コニカ製LTM交換レンズについて


 コニカはHEXAR RFが登場するまで、レンズ交換対応のレンジファインダー機は一部試作機を除いて作りませんでした。
 しかし、他社の要求に応じて様々なレンズを供給しています。
 ここではそれら交換レンズのうちLTM(ライカスレッドマウント)を見ていこうと思います。

 下図右にあるヘキサノン 50mm F3.5はHeliar型(Dynar型)のF3.5です。


0. Hexar 50mm F3.5(1951 or 1953)


確定情報

 千代田商会が販売した 'CHYOCA' に装着されて販売されたレンズ。
 (小西六正規品ではない為、 '0.' と表記とした)
 小西六の引伸し用レンズを改造したとされる。
 確かに内部の意匠は引伸しレンズと同じであるが、鮮明なブルーのコーティングとなっている。
 発売時期がコニカ 1型に 'コニコード・ヘキサー' が搭載された頃であるので、それに準じていても不思議ではない。
 比較的短期間のみの生産で、すぐに小西六よりHexarが供給された。
 以上の事からも、両社の関係は良好であったと思われる。
 またこのレンズには絞り値にF4は無く、F4.5となっている。[実物確認.]

未確認情報

  • 小西六で作られたという説もある。

資料

  • [出典0-1.] (1990.9). 300 Leica copies:And Cameras Showing Some Resemblance to the Leica FOTOSAGA(France), PP.190-191.
  • [出展0-2.] (2003). クラシックカメラ専科-3 戦後国産カメラの歩み 株式会社朝日ソノラマ, PP.50.


1. Hexar 50mm F3.5(1953)


確定情報

 瑞宝光学精機及び千代田商会、レオタックスカメラに供給されたレンズ。
 Tessar構成の沈胴式を採用。

 主にセットで販売されていたカメラを記すが、コニカの製品ではない為、この場ではカメラの名称のみを挙げ、詳細は明記しない。
  • 瑞宝光学精機
    • Honor-35, S1
  • 千代田照会
    • CHIYOCA I, IF, IIF
    • Chiyotax IIF, IIIF
  • 目黒光学
    • Melcon I
  • レオタックスカメラ
    • Leotax T

未確定情報

  • 固定鏡胴が存在し、50mmではなく5cm表記。
  • 後のF1.9がコニカ 2型(レンズ交換試作機)と同じレンズなので、コニカ型で採用されたものと推測している。
  • 一部では1955年製造と書かれているがそれ以前に売られているカメラに標準採用されている為、1955年発売という説は誤りである。
    この説は1955年に小西六の交換レンズ記事が多く発表された事により流布されたと推測しているが、それ以前のカメラでもHexarとセットで販売されていたとされている。

資料

  • [出典1-1.] (1990.9). 300 Leica copies:And Cameras Showing Some Resemblance to the Leica FOTOSAGA(France), PP.190-193,200-203, 206-213, 216-217.
  • [出典1-2.] 三木旺(1955). 超大口径レンズ ヘキサノン F1.2レンズ 小西六の新レンズ 写真工業 写真工業出版社, 2月号. PP.107-110.


2. Hexanon 50mm F1.9

確定情報

 1955年発売。[出典2-2.]
 その一方で[出典2-3.]カメラ毎日1956年1月号の新製品ニュースで近く発売されると記載される等、いくつかの情報がある。(未確認情報にも記載)
 Hexar 50mm F3.5同様に各社へ供給された。
 主に採用したカメラはHexar 50mm F3.5と同じ。
 レンズ構成は5群6枚のDouble Gauss型を採用。
 前期後期で一部形状が異なる。[実物確認.]

[出典2-1.]構成

 固定鏡胴直進ヘリコイド式。
 専用ケースが付属。
 画角は45度。
 重量270g。
 発売価格は23,500円。[出典2-3.]

未確定情報

  • 1956年発売という記事が見られる。
  • 構成図がコニカ 2型(レンズ交換試作機)のF1.9と合致するので、こちらもコニカ 2型と同じ設計(数字を丸めた)ではないかと推測している。

 主にセットで販売されていたカメラを記す
  • 千代田照会
    • Chiyotax IIF, IIIF
  • レオタックスカメラ
    • Leotax F

資料


  • [出典2-1.] レンズボックスアート
  • [出典2-2.] 三木旺(1955). 超大口径レンズ ヘキサノン F1.2レンズ 小西六の新レンズ 写真工業 写真工業出版社, 2月号. PP.107-110.
  • [出典2-3.] (1956). ライカ用ヘキサノン・レンズ F1.2とF1.9 新製品ニュース カメラ毎日, 1月号. PP.186.


