――えー……みなさん。ご無沙汰しております、古畑任三郎です。
早速ですが、みなさんにとって、『英雄』、もしくは、『ヒーロー』とは、どんな人たちの事でしょうか?
子供たちにとっては、スポーツ選手やテレビのヒーロー。
ファンにとっては、SMAP。
特にええ、木村くんなんかは、いかにも『ヒーロー』って感じです。んふふふふふふ。
……私ですか? そうですねぇ、んー、……私にとってみれば、そう、シャーロック・ホームズが心のヒーローです。
ところで、世の中がこれだけのヒーローで溢れているとして、もし、ヒーローだけが行き着く場所があるとすれば、どんなに豪華な面々が揃っているんでしょうねぇ?
気になりませんか? 私は、すごく気になります。
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古畑
任三郎
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真っ黒なスーツに身を包んだ、ひょろ長い中年男が金色の自転車に乗って事件現場に現れた。
この異常事態の際にも、相変わらずのマイペースで、あまり緊張感がない。
この男が刑事だという男を、誰が信じるだろう。
特に襟足の長さは、誰が見ても刑事と思えない程だった。
こう見えて、階級は警部補である。
一応、それなりに出世した部類だと思うが、当人のやる気というのは良い意味でも悪い意味でも図れない。
出世競争に興味があるかといえば、そんなにあるわけでもなく、正義感がないように見えるかと思えば、犯罪者を険しい目でどこまでも追いつめようとする事もある。
それでいて、どんな犯人に出会ったとしても、相手が認めてしまえば紳士的でもあり、犯人に対しても、被害者を蔑ろにしない程度に共感をしようとする。
古畑に逮捕されて古畑を恨んだ犯人というのは、むしろ少ないくらいだ。
こんな功績もあって、おおよそ、この管轄の「名刑事」と評価して差し支えないだろう。
「あー、はい、はい、おつかれさん。いや~まったく、いきなり大変な事件だ~」
そんな刑事――古畑任三郎は、現場に、ようやく現れたのだった。
現場に必ず自転車でやって来るポリシー(?)故に、その行動が多少遅れるのもまあ仕方がない。
現場の彼の部下たちも、それをよく理解しているらしく、古畑の行動をいちいち咎める事はなかった。
とりあえず、古畑は、黒い手袋をはめながら、野次馬をかきわけて、現場の黄色いテープをくぐる。
その中に入ると、早速古畑は苦い顔をした。
「うわっ、話には聞いてたけど、酷いなぁ、これは……」
古畑がやって来たのは、百名以上が殺されたという江戸川区の殺人現場だ。
とてつもない血の匂いが充満していて、古畑は鼻を塞いで、手をパタパタさせている。
元々、古畑は血を見ると眩暈を起こしてしまう性質なので、捜査を任された事については不服でもあった。
尤も、都内の警察は手が空いていれば、この事件を任されるし、捜査一課では殺人事件は当たり前の話なので、元を辿れば、就いた職が悪かったと言えるかもしれないが。
とにかく、一刻も早く、捜査状況を知っておきたい古畑は、手近な警察官に声をかけようと思った。
「ねえ、ちょっと、誰か説明してくれる」
「あ、は、はい。じゃあ、古畑さん。僕が説明しますよ」
「お前じゃ駄目だよ、誰かもっとマシな刑事呼んできてよ」
事件について喜々として説明を始めようとしていた禿げた中年刑事に対して、古畑は目も合わせずに言った。
その刑事の事を全く見ようともせずに、きょろきょろと優秀な刑事を探す。
……まあ、この刑事以外ならば誰でも良いのだろう。
当の中年刑事は、いつもこの扱いに慣れているので、めげずにニコニコ笑っていた(どこか寂しそうでもあるが)。
そこで、殺人現場の捜査をしている、制服姿の警官を呼び止める。
「あっ、ちょっと、君、君、現場の状況、教えてくれる?」
「はい!」
それから、その刑事は説明を開始した。
被害者の数すら判然としていないなど、捜査は殆ど進んでいないが、犯人の手がかりは多い。
