月夜の晩。
彼の持つ宝具が――父のヴァイオリンの音色が、また、彼を呼んだ。
敵がいるのは其処だ、と。
その音色が、彼に「戦え」と。
……あるいは、闘争により、誰かを「守れ」と。
そう、伝えてくれた。
耳鳴りのようで、それは優しい音色でもあった。
父と母が二人で作りあげた、『戦いを喚ぶ紅薔薇の戦慄(ブラッディ・ローズ)』の音。
そして、彼の本能は、その音色に応えた。
この先で暴れる敵と相対せよ、と。
本能が、彼にそう叫んだ。
敵は、かつて自分が戦った敵たちのように、今、誰かを喰らっている。
人を喰らい、それを己の力として蓄えようとしている。
おそらくは、己と同じ、『サーヴァント』の一体に過ぎない。
相手が如何なる力を持つかは知らないが、彼は、マスターの指示もないまま、ただ其処に向かって駆けた。
一刻も早く、この呼び声に答えなければならない。
それが、従者である以前の、自分の本能なのだから。
そして――自分は、従者である以前に、王でもあるのだから。
――寒空の下を駆ける。
『――いそげ、渡!』
「うん……!」
――暗い路地裏を通り抜け、公園に急ぐ。
『もうすぐだ、あっちにいるぜぇっ!』
「――」
――敵は、夜の小さな公園を根城にしているのだ。
「――――」
――――そして、彼の寝泊まりしているマスターの邸より、少し離れたところで、彼には、ようやく、"視えた"。
「――――!!」
小さな公園――それは、団地の為に作られたごく小さな公園だった。
高層の共同住宅に隠れて、ひっそりとそこにいた彼らの姿は、他のサーヴァントには感知できなかったかもしれない。
「ひぃ……ぅぐ……」
うめき声。
既に丑の刻を過ぎた真夜中に、一風変わった景色が見えた。
眼前には、『キャスター』のクラスのサーヴァントが、己の儀式を始めている姿があった。
「ぁ……ぁぅ……」
洗脳によって集められた、団地の住民たちであった――。
丑の刻を過ぎた真夜中に、彼らが歩み出し、自発的に集合するわけがない。
その証拠に、人々は皆、寝間着のまま、眠気を伴う虚ろな瞳で現れていた。
一時、彼はそれが何なのかわからなかった。
「ぇひ……ぅ……」
もっと近づいて見た。
すると、そこでは笑いながら、――『キャスター』がNPCを順に喰らっている姿があった。
並んだNPCたちを頭から順に喰らい、そのNPCが持っていた魔力を自らの餌にしている。
もしかすると、この『キャスター』は、英霊となる前は怪物であったのかもしれない。
子供の血しぶきが、『キャスター』の前に並ぶ人々の前に、飛沫として降りかかっていた。
食いつくすと、次に並んでいた成人女性が洗脳で前に出て、頭から喰われた。
並ぶ人々に、またも、血液の雨が降り注いだ。
辛うじて、彼らに幸福なのは、その人間たちの意思も半分眠らされているという事だろう。
「……」
――彼は、それを見て、息を呑んだ。
これが、宝具が自分を此処に促した理由なのだと。
そう悟った。
確かに辛い光景だが、今、人々の奏でる心の音楽が絶やされそうとしている。
それを止めなければならないのが、彼の使命だった。
「くっ……」
――そして、同時に大きな怒りが湧きあがって来た。
目の前のサーヴァントに対しての、使命とは無関係の――もっと根源的な、底知れぬ怒りが……。
「……どうして、こんな事を……っ!」
彼がそう叫んだ時、『キャスター』は、NPCを喰らう手を止め、彼を見た。
当然ながら、『キャスター』も彼の来訪には、気づいたようであった。
夢中になりすぎて、他のサーヴァントの気配を探知し損ねたのか。
派手にやりすぎ、結果として他のサーヴァントに目をつけられた事には、少々の後悔もあったようだが、彼の姿を見た『キャスター』は些か冷静だった。
彼の魔力が、決して高くなく、その運用もあまり上手でないのに気づいたのかもしれない。
「おや。他のサーヴァントに感づかれましたか」
冷徹な瞳で、『キャスター』は言った。
怪物じみた醜い容姿でありながら、それの口調は紳士にも近かった。
「どうやら、その傍らの使い魔をお見受けした所、貴方も私と同じ『キャスター』のクラスのようですね」
「……」
「……如何でしょう? 貴方にも何体か、NPCを分けて差し上げましょう。
今は力を蓄える為、お互いを見逃し、お互いにNPCから魔力を吸収して、魔力を高める。
それが、『キャスター』である我々の間では、お互いにとって最も有効な策と思いますが――」
目の前のキャスターは、NPCの魔力を吸いつくし、自身の道具作成や陣地作成に役立てようとしているのだろう。
つまりは、彼自身は、ここにいるNPCたちを、ただの道具と扱っているわけだ。
――いや、仮にそれが人間だったとしても同様に彼は、道具として喰らいつくすに相違ない。
