師管區)部隊ハ當該管區ヲ通過スル決戰部隊ノ宿營、休養ヲ擔任シ或ハ交通路、通信網ノ整備、確保ニ勉メ以テ此等部隊ノ機動ヲ神速ナラシムルヲ要ス
 
 第四十五 高級指揮官ハ交通路ノ統制、整理ニ關シ萬般ノ施策ヲ講ジテ機動ノ整斉圓滑ヲ期スルヲ要ス
 軍隊ハ交通軍紀ヲ嚴守シ交通整理部隊ノ指示ニ絶對ニ従フベシ
 
 第四十六 機動ノ細部特ニ戰場機動ニ關シテハ「橋頭陣地ノ攻撃」ニ據ル
 
 第三節 攻撃戰闘
 
 第四十七 決勝攻勢ノ要ハ激烈凄惨ナル戰況、極度ノ消耗ヲ覺悟シ將帥以下毅然トシテ敢闘不屈ノ意志ヲ以テ飽ク迄攻撃ヲ強行シ敵ヲ壓倒(あっとう)撃滅スルニ在リ
 
 第四十八 決戰ハ通常海岸ノ狭隘ナル地域ニ於ケル橋頭陣地ニ對スル攻撃ニシテ時間的、地域的ニ策略ヲ施スノ餘地少ク激烈凄惨ナル局地戰闘ニ終始スルヲ常態トス 従ツテ諸兵戰力ノ統合發揮ニ關シテハ高級指揮官以下最大ノ努力ヲ拂(はら)フヲ要ス
 
 第四十九 橋頭陣地ニ對スル攻撃ハ單ナル一點突破ヲ以テシテハ目的ヲ達成シ難キヲ以テ攻撃ニ用フベキ兵力ニ稽ヘ數箇ノ突破點ヲ選定スルヲ可トス 而シテ重點方面ニ於テハ勉メテ大ナル縦長區分ヲ保持シテ攻撃ノ必成ヲ期スルヲ要ス
 
 第五十 決勝攻勢ニ方リ攻勢兵團ノ展開豫期ノ如ク進捗セバ必勝ノ基礎成レリト謂フベシ
 攻勢兵團ノ展開ハ状況特ニ攻撃發揮ノ豫定時機、沿岸防禦ニ期待スベキ持久抗堪度(こうたんど)、敵情特ニ其ノ攻撃方向及速度等ヲ判断シ攻撃準備ノ位置及之ニ就ク行動ヲ律スルモノトス
 
 第五十一 攻撃準備ノ位置ニ就キタル兵團ハ周到ナル準備ノ下諸般ノ戰力ヲ統合シテ攻撃ヲ開始ス
 状況ニ依リ攻撃準備ノ位置ハ更ニ之ヲ推進スルコトアリ 敵ノ準備未完ニ乗ゼントシ或ハ戰線浮動等ノ戰機ヲ捕捉セントスル場合ニ於テハ攻撃準備ノ位置ニ就クコトナク直チニ攻撃ヲ開始スルコトアリ
 何レノ場合ニ於テモ橋頭陣地ノ特性就中其ノ膨張性ニ稽へ攻撃ノ初動ヲ當時ノ状況ニ適應セシムルコト緊要ナリ
 
 第五十二 攻勢ノ為ノ諸準備ハ為シ得ル限リ豫メ之ヲ整へ築城、交通、通信、兵站、測地、住民ニ對スル處置等ハ兵團ノ展開前ニ完了スベキモノトス
 高級指揮官攻勢ニ決スルヤ所要ノ指揮機關、部隊、軍需品等ヲ攻撃準備ノ位置ニ推進シ前項ノ事前準備ヲ補綴(ほてつ)スルモノトス 此ノ際防空機關ノ配置ヲ速カニ完了スルコト緊要ナリ
 
 第五十三 敵陣前ノ火力障壁ヲ突破シ其ノ外殻ヲ破砕スルハ必ズシモ難カラズ 我ガ攻撃ノ進展ヲ阻碍スルモノハ熾烈ナル砲爆ノ外陣内縦深ニ亙ル敵ノ近戰火力卜機甲反撃卜ニ在リ 兵圃ハ諸兵種特ニ歩戰砲工ノ緊密ナル協同ト縦長戰力卜ニ依リ絶エズ攻撃威力ヲ培養發揮シツツ一意突進ヲ斷續(だんぞく)シ敵ノ抵抗組織ノ全縦深ヲ撃摧(げきさい)スルヲ要ス
 
 第五章 持久方面ノ作戰
 
 第五十四 持久正面ノ作戰指導ハ状況ニ依リ千變萬化スベキモ要ハ決勝攻勢ヲ成立セシムルヲ唯一終局ノ目的トシテ其ノ行動ヲ律セザルベカラズ
 
 第五十五 敵ノ進攻ヲ受ケタル持久正面ノ軍司令官ハ攻勢ニ依リ之ヲ撃滅スベキヤ持久抵抗ニ依リ時間ノ餘裕ヲ得ルヲ主トスベキヤヲ定ムベシト難モ持久任務達成ノ最良ノ方策ハ攻勢ニ在ルヲ想ヒ果敢溌剌ノ氣勢ヲ失ハザルヲ要ス
 