犯人は監視カメラにはっきりと映っており、また、多くの生存した目撃者もいる。
そのすべてが告げているのは――犯人が単独犯であり、「殺害」を行ったという事実。
爆弾事件でもなく、マシンガンを乱射したという訳でもない。
普通に考えれば、「ありえない」事件。
「え、これ全部一人でやったの?」
「はい。そのようです」
「ふうーん……」
実際のところ、江戸川区内の警官が応援に来たものの、その全てが殺害されるという信じがたい事態を引き起こっている。
犯人は、「超人」と見ていいだろう。
警察の手に負える相手ではないが、それでも警察は職務上、相手にしなければならないわけだ。
ちなみに、各管轄の名刑事は一度、この事件に向き合うべく現場に呼ばれているようで、古畑もその一人になったという事である。
現在、犯人も現れていないので、この近辺も安全であるらしいが、警官を大量に殺害した狂人となれば、どこも安心できる場所にはならない。
古畑自身も、ここにいて、怖くないわけではない。
何か、恐ろしい予感がしてならなかった。
とにかく、全て訊いたところで、古畑は、刑事にある質問をした。
「――ところで君名前なんだっけ?」
「向島です!」
「向島くんね、覚えとく」
「はい!」
この向島という男と同じ会話を交わすのは何度目だろう。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
……というわけで、古畑も捜査の協力を行わなければならないわけだが、これが実に厄介だった。
警察組織は本来、市民の平和を守らなければならない組織であるものの、実情は管轄争いも激しい世界だ。
こうして、多数の刑事が一同に集められると、どこかが「お手柄」の為に必死になったり、どこかが「面倒だから」と押し付けたりという事が始まるのである。
その上、犯人のその刺青が原因で、外国人犯罪説なり、暴力団説なり、様々な憶測のもと、捜査一課と公安部との対立が発生するのも目に見えている。
古畑としては、それは避けたいところであるし、加えて言うならば、古畑は何となく真相を理解していたので、早めに現場を撤退して自転車を推しながら、独自の「聞き込み」に回る事にした。
聞き込みといっても、今更、住民相手にする仕事は殆どない。
遅れてきたゆえに仕事も他の連中にかなり取られたので、今は自らの「相棒」にでも相談させてもらう事にした。
適当な公園のベンチに座り、半分サボっているような形であるが、古畑は、この事件について自分より詳しい男を召喚する。
「出てきていいよ、セイバー」
『……わかった』
一人で喋っているようだが、ここには、肉体の無い「もう一人」がいる。
彼が声を返してくるので、とりあえず古畑はそれと小声で会話を交わしているのだった。
それは、人間には視えない、「霊体」の状態で、古畑の傍でずっと行動していたのだ。
しかし、今、肉体を実体化する。
現れたのは、濃い顔の若い男性だった。
彼の名は、ギャバン。――フランスの有名な映画俳優を彷彿とさせる名前である。
日本人名も持っていて、そちらの名前は「一条寺烈」と云うらしい。
聖杯戦争では、「セイバー」のクラスで呼ばれている古畑のサーヴァントであった。
本職は、古畑と同じく、刑事だ。
「聞いた?」
「ああ、酷い事件だな。早速、他のサーヴァントが暴走を始めたと見て間違いない」
刑事という立場上でもあるが、セイバーは極めて冷静に言った。
頭脳労働タイプの古畑に対して、彼はもっと肉体派な印象を受けるのだが、それでも、やはり冷静に捜査を行う仕事意識も忘れてはいない。
「正直言って、私も半信半疑だったんですが、う~ん……困りましたぁ。
給料や危険手当が出るわけでもないし、私がこれからどれほど活躍しても誰も見てくれないし評価もされない。
しかし、確かに命にだけは関わるし、何より疲れる。……これほど割に合わない仕事はない」
「……捜査は難航するだろう。しばらく元の世界にも帰れずタダ働きの上に、いつも以上に忙しい」