人間を自分の餌にする――それが、彼のやり方のようだった。
「……!」
それに対する「彼」も、確かに、目の前の『キャスター』と同じ性質を持つ存在だった。
人間を喰らい、魔力を得る――それが戦術において重大であるのは、彼の持つ宝具と照らし合わせて考えれば、間違ってはいない。
それどころか、彼の同種は、人間の生命力を喰らって生きながらえている程なのだ。
しかし――やはり、違う。
たとえ、人を喰うのが本来の宿命であったとしても――彼の「解」は『キャスター』とは、異なっていた。
彼の使い魔が、彼より先に怒りを露わにする。
『ふざけんな! こんなに酷え事しやがって!』
「――――ああ。僕も……お前には、従わない!」
ちらりと、視えたのは、これからキャスターたちに喰われる為だけに、意思を殺して並ぶ人々の群れである。
洗脳されながらも虚ろなまま手を取り合う母と子、兄と妹、姉と弟。
キャスターの目の前には、母を食われて、虚ろな瞳のまま――ただ、血液を浴びながら立ちすくむ少年の姿。
だが、その本能は、そのNPCの子供を涙させていた。母を失った悲しみは、電脳存在や洗脳の意思を越えて、彼の瞳に一筋涙を光らせているのだろう。
疎らに並ぶ中でも、同じ家族が一塊に集まっているのは、もはや動物的本能と呼べる物に違いない。
互いが血脈で反応し合い、お互いを庇い合う。
それが、彼らに根付いている感情だと理解し――彼は、それを受け入れた。
結局のところ、NPCとは、利用に値する物とは限らない、普通に生活する人間の意思には違いないのだと。
それが、家族。
「たとえ、データの存在でも……この人たちには、家族の愛があるんだ……!」
――何故、宝具は……あのヴァイオリンの音は、自分を呼んだのか。
それは、このデータ存在たちが奏でる、美しい音楽を守る為ではないか。
何より、あの宝具は、彼の父と母の祈りが込められた名器なのだから。
「何を言っているんですか? 彼らは生命を持たないNPCですよ?」
生命があるか否かは、彼には関係がなかった。
「お前のような奴には、聞こえないんだ……。
この人たちが奏でている、美しい音楽が――――!!」
――刹那。
彼の使い魔が、彼の意思より先に動いた。
彼の呼び声を一早く感知したのかもしれない。
「――そして、それを止める事が、どんなに愚かな事なのか!!」
それは、これまで闇に隠れて見えなかったが、金色の蝙蝠の姿をしていた。
――その名は、『キバットバットⅢ世』。
使い魔であると同時に、彼の持つ宝具の一つだった。
「――行くよ、キバット!!」
『おっしゃあッ……! キバっていくぜッ……!』
ガブッ――!
牙を立てて、『キバットバットⅢ世』は、彼の手に噛みついた。
瞬間、彼の美しい容貌に、ステンドグラス色の血が紋章として通っているのが見えた。
彼の腰に、血の色の鎖がベルトのように現出しており、彼は、『キバットバットⅢ世』を掴み取って、鎖ベルトのバックルに逆さに貼り付けた。
そして、彼は、怜悧な瞳で告げた。
「――変身」
――――瞬間。
彼の外形を、パンプキン色の鎧が包んでいく。
まるで、ジャック・オ・ランタンのような異形は、彼の全身を余す事なく包み込み、その魔力を格段に上げた。
しかし、――驚くべきは、それでもまた、彼の魔力は封印された状態であるという事だ。
キバフォーム。
これは、まだ鎖に身を包み、真の力を解放しない姿であった。
これが、彼の"王族"たる証。
「――ッ!?」
そして、『キャスター』は、その様相に、何を敵に回したのかを悟った。
蝙蝠の使い魔はポピュラーだが、その使い方と、鎖に繋がれたその姿。
それは、まぎれもなく、ある有名な伝説に似通っていた。
恐れおののく『キャスター』は、言う。
「まさか……それが貴方の姿――よもや、貴方の真名は、『吸血鬼(ヴァンパイア)』――!」
吸血鬼族の皇帝(キング・オブ・ヴァンパイア)――通称、キバ。
それが、彼の纏う鎧の正体であった。
彼もまた、『キャスター』の明察した通り、同じ『魔術師』のクラスのサーヴァントであり、その正体は吸血鬼族の王だ。
そして、それと同時に人間との混血である「ダンピール」でもある。
しかし、厳密には彼ら"ファンガイア族"は、吸血鬼に近い存在でありながら、吸血鬼とは少しばかり呼び名が異なり、長い歴史の中にも人間との混血例は珍しかった故に、「ダンピール」のような呼称が無い。
あくまで、人間ともファンガイアとも呼べない、一見すると中途半端な「何か」が、彼だった。
この二つの種の混血は、確認されている限り、彼と、その後の「紅」の血族だけである。
そう、そして。
餌と狩人の二つの種族の間で揺れ動き、その共存を目指した最初の青年――それこそが、彼の真名『紅渡』であった。
かつて、この鎧を纏い、『仮面ライダーキバ』として、共存の為に戦った者である。