3. Hexanon 60mm F1.2

確定情報

 後年の資料では1954年10月発売とされる[出典3-11, 出典3-12, 出典3-10.]が、その一方で[出典3-4.]アサヒカメラ1955年12月号、[出典3-6.]カメラ毎日1956年1月号、[出典3-7.]写真工業1956年1月号の新製品ニュースや、当時の広告[出典3-5, 出典3-8, 出典3-9, 出典3-10.]を見ると1956年発売と記載されているので、前者の発売時期は誤りである。
 しかし、カメラ毎日の1955年1月号の新製品ニュースに近く市販されると掲載され、同年2月の写真工業でも特集が組まれる等、発表から発売までの期間が1年程あった為に上記の説が生まれたと思われる。(単一資料根拠では信頼性に欠けるという例である)
 宮崎繁幹氏も著書で1955年12月と記載[出典3-14.]しており、雑誌の1月号が12月に店頭に並ぶ事を考慮するに、氏の説が正しいと思われる。
 レンズ構成は6群8枚。[出典3-1, 出典3-2, 出典3-3, 出典3-4, 出典3-5, 出典3-6, 出典3-7, 出典3-8, 出典3-9, 出典3-10, 出典3-12.]
 1948年に富士寫眞フイルム株式會社が変形Sonnar型のレンズ(1953年10月に発表されたFujinon 50mm F1.2)を発表。
 この時代新ガラスの完成もあり、各社大口径化が進んだ為、小西六もレンズ単独での供給に踏み切った。

[出典3-3.]性能曲線

 このレンズの特徴として、古今東西すべての紙面で共通している記述がある。
 各種収差が少なく、描写が良好というものである。
 当時の写真工業[出典3-7.]では以下の様に書き記している。(原文のママ)

 ・ツアイスのゾナー型には色収差の残存があり、ライツのズマール型(ガウスタイプ)にはコマ収差によるフレアの欠点があるが、ヘキサノン一・二は両者の欠点を極度に除いた六群八枚構成の新レンズであり、球面収差も良く除かれており、絞による焦点移動も殆ど無いのが特徴、非点収差の匡正も良好であるから画面の周辺まで鮮鋭であり、不快なボケも無いところの万能レンズである。
  カラー撮影用レンズとしてもゾナーに見るような波長によるコマの異りが現れない。

 新製品故に些か褒めすぎている感もあるが、収差を取り除く事に重きを置いた事は間違いない。

 固定鏡胴直進ヘリコイド式。
 前群を空気レンズを含むGauss構成とし、後群はガウスの隙間をガラスで埋めるSonnar構成としたレンズ。
 専用のビューファインダーとフード、ケースが付属。
 発売価格は78,000円。[出典3-6, 出典3-11, 出典3-12.]
 重量は425g。[出典3-6.]

[出典3-1.]構成

未確定情報


資料

  • [出典3-1.] レンズボックスアート
  • [出典3-2.] (1955.1). ヘキサノンのライカ用交換レンズ 新製品ニュース カメラ毎日 株式会社毎日新聞社, 1月号. PP.188.
  • [出典3-3.] 三木旺(1955.2). 超大口径レンズ ヘキサノン F1.2レンズ 小西六の新レンズ 写真工業 写真工業出版社, 2月号. PP.107-110.
  • [出典3-4.] (1955.12). ヘキサノンF1.2大口径レンズ 写真界ニュース アサヒカメラ, 12月号. PP.173.
  • [出典3-5.] (1956.1). ヘキサノンF1.2広告 アサヒカメラ, 1月号. PP.134-135.
  • [出典3-6.] (1956.1). ライカ用ヘキサノン・レンズ F1.2とF1.9 新製品ニュース カメラ毎日, 1月号. PP.186.
  • [出典3-7.] (1956.1). ヘキサノン六0ミリ一・二 NEWS FLASH 写真工業 写真工業出版社, 1月号. PP.28.
  • [出典3-8.] (1956.1). ヘキサノンF1.2広告 日本カメラ, 1月号. PP.3-4.
  • [出典3-9.] (1956.1). ヘキサノンF1.2広告 写真工業, 1月号. PP.34.
  • [出典3-10.] (1956.2). ヘキサノンF1.2広告 アサヒカメラ, 2月号. PP.148-149.
  • [出典3-11.] 亀井武(1973). カメラブームの到来 写真とともに百年, PP.237.
  • [出典3-12.] (1983). クラシックカメラ専科 No.3 戦後国産カメラの歩み 株式会社朝日ソノラマ, PP.153-154.
  • [出典3-13.] 萩谷剛(1999). 特集ライカスクリューマウントレンズの復権 アベノン&コニカヘキサノンレンズ 写真工業 写真工業出版社, 4月号. PP.43-44.
  • [出典3-14.] 宮崎繁幹(2003). コニカのLマウントレンズ クラシックカメラ選書-28 コニカカメラの50年 株式会社朝日ソノラマ, PP.169-170.