「ええ、だから私もかなり頭を悩ませてるんですよ。私これでも、なかなか……んふふふふ、忙しいもので」
「すまない。察する」
「いやいや」
どこか笑みを浮かべつつも、内心苛立っている古畑の気持ちは、セイバーも理解できた。
願いがあるならばまだしも、特に理由もなくこの殺し合いに招かれた男が、普通、これほど平静でいられるはずがない。
多くは、元の世界での職務や生活もあるし、それぞれ危険とは無縁でいたい人生があるだろう。
それを壊して聖杯に呼ばれて、挙句に警察としての職務は相変わらず休めないのだから、怒りを覚えるのは無理のない話である。
しかし、あまり顔に出さず、飄々としていられるのが古畑任三郎であるわけだ。
「で、セイバー。誰の仕業だと思います、これ」
「まだわからないな……少なくとも、俺の知っている英霊ではなさそうだ。
クラスも、キャスターだとすればやり方が派手すぎる。魔力を得る為の大量虐殺というわけでもない」
「という事は?」
「殺人そのものが、目的だというように思える……やり方は通り魔的だ」
そう訊いて、古畑は少しだけ頭を捻ってから、答えを推察した。
「となると、バーサーカー?」
「ああ、そうだと思う」
「――あーん……つまり」
「つまり?」
「一番厄介な相手がもう動き出している。私は、職務上、早速それと戦うかもしれない危機に直面している。
どうして私がそんな厄介な犯罪者と戦わなきゃならないのか、そして、私はどう戦えばいいのか!
……私がこれから考えなきゃならないのは、つまり、そういう事です。しかも、早速これがかなり深刻になってきた」
「……」
「うん~、残念ですが、私にはそれ以上、考える事ができません。
おそらく、説得にも応じないし、法もこれでは無力だ。何の対策も練れない。
そして、私は銃もろくに撃てないし、はっきり言って、運動能力もそこらの警官よりは下です。
だとすれば、私の命運はセイバーに託すしかない……。
でも、はっきり言って私、あなたがどれくらいの実力持ってるのか知らないわけですから、簡単に託せるわけがない。
犯人に遭遇した時、あなたが私を守れるかどうか、それは、イチか、バチかです」
古畑の口ぶりは実に正直だった。
しかし、セイバーとしても、配慮などいらないと思っている。
せめて、意気込みくらいを伝えておこうと口を開いたところで、古畑が先に口を開いた。
「……ただ」
「た、ただ?」
「――期待くらいは、しておきます。
何せ、この私が呼んだサーヴァントですから」
古畑は、悪戯に微笑みながら、セイバーを斜めに眺めた。
それで、セイバーは彼に向けて、真摯な瞳で答える事にした。
「……それには応える。安心してくれ、マスター」
「ええ、じゃあ私はまたしばらく適当に捜査します。
聖杯戦争の手がかりを得られるよう――」
そう言って、また古畑はどこかで捜査を続行し始めた。
【CLASS】
セイバー
【真名】
ギャバン(一条寺烈)@宇宙刑事ギャバン
【パラメーター】
基本
筋力D 耐久D 敏捷D 魔力D 幸運C 宝具EX
コンバットスーツ装着
筋力B 耐久B 敏捷B+ 魔力D 幸運C
【属性】
秩序・善
【クラススキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
騎乗:A
騎乗の才能。
大抵の乗り物や魔獣・聖獣ランクの獣を乗りこなす事が出来る。
【保有スキル】
戦闘続行:B
名称通り戦闘を続行する為の能力。
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。「往生際の悪さ」あるいは「生還能力」と表現される。
単独行動:C
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。
【宝物/宝具】
『超次元高速機ドルギラン』
ランク:A++ 種別:宝庫 レンジ:∞ 最大捕捉:-
セイバーの任務の為にあらゆる必要宝具・道具を転送してくれる宝庫。