「――――はああああッッ!!!」
疾駆したキバは、右の拳で、『キャスター』の胸を突いた。
そして、そのまま乱打する。
キバと化した彼の拳が、『キャスター』の胸板の上で、何度となく跳ぜた。
――想像以上のダメージ。
もはや、条件反射のように『キャスター』の口から、魔力を伴った血液が漏れ、飛び散った。
「ぐッ……!!」
無抵抗な『キャスター』に向けて、それが何度か続けられるに従い、魔力の影響を逃れたNPCたちがバタバタと倒れ始めた。
死んだのではなく、キャスターによる洗脳が解けた結果として、一時的に脳の構成機能が麻痺したのだろう。
それが彼らの身体のバランスを覆し、一度、眠りの中に陥らせた。
お陰で、彼や『キャスター』の戦いは、誰にも見られず、夜の闇に溶け込む事が出来る事になる。
洗脳が解けた以上、それを人質にされる事もない。
敵方の『キャスター』の戦闘能力は、クラスのステレオタイプに漏れず、身体的な能力は決して強くは無かった。――いや、たとえ強かったとしても、キバはそれを上回るだけの強さを誇る。
彼は、遂に両脚で立つ事も困難となり、キバのパンチを受けて倒れる。
「――貴方も、『吸血鬼』ならば、何故にッ!
何故に、人を喰らうこの私を、許さないのですか……!」
後は、自分の提示した契約を裂いた理由を訊くだけが、『キャスター』にに出来る唯一の反抗だった。
そもそも、キバの力が現状で『キャスター』を上回っている時点で、彼の提示した案は無意味である。
が、『キャスター』がそれに気づく事はないし、キバの持つ怒りが伝う事もなかった。
「――それが、王の判決だ」
王の手には、次の瞬間――『吸血鬼族の魔皇剣(ザンバッドソード)』が発現していた。
この宝具は、彼の吸血鬼族の皇帝(キング・オブ・ヴァンパイア)たる証でもある。
現在変身しているキバフォームでは、本来的な力を発揮できないものの、その刀身は『キャスター』の半身を引き裂くには充分効果的な硬度と魔皇力を持っていた。
彼は、それを力いっぱい、振るいあげた。
――――結果。
「ぐああああああああああああああああーーーーーーーッッッ!!!!!」
まだ何か言いたげな『キャスター』の身体が真っ二つに引き裂かれ、遂に、その姿は爆発四散した。
無銘の霊となった『キャスター』の魔力は、空を惑い、不規則に泳ぎがら天上に昇ろうとする。
それは、通常、可視化されない物であったかもしれないが、キバだけには見えた。
すると、ある者を呼び出そうとした。
「来い……――」
キバは――渡は、多くの家族を引き裂いた『キャスター』を許さなかった。
たとえ、意思な魔力になったとしても。
そして、彼の耳に聞こえる、「音楽」を止めた『キャスター』には、王の判決が下されなければならなかった。
「――――『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』!!」
キバが呼ぶ――。
そして、キバットが茶色の笛を鳴らす。
夜の乾いた空気に、笛の音が響き、それを竜は訊き届けた。
……すると、どこからか、巨大な竜の羽音が鳴り響いた。
夜の街の上空で、誰も感知できない一体の竜が飛んでいる――。
名は、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』。
キバが従える宝具の一つであり、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』は、彼が滅したサーヴァントの魂を喰らうのである。
直後には、空中を浮遊していた『キャスター』の魔力は、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』の口の中に納まり、その姿を消した。
あの『キャスター』は、これまでに多くの人間の魔力を吸っている。彼に喰われた者たちの魂もまた、そこに込められているのだろう。
それを踏まえると、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』が喰らいつくした事には、些かの抵抗もある。
しかし、それが彼のこれからの戦いには必要だった。
すぐに、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』は去って行き、そんな怪獣がここにいた事を誰からも忘れさせた。
キバは、それからすぐに、近くを見た。
「……」
――母を、目の前で喰われた少年。
夜風の下で眠りにつく彼の母たる女も、今、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』が食ったエネルギーの一部を作り上げている。
