特高警察執務心得は県知事名で作られている通り、各県毎に作られている模様だ。
(別の県のものもあり、ほぼ内容は同じだが微妙に文言が違う)
条項のほぼ大半が左翼団体と朝鮮人に対する監視と注意点に割かれている。
現代の感覚からすると異常な監視、というより弾圧といってもいいかもしれない。

文言中でてくる「警察部」は都道府県警察のこと。

特高警察を継承した今の公安警察もそうだが、公安警察と刑事警察やその他の警察とは明確に区別されていて、
警察署長ですら公安警察が何をしているかは分からないらしい。

なお、原著が不鮮明なため、読めない字は○で表し、()で推測される文字を入力した。
また、原文はカタカナだがひらがなで入力し、適宜句読点をうった。



特別高等警察執務心得

内訓特高秘発第四八○号
            警察署
特別高等警察執務心得別冊の通相定め昭和十四年十二月一日より之を施行す
右内訓す

 昭和十四年十一月三十日

           長野県知事 富田 健治
附則
左の内訓及び内示は之を廃止す
(以下略)

特別高等警察執務心得




第一章 総則

第一条 特別高等警察(以下特高警察と称す)は国家存立の根本を破壊し若し社会の安寧秩序を攪乱せむとするが如き各種社会運動を防止鎮圧するを以て主たる任務とす
社会運動にして合法穏健なるものは固より之を抑圧すへきに非ずと雖も苟も其の目的若は手段にして国法を干犯し又は奇矯過激に亘るものに対しては取締を加ふへきものとす

第二条 各種社会運動に対しては非合法のものは勿論、合法のものと雖も常に周匝綿密なる視察を加へ運動の因を来る所以と其の実情とを明にし且つ絶えず其の動向を注意し苟も不法不軌の挙措に出づるの余地なからしむべし

第三条 各種事件の取締に当たりては事の真相を究明し寛に流れず厳に失せず適切妥当の方法を講ずるに細心の注意を払ひ一旦其の執行に当たりては苟も遅疑逡巡するが如きことなく毅然として之を断行する処あるを要す

第四条 視察に当りては取締を要すべき人物又は団体の認定に過誤なきを期し取締を要すべきものを警察視線外に逸せざるに努むると共に其の必要なきものに無用の視察を加ふるが如きことなきやう留意すべし
視察は成るべく内偵の方法に依り其の徹底を期すべし

第五条 視察を行ふが為業務を妨げ或は無用に反感を挑発し却て思想を悪化せしむるが如きなきやう注意すべし

第六条 特高警察に従事する者は常に国体の本義に関し確固不抜の信念を抱持して其の任に当ると共に事に臨みては率先躬を挺して公に奉ずるの覚悟をあるを要す

第七条 特高警察に従事する者は平素より社会運動全般の情勢及関係法令に通暁するに努め事に当りては正確なる判断と適切なる措置を為すに誤りなきを期すべし
特高事務員は勿論一般警察官に対しても講習会の開催其の他の方法に依り常に必要なる教養訓練を為すべし

第八条 特高警察に従事する者は機密の保持に付格別の注意を為すべし
視察内偵に当りては其の意図を相手方に察知せられ又は不用意の間に警察上の機密を口外するが如きことなきやう注意すべし

第九条 前条第二項に関しては他署他庁府県等より手配照会ありたる場合特に注意すべし

第十条 特高警察は其の性質上共同一体となり統制ある活動を為すを必要とするを以て常に警察部との連絡に留意するは勿論各警察署相互間に於て緊密なる連絡共助を為すに努むべし
検察当局其他関係官署との間にも緊密なる連絡を保持するに努むべし

第十一条 各種事件の検挙取締を為さむとするときは緊急其の他已むを得ざる場合の外、事前に申報指揮を受くべし

第十二条 他署又は他庁府県管下に於て捜査を為す必要ある場合は事由を具して予め申報指揮を受け共助を求むるに遺○(一字不明 失?)なからしむべし

第十三条 他署管内に関係ある事項は勿論特異の事項にして取締の参考となるべきものは相互通報して状勢熟知に努むべし但し厳秘を要する事項、非合法関係事項に就ては一応指揮を受くべし
注意を要すべき人物にして他署又は他庁府県に立廻りたるときは又は他署又は他庁府県にて捜査中と目せらるる人物を発見又は検挙したるときは速報すべし

