• 東京都 新宿区 徳川邸-


「なるほどのォ、では聖杯とはどんな願いも叶えてくれる魔法の道具――なんとも胡散臭いが――で……」
「おぬしは戦争をしている間の儂の従者、もしくはパートナー……それも遥か昔に徳川家に使えた、かの有名な服部半蔵殿である……と」

 広大な屋敷の一室、旅館の宴会場かと疑うような広さの畳部屋で、老人と忍装束を纏った男が問答を交わしていた。
 老人の名は“徳川光成”、天に轟く徳川家の第十三代目当主である。
 一方の忍装束は“服部半蔵”、代々徳川家に仕えてきた伊賀忍者の当主、すでに200年以上前に死んでいるはずの男だ。
 常識で考えるならば決してありえはしない状況であるが、実際起きてしまっているのだから不思議なものである。

 数刻前、ひょんな事から東京を離れられなくなったことを知った光成は自宅に戻り思慮を重ねていた。
 強大な権力と情報網をもった光成が東京の些細な違和感から、刃牙達や自らの使命を思い出すのに時間がかからない事は明白であった。
 そして現在、光成は突如現れた半蔵に対話を持ちかけられ、徳川邸の一室で事の委細を聞き出していたところである。
 その際謎の忍装束を不審に思った部下を押し黙らせて、人払いをさせるのに苦労したことは想像に難くないだろう。
 光成が半蔵の話をまとめたところによると、この東京は偽りのものであり、万能の願望機たる“聖杯”を求める戦争の会場であるらしい。
 そして自分はその参加者に選ばれ、聖杯を得るために過去・現代・未来から呼ばれる英雄、“サーヴァント”とともに他の参加者を打ち倒していかねばならないらしい――ということだった。
 ここで一旦光成は自らがまとめた情報を半蔵の正体の考察と交えて、冒頭の通りに半蔵へ確認をとった。

「概ね光成様の認識の通りに御座います。――ですがただ一つ、拙者の“服部半蔵”というこの名は代々伊賀忍軍の当主に襲名される名。
 闇に生きる拙者は表に名の残らぬ存在故、光成様の連想される者とは異なる存在でありましょう」
「ふむ、クローンとはいえ宮本武蔵をこの目で見ることができて、次はかの服部半蔵をもこの目で……と思ったが、そう上手くはいかん物か」
「……光成様、拙者は闇に生きる者なれど、鍛錬により身につけたこの伊賀忍術は陽の下に出ても決して劣らぬ物だと矜持しており申す。
 然らば、光成様の焦がれる“服部半蔵”をも超える忍の妙技、御覧に入れてみせましょう」
「――ならば良しッッッ」

 半蔵の答は光成にとって大変満足のいくものだった。
 その武力で現代まで名を馳せる強者達、その中でも忍者といえば真っ先に誰もが連想するであろう“服部半蔵”というビッグネーム。
 初めこそ服部半蔵は沢山いると聞いて少し意気消沈したものの、ここにいる半蔵もその代では伊賀忍軍の当主、それに彼の者よりも高いパフォーマンスをしてくれるというだけの意欲もある。
 ならば彼こそが、この徳川光成の望みを叶えるに相応しい者であるのだろう、と光成は考えた。

「半蔵殿、儂が聖杯に望む願いはもう決まっておるが、おぬしは聖杯に何を願う?」
「……拙者は徳川家の為に持ちうる限りの全ての技を以って尽くす事を庶幾といたし申す。故に光成様の従者としてこの血に召喚された刻より、この服部半蔵、願いは成就したも同然に御座います」
「それはありがたい限りじゃのォ……ならば、このワシに課せられた天命を果たしたいのじゃ。
 その聖杯とやらならば、もはや世界中だけじゃない、人類史上の――戦いたくて、戦いたくて、戦いたくて、戦いたくて、たまらない奴らッ
 宮本武蔵vs佐々木小次郎? 劉邦vs項羽? 同じ時代だけじゃない、アーサー王と呂布なんてのもあるかも知れんッ
 そういった強者を求める奴らの夢を叶える壮大な結婚相談所を作るんじゃ」