聖杯が再現している都市の延長線上にある宇宙空間に存在しており、「ギラン円盤」と「電子星獣ドル」の二つのパーツから構成されている。
セイバーの現界中は常にこの宝具も現界しており、内部に保管された宝具を要時には一瞬で宝具を彼の下へと送ってくれる。
また、これらの宝具は宇宙空間では魔力供給なしに存在する事が出来、常に現界していても負担はかからない。
甚大な魔力消費が起こりうるのは、この宝具を分離させ、聖杯戦争が行われている都市に呼んだ場合や、その他の巨大な宝具を使用した場合など、直接セイバーの身に宝具を転送した時である。
『コンバットスーツ』
ランク:B 種別:対人用の宝物 レンジ:∞ 最大捕捉:1(自分)
一条寺烈(ギャバンの地球人名)がスーツ装着コード「蒸着」を発することによって、ドルギランから転送されてくる特殊軽合金グラニウム製のスーツ。
「宇宙刑事ギャバンは戦闘の際、コンバットスーツを蒸着するタイムは僅か0.05秒にすぎない。」
つまり、蒸着コードを発した場合、瞬時に変身が完了し、宝具発動の隙は殆どなくなるという、迅速な戦闘に向いた宝具である。
主に格闘戦や、レーザーブレードという剣を用いた剣術で敵と戦う。ちなみに、このレーザーブレードこそが彼のセイバーたる所以。
必殺技は「ギャバンダイナミック」。
『電子星獣ドル』
ランク:A+ 種別:対城宝具 レンジ:- 最大捕捉:1(自分)
ギャバンの活動拠点、移動基地となる超光速宇宙船「超次元高速機ドルギラン」から分離する巨大な青龍ロボット。
普段は聖杯が再現している都市の延長線上にある宇宙空間に存在しているが、彼が呼ぶと現れる。
炎を吐き、レーザーを放って攻撃するとんでもない強さのロボットであり、使用するとマスターが魔術師であっても甚大な魔力消費に悩まされる事になる。
また、街に被害が及ぶ可能性を考慮し、余程巨大で対処しかねる敵でない限りは殆ど使用する事がない。
【weapon】
なし
【人物背景】
かつて銀河連邦警察によって地球に派遣された宇宙刑事。
父は同じく宇宙刑事で地球に赴任していたバード星人・ボイサーで、母親は地球人の一条寺民子。
この為、地球上では、母親の姓を借りて「一条寺烈」を名乗り、アバロン乗馬クラブで働いていた。
地球には失踪したボイサーの後任として派遣され、地球を狙う宇宙犯罪結社マクーを相手に任務を全う。
その果てに父を見つけたが、既に父はマクーによる拷問で肉体が限界に達しており、再会から間もなくして、父は息を引き取る事となった。
マクーを滅ぼした後も、両親の想いを継いで、愛した地球や宇宙を守るべく、銀河連邦警察で後進の育成に関わり、時に地球で新たな犯罪組織と戦う。
【サーヴァントとしての願い】
なし
【マスター】
古畑任三郎@古畑任三郎
【マスターとしての願い】
元の世界への帰還
【weapon】
『自転車』
移動に使用している黄金色の自転車。ブランドはセリーヌ。
【能力・技能】
高い推理力を持ち、何人もの殺人犯を追いつめた他、殺人を起こす前に阻止した事もある。
ボウリングも得意だがフォームは独特。
英語も喋る事が出来るが、海外ではミスを連発してしまう。
ミーハーで芸能人にも詳しく、SMAPの出演番組もよく知っていた(ただし、捜査前はそこまで興味を示していなかったのを見ると、捜査にあたって知った可能性が高い)。
ゴールデンハーフのファンクラブ会員でルナのファン。
シャーロック・ホームズにも詳しい。
【人物背景】
警視庁刑事部捜査一課の警部補。
鋭い観察眼と直観力でわずかな手がかりや発現の矛盾を即座に見抜き、疑わしい容疑者にしつこく付きまとって巧みな話術で執拗に質問をしかけて追及する。
血を見るとめまいを起こし、拳銃を持たず、警察手帳は「なくした」などと語っている、ほぼ警察官に向いてなさそうな性格。
紳士的で頭が切れる一方、神経質で気難しい性格でもあり、子供のような負けず嫌い。
【方針】
とにかくどういう形であれ元の世界に帰還しておきたい。
また、他のマスターの撃退は行わない。
候補作投下順
最終更新:2016年03月09日 23:14