第十四条 申通報は内容の要点を逸せざる様留意すべし申通報は正確を要するは勿論なるも時宣を失するときは其の価値を喪失するを以て特に之が送達迅速を期するは勿論状勢の一時に纏り難きものは順次追報完全を期すべし

第十五条 申通報は本執務心得若は別に定めたる場合の外警察以外の官庁に対して之を為さざる様留意すべし

第十六条 警察関係庁以外に通報を為す場合に於ては警察機密に関する用語(例えば特別要視察人)を用ひざるやふ留意すべし

第十七条 申通報文書は総て二重封筒とし厳緘の上其の封皮に「特親展」と明記すべし

第十八条 申通報文書は文字及び文書を明瞭簡潔にし本文の前に其の要旨を摘記すべし

第十九条 申通報文書は其の冒頭に申通報先各官庁名を列記すべし同一事件の申通報にして数回に亘るものあるときは毎報毎に前報の日付番号の外第何報なるかを記入し前後の関係を明にすべし

第二十条 警察官庁以外の官庁よりの照会文書に対しては回答前一応稟伺の上措置せらるべし

第二十一条 特に極秘を要する事項に付ては一応電話其の他の方法に依り警察部と打合せたる上申報すべし

第二十二条 社会運動に関する印刷物にして特高警察上注意を要すべきもの発見したるときは現品(現品なきときは成るべく 写)添付の上申報すべし別に行政処分稟議の為進達したる場合と雖も亦同じ

第二十三条 特に定めたる様式に依る申通報文書にして警察署名を付したる ものは別に進達書を添付するに及ばず

第二十四条 電信に依り申通報を為す場合は必要に応じ暗号を使用し又略号の定めるものは之を使用すべし

第二十五条 電話に依る申通報は必ず官署の当該事務責任者若は相当責任者に対して之を為し用語を明瞭簡潔にし其の要点を失せざるやう留意すべし




第ニ章 視察取締
第一節 各種社会運動

第二十六条 各種の社会運動に関し団体を組織するものありたるときは之が組織の動機、経過、主なる構成人物、団体の目的主義、綱領、実勢力他団体との関係其の他各種の所要事項を速に調査報告し充分其の実態を審にすると共に爾後の推移に付不断の注意を為すべし

 団体の日常行動、指導精神の推移、指導者の動静に付ては特に周密なる注意を払い矯激なる主張行動に趨るが如き場合には厳重なる取締を加ふべし
 思想問題、社会問題其の他の研究等に関し団体を組織するものありたるときは前二項に準じ之が視察取締を為すべし

第二十七条 団体に対する視察に関しては特に裏面の主張行動、背後の人物、資金の出所、団体内部に於て潜在的勢力ある者等の内査に意を用ふべし

第二十八条 各種団体の機関紙、指令其の他の重要文書等は努めて之を入手し取締の参考に資すると共に進達し関係警察署に送付すべし
 集会他衆運動にして重要なるもの又は会館集会場其の他施設にして特異なるもの等取締上参考となるべきものは成るべく之を撮影進達すると共に特別要視察人視察内規第三十二条に準じ整理保存すべし

第二十九条 学生運動の視察取締に当りては特に学校当局との連絡を緊密にすべし

第三十条 過激なる社会運動に付ては常に其の全国的情勢殊にに各団体の中央部の状勢を知悉し置くに努め管内に於ける各種の事情を照合し此種運動の潜入する虞ある方面に対し特に厳密なる警戒を加ふべし
 常に管内に於ける尖鋭分子殊に中央方面との連絡に従事し易き人物の動静に注意し管内の各種此種運動の動向並中央方面の運動との関係を知悉し置くに努むべし

第三十一条 過激主義の宣伝煽動の為に発行配布する機関紙其の他の印刷物に対しては速に之を押収し現品添付申報し其の出所を探査する等適当の措置を講ずべし平素より管内印刷所活版所に対する視察を厳にし此種印刷物の発見に努むること共に其の記事に充分なる検討を遂げ視察取締上の参考となるべき事項を知るに努むべし

第三十二条 過激団体に加盟せざるも此種運動に資金物資宿所等各種の利便を提供し間接に之を援助せむとする者に対しては厳密なる視察取締を加ふべし

第三十三条 過激なる社会運動は検挙取締を受くる度毎に益其の方法巧緻となり絶えず新しき戦略戦術を案出して執拗なる宣伝煽動を為すを以て平素より之が対策を講究し置くべし

