ペガッサ星人の前に居るのは──かつて、ウルトラ兄弟を倒す事をもくろみ、地球に現れた極悪宇宙人、テンペラー星人であった。
 いや、厳密には今のテンペラー星人は、『アーチャー』のクラスで呼ばれたサーヴァントか。
 ともかく、テンペラー星人は、ハサミ(これが手である)をカタカタと鳴らしながら高笑いして、ペガッサ星人に言う。



「ふっふっふっ……それにしても、ペガッサ星人、私のマスターがあんただったのは幸運だわよ。
 ────さあ、私と一緒に、聖杯を手に入れて、地球を侵略するだわよ!!!!!!」



 こうしてみると、地球侵略が一歩手前の地獄絵図かもしれないが、実際の所は、ただの女子高生が二人で談笑している光景にしか見えない。
 ……それというのも、彼女たちはただの怪獣や宇宙人ではなく、美少女と化した擬人化怪獣たちなのである。
 ペガッサ星人も、ペガッサ星人というか、「ペガッサさん」という名前でも呼ばれているし、しかも日常的には「ペガちゃん」で呼ばれる優等生の女の子であった。
 アーチャーには己が極悪宇宙人としてウルトラ兄弟と戦った記憶がある反面、ペガッサさんには原典のペガッサ星人としての記憶がまるでない。

 しかも──。

「嫌です」

 ──どっちにしろ、ペガッサ星人には、地球侵略の意思がまったくなかった。

「なぬ!?」

 アーチャーは、このきっぱりとしたペガッサさんの返答に、かなり衝撃を受けたような顔をしている。
 アーチャーは、今、共に地球侵略を目指す宇宙人たちを探している。
 そして、ウルトラ兄弟を倒すために、「ウルトラ兄弟必殺部」を設立しようとしたほど、ごく真面目で初志貫徹の擬人化怪獣なのだ(尤も、ウルトラ兄弟必殺部は、校長に「そんな物騒な部は認められん」と突っぱねられた上、「ウルトラ兄弟分析部」などという名前にされてしまったが)。
 とにかく、誘いを断られたのは少なからずショックだったらしい。

(──はっ!)

 だが、アーチャーも、すぐに、ペガッサ星人の目的を思い出した。
 ペガッサ星人は元々、そんなに攻撃的な宇宙人ではない。何せ、モロボシ・ダンや友里アンヌと親しく接した友好的宇宙人である。
 悲しいすれ違いの末に戦う羽目になったわけで、悪い宇宙人ではないのである。
 ただ、絶望的に行動の手際が悪く、地球人を変に買いかぶっているだけで、そこまで侵略に積極的じゃない。

「……そ、そういえばそうだっただわよ。あんたは、元々、地球侵略の為にやってきた宇宙人じゃなかっただわよ」

「いや、そもそも地球侵略とか知らないんですけど……」

「し、しかし、同じ宇宙人として、侵略を狙わないとは恥ずかしくないだわよ!?」

 開き直るように、アーチャーはハサミの先をペガッサさんに向けた。
 宇宙人、と言われてもペガッサさんにはよくわからなかったが……。

「その顔は何だわよ! その目は何だわよ! その涙は何だわよ! その涙で、地球が侵略できるだわよ!?」

「泣いてません」

 偉そうにペガッサさんを説教しようとするアーチャー。
 何もかも、言っている事が意味不明すぎた為にアーチャーはペガッサさんには引かれているようだった。
 しかし、ペガッサさんも普段、こういう電波な友達にばかり囲まれていたので、アーチャーを極端に突き放すような事はなかった。

 先ほど知らされた聖杯戦争の話も一応、ペガッサさんも当面は信じている。
 ──何せ、私立円谷学園もない変な世界で、記憶を失って生活していたのは事実なのだから。
 聖杯という遺物の存在も信じない理由はない。
 アーチャーの保護もちゃんと行うつもりだし、話もちゃんと聞くつもりだ。

「──それに、どっちにしろ、あんたにも侵略はしないとしても、聖杯に託す願いくらいはあるだわよ。
 私は私で地球侵略を目指すから、あんたはあんたで聖杯戦争に協力するだわよ!」

「ありません」

「なぬ!?」

 再び、ペガッサさんのきっぱりした返答にショックを受けるアーチャー。
 アーチャーは、ペガッサ星人も自分たちと同じように、「ウルトラマンに敗れた事で怪獣墓場に召喚された女子高生」だと思っている。
 しかし、ペガッサさんは別にそういう訳ではないのである(今の所の原作単行本を読んだ感じでは)。

「ペ、ペガッサシティを再興する願いもないだわよ……?」

「何ですか、ペガッサシティって……」

「な……おまえ……ペガッサ星人らしい心はもうなくなっちまっただわよ!?」

「?」

 アーチャーは、イデ隊員がジャミラにかけた名言のようなセリフを吐くが、ペガッサさんには伝わらない。
 ペガッサ星人は、原典では、「故郷のペガッサシティがいろいろあって地球人に破壊されたので、復讐の為に戦った宇宙人」とされている。
 しかし、ここにいるペガッサ星人は、先ほど言った通り、そういう過去がある宇宙人というわけではなさそうだ。

