E-2C

いーつーしー

航空自衛隊が保有する早期警戒機(AEW)。実在する。

出典:航空自衛隊ホームページ (https://www.mod.go.jp/asdf/equipment/keikaiki/E-2C/index.html)

諸元
乗員 操縦士2名、機器操作員3名
全長 17.56m
全高 5.58m
翼幅 24.56m/8.94m(主翼折り畳み時)
翼面積 65.0㎡
空虚重量 17,265kg
最大離陸重量 24,721kg
動力 アリソン T56-A-425
ターボプロップエンジン
2基
出力 5,100馬力

性能
最大速度 626.0km/h(M0.51)
巡航速度 505.6km/h(M0.41)
航続距離 2,854km
実用上昇限度 11,280m
連続滞空時間 6.25時間

装備
アビオニクス AN/APS-145 レーダーシステム
AN/ALQ-217 電子戦支援装置


概要


E-2Cは、グラマン社(現ノースロップ・グラマン社)が開発した早期警戒機である。愛称はホークアイ。
国産機ではなく輸入機であり、航空自衛隊は本家本元のアメリカ海軍以外の採用国では最多数となる13機を導入している。

導入までの経緯


早期警戒機は「空飛ぶレーダーサイト」とも呼ばれ、早期警戒管制機と共に近代的な航空戦において要となる存在である。

低空や山谷の影に隠れて接近する敵機は地上のレーダーからは死角になるため、発見が遅れがちになる。
低空侵入に対抗するため考えられたのが、強力なレーダーを搭載した航空機を滞空させて警戒監視にあてるという戦術で、このために開発されたのが「Airborne Early Warning(早期警戒機)」、略してAEWである。
なお大型の航空機に強力なレーダーに加え、迎撃戦闘機に指示を出すオペレーターと状況表示装置を多数搭載し、早期警戒機にはない高い空中指揮能力をもたせたのが「Airborne Warning And Control System(早期警戒管制機)」、略してAWACSで、AEWより管制能力が高いがAWACSほどではない機体がAEW&C(Airborne Early Warning and Control)である。

早期警戒レーダーの性能限界と配置の問題から、日本の防空識別圏に穴があることは、航空自衛隊創設からさほど間を開けずに認識されており、1960年代後半には早期警戒機導入の検討が始まっている。
候補として、当時開発中だったC-1またはPS-1を原型とした国産AEWの開発と1964年にアメリカ海軍が配備を開始したE-2Aを改良したE-2Bの輸入*1の比較が行われ、まずE-2を輸入して早期警戒体制を整え、その間に国産AEWの開発を進めるという折衷案が提案される等、かなり具体化していた。
しかし、1974年末に国産AEW開発は白紙化*2されてしまい、E-2Bの輸入も具体的な段階まで進んでいなかった。

そんな時に起きた「ベレンコ中尉亡命事件」の影響で、早期警戒機の必要性が広く認識される。この事件については詳しくはE-767の項を参照。
理想としては、事件が起きた1976年に量産が開始されたばかりの最新鋭早期警戒管制機E-3A「セントリー」が望ましかったが、価格が極めて高額なだけではなく、基地の滑走路を補強しなければならず、しかも発注しても引渡まで何年かかるか不明であったため、導入検討開始当初に候補に挙げられていたE-2Bの改良型であるE-2Cの導入を1979年に決定した。


導入と配備


1979年より調達開始、1983年に警戒航空隊第601飛行隊への配備を開始している。
1994年までに合計13機をFMSで導入しており、1983~1985年に導入された初期導入型(グループ0)8機(機体記号451~458号機)と1993~1994年に導入された後期導入型(グループ1)5機(機体記号459~463号機)に分けられる。
導入価格は当初120億円を超えていたが、為替変動の影響もあり後期導入型では90憶円を切っている。
老朽化している割に機体数が多いため、頻繁に交換用部品を発注しているものの必要数がアメリカから届かず、稼働率の維持に苦労していた事もあったが、現在は防衛省の努力とノースロップ・グラマン社の協力で改善されているとの事。
とは言え、他の機体と同様に転移後は交換部品の代替品の開発・生産に迫られているのではないかと考えられる。

基本的には4機を一組として警戒任務、待機、訓練、整備のローテーションを組んでおり、最低でも常時3機が警戒任務に就くことができる体制が組まれている。
E-767の配備に伴い2004年に警戒航空隊第601飛行隊警戒監視飛行隊に改編されたが、13機全てが三沢基地配備である状況に変わりはなかった。
しかし、多発する中国軍機による尖閣諸島領空侵犯への対処のため、2012年9月に三沢基地から4機のE-2Cが那覇基地に派遣されている。
2013年8月には那覇基地への早期警戒機部隊新設が決定、2014年4月に第603飛行隊が那覇基地に新設され、在三沢基地の部隊は第601飛行隊に改編されている。

