90式艦対艦誘導弾

きゅうまるしきかんたいかんゆうどうだん

日本国海上自衛隊の艦対艦ミサイル。実在する。

90式艦対艦誘導弾(SSM-1B)発射筒
※出典:ウィキメディア・コモンズ(https://commons.wikimedia.org/wiki/File:SSM-1B_missile_canister(right)_mounted_on_JS_Fuyuzuki(DD-118)_right_front_view_at_JMSDF_Maizuru_Naval_Base_July_27,_2014.jpg?uselang=ja
諸元
全長 5,080mm(ブースター付)
3,980mm(本体のみ)
全幅 1,190mm
直径 349mm
重量 660.0kg(ブースター付)
550.0kg(本体のみ)
動力 固体燃料ロケットブースター+
TJM2ターボジェットエンジン
中間誘導 慣性誘導
終末誘導 アクティブ・レーダー誘導
性能
最大速度 1,150km/h(M0.9)
射程距離 150km(推定)

概要


90式艦対艦誘導弾(SSM-1B)は防衛省技術研究本部と三菱重工により開発されたアクティブ・レーダー誘導艦対艦ミサイルである。
RGM-84 ハープーンの後継として1986年から開発に着手し、1990年に採用された。開発経費は並行開発された91式空対艦誘導弾(ASM-1C)と合わせて約57億円。

むらさめ型からあさひ型までの汎用護衛艦とあたご型からまや型1番艦までのミサイル護衛艦とはやぶさ型ミサイル艇に搭載されている。
ちなみにヘリコプター搭載護衛艦(ひゅうが型いずも型)には艦対艦ミサイル自体搭載されていない。

特徴


モジュール構造を活かした80式空対艦誘導弾(ASM-1)ファミリーの3番手で、先行して開発された88式地対艦誘導弾(SSM-1)の水上艦艇搭載型である。

88式地対艦誘導弾 ※出典:陸上自衛隊ホームページ(http://www.mod.go.jp/gsdf/fan/photo/equipment/index.html

誘導弾本体はSSM-1と余り変わりなく、ASM-1とSSM-1と同様のアクティブ・レーダー誘導システムとSSM-1や並行開発されたASM-1Cと同じTJM2ターボジェットエンジンを装備している。

キャニスターもハープーンやSSM-1と同様の円筒型だが、海上での運用が基本なのでSSM-1最大の特徴である地形回避飛行能力は省かれている。

終末誘導が対地攻撃向きではないアクティブ・レーダー誘導であり、中間誘導も慣性誘導のみで、Block2以降のハープーンの様にGPS誘導を併用していないため、基本的に対地攻撃を行うことは出来ない(広大な平地か海に面した土地に巨大な建築物が忽然と建っていれば、アクティブ・レーダーで誘導できる可能性はある)。

弾頭重量は260kg。これはハープーンの約1.2倍、太平洋戦争中の20.3cm砲弾重量の約2倍に相当し、ドイツの28cm砲弾重量に迫るが、目標突入時の速度は砲弾の半分くらいである。
しかし炸薬量は40cmクラスの主砲の通常弾を上回る。グ帝海軍が被弾時にどの戦艦の主砲よりも爆発が大きいと表現しているのはこのためと思われる。
突入すると炸薬による爆発に加え、搭載燃料による摂氏2,000度以上の焼夷効果がもたらされる。そのため魚雷や爆雷を搭載している重巡以下の装甲艦や空母への効果は高いと思われる。

SSM-1Bの最大の特徴は、ハープーンと発射機架台や発射管制システムに共用性があることで、SSM-1Bとハープーンを混載して運用することも可能である。
とは言っても同じ発射機架台にSSM-1Bとハープーンを混載するのは無理で、通常2基搭載している4連装発射機架台の1基にSSM-1B、もう1基にハープーンを搭載するのであれば可能。
また、ハープーンの射程内の目標に対してはハープーン用のシステムで管制されるが、ハープーンの射程外の目標に対してはSSM-1B用のシステムで管制される。

後継型・派生型の開発


SSM-1の後継として開発された「12式地対艦誘導弾」を原型として、SSM-1B後継の新艦対艦誘導弾が2013年から開発開始され、2017年に「17式艦対艦誘導弾(SSM-2)」として採用されている。

このSSM-2を原型として、2017年から「12式地対艦誘導弾改」と「哨戒機用新空対艦誘導弾」がそれぞれ開発開始されたが、前者は2021年度から新型スタンド・オフ・ミサイル「12式地対艦誘導弾能力向上型」の開発に切り替えられている。
後者については2022年度に開発が完了し、令和5年度予算から調達が開始されている。

