最近都内の何処かで、女子高生同士のこんな会話があった。

「ねえ知ってる? 最近変な新興宗教が出来たんだって」
「なにそれー」
「何かよく知らないけど……。『我らの崇める神シドーが降臨すればこんな世界は破壊しつくされるでしょう』とか言って信者を募ってるらしいよ」
「うわぁ……」
「でここからが本題なんだけどさ、……そこの宗教の教祖の姿が明らかに人間じゃなかったんだって」
「それで?」
「だからそこに居るのは皆悪魔か何かで、そこの信者になったらみんな怪物にされちゃうんだよ」
「いやいや、ありえないでしょ」
「まあ私もそんな噂を聞いただけだけど」
「やっぱり……。大体本当だったら画像の一枚位あるでしょ、ツイッターとかにさ」
「……それは言っちゃ駄目でしょ」
「これ言っちゃ駄目なの!?」


 深夜、東京都内の住宅街の一角、そこに最近噂になっている新興宗教の教祖が居た。
 教祖は最近テレビを賑わせる殺人鬼に怒りを覚えていた。
 と言っても正義感からくる怒りではない。ならば何故か。
 それは殺された者の中に同士が居たからだ。
 無残に殺された人の中に、自分が教祖を勤める宗教の信者が居たからだ。
 偉大なる神シドー様に捧げなければならない命を無駄に奪われたからだ。

「まったく、許しがたい蛮行だな」

 自らの信者でない存在がいくら死のうともこの教祖は動じたりしないだろう。
 むしろ与し、共同戦線の一つでも張ることを考えるかもしれない。
 だがあの男はダメだ。
 あれは無差別だ。人間である限り誰であろうと襲うタイプの存在だ。
 そう教祖は感じ取った。
 だからこそ教祖はあの殺人鬼を撃ち滅ぼすと決めたのだ。
 警察が特殊部隊を投入するという話も聞いたが、凡俗が数を揃えようともあの男にはかなわないだろう。
 あれとまともに戦える人間となると、それこそロトの血族でもなければ……。

「ん?」

 件の殺人鬼の事を考えながら歩いていた教祖は、ふと自らの思考に違和感を覚え足を止めた。
 自分の思考の何が引っかかったのか考え、そして気づいた。

「ロトの血族とは、誰だ……?」

 そんな存在はこの世界に存在しないはずだ、居たとしても世界に影響のある存在ではないだろう。

 ――馬鹿な、影響がないわけがない。あの血筋は王族の血筋だ。
 ローレシア、サマルトリア、ムーンブルクの王の血筋が影響のない存在なわけがない。

 ――待て、そんな国はこの世界に存在しない。
 そんなはずはない、私はムーンブルクを滅ぼしたのだぞ!?

「どういう事だ……!?」

 教祖は自分の認識と常識がかみ合わない事に驚愕する。
 驚愕しながらも、彼は考える。

「そもそも何故私は100人近く殺してきた殺人鬼を倒せると考えた?」

 ――特に何らかの戦闘訓練をしたわけでもない自分が、何故?

 そう自らに問いかける。問いかけずにはいられない。
 そして彼は気づく、この世界で生きてきた今までは偽りだと。
 そして彼は解答に辿り着く、自らへの問いの答えに。


「――何故なら私は、闇の大神官ハーゴンさまだからだ!!」

 こうして、教祖もといハーゴンは自分を取り戻した。


「やってくれたな……」

 ハーゴンは偽りの記憶を植え付けられ、偽りの生活をさせられたことに怒っていた。
 どんな目的で、どんな手段をもってしてこんな事をしたかは知らないが、シドー様復活の邪魔をする者は必ず殺す。
 もしもこの所業を許すことがあるとしたら、シドー様復活の為に使えるものを見つけるか、この状況を作り出したのがシドー様であるかのいずれかだ。
 そんなことを考えながらもハーゴンは、現状の再確認をすることにした。

 見た事の無い物、自らの世界とあまりに違いすぎるルールなどハーゴンを戸惑わせるものは沢山ある。
 偽りの記憶で生きてきた日々のおかげで理解できず右往左往することは無いが、いざという時に不覚を取るかもしれん、とハーゴンは考えた。