 徳川光成が語る夢は本来ならばありえないこと、文字通り夢物語である。
 しかし、今実際に目の前に2~300年前の人物が存在しているのだ。
 歴史を学び、恋焦がれ、妄想し、現代で自分にできることならなんでもやった。
 そんな夢が叶う機会があるのならば、欲しなければ嘘というものだ。

「のォ半蔵殿、この徳川光成の願い、叶えてくださらんかな?」
「委細承知。伊賀忍軍、服部半蔵! 忠君の義に従い、此度の聖杯を光成様の手に納めて御覧にいれ申す!」
「……ありがたい」

 方や歴史上の猛者、方や忠君の子孫、互いに尊敬し合い、少なからず信頼も生まれている。
 問答の大まかな議題を話し終え、光成はここで一服と煙管を吹かす。

「よォしッッ そうと決まれば早速他のサーヴァント達も探さねばならんッ
 他のもの達も半蔵殿と同じく歴戦の猛者ならば、その戦いを見逃すわけにはいかんからのォ!」
「――では、拙者が偵察に……」
「いや、半蔵殿は出張らなくて良い。儂は徳川光成じゃ、こういう時に権力を使わんでは宝の持ち腐れというものじゃ。
 儂の持てる全ての情報網でサーヴァントとそのマスターを見つけ出し、一組に3人程度ずつビデオカメラを持って待機させるのはどうじゃ?
 半蔵殿は儂と茶でもシバイてごゆるりと待っておってくだされば良い」
「………………御意」


 徳川光成とは目的の為なら自分の権力や、命さえも出し惜しみしない男である。
 光成は半蔵を部屋に残して、自分のアイデアを部下達に知らせるためにさっさと出て行ってしまった。
 諜報や偵察の任務を得意とする半蔵はなんとも出鼻を挫かれた気分になってしまった。
 しかし、光成のそばで身の守りを最優先する事が大事だ、と半蔵は思い直し、そのまま霊体化して部屋から消え去った。
 誰もいなくなった部屋に残ったのは、遠くから聞こえてくる光成達の喧騒だけであった。
 ――余談だが、光成が聖杯戦争の話を部下たちに理解させ、任務に当たらせるのには相当苦労したようである。





【クラス】 アサシン

【真名】服部半蔵@サムライスピリッツシリーズ

【パラメーター】
 筋力B+ 耐久C 敏捷A+ 魔力B 幸運C 宝具B

【属性】秩序・善

【クラススキル】
気配遮断:A+
 サーヴァントとしての気配を断つ。
 完全に気配を絶てば発見することは非常に難しいが、攻撃態勢に移るとランクが下がる。
 アサシンの場合保有スキルによって攻撃時でもある程度隠密性を保つことができる。

【保有スキル】
心眼(真):B
 修行・鍛錬によって培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
 また、生前半蔵の心眼に対し正体を隠し通せたものが極一部(黒子)を除いていないことから、同ランク相当の真名看破も備えている。

忍術:A+++
 忍者が使う体術や忍法などの技術をどれだけ極めたかを表わす。
 修得の難易度が高いスキルで、他のスキルと違ってAランクでようやく「修得した」と言えるレベル。
 攻撃態勢時に発生する気配遮断のランク低下を抑えることができる。

武器破壊:B
 忍術によって対象の武器を破壊する。生前の戦闘時に相手の武器を大量に破壊・弾き飛ばしたことに由来する。
 対象が人間の持ち物やをサーヴァントの持つ無銘な武器であれば確実に破壊できる。
 しかし宝具または相手サーヴァントに由来する重要な武器であれば、ほとんどは破壊できるが場合によっては弾き飛ばすのみになってしまう。
 後述する怒り爆発状態だと成功率が高まる。