第三十四条 特高警察関係事件の端緒を得たるときは速に申報指揮を受くべし

第三十五条 特高警察関係の犯罪検挙に付ては左記諸点に留意し検挙をして最も効果的にならしむるに努むべし      

 一、事件の内容並検挙の状況等新聞紙其の他外部に洩れざる様注意すること。
 ニ、検挙並取調従事員の人選分擔及び其の統制に付充分考慮すること。
 三、検挙予定者の所在を予め確知し置くこと。
 検挙に着手したるときは即時其の概要を申報し爾後其の進展状況に付随時申報すべし

第三十六条 特高警察関係事件に付検束又は拘留せむとするときは已むを得ざる場合の外其の状況速報し指揮を受くべし
 前項に依り検束又は拘留したる場合は第一号様式に依り報告し状況は引続き詳報すべし

第三十七条 共産主義運動の視察内偵に当たりては特に左の各項に注意すべし
 一、日本共産党其の他の地価潜行的運動に対して裏面内偵に主力を注ぎ其の中心分子の動静中央部との連絡関係出版物の早期入手等に依り組織の全貌把握に努むること
 ニ、合法を擬装して団体を組織するものあるを以て単に表面に現はれたる綱領規約のみに依ることなく組織の経緯中心人物の思想傾向、他団体特に極左団体との関係、国際連絡の有無等を究明すると共に発行文書の内容を仔細に検討し本来の指導精神並びに実体を明にすること
 三、既存の合法団体を利用して策動するものあるを以て左翼団体は勿論其の他広く各種団体に付き其の動向の推移に注意すること。

第三十九条 共産主義思想抱持者の発見に努むると共に非転向者は勿論擬装転向の疑ある者に付ては悉く之を視察圏内に置き其の動静に注意すべし

第四十条 共産主義運動に関し露国其の他の海外方面との連絡を為さむとするものに対しては左記の通牒の趣旨に依り視察取締を為すべし
 一、過激思想宣伝取締に関する件(大正十四年六月十六日 内訓特高秘収第一一、七五一号)
 ニ、露西亜関係邦人主義者等の取締に関する件(大正十四年十二月十一日 特高秘収第ニ四、五四三号)

第四十一条 所謂国家主義運動者中には動もすれば社会組織の急激なる変革を企図して直接行動に訴へ若は之を煽動せむとするものあるを以て此種運動に対しては常に周密なる視察を遂げ斯の如き挙措に出づるの余地なからしむる様厳重なる取締を加ふべし

第四十二条 国家主義団体に対しては特に其の急進的人物の先行的活動を為すもの背後の人物左翼分子にして転向を擬装して団体に潜入せる者等を平素より審にし之等の者の動静に付ては常に周密なる視察を遂げ其の旅行及び転住等にも細心の注意を払ふべし

第四十三条 国家主義団体の指導者等の側近人物或は一時寄寓者等に付ては仮令団体所属員に非ずと雖も其の動静に不断の注意を払ふべし

第四十四条 国家主義運動の活動分子の交際関係通信連絡等には特に充分なる内偵を遂くべし

第四十五条 直接行動の動機となる虞ある過激の言論並に流言飛語に注意し之が取締を為すべし

第四十六条 国家主義運動に関する所謂不穏文書に対しては極力之が入手に努むると同時に其の出所執筆者領布先等の探査に努むべし
 前項の不穏文書に対しては第三十一条に準じ措置すべし

第四十七条 直接行動等に関しては流言飛語の類と雖も細心の注意を払ひ之が計画の早期探知に努むべし

第四十八条 時事問題にして国家主義運動者の策動する虞ありと認めらるるものに付ては予め之に留意し申報其の他取締上機宣を失せざるやう努むべし

第四十九条 国家主義運動に関する不穏策動の聞込並に要注意人物の行動等は事大小なく速報すると共に機密の保持に付格別の注意を払ふべし

第五十条 国家主義運動者にして貴顕高官を訪問し或は身辺に追随するものあるときは其の身元目的を内定し不穏の行動に出づる虞ある者に対しては厳重取締をなすべし

第五十一条 国家主義運動の美名に匿れて暴行脅迫、詐欺恐喝等に依り不正の利益を得若は売名を図らむとする者又は之等の団体に対しては厳重なる取締を為すべし

第五十二条 私塾教化団体、修養団体等の形態に於て結合するものと雖も過激なる社会変革の目的を蔵するものと認めらるるものに付ては充分其の真相を内偵し置くべし

第五十三条 水平運動の視察取締に関しては其の言語態度等により事端醸すことなきやう注意すべし

第五十四条 水平運動は直接行動又は大衆運動に陥り易く且左翼運動にりようせらるること多きを以て厳重視察取締せらるべし
 前項取締に当たりては徒に弾圧することなく同胞融和の実を挙ぐる様指導すべし

