第四節 情報の普及(報告、通報)及諜報機関相互の連絡

   第四節 情報の普及(報告、通報)及諜報機関相互の連絡

第百四十一 凡オヨそ情報は時期を失せす所要者に到達するにあらされは無効なること既述の如し従て蒐集シュウシュウ査覈せられたる情報は適時普及せられて始めて活用の域に入るものなることを銘記すへし

第百四十二 情報は其性質に依り緊急を要するの度合に自ら差等あり故に各級勤務者は能ヨく之を判別し通信連絡機関の運用を巧に調節し重要なるものの時宜に適して上級機関の手に入る如く終始考慮を廻らすを要す重要なる情報を詳報せん為時機を失する虞あるときは先つ要旨を報告し次て詳報の処置を取ること必要なり

第百四十三 重要なる情報は其系統を追ふて之を上級機関に報告すると共に同一系統内或は所要に應し系統外の諜報機関に通報すへきものとす
 特に緊急を要する情報に在りては同時に直接中枢機関にも報告すへきことあるに注意すへし

第百四十四 情報は之を入手の都度所要機関に伝達すへきものなりと雖イエドモ連続して発生する同種の事項にして急を要せさるものは某時期を画し一括綜合して報告、通報するを可とす

第百四十五 諜報勤務者は其直接使用せる通信員及諜者等の配置、派遣竝ナラビニ之に与へたる任務等に関し上級指導機関に報告すると共に要すれは隣接機関に通報すへきものとす

第百四十六 諜報勤務指導機関は要すれは諜報関係報告の形式、期日を規正する為報告例規を作製して準拠を与へ以て業務の簡捷を図るものとす

第百四十七 上級機関は其得たる情報に関し適時之を下級機関に通報し?ナオ特に求むる所を明にし以て其勤務に對し常に新なる準拠を与へさるへからす斯の如くして上下互に相倚り相助け諜報勤務の実施愈々イヨイヨ的正且カツ円滑なるを得へし

第百四十八 外国に勤務する諜報機関は我に不利を来さるる範囲に於て駐箚チュウサツ国官憲竝ナラビニ列国諜報機関に對し我か獲得せる情報を頒つときは其交誼コウギに親交の度を加へ之か交換として時々有利なる資料を入手するの便をも得へく其勤務遂行に利すること尠スクナからす

第百四十九 重要なる情報は為し得れは数通を作り数種の方法に依りて之を送達すへし
 取得せし情報資料にして諸種の関係上他に移送し得さるものは其事象の正確なる所在を所要の機関に通報し同機関自身の活動に依り該事象を明ならしむるの資料を与ふるものとす
 其性質上自ら価値を判定し得さる資料は勤務系続の如何を問はす直ちに之を関係者に通報することを怠るへからす

第百五十 報告の記述は之を簡潔明瞭ならしめ受報者をして快感を以て閲読せしむる如くするの著意を要す単に諜者より得たるものを其偶玉石混淆羅列して記述するか如きは適当ならす須スベカらく取捨を適切にして簡明ならしむへし又情況を明瞭ならしむる為に屡々シバシバ要図を用ふるの適当なるに著意するを要す又報告の標題の如きも事項の内容を総括的に標示する如き字句を選択すへし

第百五十一 電報報告は緊要なるものに限り且其字句を簡潔にし以て通信の敏活と経費の節約とを図るを要す而して電報報告は所要に應し直ちに筆記報告に依りて其不備を補ふことを怠るへからす然れとも之か為我電信暗号解読の端緒を与ふる虞オソレあるに注意し適宜の豫防手段を講すること最も切要なり特に戦時に於て然りとす

第百五十二 通信連絡の手段に関しては前記第三章第二節二の部所載事項を適用すへし其他報告、通報の一般原則は諜報勤務に於ても亦之を適用すへきものとす

第百五十三 各級諜報機関上下左右の連絡は何時之を断絶せらるるやも計り難し故に相互に豫アラカジめ此場合に應すへき処置を考慮し所要の準備を整へ置くこと必要なり之か為各種通信手段を複用し得る如く研究を尽し置くを要す
最終更新:2017年11月23日 17:45