それが後ろめたくもある。
「――ごめん」
キバは、彼に寄り、血に穢れた額を撫ぜながら、そう釈明した。
その声は、眠りに陥る少年には届かないであろうし、もし目覚めていたとしても彼がなぜ頭を下げているのかさえ解さないだろう。
しかし、渡は謝らずにはいられなかった。
目の前に現れた『キャスター』なる怪物にむざむざと彼の家族を殺させてしまった事も。
渡自身が、彼の母の魔力を餌にする形になってしまった事も。
「でも、君の父さんの力は、無駄にはしない……」
キバは彼の額から、翳すように、手を突き放した。
今、彼が『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』を通して得る事が出来た僅かな魔力で、彼らの記憶を消し、そこに流れた血を浄化しようとしているのだ。
魔力の上手な運用は、彼には出来ない――王でありながら、普通の人間の血が彼を邪魔しているからだ。
キャスターのクラスは、潜在的な魔力の高さと、彼の下にある従者や宝具の多さが故でもあるのだ。――決して、他のキャスターたちのように、魔術の運用までを得意としているわけではない。
だが、彼のスキル『皇帝特権』のランクは、この時、一時的に上昇し、それが魔力を行使させた。
すると、彼らが浴びた血は一斉に穢れを落とし、ただここで集まって「何故か」眠っていた事実だけが、彼らには残る結果になった。
結果、『キャスター』を倒す事で貯蓄した魔力は、その殆どを使い果たし、元の渡の魔力とさして変わらない状態にまで戻してしまう。
あの『キャスター』が持っていた力は弱すぎたのだろう。
変身が自動的に解けた。
『おい、急ぐぞ、……渡! マスターに大目玉喰らっちまう!』
「……! うん!」
そこにあったのは、やはり、紅渡というふつうの美男の姿だった。
彼は、それから、また急いで、自らのマスターの下に帰っていった。
何度か振り返りながら、倒れるNPCたちに心で囁く。
――――がんばれ、と。
◆
「随分と遅いお帰りですわね、キャスター」
マスターの邸宅。
薄い生地の寝間着を纏った、長い髪の女性。
――彼女も普段は、目立つゴシック・ロリータ服を着ているが、流石に寝る時までは着ないのだろう。
『げげっ、マスター……!』
彼女こそが、キャスター――紅渡のマスターである、月読ジゼルであった。
年齢は、二十歳。職業は詩人であり、その収入だけで暮らしている。
彼女の住まうこの薔薇十字館なる豪邸は、彼女の父が遺した物らしかった。
まるでホテルのように無数の部屋があり、彼女一人で住まうには広すぎる気がするが、それには些か事情がある。
元々、彼女の父は、彼女が幼い頃から姿をくらましており、各地に残る奇妙な館だけがその痕跡となっているのだ。
この薔薇十字館もその一つに過ぎず、自然と彼女の相続する土地の一つとなっていたらしい。彼女も相続するまでこんな土地は知らなかった。
第一、気味が悪い場所であった。
この薔薇十字館で暮らすのは、彼女にとってもこの聖杯戦争が初めてである。
そして、彼女には、行方不明の父と、亡くなった母と、指名手配犯の兄以外に家族がなく、結果的にこんなに広々とした空間で過ごす事になっているのだ。
彼女の願いは、二年前に焼き殺された母を死の世界から救う事であり、キャスターにもその悲願は充分に理解できる物だった。
故に、彼女と契約を結ぶ事にも躊躇はなかった。
……少々、性格が手厳しく、また、奇妙な痛々しさがあるというのが、欠点だが。
「一体全体、こんな時間にどうしたのですか? キャスター」
「……起きてたんだ、マスター」
「ええ。貴方が出かける音を聞いて」
そう言うジゼルの言葉には、茨のような棘が感じられた。
心なしか、些か不機嫌な顔付にも見える。
それを察して、『キバットバットⅢ世』が横槍を入れた。
『おい、ちょっと待ってくれよ、渡は――』
キャスターの事を庇おうというのだろう。
彼も、実のところ、キャスターの従者の一人と分類されて良い存在である。
サーヴァントという立場を通り越し、元が一人の王であった紅渡は、使い魔たちの信頼も既に勝ち取っていたのである。
それこそ、渡とジゼルという初対面の二人の比ではない。
初めはお互い、疑心を持ち合うのがマスターとサーヴァントの関係の常だ。時代や思想の違いが生じ、息の合う者の方が少ないのだ。
が、『キバットバットⅢ世』の心配とは裏腹に、ジゼルは言う程、サーヴァントを責めたてはしなかった。
「――キバットさん、囀らなくとも結構。別に、キャスターを咎める気はありませんわ。
……それより、この夜に相応しい、美しい詩が完成しましたから、聞いてください」
そう言うと、ジゼルは、唐突に、詩を詠み始める。
「ああ、紅の血よ! 紅の血を分けた吸血鬼よ!