第五十五条 差別事件発生したるときは第六十四号様式に依り速報すると共に不穏過激の策動又は過当なる要求等に出でしめざるやう厳重取締を為すべし
 事件解決したるときは其の状況詳細申報すべし

第五十六条 宗教団体中(類似宗教を含む)には動もすれば其の教義教理に反国体的思想を内包し巧に神示天啓等に仮託して不敬不逞の妄説を宣布せむとするものあるを以て此種容疑の教集団に対しては常に周密なる視察内偵を遂げ其の教説の思想的根底を把握するに努むると共に取締及検挙の時機方法等を誤ることなきを期すべし

第五十七条 宗教運動にして左記各号の一に該当する事項を探知する場合は厳密なる内偵を遂げ状況速報指揮を受くべし
 一、宗教々師信者等にして其の信仰対象の絶対性を誇示し又は教祖祖師等の尊厳化を図らむが為若は教義解釈を歪曲して不敬不穏なる言動を為すものあるとき
 ニ、奇矯虚妄の教説を流布して人心を証惑するものあるとき
 三、信者の信仰心理を利用して財物搾取、風俗壊乱若は医療妨害等ありたるとき
 四、献金寄付金合力喜捨を強制するが如き行為ありたるとき

第五十八条 宗教団体宗教教師信者等にして左の各号に該当する場合に於ては其の旨速報すると共に爾後随時之が状況を申報すべし
 一、政治、教育其の他注目すべき運動を為さんとするとき
 ニ、各種紛争議を惹起せるとき

第五十九条 類似宗教団体の組織ありたるときは類似宗教団体名簿(第六十五号様式)を作成し各其の謄本に教則規約を添付申報すべし

第六十条 公認宗教に於て新に教会所(宣教所、講社等)を設置せる場合は教会所名簿(第六十六号様式)を調製し謄本を申報すべし

第六十一条 宗教教師又は信者間の修養相互連絡等の目的を持て団体を結成せる場合は宗教教師信者団体名簿(第六十七号様式)を作成し謄本を申報すべし

第六十二条 前三条の名簿記載事項に異動を生じたる場合は其の都度異動事項整理の上申報すべし




第二節 各種争議

第六十三条 労働争議、小作争議、借家借地争議、電灯争議等各種争議にして純然たる経済的紛議に過ぎさるものに対しては濫に干渉すべきに非ずと雖も之が推移に付ては不断の注意を払ひ苟も其の手段方法にして過激に亘り治安を紊るが如きことなからしむるやう適切なる取締を為すべし
 争議の性質経済的紛議の範囲を逸脱し過激思想の宣伝革命運動の訓練其の他不順不穏の目的達成の為にするものなるに於ては之に対し厳重なる警戒取締を加ふべし

第六十四条 争議発生に際し取締上過誤なきを期する為平素より農村工場鉱山等の状況、地主、工場主、鉱山主と小作人、労働者との関係、小作人、労働者の異嚮並に動静、農民組合、労働組合の状況、要注意人物の出入又は動静等に付十分知悉し置くに努むべし

第六十五条 争議の取締に付ては左記事項に注意すべし
 一、当事者双方に対し常に公正なる態度を保持し濫に争議の渦中に捲き込まれざるやう注意するは勿論殊更に厳重なる取締を加へ却て争議を激化せしむるが如きなきやう注意すること
 ニ、争議団本部の組織並に活動状況等の視察内偵を厳密にし殊に秘密移動本部等の有無に注意し諸種の不穏計画実行の予地なからしむるに努むること
 三、殊更に争議を誘発、煽動激化し若は竊に外部にありて争議を指導するものなきやに注意し殊に極左分子の介入に対し最も厳重なる警戒取締を加ふること
 四、所謂暴力団等を雇入れ若は自警団等を組織して暴力行為に訴へむとするが如き場合にありては特に厳重なる取締を加へること
 五、他警察署管内に関係あり若は波及する虞ある争議に付ては関係各警察署との連携を緊密にすること
 六、公益事業に関する争議に対しては其の事業の性質に鑑み取締上特に慎重なる考慮を加ふること
 七、争議に関し仮処分等の強制執行あるときは裁判所又は執達吏等との連絡を密にすること