4. Hexanon 35mm F2L(1996)1,000~1,500本限定, UC Hexanon 35mm F2L(2001)1,000本限定

Hexanon 35mm F2L
レンズ構成 6群7枚
画角 62°
最小絞り F16
最短撮影距離 0.9m
フィルター径 46mmΦ
大きさ/重さ 54Φ×28.5mm/145g
価格 78,000円(フード・レンズケース付き)

UC Hexanon 35mm F2L
レンズ構成 6群7枚
画角 62°
最小絞り F16
最短撮影距離 0.7m
フィルター径 43mmΦ
大きさ/重さ 51Φ×26.5mm/125g
価格 114,000円(フード・レンズケース付き)
 コニカ株式会社が開発し、藤沢商会(2014年4月閉店)が販売した。[出典4-1, 出典4-2.]
 Hexanon L 35mm F2の発売が1996年4月、UC Hexanon L 35mm F2が2001年に発売。[出典4-1, 出典4-2.]

[図4-1.]

 Topogon型を核とした変形Double Gauss型を採用。
 コンパクトカメラ HEXAR用レンズをLTM化したもの。[出典4-1.]
 UCとはULTRA COATINGの意味で、全12面にマルチコーティングが施されている。

資料

  • [図4-1.][出展4-1.] 萩谷剛(1999). 特集ライカスクリューマウントレンズの復権 アベノン&コニカヘキサノンレンズ 写真工業 写真工業出版社, 4月号. PP.43-44.
  • [出展4-2.] 萩谷剛(2002). カメラから独立したレンズたち コニカヘキサーとUCヘキサノン35mm F2 写真工業 写真工業出版社, 4月号. PP.69-71.


5. Hexanon 50mm F2.4L(1997)1,500~2,000本(?)限定

レンズ構成 4群6枚
画角 46°
最小絞り F16
最短撮影距離 0.8m
フィルター径 40.5mmΦ
大きさ/重さ 51Φ×29.3mm/200g
価格 68,000円(フード・レンズケース付き)
 コニカ株式会社が開発し、藤沢商会(2014年4月閉店)が販売した。[出典5-1.]
 近年では珍しい沈胴式を採用している。

[図5-1.]

 レンズ構成はDouble Gauss型(4群6枚)を採用。

 生産数が記事によって違いが見られ、[出典5-1.]では1,000本、[出典5-2.]では1,500本、失念したが2,000本と書かれた記事があったが、市場の流通量や製造番号が2,000番付近の物が多く見られるので、2,000本と見るのが妥当である。

未確定情報



資料

  • [図5-1.][出展5-1.] 萩谷剛(1999). 特集ライカスクリューマウントレンズの復権 アベノン&コニカヘキサノンレンズ 写真工業 写真工業出版社, 4月号. PP.43-44.
  • [出典5-2.] (2000.1). Screw Mount LENSES Konica HEXANON コニカ ヘキサーRFのすべて 株式会社枻出版社. PP.67.


6. Hexanon 60mm F1.2L(1999)800本限定

レンズ構成 6群7枚
画角 40°
最小絞り F16
最短撮影距離 0.8m
フィルター径 58mmΦ
大きさ/重さ 65Φ×51.5mm/420g
価格 190,000円(フード・専用フィルター・レンズケース・専用ファインダー・ファインダーケース付き)
 コニカ株式会社が開発し、藤沢商会(2014年4月閉店)が販売した。[出典6-1.]

[図6-1.]

 レンズ構成はDouble Gauss型(6群7枚)を採用。
 空気接触面すべて(12面)にマルチコーティングが施されている。
 LTMレンズとしては大変めずらしい、距離に応じて前群と後群が個別に移動するフローティング機構を採用している。[出典6-1.]
 尚、[出典6-1.]において 'むかしのレンズ構成と同じ7枚ながら' といった表記が見られるが、これは萩谷氏の記憶違いによる誤りで、以前のものは8枚構成である。
 また、[出典6-2.]において画角76°と書かれているが、こちらも誤りで40°である。(76°だと28mmクラスの広角レンズとなる)

資料

  • [図6-1.][出展6-1.] 萩谷剛(1999). 特集ライカスクリューマウントレンズの復権 アベノン&コニカヘキサノンレンズ 写真工業 写真工業出版社, 4月号. PP.43-44.
  • [出典6-2.] (2000.1). Screw Mount LENSES Konica HEXANON コニカ ヘキサーRFのすべて 株式会社枻出版社. PP.67.

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最終更新:2021年04月05日 18:41