 とりあえずは自身の所持品を見ることにし、使い方などを確認をしていく。
 所持品は杖とスマホや財布位のものだったが、それでもハーゴンにとっては衝撃的だ。
 スマホのように魔力を用いず遠くの人間と会話ができるなど想像もできない。

「む?」

 ハーゴンがスマホについて思考していると、後ろから殺気を感じた。
 振り向くとそこには、高校生くらいの少年とこの東京で見ることは無かった金髪の剣士が居た。

「何だ貴様らは?」

 ハーゴンが少年と剣士に問うと、剣士は一歩前に出てハーゴンに剣を突き付けながら喋る。

「私はセイバーのサーヴァント。お前はキャスターだな? マスターが近くにいないようだが……」
「サーヴァント? マスター? 何を言っている?」

 セイバーと名乗った剣士はハーゴンの返答に首をかしげる。
 マスターならばともかくサーヴァントは聖杯戦争について把握しているはずなのだから。
 それを見ていた少年はあることに気づく。

「なあセイバー、こいつマスターなんじゃないか? よく見ると左手に令呪があるようだし」
「それは本当ですかマスター!? サーヴァントとしかでは思えない魔力を持っているようですが……」
「相当な怪物だろうな……。だがセイバーなら倒せるだろ?」
「当然ですマスター」
「話は済んだか」

 少年とセイバー、二人の会話が終わる頃合いを見計らってハーゴンは話しかける。
 別に待っている義理も道理もないが、不意打ちでなければ倒せないほどの強さは感じないのでハーゴンは律儀に待っていた。

「行くぞ!」
「イオナズン」

 セイバーがハーゴンに向かって飛び込んだ瞬間、ハーゴンは呪文を唱え攻撃する。
 その呪文で巨大な爆発が起き、後ろの少年には当たらないもののセイバーに直撃した。
 しかし次の瞬間、ハーゴンにとって信じられない事が起きる。

「ハァッ!!」

 何と、セイバーは無傷のままハーゴンに斬りかかってきたのだ。

「何!?」

 驚きながらもハーゴンはセイバーの剣を杖で受け止め、弾き返す。
 その力に今度はセイバーが驚愕する番だ。しかしそんな事ハーゴンは知る由もない。
 そして二人がある程度の間合いを開けた後、ハーゴンが思わず呟く。

「まさか呪文が効かない人間が居るとはな……」
「まあ、そういうクラスだからな」

 会話をしながらもハーゴンは考える。
 呪文が効かない以上、使えるのは直接攻撃と甘い息だけ。
 しかし甘い息をあてられそうな相手ではない。
 そして頼みの直接攻撃も腕力はともかく技量は向こうが上。
 このままでは埒が明かない。そう思った直後

「■■■■――――!!!」

 ハーゴンの後ろから咆哮が辺りに響き渡り、空気が震えた。
 その震源を見ると、そこには少女が居た。
 とても空気を震わせるほどの叫びをしたと思えない、そんな少女が居た