後述するE-2Dの配備に伴って2020年度から退役が始まっている模様*3で、2021年3月時点での保有機数は10機。

機体の特徴


レーダーシステム

胴体背面に6本の支柱で支えられた直径7.31m、厚さ0.76mの円盤型レドームを搭載しており、通常は1分間に6回転する。
レドーム内には八木アンテナが8本ずつ2列並べられており、E-767のAN/APY-2とは異なり、レーダーアンテナと敵味方識別装置のアンテナが同じ向きに配置されている。
また、レドームは61cmほど高さを下げることが出来る機構があり、飛行中に角度を調整して揚力を発生させることもできる。
レーダー波には低空目標探知に有利なUHF帯を用いており、最新型のAN/APS-145は最大探知距離560㎞、同時追跡可能目標数2,000以上、最大管制要撃機数40という性能を有している。
また、E-767では30分程度かかるレーダーシステムの立ち上げに必要な時間が、5分程度と極めて短いことも特徴である。

エンジン

C-130HP-3Cと同じアリソンT56ターボプロップエンジンと、ハミルトン・スタンダード社製の4翅プロペラを両翼に1基ずつ搭載している。
比較的小型軽量な機体に強力なエンジンを搭載しているため優れた加速性能を発揮可能だが、これは空母艦載機である以上、狭隘な空母の飛行甲板から短距離で離艦する能力が求められたため。
2017年より8枚のブレードに後退角を付けて推進効率の向上と騒音及び振動の低減を図ったコリンズ・エアロスペース社製のNP2000プロペラへの換装を開始している*4

主翼

任務上、高速飛行能力よりも長時間滞空能力の必要性が高いことから、主翼は後退翼やデルタ翼ではなく、前縁に緩やかな後退角をつけたテーパー翼を高翼に配置している。
艦載機の必須装備として主翼に折畳機構が付いており、エンジンナセルのすぐ外側から後方へ捻りながら約90°折り畳むことができる。
主翼を展開した状態のE-2CはF-15J改F-2の倍近い全幅があることから、駐機場での取り回しを良くしたり、格納庫内を効率よく使うために地上では主翼を折り畳んでいることが多い。
但し、この折畳機構のために燃料タンクが主翼内側にしか設置できず、その分だけ滞空時間が短くなっている。

機体

開発当時最も狭かったエセックス級空母の格納庫にあわせて、大きめの上反角を付けた水平尾翼の両端と中央に背の低い垂直尾翼を4枚を配置する事で全高を抑えている。
左から2番目の垂直尾翼には方向舵が無い左右非対称な構造となっており、重いレドームを背負っていることもあって横安定性が悪く、操縦は難しいという。
但し、片肺での飛行時には方向舵が大きな間隔を取って取り付けられている点がプラスに働き、機首の振れを容易に打ち消すことが出来る。
航空自衛隊では垂直尾翼に部隊マークを記入することが多いが、垂直尾翼が小さ過ぎるためかE-2Cでは機首の左右両側面に記入している。

機首のすぐ後ろに並列配置の操縦席があり、その後ろにコンピューターや通信機等の電子装備、更にその後ろに状況表示装置とオペレーター席が胴体内に所狭しと並べられている。
そのため乗員が一度配置に就くと別の場所への移動が難しいほど狭く、ジェット機と比較すると騒音や振動も大きいこともあって、乗員に疲労やストレスが溜まり易い様である。
E-2Cでの日本本土からムー大陸への2万kmもの移動は、航続距離から見て最低でも8回の給油が必要で、総飛行時間が約40時間、1フライト当たりの飛行時間は5時間という過酷な任務であり、居住環境を考えると乗員にとってかなりの苦行だったと想像出来る*5

能力向上改修


現代の航空戦において、早期警戒機は早期警戒管制機と並んで周り中から目の敵にされることもあり、常に能力の向上が図られている。

2000~2010年に「E-2Cの改善」の名称でアメリカ海軍のホークアイ2000に準じた仕様への改修予算が計上され、以下の改修が行われている。
  • 捜索レーダーシステムをAN/APS-145に換装
  • ミッションコンピューターをLR-304に換装
  • 状況表示装置を20インチカラー液晶コンソールに換装
  • RD-664A/ASHデータローダ/レコーダーを搭載
  • 信号処理装置、航法装置の改修
  • 電子戦支援装置(ESM)をAN/ALQ-217に換装
  • 戦術データ交換システム端末(MIDS-LVT(1))の搭載によるリンク16対応