第六十六条 争議に関しては所謂「ゼネスト」を計画し若は之に導かんとする虞あるものに対しては厳密警戒し之が事前防止に努むべし

第六十七条 各種争議に関し新奇なる戦術又は社会的影響尠からざる戦術を用ゆるものありたる場合は其の状況を詳細に申報すべし




第三節 集会及び多衆運動

第六十八条 集会又は多衆運動の計画は成るべく早期に之を探知し公安を害する虞ありと認むときは事前に阻止すべし

第六十九条 屋外に於ける国民大会、民衆大会、市民大会、労働者大会、農民大会等の集会並多衆運動は従来慣行として許容せられ居るものを除き原則として阻止すべきものとす
 特に公安を害する虞なしと認め之を許容せむとするときは予め指揮を受くべし

第七十条 集会又は多集運動に対する取締に付ては特に左記事項に注意すべし
 一、標語等は事前に内閲し不穏当のものは趣旨撤回せしむること
 ニ、責任者を定めしめ統制を失はしめざるやうにすること
 三、所謂警備員等にして警察官に対抗せむとするが如き意図あるものは之を設けしめざること
 四、必要と認むる場合は入場者又は参加者の身体検査を為すこと
 五、場内又は途中に於て宣伝ビラ等の撤布を為さしめざること
 六、検束等を為す場合に於ては混乱せしめざるやう注意すること
 七、主催者又は参加者に於て殊更に混乱を生ぜしめ解散に導かむとする計画なきやに留意すること
 八、解散を命じ又は散会する場合には予め警察官の配置等に注意し示威運動等の不穏の行動に移らしめざるやう厳重警戒すること

第七十一条 集会に於て附議朗読配布せらるべき宣伝綱領規約、議案、決議「メッセージ」等は事前に提出せしめて内閲し不穏当のものは諭旨の上訂正又は撤回せしむべし

第七十二条 集会の臨監は成るべく社会運動に通暁し特高事務に経験ある者をして之に当たらしむべし
 講談論議に対しては成るべく速記付すべし

第七十三条 屋外集会又は多衆運動に対しては其の場所時間順路参加者の服装携帯品、隊伍の編成、楽隊旗織手旗等に付必要に依り制限禁止又は変更を加ふべし

第七十四条 遠足会、慰安会神社参拝、共同植付、共同刈取、抗議陳情其の他名義の如何を問わず事実上屋外集会又は多衆運動と認めらるるものに対しては前数条に依り取締を為すべし

第七十五条 非政事業会に於て政事に渉るべき事項を論議する虞あるものに対しては正規の届出を為さしめ政事集会として取締を為すべし

第七十六条 思想団体、労働団体、農民団体、各種学校の学生生徒等にして社会問題に関する講習会講演会又は研究会座談会等を開催する場合に於ては必要に依り前数条に順次取締を為すべし




第四節 朝鮮人及び台湾人

第七十七条 新に管内に転入したる朝鮮人(台湾人)に対しては朝鮮人名簿(六十八号様式)正副二通を作成し正本は警察署に副本は当該受持区巡査駐在所及派出所に備付くべし
 前項の名簿記載事項に異動をしょうじたるときは其の都度整理すべし

第七十八条 在住朝鮮人にして県内他の警察署管内に転出したるときは転出地警察署長に当該名簿の製本を移送し副本は削除の上保存すべし
 県内 地の警察署管内より転入したる朝鮮人(台湾人)にして名簿の移送なきものに対しては当該名簿の送付を要求し未だ作成なきものに付ては其の署に於て作成すべし

第七十九条 朝鮮人(台湾人)関係の紛議乃至犯罪等発生したるときは其の重大又は特異なるものに付ては速報すると共に其の他のものと併せ第六十九号様式に依り申報sべし

第八十条 在住朝鮮人の密集地帯、稼動場所、飯場等に対しては絶えず厳密なる視察を遂げ容疑人物の発見に努むべし

第八十一条 外地若は海外より渡来し又は他庁府県より転入せる朝鮮人(台湾人)に対しては爆発物変装○(武?)器拳銃短銃薬品其の他危険のある虞ある物件の所持隠匿に対し特に厳重なる検索を行ひ之が発見に努むべし
 前項の危険物を発見したるときは正規の手続を経て所持するものなりや否やを調査すると共に仮令朝鮮(台湾)内に於て正規の許可を受け居るものなりと雖も内地に於ける之が携帯に付ては許可せざる方針を執り事情已む得ざるものは申報指揮を受くべし