作中での活躍


初の実戦投入はエストシラント沖大海戦
第2・第4護衛隊群からパーパルディア皇国海軍第3艦隊竜母艦隊に対して25発のSSM-1Bを発射し、竜母20隻と護衛の戦列艦5隻を撃沈した他、海戦後半に護衛艦「たかなみ」が3発のSSM-1Bを発射し、総司令官バルス、作戦参謀マータルを含む海軍主要幹部ごと海軍本部を爆砕している。

グラ・バルカス帝国艦隊によるマイカル攻撃時は、「かが」率いる第4護衛隊群がSSM-1Bによる飽和攻撃(30〜40発発射と推定)によりイシュタム本隊16隻(空母1、重巡洋艦3、巡洋艦1、駆逐艦8、補給艦3)全てを撃沈している。

転移からマイカル沖海戦までに射耗した艦対艦ミサイルは、1個護衛隊群の定数を超える。
ムー救援では更なる射耗が予想されるため、護衛艦の艦対艦ミサイル搭載定数を4連装発射機2機の計8発から、3倍にあたる24発への増強が進められている。ただし言及されたのは書籍4巻のワンシーンのみで、結局グラ・バルカス帝国戦では実用化されずクルセイリース編に突入した現在でも影も形も出てこないので白紙になった可能性が高い。
グラ・バルカス帝国の宣戦布告以降に増産が進められた艦対艦ミサイルはSSM-1Bだが、転移前から開発しているSSM-2に新世界の状況に対応した設計変更*1を施した新型対艦ミサイルへ徐々に更新されていくと思われる*2

なおグラ・バルカス帝国戦には間に合わなかったが、その後空中目標対応プログラムを導入したSSM-1Bが配備された様で、クルセイリース大聖王国戦において初登場、聖帝ガウザーこと空中戦艦パル・キマイラを撃沈(撃墜?)して初陣を飾っている。