今宵も、薔薇のような美しい棘と、その身を守る固い鎧で、主に迫る悪魔たちを倒しておくれ……。
聖杯の齎す美酒で、私の心の亡母に、冥府に囚われた私の姫に、ひと肌のぬくもりを取り戻しておくれ……!!」
……。
呆然とするキャスターと『キバットバットⅢ世』であった。
本職の詩人であるとはいえ、彼女の紡ぐ言葉は、独特の世界観に包まれている。
なんだかむず痒いというか、見てて痛々しい気分に攫われる。
何度かこうした事があったが、その度に彼らは呆然と立ちすくんだ。
そんな空気を察する事もなく、ジゼルは言う。
「――あなたへの詩です、キャスター」
キャスターは、ジゼルの目を見た。
彼女は、怜悧な瞳で言う。
「確かに勝手な行動ではあるようですが、私たちにとって厄介な敵を未然に殲滅した事には変わりません」
「見てたんですか……マスター」
「いいえ。私は何も。しかし、貴方がこうして無傷で帰って来た事と、キャッスルドランが動いた事とが何よりの証拠です」
確かに、夜一人で駆けだすように抜け出し、無傷で帰還したという事から、キャスターが戦いに出て、勝利したのだという事が伺えた。
それというのも、薔薇十字館のキャスターの部屋に設置されたヴァイオリン型の宝具『戦いを喚ぶ紅薔薇の戦慄(ブラッディ・ローズ)』の特性と照らし合わせれば簡単である。
それは、キャスターの奥底に眠る魔皇力が感知する、「魔力を伴った敵」の存在を伝えてくれる。
彼らが暴れ出した時、キャスターはそれに反応して、いつも、鳴りやまぬ音を消し去るようにして駆けだしていく。
今夜もそうだったのだ。
更には、薔薇十字館に擬態している『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』が動き出したというのだから、既にキャスターに言い逃れの道はない。
故に、敵を殲滅した事までジゼルは予測した。
ただ、詳細な経過はわからないし、こんな時間に寝起きで彼を追う気にはなれなかったのだろう。
「……簡単に事情を説明してもらえるかしら?」
ジゼルが言うと、キャスターは応えた。
「――敵のクラスは僕と同じキャスターでした。真名はわからないままです。
ただ、マスターの言う通り、もう殲滅しました」
「では、もう一つ。敵は、一体、何故その敵は、こんな時間に暴れるようとしたたの……?」
「……それは……」
そう言うと、キャスターはどもった。
気弱な彼は、その経過を口にするのを憚ったのだ。
代わりに、『キバットバットⅢ世』がそれをジゼルに伝えた。
『――奴は、洗脳した人間の魔力を肉ごと喰って、自分の力にしてたのさ!
半分楽しみながらな――! まったく、とんでもない野郎だぜ!』
怒張の混じった『キバットバットⅢ世』の言葉を聞き、ジゼルの中で何かが震えた。
聖杯戦争のマスターは、NPC以上に、そうしてマスターたちに狙われるリスクが高い。
それも覚悟の上だが、それを痛烈に実感するのは、いつも被害者が出た時だった。
今日、彼らが見て来た光景を想像し、ジゼルは恐れも抱いた。
それから、キャスターも、弱弱しい唇が、震わしたまま、続きをジゼルに告げた。
「ええ……。小さな子供や、家族を遺して死んだ人もいました……」
「……」
ジゼルは、その言葉を聞いた時、何かを思ったように、言葉を飲み込んだ。
彼女もまた、家族という言葉には敏感に反応する。
彼女が戦う理由であり、二年前、彼女から全てを奪ったもの。――その時の心の傷がまだ残っている証だった。
キャスターが、報告を続けた。
「……それが、今日僕が戦った敵の全てです。
あとは、いつも通り、キバの力で倒して、彼の魔力は『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』が喰らいました」
「巻き込まれた人間の記憶は?」
「大丈夫、消しました。……代わりに、食らった魔力がなくなりましたけど」
それが全てだった。
他に報告すべき事はない。
それに、敵の殲滅まで報告した以上、もはやこれより訊く必要はなかった。
情報としては無意味で、あくまでキャスターが夜中にマスターを離れて、一時単独行動をした事情として訊き届けたかったのだろう。
「――わかりました。それならばこれ以上何かを言うつもりはありません」
「……」
「次からは、たとえ夜でも私を起こしてください。無断で出かけない事。
貴方は、私を守る騎士でもあるのだから……私を一人にすべきではありません」
「……はい。……わかりました」
それだけ聞くと、ジゼルはつんとした表情で立ち去ろうとした。
が、突如、足を止め、キャスターたちの方を見ないまま、一言告げた。
「――そうだ、キャスター。薔薇風呂を沸かして入りなさい。
貴方も、薔薇のアロマで今夜の戦いの疲れを癒し、次の一日に備えると良いわ」
そう言って、また彼女は部屋に戻ろうとする。
一瞬、彼女が何を言っているのかわからなかった。
今日の夜入った薔薇風呂。
キャスターと『キバットバットⅢ世』は、風呂で疲れを癒すのがとにかく好きだった。
この館には、大きな風呂があり、今日も休む前にそれで疲れを取っていたくらいである。