 だがその少女を見た3人は瞬時に理解する、あれは英雄だと。
 あれは類稀なる英雄だと。
 その少女を見た少年は思わず声を漏らす。 

「バーサーカー……?」

 その呟きを聞き、ハーゴンは理解した。

「ほう、この女が私のサーヴァントという奴か」

 そしてバーサーカーを見た瞬間、セイバーは少年の元へ戻っていた。
 そして彼らにとって絶望的な事実を告げる。

「逃げましょうマスター。我らではこの主従は倒せません」
「ああ、だろうな」

 現状セイバーがマスター相手でやっと互角。
 更に強力なサーヴァントが追加された今となっては、セイバー主従に勝てる道理はない。
 だがしかし

「逃がすと思うか?」

 ハーゴンからは逃げられない。
 いつの間にかハーゴンは少年とセイバー二人の背後に回り込んでいた。

「大魔王を気取るつもりはない。それでも貴様等から仕掛けた戦いだ、退けると思うな」
「■■■■!!」

 そしてバーサーカーも距離を詰める。
 こうなればもう少年とセイバーに成すすべはなく、ただ蹂躙されるのみ。
 そして

「ちく、しょう……!」
「申し訳ありません、マスター」

 剣士は消滅し、少年は息絶えた。
 それを無感動に見ながらハーゴンはこう呟いた。

「何故サーヴァントの死体が残らない?」


 その後、ハーゴンとバーサーカーはあの場から逃走した。
 本音を言えば、あの二人から情報収集をしたかった。
 だが、あの場で騒ぎ過ぎたのか警察がやってきてしまったのだ。
 幸い、二人は見られることなく逃走できたが、少年の死体をそのままにしてしまった。

「まあ、今なら死体があったとしてもあの殺人鬼のせいに出来るか」

 少々癪だがな、と付け加えながらハーゴンはこれからの事を考える。
 強力な手駒が手に入ったとはいえ、状況は不明な点が多い。
 そもそもこの強力な手駒が、何故自分に従うのかすら分からないのだから。

「■■■■」

 隣で唸るバーサーカーを見ながらハーゴンは思う。
 こいつは何者だ。

 見たところ少女ではある者の、纏う雰囲気は完全に歴戦の戦士だ。
 それも並大抵でない戦いを越えてきた英雄のものだ。
 そしてこれは直感だが、恐らくこいつは光の、正義の存在だ。
 そんな存在が何故か言葉を話すほどの理性もない。
 ハーゴンからすれば理解不能としか言いようがない。

「まあいい」

 しかしハーゴンは考えるのをやめた。
 いくら考えても結論の出そうなものではないし、そんな事に時間を使うのも馬鹿らしい。
 それよりもこの事態について何か知っている存在を探し、聞き出した方が余程手っ取り早い。

「いくぞ、バーサーカー」

 こうしてハーゴンは狂戦士と共に歩き出す。
 だが彼は知らない。
 このバーサーカーの正体も。
 そもそもサーヴァントがどういう存在なのかも。
 今東京で行われている聖杯を巡っての殺し合いも。
 彼は何も知らない。





【マスター】
ハーゴン@ドラゴンクエストII 悪霊の神々(SFC版)

【マスターとしての願い】
破壊神シドー様復活。

【weapon】

【能力・技能】
  • 呪文
イオナズンとベホイミが使える。
イオナズンは範囲攻撃の爆発呪文。
ベホイミは対象単体を回復させる呪文。1回である程度のダメージを回復させる。

  • 甘い息
喰らった相手を眠らせる息を吐く技。
魔力を用いていないので、何らかの方法で魔術を封じられても使用可能。

  • 身体能力
意外と高く、上二つの能力がなくても並のマスター相手なら十分戦える。

【人物背景】
邪神の復活を企む悪の大神官。

【方針】
何が起きているのか、ここが何処なのかはよく分からないがシドー様の復活を邪魔する者は殺す。
とりあえずは、シドー様の信者を葬った殺人鬼を殺しに行く。
後、この状況がどういう物か把握したい。

【補足】
聖杯戦争を把握していません。
NPCには普通の人間として認識されています。
与えられた役割は、シドーを崇める新興宗教の教祖です。
宗教の信者の内数名が、バーサーカー(SCP-076-2)に殺害されています。







 むかしむかし、アリアハンというところにオルテガという勇者がおりました。
 勇者オルテガは悪しき魔王バラモスを倒すため妻を置いて旅に出ました。
 しかしその旅の途中オルテガは火口に落ちて行方不明となりました。
 アリアハンの人々は、オルテガは死んでしまったと思い悲しみました。

 それから16年後。オルテガの遺志を継ぐ者が現れました。オルテガの娘です。
 オルテガの娘は女の子ながら、勇者となるため男の子のように育てられました。
 オルテガの娘が旅立つ時、アリアハンの人々は心から応援しました。
 それからオルテガの子供は仲間を連れ、様々な苦難に立ち向かいました。
 海を越え、山を越え、最後には空を飛び魔王バラモスと対峙します。

