敗者のゲーム チャールズ エリス 日本経済新聞社

1、敗者のゲームとは?
著者は敗者のゲームを次のようにたとえている。
「プロのテニスは得点を勝ち取るのに対して、アマはミスによって得点を失う。」
プロは正確で強力なショットをうって得点を得るのに対して、アマチュアのテニスは
すばらしいショットや長いラリーなどはほとんどみられず、得点のほとんどは相手のミスが原因となる。これを著者は敗者のゲームと呼んでいる。
そして、資産運用の世界も勝者のゲームから敗者のゲームに変わってしまったと言っている。この場合勝者というのは市場に勝っていることである。
現在の市場は機関投資家が90%の市場シェアをもっている。皆が同じように皆を出し抜こう、勝とうと努力している中で、アマチュアがプロに勝ち続けることなど不可能である。実際、大手証券会社の調査アナリストたちは自分の情報、評価を何百人という世界のプロの投資家たちに瞬時に伝え、プロの投資家たちはすぐさま行動する。そのため、誰もが甲乙つけがたくなり、競争相手より常に優位にたつことは非常に難しい。市場勝つということはプロに勝つと同じことである。
だが、市場に勝つという無駄なことをせず、敗者にならない方法ならある。


2、投資のドリームチーム
個人投資家がもっとも簡単で確実に勝つ方法はインデックスファンドを利用することである。インデックスファンドのメリットは取引手数料や税制上の効果がたかい。
インデックスファンドはいわば「投資のドリームチーム」を結集したようなものである
なぜなら、インデックスはそのまま市場の動きを反映するからである。マーケットがプロによって支配されるようになった今、市場の動きはまさにプロの動きの総和を表す。
しかも何よりも手数料も安く、コスト運営が安い。この点で優れているといえる。

3、時間が教える投資の魅力
十分に時間が与えられれば、一見魅力的とは思えない運用も大変有効になる。
短期では一見リスキーとも見える運用方法も時間によって様変わりさせることができる。
なぜならば、平均収益率自体は時間によって少しも変わるものではないが、その平均収益率の周りに分布する実際の収益率の範囲は、時間の影響を大きく受けるからである。
運用期間が長ければ長いほど、ポートフォリオ全体の実際の収益率は平均収益率に近づく。その結果、投資家は運用の種類、状況、目的など、一番よい組み合わせを選択することができる。まず、一年間の収益率から見ると、最高でリターンは53%、最低でマイナス37%である。このように広く分散されたなかで平均値を出すことはいみがない。だが10年、20年と長い期間でみると、長期期待収益率に収斂していく。
だから、より安定的に、確実にリターンを出すには株式の超長期保有が一番である。

4、リスク
リスクは3種類ある。
1、 グループリスク
2、 個別銘柄リスク
3、 市場リスクである。
1、 2は避けることができるが、3は避けることができない。
なぜなら特定のマーケットや、特定証券への投資リスクは分散させることで回避できる。
だが、市場リスクは避けることができないので、管理されなければならない。
また、株式は短期的にはリスクが大きいが、(特に加熱市場からはじめない限り)長期的には株式の見かけ上のリスクは消滅し、収益率は確実に上昇する。
短期における最大のリスクは、たまたま株式市場が低迷しているときに、投資家が資金の必要上株式を売却しなければならない事態が生じることである。これを避けるためには
ただしい運用方針を定めることが必要である。

4、 効率的ポートフォリオ
回避可能な意図せざるリスクを排除し、意図したマーケットリスクの水準で期待収益を極大化するようなポートフォリオを作成することが、効率的ポートフォリオといえる。
効率的ポートフォリオとは、同じリスクを持つあらゆるポートフォリオの中で、リスクを最小にとどめるものである。
債券を例に挙げれば、個々の債券のリスクは分散させることによって本質的には排除できる。その信用度が中レベルよりも低い債券は、デフォルトによる損失を埋めた後も、高い信用度のものに比べて収益率が高くなる。したがって、運用機関はそうした信用度が中レベルの債券に集中することによってリスク調整後の収益率を増加させることができる。
だが、想定投資時間がみじかければ、低信用度の債券や、高いリスクを負うべきではないだろう。長ければ、それも10年、20年ならば、高いリスクをとっても安定的に高い収益率を得ることが出来る。
よって投資時間に対してもっとも適切なリスクをとることが効率的ポートフォリオといえる。

5、運用基本方針
運用機関と投資家の双方とも、長期間にわたる決意を守り抜こうとするときには助けが必要である。つまり、彼らが短期のデータに惑わされないためである。市場が好調なときの強気の人々や、市場低迷時の悲観論者にとっては、一刻を争うと思われるような場面でも、浅はかな行動を取らないようにするわけだ。運用基本方針によって、パニックを起こすことを防ぐことができる。
まず大事な点は
1、 どこまでマーケットリスクを引き受けられるか
2、 市場が変化したとき、そのリスク水準を維持すべきか、或いは変更すべきか
3、 個々の株式ないし株式グループのリスクを引き受けるべきかどうか。そのリスクをとったときに、追加的収益率の期待水準はどのくらいか

5、 生涯を通じた投資プランを立てよう
20世紀はじめに100ドル投資していたら現在までに73万ドルになる。
そして過去95年間の資産増加のうち、直近20年分は大部分を占め、64万ドルを締める。だが、資産増加のうち、インフレによる水ぶくれは大部分を占める。実質資産増加額は4万ドル程度にしかならない。インフレは恐ろしいほど購買力を破壊する。
1、 インフレを考慮した上で、引退後の適切な生活水準を確実に維持できるか。
2、 不意の支出 特に老齢木のものに十分な備えがあるか。人が一生において使う医療費の8割は、人生の最後の6ヶ月に支出されるという。これだけの準備はあるか。
3、 遺産として用意する額は相続人にたいして、自分の意図や計画に見合っているか。

マーケットに勝つ必要はなく、また個人投資家が機関投資家に勝つ必要もない。
自分自身にもっとも適切な投資目的を立てることが何よりも大事である。