しかして、マスターがわざわざ、こんな時間に風呂を沸かすのを許すような労いを見せたのは、主従関係を結んでから、今日が初めてだった。
彼女も少しずつキャスターの性格を理解し始めているという事なのだろうか。
キャスターは、少しきょとんとしてから、再び眠りに就こうとするジゼルの後ろ姿を見ながら、小さな声で言った。
「……ありがとう、マスター」
『よっしゃ~♪ 渡~! 風呂だ風呂だ~♪』
【CLASS】
キャスター
【真名】
紅渡@仮面ライダーキバ
【パラメーター】
基本
筋力E+ 耐久E 敏捷D 魔力D 幸運D 宝具EX
キバフォーム
筋力B 耐久C 敏捷C 魔力A 幸運B 宝具EX
【属性】
中庸・善
【クラススキル】
陣地作成:-
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げるスキル。
紅渡は、このスキルが失わてている代わりに、王が引き継ぐ『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』の宝具を持つ。
道具作成:D
魔力を帯びた器具を作成する為のスキル。
紅渡は、魔皇力を込めたヴァイオリンを作る事のみに長けている。
製作工程は一般的な高級ヴァイオリンと相違ないが、その最終工程で彼の魔皇力が無意識に込められる。
これ以外に必要な道具の多くは、基本的には父や先代の王が集めた物であり、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』に保管されている。
【保有スキル】
魔皇力:B/2(ハーフB)
魔術に代えて紅渡が持つ、"ファンガイア"の力。
常時は人間の血を交えている為に、通常のファンガイアよりもその影響が希薄である。
キャスターでありながら魔術の式を解さず、ただ魔皇力を内に秘めているだけの渡には、戦闘力としてしか認識されない。
尚、このスキルは、宝具『キバットバットⅢ世』の力で一時的にランクを高める事が出来る。
ファンガイア族:A/2(ハーフA)
吸血鬼に近い性質を持つ、彼の出身種族。
その種の王の資格を持ち、彼らを裁く権利を有するが、父親が人間である為、ファンガイアとしての第二の姿を有さない。
彼の場合、このスキルの恩恵として、ファンガイアの血が無ければ出来ないような行動(『キバットバットⅢ世』のノーリスクでの運用など)が可能である。
皇帝特権:E
本来持ち得ないスキルを、本人が主張することで短期間だけ獲得できるというもの。
ただし、渡の性格上、特殊な状況下で精神に変化が起こらない限り、このスキルは発動できない。
仮に渡がこのスキルを自覚した場合、そのランクは、B~EX相当まで飛躍的に上昇し、あらゆるスキルの使用を許す事になるだろう。
主に、「騎乗」、「剣技」などのスキルがこれによって付加され、生前もそうした技能を駆使している。
【宝具】
『キバットバットⅢ世』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
人間の腕を噛む事で、魔皇力を高める『キバの鎧』を対象の外形に纏わせる力を持つ使い魔。
キバット族の名門・キバットバット家の三代目であり、ファンガイアの王が選ぶと同時に彼らも王を選び、契約と共に使役される。
とはいえ、普段は感情豊かで口うるさく喋り、渡とは主従を越えた友人関係にある。
彼もキャスターと共にこの世に現出し、便宜上は使い魔と同様の扱いを受けているが、実際には紅渡以上の魔力を持ち合わせており、キャスター適性の低い渡の魔力を補佐する役割を持つ宝具である。
渡以外の人間も同様に、『キバットバットⅢ世』が"噛む"事によって『キバの鎧』を纏う事が出来るが、素質のない者では『キバットバットⅢ世』の放つ魔力エナジーに耐える事が出来ず、大抵の人間は数回変身すれば死んでしまう。
更に、仮に適正があったとしても、「エンペラーフォーム」と呼ばれる鎧の真の力を発揮した場合、エネルギーに耐えられる者の方が希少というレベルで、一度変身しただけで多くは死亡する。
この宝具を奪って変身するのは容易いが、高い資質が無ければ、リスクにしかならないのである。
『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』
ランク:EX 種別:対城宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
紅渡たちファンガイアの王の有する"生きた城"。
その正体は、かつての王がドラン族の最強個体である"グレートワイバーン"を捕獲して、城として改造した物である。
普段は薔薇十字館(マスターの所有地)の一部に擬態している為、常人に視る事は出来ない。しかし、キャスターが召喚した"月"の光の下でその真の姿を現す。
内部には幾つかの道具・宝具を保管しており、この聖杯戦争における『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』の役割は、実質的にはギルガメッシュ伝説の『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』と同様の宝物庫である。