この改修により、以下の能力が付与されている。
  • 小型目標探知能力の向上
  • 捜索レーダーの能力向上に対応する探知処理能力の向上
  • 表示処理能力の向上
  • 航跡探知状況等の記録容量の増大
  • 信号処理能力の向上
  • 自機及び目標位置精度の向上


ホークアイ2000改修を受けたE-2Cは、2005〜2014年に配備されている。1機当たりの改修費用は約27.4億円。
アメリカ海軍のホークアイ2000には共同交戦能力(CEC)が付与されているが、航空自衛隊のE-2CにはCEC用の衛星通信アンテナがなく、CECは付与されていない。

後継機


2014年11月に新早期警戒機として、E-2D「アドバンスドホークアイ」が選定された。
E-2Dの外見はE-2Cとほとんど変わっていないが、液晶ディスプレイを多用したグラスコクピットになっている他、レーダーシステムは新たに開発されたAN/APY-9に更新されている。
AN/APY-9はAN/APS-145と同じUHF帯を用いているが、高度なデジタル処理能力を備えたAESAレーダーシステムであり、ステルス機に対する探知能力が高いとされる。
最大探知距離はAN/APS-145と同程度ながら常時全方位の捜索を可能にしているため、探知可能範囲が250%向上している。
当初の予定にはなかったが、アメリカ海軍仕様と同じく共同交戦能力(CEC)を付与することも決定しており、F-15J改やF-35A/B、イージス艦から発射されたミサイルをE-2Dが誘導できるようになる。
装備の追加による重量増加に対応してエンジンも最新のT56-A-427Aに変わっており、プロペラはE-2Cでも採用されている騒音や振動の少ないNP2000を装備している。

オプションとしてプローブ・アンド・ドローグ方式の空中給油受油装置や折畳機構を廃止して外翼部に燃料タンクを追加した主翼の他、個室式のラバトリー(トイレ)*6、飲食物の保管と準備ができるギャレー*7、最新の疲労軽減シート、ノイズキャンセラー付きのヘッドセット、乗員用のエアコン及び空気清浄機等の装備が可能で、乗員の疲労軽減が図れるようになっている……が、空自のE-2Dにこれらのオプション装備がどこまで採用されているか不明*8

2015年6月に4機のFMSでの売却がアメリカ議会に報告され、2015〜2018年度に各1機ずつ計4機分の導入予算が計上されたのに続き、2018年9月に9機のFMSでの売却がアメリカ議会に報告、平成31年度予算において9機分の導入予算が一括計上されている。
更に令和5年度予算において5機分の導入予算が計上、2023年3月に5機のFMSでの売却がアメリカ議会に報告された事で、合計導入機数は18機に増加している。
E-2Dは「第603飛行隊新設に伴う純増分」という名目で採用されたのだが、状況の変化により「E-2Cの後継機」という名目も加わったようである。

2018年3月に1号機(機体記号471号機)が引き渡されたが、2019年度に引き渡される予定だった2号機(機体記号472号機)よりも先に3,4号機(機体記号473,474号機)が2020年4月に到着、2022年11月には第2ロット分の5,6号機(機体記号475,476号機)到着している。
2号機の引き渡しが遅れているのは設計変更の遅れの影響の様で、到着した機体は三沢で訓練と実用試験に用い、機数が揃い次第那覇の第603飛行隊に配備する計画に変更されている。
1機当たりの導入価格は最初の4機は240憶円前後、次の9機は一括計上のおかげで約215億円に値下がりしているが、最後の5機はインフレの影響のためか約388億円に上昇している。
最も安い時でも最新鋭戦闘機F-35Aの国内製造機のほぼ2倍で、エンジン価格の高騰の影響を受けた新型輸送機C-2と同じ位である*9
予備部品*10や訓練装備まで含めた1機当たり導入価格(FMS)は平均で約406億円。

機齢の若い後期導入分のE-2Cは2030年代後半まで運用可能と考えられるが、本家本元のアメリカ海軍ではE-2Dを迅速に導入する一方で、E-2Cは急速に退役させる計画であることから、予備部品の確保が年々困難になると考えられる。
召喚日本ではE-2Dの導入が不可能になっているため、P-1やC-2等を転用した新型AEWが開発されると思われるが、建造中の航空護衛艦用艦載AEWも必要である事から、E-2Cをお手本にした機体も開発される可能性もある。