【宝具】
『精神一到』
 ランク:C 種別:対人(自身)宝具 レンジ:0 最大補足:1人
 自身の感情を操作することで有利な立ち回りをする事ができる。また、精神系の干渉に強い耐性を得る。
 また、ある状況下において2通りの特殊な状態になることができる。
 『無の境地』
  死が迫っている状況や体力が低下している状況において、精神集中によって無の境地に至る。
  一定時間思考能力や身体能力が通常の4倍に増幅し、相手がスローモーションになったかのように感じ取ることができる。
  この状態の時、更に加速して相手に知覚されずに切り裂く”一閃”を使用できる。
  ”一閃”において加速するスピードと威力は、発動時点における無の境地の残り時間に比例する。
 『怒り爆発』
  相手の攻撃や精神集中で怒りを爆発させ、肌に赤みが増して一時的に興奮状態となる。
  怒りとともに周囲に爆風が起こり、攻撃力の上昇や技の複雑化等の効果を得る。
  また、この爆風が起こっている間はすべての攻撃を完全に無効化する事ができる。
  アサシンはその性格から怒るのに時間が掛かるが、一度怒ると冷めにくい。

『禁忌 ”モズ砕き”』
 ランク:D~B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
 相手の腕や肋などの骨を砕いた後、頭から地面に落として頭蓋骨を粉砕し絶命させる奥義。
 条件が一つ揃うごとに威力が跳ね上がっていき、3つ全て揃えると相手がいかなる状態であろうと問答無用で死に至らしめる。
 3つの条件とは、「相手の体力が精神力を下回っていること」「自身が怒り爆発状態であること」「自分が武器を持っていること」である。
 これを全て揃った状態で使用するとアサシンの言霊通りに相手の骨を砕き腕は裂け、最終的に身体が砕けて魂が消滅する。
 条件が揃っていない場合は単純なダメージを与えるのみだが、条件が一つ揃うごとに威力が跳ね上がっていく。


【weapon】
 忍者刀:無銘の一般的な忍者刀。武器が破壊される事が常であったため、効果なものは持たない。
 忍具:手裏剣や火薬等の忍術に使う道具。

【人物背景】
 徳川幕府に仕える伊賀忍軍の所属。幕府の要人から受けた密命を忠実にこなす。
 その正体は謎に包まれているが、忍としての腕は凄まじく、歴代の伊賀忍者の中でも五指に入る実力者と言われている。
 ”半蔵”の名前は代々服部家の長男が襲名するが、今回のアサシンは息子に”真蔵・勘蔵”を持つ歴代最強の半蔵と謳われた男である。
 常に身に着けている真っ赤なマフラーは忍びに適していない様に思われるが、師匠から貰ったものであるので外すことはない。

【サーヴァントとしての願い】
 徳川に使える事のみ。


【マスター】徳川光成@グラップラー刃牙シリーズ

【マスターとしての願い】
 全ての強者(英霊)達の戦いを観たいッッ
 彼らに思う存分闘争わせてやりたいッッッ

【weapon】なし

【能力・技能】
 世界トップクラスの財力を誇る日本最後の大物、無邪気で闊達としていながら人間的に熟達している。
 その権力から日本では彼に不可能は殆ど無く、実の姉や範馬勇次郎以外は彼に頭が上がらない。
 どんな強者を前にしても畏れない胆力を持っており、肉体的には貧弱だが武術格技を見つめ続けた洞察力は本部以蔵をも唸らせる程。

【人物背景】
 徳川家十三代目当主。日本有数の富豪であり、政治の場ではフィクサー(黒幕)としての高い権力を見せる。
 現役の総理大臣さえも畏まり恐縮するほどだが、自身を結婚相談所の職員だとしており、強者同士を引き合わせて戦いの場を提供することが自分の使命だと財産はおろか自分の命すらも惜しまない。
 強者達の戦いへの熱の入れようは凄まじく、範馬勇次郎と範馬刃牙の親子喧嘩を見た際は重度の癌によって蝕まれていた体が病巣一つ無い健康体になっていた程である。スゴイね人体

【方針】
 その膨大な情報網からマスターやサーヴァントを探しだして監視・記録する。
 戦闘は極力行わない。



候補作投下順



最終更新:2016年03月03日 23:02