尚、これに保管されている宝具の中には、渡に従属し、運命を共にした四体の幽閉されしモンスター(ガルル、バッシャー、ドッガ、タツロット)が含まれている。
渡の有事には、貯蓄した魔力と引き換えに『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』から宝具を呼び出す事が出来るのである。
ただし、よりランクの高い宝具を呼び起こす際には、相当多くの魔力や生命力がこの宝具に貯蔵されていなければならないという欠点がある。
その為、他の主従との戦闘行為に勝利する、もしくは、NPCの魔力を吸収する等の方法で、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』の力を高めなければ上位宝具タツロットなどは呼び出す事すら出来ない。
『吸血鬼族の魔皇剣(ザンバッドソード)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
多くの宝具を有し、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』に保管したとされる紅渡の最も代表的な武具(これ以外にも多くの宝具がある)。
この世に存在する最も強力な剣だと言われている。これこそが彼の皇帝たる証であり、巨大な魔皇石の結晶から削りとったという逸話も残されている。
元々がライフエナジーを持つものに対して過剰に反応し、それを「喰いにいく」性質を持つ「命吸う妖剣」である。
その為、使用者の意志が足りなければこの剣に乗っ取られ、無差別に敵を見つけ出し、命を吸い取ろうと暴走するリスクを負う事となる。
このリスクは、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』に幽閉されたモンスターたちの生み出す幻影生物"ザンバットバット"により軽減する事が出来る。
また、この剣は、彼の「王の証」として、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』を介さず、渡の意思だけで発現できる事が可能である。
ファンガイア戦争時の伝説では、真の姿たる「エンペラーフォーム」を解放しなければ扱えない武器であったが、その戦争の後には、エンペラーフォームを解放する事なく使用したという記録もある。
その逸話に基づき、現在の渡も、少なくとも『キバットバットⅢ世』によって『キバの鎧』を纏ってさえいれば、この剣を暴走する事なく扱う事が可能。それさえ纏わなければ、まともに扱う事は困難である。
また、その真の力を解放し、多くの敵を葬った美技を発動するには、「エンペラーフォーム」の解放が必須条件となる。
『闘争を喚ぶ紅薔薇の戦慄(ブラッディ・ローズ)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:その音の届く限り 最大捕捉:その音の届く限り
渡の父・紅音也と渡の母・真夜が共同して作り上げたバイオリン。
微弱の魔力と、強い祈りが込められており、この音は、渡に使命を伝え、強い魔力を持った敵の発生に呼応する。
渡の魔皇力で感知できる場所で、高い魔力を持つ者が魔術を行使して大規模に暴れ出したとするのなら、この宝具が必ず渡に敵の発生を伝えるだろう。
この宝具も、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』を介さず、渡の意思だけで発現できる事が可能である。
【weapon】
『キバットバットⅢ世』
『戦いを喚ぶ紅薔薇の戦慄(ブラッディ・ローズ)』
【人物背景】
仮面ライダーキバに変身する青年。職業はヴァイオリン職人である。
父も同じくヴァイオリン職人。人間の父・紅音也と、ファンガイア族のクイーン・真夜とのハーフであり、両種の特性を持つ。
ファンガイアの特性としては、美男美女であり、ある時から外見の成長が止まり、若さを保ち続ける事が挙げられ、彼もその例外ではない。
ただし、ファンガイアとしての体を持たず、外見は誰が見ても普通の人間の若者である。
性格は、内向的で口下手。純粋で優しい子供のような性格で、それ故、後ろ向きでもあり、度々悩み事をする。
だが、それも仲間たちとの戦いの中で克服し、後には異父兄の登太牙と共に、王の資格を持つ者としてキバの鎧で最後まで戦い続けた。
伝説では、ファンガイア、ネガタロス軍団(仮)、ネオファンガイア、レジェンドルガ、世界の破壊者など、あらゆる存在と戦った記録があらゆる世界で残っている。
しかし、現世に英霊として顕現した際に、ファンガイア以外との戦闘は彼の中で忘却されており、実質的に今の彼に残るのはファンガイアやそれに近い種との戦いのみとなった。
【サーヴァントとしての願い】
かつての戦いで死んだ人間とファンガイアの魂を救済する事。