随時加筆願います。

関連項目
兵器自衛隊日本国

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過去のコメント
  • 今後愚帝戦メインになるから対戦艦用に貫徹遅延信管(HEAT弾頭?)と飽和攻撃能力強化したり対パル・キマイラ用に3次元対応(空中目標)プログラムを施したりと忙し過ぎませんかね・・・・・ - AGM-88 (2018-05-16 00:02:27)
    • まぁ専門的な話で言えば、大和もどき長門もどき以外なら集中防御区画以外なら遠慮なく貫通できる(単純計算で50mm~100mm程度の貫徹力並びに、運動エネルギーと爆発時の衝撃波エネルギーは30cm砲をやや上回る)上に、大和もどき長門もどきも船体上構造物は主砲塔と司令塔の一部以外はすべて壊せるのでわざわざ専用弾頭作る意味は無いけどね。 何より大和もどき長門もどき相手に馬鹿正直に水上艦艇同士で殴り合う意味がない、航空機(大型爆弾に誘導装置が必要、単純計算で高度3000mからの精密誘導なら1000ポンドクラスの徹甲弾頭なら余裕でぶち抜ける)か潜水艦(89式魚雷なら船底のどこに当たってもほぼ1発で無力化)で事足りるし。 - 名無しさん (2018-07-21 16:21:26)
      • Mk.84にLJDAM付けて投下してもいいしな。高度によるけど、RHA換算で381mm貫通できるからどこに落としても大損害 - 名無しさん (2019-02-19 07:34:15)
      • 問題は撃沈には至らない、というところでしょうね。集中防御の特徴は防御しているところに致命部位を集めるということだから、逆にいえばそこ以外は致命傷とはなりにくい。戦略的に撃退で済ましていいのかは悩みどころ。 - 名無しさん (2019-02-26 21:57:31)
        • 上部構造物を粉砕して他の軍艦全滅させれば降伏するでしょ。あと魚雷で浸水させたり航空機で上から貫通すれば撃沈も可能 - 名無しさん (2019-05-02 16:02:27)
        • ↑↑二次大戦頃の集中防御って本当に重要な部分だけを側面や上面のみ装甲で囲う方式(大和型は例外)でそれ以外は構造鋼で装甲材に比べて同じ厚みで防弾性能は40~50%程度だからね? そんなところに弾頭形式と充填爆薬の種類は非公開だけど近しいミサイルの推定値で考えれば二次大戦中の1トン爆弾並みの威力を持ったものが船体内部に入って爆発して無事なわけがない。(大和型も艦首と艦尾に集中的に攻撃を受ければ浮力喪失で自沈しか選択肢がなくなる) - 名無しさん (2019-06-06 22:24:04)
        • ↑アンタ、ダメージコントロールって言う言葉しってるか?予備浮力と言う言葉もしってるか?非装甲部分を細分化して安易に浮力失わせない様にして、沈まない間に応急処置するために集中防御ってあるんだよ。まさか全体防御こそ至高とかって考えてないよな?発想がww1て止まってるじゃんかよ。 - 名無しさん (2019-06-29 16:25:03)
          • そんな事は知ってますよ? 問題は現代の対艦ミサイルの威力に対して区画配置・閉鎖がミサイルを想定していない・非装甲区画多い・装甲と装甲までの非装甲間隔が広すぎて二次大戦型の艦艇ではその部分から船体崩壊しかねないってだけですよ。(流石に戦艦は耐えるでしょうけど主要防御区画以外全てで浸水した場合、浮力自体は辛うじて艦舷が水面上を保つ程度で外洋での自立航行・戦闘行動は不可能でしょうから自沈しか選択肢はないと思いますが。 そもそも装甲が有効なら現代の艦艇も集中防御維持し装甲を配しますよね? 応急修理にしても人員の殆どが居る船体上構造物が殆ど原形をとどめない状態で修理なんぞ出来るんですかね?) - 名無しさん (2019-06-30 01:06:10)
        • 上部構造体がボロクソになっても軍艦は動くぞ、機関とボイラーさえ生きていればな。それに戦艦はバイタルパートの浮力だけでなんとか生き残れるように設計されている。だから利根艦長の黛大佐は「ザイドリッツの戦訓に基づき、艦の保全に努めよ」と言ったんだよ。何故ならザイドリッツは弾薬庫を密閉させて浮力を維持させて逃げ帰れたんだから。それと応急員は上部構造体だけに居る訳じゃ無いし、上部構造体だけを修理する訳でも無い。帰ればすむ話だよ。 - 名無しさん (2019-07-01 20:25:59)
        • ↑↑あなた今の対艦ミサイルは1t爆弾並みって言ってたひと?高性能爆薬で爆発力は1t並みかも知れないけど、それは爆発力だけで貫徹力が1t爆弾並みだと言う訳じゃない。戦艦を潰すには1t鋼徹爆弾が必要なのであって1t通常爆弾が必要なのではないよ。1t爆弾の爆発力で事足りるのならば、何故態々真珠湾で長門の40cm砲を改造した800kg鋼徹爆弾を使ったんだ?って話になるよ。 - 名無しさん (2019-07-01 20:29:56)
          • そもそも対艦ミサイルの弾頭は純粋な運動エネルギー弾頭ですが半徹甲能力を有しています信管は遅延衝撃信管と言われています(新しいモデルは対象に応じて着発・遅延をセレクトできるとさてます。)、その上で貫徹力はほぼすべてのミサイルでデータが非公開ですが古典的な計算式を用いると単純計算で80mm~100mm程度にはなります、バイタグラ・バルカス帝国艦は帝政時代の日本海軍艦に近い設定ですので大和型と長門型以外は終末誘導時のホップアップ機動(入射角度は70~80度)と最終加速分を考慮に入れると普通に多くの艦艇のバイタルパートを貫通しうると思われます、古いデータでも初期のハープンを用いた米軍の評価試験でも重巡洋艦の側舷バイタルパートを貫通してますし。 その上で船体内部で爆発するわけで・・・概ね近い兵器で記録が残ってるのはフリッツX辺りが近いかと思いますが概ねアレに近い損害を与えると思われます。 - 名無しさん (2019-07-05 20:46:26)
