漆黒に塗りつぶされる膨大な宇宙空間の中を、宛てもなく彷徨う一つの生命があった。
それは進化に進化を重ねて不老不死の存在へと昇華された生命体。
進化の果てに肉体すら持つ必要のなくなった不定形精神体。

彼は、不老不死の存在として生を受けてから2億年もの間、宇宙を旅してきた。
しかしその旅のほとんどは何もすることのない、「退屈」で埋め尽くされていた。
死とは無縁の命を持ち、気が遠くなるほどの時間。
その中で少しでも退屈を紛らわすために、彼はある趣味を持つに至った。

それは、惑星のコレクション。
宇宙空間を進みながら、彼は自ら勝ち取ってきた惑星を見る。
自分の身体の一部を公転軸にして回り続ける美しい星々の数々。
これらをいつでも見れるというだけでも彼の退屈は薄れ、彩られた一時を過ごせるというものだ。

この中には、その惑星に住んでいた生命体から勝ち取ったものもある。
彼の選別した、その惑星の代表となる者との勝負。
自身をその惑星のルールに合った大きさと能力に抑えた上での、惑星の所有権を賭けた闘争。
闘争は、惑星収集に並んで彼に退屈を忘れさせる重要な存在意義の一つだった。
わざわざ惑星を得るために勝負をするという回りくどい方法を取るのも、数千年に一度しか出会えない知的生命体と戦う機会を作るために他ならない。
過去には、次元を歪めることで多数の世界から強者を呼び出して戦わせたこともある。
この退屈を少しでもしのげるのであれば、彼はどんなこともやってのけるであろう。

悠久の時の中、宇宙を渡り歩く惑星のコレクター。
惑星を破壊するなら数分も要さない圧倒的な力の持ち主。
その名は、パイロン。



『…む?』

宇宙空間を漂い、この2億年の中でも9割以上を占めるであろう退屈な時間を過ごしていた時、パイロンはある連続した次元の歪みを感知する。
歪みに次ぐ歪み。パイロンには、あらゆる世界から何者かが呼び出されていることが容易に想像できた。
パイロンがまず感じたのは、懐かしいという感覚だった。先に述べたように、パイロンは次元を歪めて強者を召喚したことがある。

『私の他にこのような芸当を扱おうとは…面白い』

自身と同様のことをやってのける者ならばさぞ強い力を持っているに違いない。
闘争に興じるために。あわよくばその者の星をコレクションに加えるために。
パイロンは期待に胸を膨らませながら、次元の歪みの生じる方向へと向かった。








『これは…随分と面白そうな催し物をしているではないか』

次元の歪みが生じた座標へたどり着いたパイロンは、いたく感動していた。
そこは、惑星クレイを侵略したリンクジョーカーによって再現された東京。
パイロンはそこへたどり着くとまず、不可視かつ感知不可能な精神体で東京全体を包み込み、調査を行った。
一体ここで何が起こっているのか、何が起こっているのか、何のために用意された場所なのか。
それを東京にいる者の話から一人一人余さず盗み聞き、この東京について理解を深めていく。
その気になれば40万光年の大きさにもなれるのだ。東京全域に体躯を広げることは造作もないし、視覚と聴覚も身体の隅々から受容できる。
誰がどんな話しているのかは個人レベルで特定できた。

『聖杯戦争――サーヴァントを使役し、万能の願望機を巡った闘争、か…面白い、面白いぞ!!どれ、私も混ぜてもらおう』

東京中にいる参加者から聞いた話により、聖杯戦争やサーヴァントについては把握した。
かつてパイロンの侵略したことのある青い星――地球――の都市に数多の世界にいる人間を集めてのサーヴァント同士の闘争。
それは闘争を求めているパイロンにとっては願ってもない催事だった。
パイロンはすぐさま聖杯戦争へ参加することを決めた。この東京にいる強きサーヴァントとの闘争を満喫するために。

『とは言っても、部外者の立ち入りは《別次元からの観測者》にとっても不愉快であろう。ここは聖杯戦争と地球のルールに従うとしよう』

そう言ってパイロンは容姿を人間のものに変化、己の肉体を炎の塊によって可視化し、能力をサーヴァントのものにスケールダウンする。
聖杯戦争ではサーヴァントが戦うものと認識していたため、肉体は人間のものに、強さはサーヴァント並に自身を弱体化したのだ。
闘争を楽しむのだから、一方的な戦いはつまらない。

『そうだ、聖杯戦争のルールには《真名を隠す》というものがあったな。ならば私も独自のクラスで現界したサーヴァントという体で東京に入ろうか』

そしてパイロンは《別次元からの観測者》――リンクジョーカーに向けて、自称するクラスを声に出してから聖杯戦争の舞台へと入っていった。

『我が名はパイロン……《イレギュラー》のサーヴァントとして、君たちの聖杯戦争とやらに参加させていただくことにしたよ』

マスターでもなければサーヴァントでもない…そんな外部からの侵入者のパイロンに《イレギュラー》の名はこれ以上なく相応しい名前であった。





【クラス】
イレギュラー

【真名】
パイロン@ヴァンパイアシリーズ

【パラメータ】
筋力? 耐久? 敏捷? 魔力? 幸運? 宝具?