第八十二条 不正渡航の朝鮮人を発見したる際は渡航の目的、方法、所持金、国語の解否、行先地、其の他必要事項を調査し速に申報指揮を受くべし
 前項取扱に際しては容疑不逞の人物に非ざるや特に厳重なる取調を要するは勿論なるも容疑の点なき限り単に不正渡航者なるの故を以て濫に不当苛酷の取扱を為すが如きことなき様注意すべし

第八十三条 海外其の他より不穏不軌の行動を目的として内地に潜入する不逞人物に対しては必要に応じ移動警察の実施見張検索の励行其の他時々接客業者に対する臨検の執行等有効適切なる手段を講じて厳重なる査察警戒を行ふの外平素管内在住並来往朝鮮人の動静に十分留意する等之が発見逮捕に付最善の努力を払ふべし

第八十四条 外地並び海外に在る朝鮮人(台湾人)主義者と内地在住同志との連絡提携に対しては常に周密なる注意を払ひ特に其の通信来往に付厳重なる視察内偵を為すべし

第八十五条 管内企業家にして鮮内に於て朝鮮人労働者の募集を為さむとする者は昭和十四年八月二十一日甲特高秘収第一○、九ニ八号朝鮮人労働者内地移住並取締に関する件内示に依り取扱ふべし

第八十六条 在住朝鮮人(台湾人)にして各種公の議員の選挙に立候補したる者あるときは第百七条第一項五号に準じ速に調査申報すべし
 在住朝鮮人(台湾人)たる各種議員等の言動にして重要なるものは時々申報すべし

第八十七条 中等学校程度以上の官公私立各種学校に在学中の朝鮮人(台湾人)に付ては毎年四月末現在を以て学生名簿(第七十号様式)を作成進達すべし
 名簿に異動を生じたるときは其の都度整理し申報すべし

第八十八条 朝鮮人台湾人たる学生及び宗教家の動静に付ては十分注意し特異の言動は時々申報すべし

第八十九条 内鮮融和の趣旨に悖るが如き団体の組織は事前に之を成立せしめざるやう適宜措置を講ずると共に其の都度申報すべし

第九十条 内地人関係の各種団体内に朝鮮人(台湾人)の加盟社ある場合には其の加盟員○(数?)主なる加盟人物団体内に於ける加盟員の地位並動静其の団体自身の朝鮮(台湾)問題に関する策動の状況其他所有事項を調査し必要なる取締を加ふべし

第九条一条 管内居住朝鮮人にして一時帰鮮せむとするに際し之が証明書の下付申請ありたる場合は左記各号の調査を遂げ下付支障なしと認めたる者に限り稟申の上二ヶ月以内の期間を定め第七十一号様式の一時帰鮮証明書を下付すべし
一、帰来後帰鮮前の雇用者の下に於て同一職業に従事することを宣誓せる証明書下付願を雇用主連署にて提出しありや
ニ、本人の最近撮影せる写真(縦概ね六厘横概ね四厘半身脱帽)二枚を添付しありや
三、本人本籍住所職業氏名生年月日及び帰鮮目的等は相違なきや
四、其の他証明書を不正使用するものに非ざるや

第九十二条 一時帰鮮者所在不明其の他事由に依り証明書末返納の場合は事情を申報すべし

第九十三条 一時帰鮮証明書を下付したる場合は其の月分を翌月五日迄に第七十二号様式に依り申報すべし

第九十四条 朝鮮人労働者の内地渡航照会に対しては
 朝鮮人内地渡航制限に関する件(昭和十三年八月五日甲特高秘収第九五六号)及び朝鮮人労働者の内地渡航取締に関する件(昭和十四年二月六日甲特高秘収一一五○号)に依り取扱ひ回答書を進達指揮を受くべし




第三章 各種報告

(以下略)





関連文献
(戦前)警察操典 抜粋
http://www4.atwiki.jp/tomoniaruyashiro/pages/42.html