それと同時に、この聖杯戦争の中においても、誰かの奏でる音楽を守り続ける事が彼の願いである。
【基本戦術、方針、運用法】
強力な宝具を幾つも持ち、変身時の戦闘能力も格段に高いが、その反面、キャスターの絶対条件である魔力の扱いが少し苦手(所持している魔術回路は多いが、人間の血も濃い為に扱えないのである)。
また、生身での戦闘力もこれまたせいぜいアスリート並で、キバの鎧を纏って白兵戦を行う事が能力の前提にある。
とはいえ、他と比べて低いパラメータの代替として幾つもの宝具(記載されていない物を含む)を持っており、これが彼の能力を補っている。効率よく戦闘にするには、宝具を駆使するのが良いだろう。
ただし、これは、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』に貯蓄された「倒した敵の魔力」に応じて運用が可能になる為、キバに変身して戦闘を続ける必要がある。
これもキャスター自身は、罪のない相手はNPCを含め積極的に喰うつもりはない為、その方法は「サーヴァントを倒す」事に限られる。出来る限り、強い敵と交戦して勝利し、真の力を発揮できるまで魔力を貯蓄していくのがベストな戦法だが、やはり方法的にはリスクが高い面がある。
早い段階で倒せるサーヴァントは倒して上手く『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』に敵の魔力を貯蓄すれば、聖杯戦争終盤でエンペラーフォームや飛翔態を使って、ほとんど引けを取らない戦闘も出来るだろうが、逆にそれが出来ないと、一般NPCを巻き込まない限り手詰まりになるかもしれない。
また、更なる欠点として、『キバットバットⅢ世』を奪われた場合、彼の戦力が格段に落ちてしまう事も挙げられる。
無理矢理捕まえて変身すれば、誰でも変身できてしまう性質を利用されれば、勝率は著しく下がってしまうだろう(常人ならば不可能であるが、相手がサーヴァントならばリスクが充分に有りうる)。
【マスター】
月読ジゼル@金田一少年の事件簿 薔薇十字館殺人事件
【マスターとしての願い】
ホテル火災により喪われた母の救済。
【weapon】
なし
【能力・技能】
詩人として活躍する優れたポエムの才能。
人間の体を杭で撃ちつけ、貫通して床まで叩きつける女性離れした腕力(その後、その杭を軸にして部屋のカーペットを糸で引っ張って回転させているので、超人的な筋力の持ち主と思われる)。
館を一つ吹き飛ばす爆弾や毒薔薇を調達する行動力。
薔薇やギリシャ神話などに詳しい博識ぶりは高遠に評価された。
また、今回の登場人物ほぼ全員が有名な指名手配犯の顔を見ても気づかないのに対し、彼女だけは一目見て高遠だと気づいたので、ニュースや時事も人並みにわかるはず。
【人物背景】
「金田一少年の事件簿」の「薔薇十字館殺人事件」の犯人・ローゼンクロイツの正体。
20歳。職業は詩人。巨乳。「月読ジゼル」は本名ではなくペンネームらしく、本名は美咲ジゼル。
どんな状況下でもポエムを言う、所謂「痛い子」で、通常はこの手の推理漫画においてはミスリードに使われそうなヘンテコ人間である。
彼女は、2年前、ローズグランドホテルの火災で母親・美咲蓮花を喪った。
しかし、実はそのローズグランドホテル火災は、母の開発した「青い薔薇」を盗む為に五人の人間が母を殺し、証拠を隠滅する為に火を放った凶悪事件による物だった。
彼女は、母が最期に遺した五つの薔薇を手がかりにして、「薔薇の名前を持つ人間」をホテルの宿泊客の中からピックアップ。
五つの薔薇の内、四つは燃えてしまったが、彼女は唯一遺った「皇翔」の薔薇の名を持つ、皇翔(すめらぎ しょう)を殺害した。
その後、ビル火災に巻き込まれた「薔薇の名前を持つ人間」たちを集め、母の仇を特定して殺そうと試みる。
そして、彼女がこの聖杯戦争に呼ばれたのはその直後の話である。
また、実は彼女には、生き別れた異父兄がいる。
その名は、高遠遙一。「地獄の傀儡師」を名乗って連続殺人事件を演じ、多くの殺人事件を考案し教唆した指名手配犯であると言う。彼女がそれに気づいたのは、ごく最近。
当初は、皇を殺した事に強い嫌悪感や罪悪感に苛まれたが、「地獄の傀儡師」が自分の兄だと知ったジゼルは、その血脈を信じて、「殺人への自信」を得た。
とはいえ、やはり快楽的に殺人を行う兄とは性格が根本的に異なり、彼女のターゲットは、母の仇に限られている。殺人に対してはむしろ嫌悪を抱く心の方が大きいようだ。
【方針】
他のサーヴァントたちを撃退し、聖杯を手にする。今の彼女は復讐ではなく、母を取り戻す事を優先に考えている。
その上で無関係な人間を倒す事もやむを得ないが、出来得る限り無意味な犠牲を出すつもりはない。
【備考】
都内に「薔薇十字館」という豪邸を構えています。
また、薔薇十字館の一部分は、キャスターの宝具『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』が擬態しています。
候補作投下順
最終更新:2016年03月03日 13:05