【属性】
混沌・中庸

【クラス別スキル】
単独行動:EX
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
そもそもサーヴァントではなく、あくまで外部から介入した異星人に過ぎないパイロンはマスターなど不要である。
パイロンはあくまで本人のポリシーにより自身をサーヴァントと同格まで弱体化させており、便宜上サーヴァントとして扱われているだけである。

【保有スキル】
不死:A
四肢を切断される、頭蓋を穿たれる、心臓を破壊される。と言ったダメージから復帰出来るスキル。
事実上、戦闘続行や再生と言った、肉体の頑強さを底上げするスキルを多く複合したスキルである。
パイロンはそもそも肉体を持たぬ生命体で物理ダメージなどは全て無効化されるが、相手と対等に戦うために敢えて実体を持って攻撃を受けている。
また、不老でもある為、時の劣化を受け付けない。

スケールダウン:EX
自身の大きさと能力に制限をかけるスキル。つまるところ手加減。
本来パイロンは不可視のエネルギー生命体だが、侵略した星のルールに則って相手に合わせた形状・大きさ・パラメータに変化する。
パイロンの降り立った場所は地球の東京を再現した空間で、聖杯戦争の舞台となっているため、
パイロンはそれらのルールに則り自身をサーヴァントのレベルにまで力を抑えている。
肉体は人間の形へと変化させて可視化しているが、闘争をより楽しむために相手によってパラメータを自由に変化させることができる。
パイロンがその気になれば全パラメータをA+++ランクまで引き上げることも可能。なお、パイロンが全力を出すと銀河が消し飛ぶので全力は基本出さない。
また、パラメータはパイロンの気分次第で大幅に変動することがある。

【宝具】
『我こそは宇宙の真理(コズミック・ルーラー)』
ランク:? 種別:宇宙的存在 レンジ:4000000000000000000000(40万光年) 最大捕捉:980000000000(銀河に人口70億の惑星が140個あると仮定した場合)
物質としての定形を持たない、不定形精神体とでも称すべき存在であるパイロンそのものが宝具。
パイロンの体は物質としての形態が元々存在しない不定形の精神体である。
よってこの形態のパイロンにはいかなる攻撃も通用せず、またエネルギーとしての形態が存在しないのでその体は不可視である。

前述のように、スケールダウンによって自身力を大きく抑えることで可視化、サーヴァントにも対抗可能となっている。
その見た目は不定形の炎そのものが人の形に擬態している外見。形状はパイロンの意思で自由に変えることができ、
巨大化して怪獣や巨大ロボットとも戦うこともできる。

【weapon】
己の身体
不定形なため、形を自由自在に変えることができる。
自身の一部を切り離して分身を作ったり、爆発する火球を作ることもできる。

【人物背景】
ヘルストーム星出身の地球外生命体。また、あり余る長い寿命の中の楽しみとして格闘技も嗜んでいる。
元々はどこかの恒星系に住む知的生命体であったが、進化を続けるうちに不老不死の絶対的能力を得た。
美しい星をコレクションすることに存在意義を見出しており、2億年もの間宇宙を旅しながらそれを行ってきた。
生物がいない、つまり「誰のものでもない」状態の惑星の場合は彼がそう望んだ瞬間から「彼のもの」なのだが、
生物がいる惑星の場合は「現時点では彼らのもの」と判断し、すぐには手を出さない。
ではどうするかと言うと、その惑星の住人の代表を彼なりの基準で選考し、その相手に合わせた形状・大きさに自身をスケールダウンした上で所有権をかけて勝負をする。
この戦いは、長きに渡る宇宙の旅の退屈の中でも数少ないパイロンの楽しみとなっている。
勝利した暁には、その惑星を念力で動かして自分の持ち物にしていた。

本体は地球を軽く凌駕するスケールであり、最大で40万光年の大きさになれる。
戦いの際は地球のルールに則って、人間大の姿で力を制御して戦っている。「本気を出したら銀河が消し飛ぶ」らしい。
相手の攻撃が通用しないのでわざわざ自分でダメージを受けるなどフェア精神を持っているようにも見えるが、
実際の所は自らがより楽しむためのお膳立てに過ぎず、結局の所自己満足の為でしかない。

なお、パイロン自身はマスターでもサーヴァントでもなく、
宇宙のどこかでリンクジョーカーの行う聖杯戦争に興味を持ち、それに介入したイレギュラーでしかない。
このステータスもパイロンがサーヴァントと同レベルに能力を抑えたことで設定された便宜上のものであり、
『イレギュラー』のクラスは『真名を隠す』という聖杯戦争のルールに則ったパイロンの自称に過ぎない。

【サーヴァントとしての願い】
この聖杯戦争とやらでの闘争を満喫する。



候補作投下順



最終更新:2016年03月14日 01:40