出典:航空自衛隊ホームページ (https://www.mod.go.jp/asdf/equipment/keikaiki/E-2C/index.html)

作中での活躍


グラ・バルカス帝国によるムー侵攻に際しては、F-15J改F-2と共にムー西側にあるエヌビア基地に派遣される。
長時間警戒飛行能力を持つE-767の方が向いているはずだが、補強されたマイカルのアイナンク空港基地ならともかく、前線基地であるエヌビア基地の滑走路がE-767が離着陸するには短い事、前線基地では大型機の整備が困難である事、4機しか存在しないため複数機の派遣が難しい事等から派遣が見合され、代わりとして長距離飛行能力の欠如には目を瞑り、保有数が多いので4機程度派遣でき、軽量であるため滑走路への負荷が少なく、かつ即応能力の高いE-2Cに白羽の矢が立ったと推定される。

警戒任務にあたっていた機体がバルクルス基地を出撃したグラ・バルカス帝国第8軍団第9航空団キールセキ第1次攻撃隊72機を探知し、12機のF-15J改からなる迎撃部隊とLJDAMを搭載した16機のF-2からなるバルクルス基地攻撃隊を緊急発進させている。

(随時加筆をお願いします)
関連項目
兵器日本国自衛隊

※既存のコメントに返信する場合、返信したいコメントの左側にチェックを入れて下さい。
過去のコメント
  • 1976年だと早期警戒管制機は「E-3Aセントリー」しか選択肢が無くて、作戦司令部戦闘指揮所が過剰設備だったのでは無いかな、専守防衛だと。異世界だと便利かもしれないけど。 - 名無しさん (2018-12-29 22:22:47)

ここを編集
〔最終更新日:2023年03月08日〕
+ タグ編集
  • タグ:
  • 兵器
  • 日本国
  • 自衛隊

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2023年03月08日 22:01
添付ファイル

*1 当初アメリカは輸出に難色を示したが、国産AEW開発計画が明らかになると輸出許可に方針を転換

*2 前年に起きた第1次オイルショックの影響が大きいと思われる

*3 公開情報から見て、初期導入型の455、456、457号機が屋外保管状態になっていると思われる

*4 2021年12月現在、459、460、463号機が換装されている事から、後期導入型が換装の対象になっていると見られる

*5 同じムー派遣組を見ると、F-15J改やF-2はより居住環境が悪い上に操縦を交代できないものの、航続距離が長くて巡航速度が2倍近く速いので、給油は5回程度、総飛行時間は18時間余り、1フライト当たりの飛行時間は約3.6時間で済む。BP-3CやC-130Hも総飛行時間は35時間前後とE-2Cと大差ないが、戦闘機より航続距離が長いので給油は3〜5回程で済み、1フライト当たりの飛行時間は7〜12時間に及ぶものの機内が広いので幾らかマシ。更に航続距離が長くて戦闘機に近い巡航速度を出せるため、給油が3回程度、飛行時間が24時間前後、1フライト当たりの飛行時間は8時間で済み、かつ装備が新しくて機内が広いP-1とC-2がムー派遣組の中で一番快適と思われる

*6 キャビン後部に搭載されている艦上運用に必要な電子機器の撤去または小型化により空けたスペースに個室式ラバトリーを設置

*7 ミッションコンピューター等の小型化により空いたスペースに電子レンジや冷蔵庫、温飲料用コンテナ、飲食物用保管庫、ごみ箱等を設置

*8 471、473、474、475、476号機の何れも日本到着直後に主翼を折り畳んでいる姿が確認できる事から、この時点では通常型の主翼を装備していると推定される。ノースロップ・グラマン社は空自のE-2Dは燃料タンク増設型の主翼を装備するだろうと述べており、実際、2020年5月に航続距離延長のための設計変更が難航しているため、空自への引き渡しに遅れが生じているとの報道があった事から、主翼の改修が行われる可能性が高い。軍事ジャーナリストの竹内修氏によると空自のE-2Dにはラバトリーとギャレーが追加装備されるとの事だが、つまりこれは採用時から長時間滞空を前提にしているということなので、乗員のためにもシートとヘッドセットも買っていると思いたい

*9 F-15Jとほぼ同額だったE-2Cよりもかなり割高になっているのは、空自のE-2Dがアメリカ海軍のE-2Dとは細部が異なっている事も影響していると推測される

*10 予備として合計でT56エンジンが14基、MIDS-LVT/JTRSが4+4セット、AN/ALQ-217が4セット、更にAN/APY-9が1セットを導入している