        • 米重巡洋艦の舷側装甲って大体76mmとかそこらじゃん。日本海軍の重巡洋艦の舷側装甲は105mm~125mmだよ。てか何で重巡洋艦の話になってんだろ?それに遅動式信管と言っても、装甲のない軍艦目当てだから、当時の最上、上甲板、中甲板、下甲板と連続して装甲を貼る形式だったら何処かで信管が作動して威力を軽減できるんじゃないの?当時はそう言う思想があったし。 - 名無しさん (2019-07-07 10:41:53)
        • 金剛型の甲板って上から32mm、25mm、19mm、121mm~83mmだから貫通できないじゃん。装甲が弱い弱いと馬鹿にされてる扶桑型だって52mm、99mmだし。それと上の人の話が気になって調べてみたけど、800kg通常弾って80mm装甲までしか貫通できないらしいよ。だから日本海軍は貫通力150mmの80番徹鋼爆弾を作ったらしい。 - 名無しさん (2019-07-07 10:56:53)
  • 「対地攻撃能力が無い」って書いてあるのに陸上の海軍本部攻撃してるって矛盾してない? - 名無しさん (2018-06-16 21:44:27)
    • 描写的に浜辺にあるから、真っ直ぐ飛べば当たるでしょ。対地攻撃できないのは障害物に当たるのが原因で、障害物が無ければ当たる - 名無しさん (2019-05-02 16:03:46)
  • 弾頭が鉄甲榴弾だと知らない割合多いんだよなぁ - 名無しさん (2018-06-17 09:43:15)
    • いや、「地形回避飛行能力は省かれており~」の部分でそう思われたのではないかな。沿岸施設だから問題なく使えたという説明で良いのでは。推測ですが。 - 名無しさん (2018-06-17 11:07:01)
  • 日本の対艦ミサイルは西側屈指のレベルですね。 - 名無しさん (2018-08-19 17:03:14)
  • 「護衛艦の対艦ミサイル搭載定数が、8発から24発への増強が進められている」? その出典どこに? - 名無しさん (2019-02-27 00:16:09)
    • 5感19ページ - 名無しさん (2019-02-27 00:22:13)
      • ありがとう。 - 名無しさん (2019-02-27 00:57:17)
  • 24発もつんだら世宗大王級みたいにトップヘビーにならんのかな - 名無しさん (2019-03-02 18:32:56)
    • 旧日本軍もそんな感じだったし、頭数の無い海軍はしゃーない。 - ハインフェッツ (2019-03-02 20:24:25)
      • 扶桑型とか吹雪型とかそう言えばそうだったな - 名無しさん (2019-03-03 07:36:31)
        • 組織的に充実度が今一つ、要求される任務に対して使える船の頭数が足りなすぎる。という問題があると、大体そうやって個艦の性能や継戦能力を重視していくの。これが逆だと生存性や居住性にも配慮したバランス型の艦艇を使うようになるし、それ以上に警備艇や船団護衛用の駆逐艦みたいな足回りの部分をサポートする補助戦力も充実するようになる。…その分防衛予算がどえらい事になるがな。 - ハインフェッツ (2019-03-03 19:02:07)
        • 扶桑と吹雪が攻撃一辺倒のヘビーですと?オライオン級、エリン級、グリッドレイ級を見てみるが宜しい、あれが当時世界の普通だよ。それに扶桑はトップヘビーじゃ無いし、吹雪は暁以下3型が日本ではヘビーの方であって、外国では安定している方だよ。 - 名無しさん (2019-07-01 20:33:54)
  • Web版の最新で、ようやくグ帝の海軍上層部にこいつの詳細が上げられたな。まだ半信半疑らしいが、事実だったらヤバいと言うか勝てないとまで思わされたな。 - 名無しさん (2019-03-16 21:16:54)
    • 事実どころか、同じようなモノを積んだF-2が事実上”超音速の水雷艇”として普通に外洋まで出張ってくるという悪夢なんですけどね。 - ハインフェッツ (2019-03-16 21:44:36)
  • 北欧の韋駄天曰く、『対艦ミサイル4発積める戦闘機は変態』ですよね(笑)まぁ、そっちは93式空対艦誘導弾ですが(シリーズという意味では同じか?)。 - 笠三和大 (2019-03-17 19:35:59)
  • すみません、作中見て疑問に思ったのですが敵がグ帝艦隊だとして水平線外の艦隊の中の戦艦や空母のみを狙い撃つことは出来るんでしょうか? - 名無しさん (2019-07-09 13:06:29)
    • 初期のハープーンでさえ大中小の目標識別能力があり敵情報を発射母体に送信する哨戒機(ヘリ含む)も敵艦の識別は可能、さらに対艦ミサイルには障害物の迂回能力も存在するから可能だと思うよ。 - 名無しさん (2019-07-09 13:42:55)
  • 後継の17式SSMは、どのあたりで登場してくるんでしょうね。 - ドリフ提督 (2020-05-30 12:12:28)
  • 対艦ミサイルとかいう現状日本側に被害がでない最大の理由よ。 - 名無しさん (2020-08-08 19:18:16)
    • 誘導性能もそうですが、敵の最大射程を遥かに上回り発射元の視認すらできないようなアウトレンジから一方的に叩けますからね - 名無しさん (2021-08-18 21:43:45)
  • 空中目標対応プログラムを導入の伏線がパル・キマイラ撃墜で無事回収されたね。 - 名無しさん (2023-04-30 14:13:32)

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〔最終更新日:2024年01月26日〕
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最終更新:2024年01月26日 19:57
添付ファイル

*1 空中戦艦パル・キマイラの登場後に開発が始まった空中目標対応プログラム等

*2 現在の傾斜式発射機架台での艦対艦ミサイル増強は護衛艦の甲板の状況から見てかなりの困難を伴う事が予想され、垂直発射可能なSSM-2で省スペース化を図る可能性がある