 激戦の末魔王バラモスは倒れましたが、世界は完全な平和を取り戻していませんでした。
 なぜなら魔王バラモスのさらに上、大魔王ゾーマが居たからです。
 大魔王ゾーマはオルテガの娘たちが今までいた世界の下の層にある別の世界に居ました。
 オルテガの娘たちは今までいた世界にある大きな穴に飛び込み、下の世界に向かいます。

 さまざまな困難を越え、オルテガの娘たちは大魔王ゾーマの城に到着します。
 そして城の奥に入ると、そこにはなんと死んだと思われていたオルテガが居ました。
 しかしオルテガは大魔王ゾーマの手下と戦い娘の目の前で命を落としてしまいした。
 それでも娘は悲しみを乗り越え、父の仇、かつて倒したバラモスの弟、ゾンビとして甦ったバラモスと戦い打ち勝ちます。

 そしていよいよ大魔王ゾーマとの決戦。それは魔王バラモスとの戦いをはるかに超えるほどの辛い戦いとなりました。
 ですが、オルテガの娘たちは大魔王ゾーマを倒し世界は平和となりました。
 こうして、オルテガの娘は勇者ロトの称号を得たのです。

 しかし、大魔王ゾーマを倒したと同時に勇者ロトたちが通ってきた穴は塞がってしましました。
 このため、故郷のアリアハンに帰る事が出来ません。
 勇者ロトの仲間は何とかこの事実を受け入れ、今いるこの世界を新たな故郷にしようと考えましたが、勇者ロトは受け入れられませんでした。
 その時の姿はまるでただの少女でした。
 このため勇者ロトは仲間と別れ、一人で旅に出ました。故郷に帰る方法を探すためです。

 ですが、勇者ロトはアリアハンに帰る方法が見つかりませんでした。
 それでも勇者ロトは諦めませんでしたが、1人の男性と恋に落ち子を成しそのまま生涯を閉じます。
 故郷に帰りたいという願いを残したまま。

 勇者ロトの称号は伝説に残りましたが、本当の名前は時の流れの中に消えてしまいました。
 そして、故郷に帰るため狂戦士と化し邪悪の従者と成り果てた今、彼女は勇者であることすら捨ててしまったのです。





【クラス】
バーサーカー

【真名】
無銘(女勇者)@ドラゴンクエストIII そして伝説へ…

【パラメーター】
筋力A 耐久A 敏捷A 魔力B 幸運D 宝具A

【属性】
秩序・狂

【クラススキル】
狂化:B
理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
Bランクだと全パラメーターを1ランクアップさせるが、理性の大半を奪われる。

【保有スキル】
戦闘続行:A
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能なスキル。

仕切り直し:B
戦闘から離脱する能力。また、不利になった戦闘を初期状態へと戻す。

呪文:-
呪文を唱える事で様々な魔術を使用可能となるスキル。
だが狂化の影響で呪文を唱える事が出来なくなってしまっている。
令呪などを用いて一時的に狂化のランクを下げ、会話が可能になる位まで理性を取り戻せばAランクのスキルとなる。

勇者:-
勇気ある者の証、魔王と戦う定めを持った者の称号。
混沌もしくは悪属性のサーヴァント、または魔物や魔族に与えるダメージが大きくなる。
―――だが、狂戦士に勇気など無い。

精霊の加護:-
精霊からの祝福により、危機的な局面において優先的に幸運を呼び寄せる能力。
だが悪の従者と化したバーサーカーをルビスは祝福したりしない。
マスターを善なるものに替えればAランクのスキルとなる。

【宝具】
『偉大なる血統の始まり(ロトのそうび)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
勇者ロトが使っていたとされる伝説の装備。
ロトの剣こと王者の剣。ロトの鎧こと光の鎧。
ロトの盾こと勇者の盾。ロトのしるしこと聖なる守り。
そしてロトの兜の5つで構成されている。
兜については詳しい事は不明だが、最低限何らかの兜は被っている。

【weapon】
ロトのそうびと呪文

【人物背景】
ロトの勇者だった少女。

【サーヴァントとしての願い】
故郷に帰りたい。



候補作投下順



最終更新:2016年03月03日 13:34