 第五十六 持久正面ニ於テ攻勢的ニ作戰ヲ指導スル場合ニ於テハ特ニ慎重周到ナル戰術的考按ヲ以テシ敵ノ火力陥穽ニ陥リ戰力ヲ消耗シテ全般ノ目的達成ニ背馳(はいち)スルガ如キコトナキヲ要ス
 
 第五十七 主決戰方面ニ徹底セル戰力ヲ集中スル為持久正面ノ軍隊ハ極メテ優勢ナル敵ニ對シ長期ニ亙リ作戰セザルベカラズ
 持久正面ノ戰園ニ任ズル軍隊ハ一兵ニ至ル迄全局ノ勝利ハ一ニ懸リテ將兵ノ勇戰敢闘ニ在ルヲ銘心シ有ユル苦難ヲ克服シ勇躍任務ノ完遂ニ邁進スベシ
 
 第五十八 持久抵抗ヲ企圖スル場合ニハ大規模ナル障碍地帯ノ設定及交通遮斷ヲ實施スルヲ要ス 此ノ際之ガ實行ノ時機ヲ失セザルコト及火力ヲ伴ハザル障碍ハ大ナル期待ヲ保シ難キニ注意スルヲ要ス
 而シテ障碍等ニ配置セラレタル軍隊ハ單ニ防守ニ専念スルコトナク巧ニ攻防ノ手段ヲ併用スルコト緊要ナリ
 
 第五十九 持久正面ニ於テハ敵ヲシテ既設飛行場ヲ使用セシメザル為我ガ使用ヲ期待セザル飛行場ハ根抵ヨリ之ヲ破壊シ且敵ノ修理設定ヲ妨害スベキ處置ヲ講ズルヲ要ス
 
 第六章 情報勤務
 
 第六十 對上陸作戰ニ於テ主決戰方面ノ決定機宜ヲ制スルハ情報勤務ノ成果ニ俟ツ所大ナリ
 
 第六十一 情報勤務ヲ適切ナラシムルニハ各兵團ニ一貫セル情報體系(たいけい)ヲ末梢ニ至ル迄確立セシムルコ卜緊要ナリ
 之ガ為各種情報機關及情報通信網ハ速カニ之ヲ完整シ戰況ノ推移ヲ洞察シ随時之ヲ補備増強スルヲ要ス
 既往ニ於ケル防空専用ノ情報通信ノ組織ハ速カニ地上決戰ニ即應スル如ク整備スルヲ要ス
 
 第六十二 情報勤務ノ成否ハ事前ノ教育訓練ニ依ル所大ナリ
 各級指揮官ハ情報、通信關係者ノ訓練ニ努カシ其ノ能力ヲ向上スルヲ要ス
 
 第七章 交通通信
 
 第六十三 國土ニ於ケル對上陸作戰成立ノ重要ナル要件ハ交通、通信ノ完備ニ在リ
 而シテ敵ノ空襲ハ逐日激化シ交通、通信作戰ハ既ニ進展シツツアリト知ルベシ
 
 第六十四 交通作戰必勝ノ要訣ハ事前ニ萬全ノ態勢ヲ確立スルト共ニ作戰ノ終始ヲ通ジ旺盛不屈ノ闘志ヲ以テ惨烈ナル戰況ニ處シ交通、通信ノ確保ヲ期スルニ在リ
 
 第六十五 交通、通信ニ關スル作戰準備事項中主要ナルモノ左ノ如シ
 一、戰略的交通路(鐵道、道路)ノ整備、兵要地誌、氣象ノ調査
 二、渡河點(橋梁ヲ含ム)ノ復舊(ふっきゅう)準備及隘路ノ副交通施設
 三、交通要點及輸轉材料ノ防空、對爆施設、秘匿、偽装
 四、交通統制組織ノ確立ト之ガ機能ノ充實
 五、戰場地帯ノ交通路ノ整備
 六、軍官民通信ノ有機的統合ニ依ル戰略、戰術的通信組織ノ確立
 
 第八章 兵姑
 
 第六十六 兵姑ハ國土戰場ノ利點ヲ最高度ニ活用シ特ニ作戰發起ニ伴ヒ移動ヲ要スル軍需品ヲ最小限ナラシムルコトニ著意スルヲ要ス
 
 第六十七 作戰資材ノ整備ハ萬物戰力化ヲ本旨トシ各兵圃ハ自ラ所要ノ作戰資材ヲ現地自活シ物的戰力ヲ強化セザルベカラズ
 
 第六十八 作戰資材ヲ敵ノ砲爆撃、雨露、湿潤等ニ對シ防護シ以テ無為ニ消耗セザルコトハ各級指揮官ノ重要ナル責務ニシテ之ガ對策ノ實施ハ作戰行動ナリト心得ベシ
 
 第六十九 兵站部隊ハ状況ニ應ジ直接戰闘ニ参與シ國土防衛ノ榮ヲ擔任スベキモノトス
 故二兵姑部隊ニ對スル對米必勝ノ基礎戰技ニ關スル訓練ノ課目、程度ハ第一線兵團ト異ナル所ナシ
 
 第七十 兵姑作戰ノ準備ノ主要ナル事項左ノ如シ
 一、沿岸防禦ニ任ズル兵團ノ作戰(戰闘)計畫ニ即應スル集積及び配置
 二、方面軍(軍)兵站ノ基礎展開、集積、防空、對爆施設
 三、輸送機關ノ配置準備
 四、第一線ヘノ補給推進ノ要領及之ニ伴フ諸施設
 〔終〕