「とにかく、あんたの目的はペガッサシティの再興だわよ!」

「えーっ! 困ります。そんな恥ずかしい名前の町……」

「四の五の言うと光線発射するだわよ!」

「そんなむちゃくちゃな……」

 ハサミは、ペガッサさんの方に向けられ、その先端からは次の瞬間、光線が発射される──。
 アーチャーの必殺光線は、ペガッサさんの顔の横を一陣の風として通り過ぎ、真後ろのアスファルトに向かって叩きつけられた。
 振り返ると、アスファルトに皹が入り、小さく煙が立ち上っている。

「──!!」

「ふふふ。こう見えても、私は強いだわよ?」

 驚くペガッサさんを前に、アーチャーは得意げだった。
 今のは威嚇だったが、全力で当たれば生身の人間など吹き飛ぶほどのエネルギーである。
 さすがのペガッサさんも、アーチャーに口答えすればどうなるかがわかったようだ。

「あわ、あわわ……」

 今にも泣きそうな顔になりながら、アーチャーの方を向き直すペガッサさん。
 怯えている彼女を見ると、アーチャーは余計に得意げになる。
 しかし、ペガッサさんは──闇空間を作り出し、そこに隠れてしまった。

「あっ! ダークゾーンにひきこもるのは禁止だわよ! 出てくるだわよ!」

 ダークゾーン──ペガッサさんが持つ特殊能力である。
 特殊な黒い空間を生成して、その中にひきこもって隠れる事ができるのだ。
 友達に悪戯されてからは使っていなかったが、身の危険を感じたペガッサさんはそこにひきこもる事にしたようである。
 ペガッサさんがダークゾーンから出てくるまで、十分の時間が要された。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 アーチャーの説得で何とかダークゾーンから出てきたペガッサさんも落ち着きを取り戻していた。
 とにかく、今住んでいる所に帰ろうとしている。
 東京都内は、かつて地球の東京にやってきた事のあるアーチャーの方が歩きなれているが、ふと、思い出したようにペガッサさんはアーチャーに言った。

「あ、アーチャーさん。あとで、何枚か写真をお願いします」

「ん? 何だわよ?」

「私、学校だと怪獣図鑑制作部をやっていて……だからテンペラー星人としての写真とデータを、今の内からキャンパスノートにメモしておこうかなーと」

「だ、だだだ、駄目だわよ! そんな事したら私の真名や弱点が全部バレるだわよ!」

「そういうのをメモして怪獣図鑑を作るのが私の目的なんですけど……」

「それなら、敵を全部倒してからやるだわよ! ──あっ、でも」

「?」

「敵のデータを全部メモしておくのは悪くないだわよ。サーヴァントにはウルトラマンのような英雄や怪獣やSCPもいる筈だわよ。それをメモしておけば、きっと役に立つだわよ」

「……そんな、無理してSCPを話に絡めなくても」

「とにかく、敵のデータを集めて対策する必殺光線を編み出すのは侵略宇宙人の基本だわよ!」

「(この人、意外と真面目なんだな……)」





【CLASS】
アーチャー

【真名】
極悪宇宙人テンペラー星人@ウルトラ怪獣擬人化計画 feat. POP Comic Code

【ステータス】
筋力C 耐久B 敏捷D 魔力D 幸運D 宝具D

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】

対魔力:D
 魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。
 大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。

単独行動:C
 マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
 Cランクはマスター不在でも1日程度なら現界が可能。
 陰謀だわよ!密謀だわよ!

【保有スキル】

気配感知:B
 気配を感じ取ることで、効果範囲内の状況・環境を認識する。近距離ならば同ランクまでの気配遮断を無効化する。
 これは両手のハサミにあるレーダーで信号を捉える事による物。
 ウルトラ兄弟を感知するのは得意だが、それ以外は「何かの反応」としか映らない。

無辜の女子高生:C
 生前の行いから生じたイメージによって、 過去や在り方をねじ曲げられた『無辜の怪物』の逆バージョン。
 アーチャーの場合、元々は怪獣だったにも関わらず、人々の欲望が投影され、外見やサイズが女子高生程度の美少女と化している。
 当時の巨体を再現できる事もできない為、マイナスのスキルであるが、能力や強さは美少女化しても健在。

怪獣知識:B
 生前の活動や怪獣墓場で得た、ウルトラ怪獣に関する知識。
 彼女の場合、少なくとも現在の時点で昭和ウルトラシリーズの怪獣は把握しているようだ。
 ややメタっぽい知識もあるものの、相手がウルトラ怪獣であれば大抵は真名を看破し、そのデータを語る事が出来る。

【宝具】

『ウルトラ兄弟必殺部』
ランク:D 種別:対ウルトラ兄弟宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:1~6人

 テンペラー星人の生前に持っていた意思と悲願が宝具として成立したもの。
 ウルトラ兄弟を倒したいという熱い想いがそのまま宝具と化し、彼女が生前練り続けたウルトラ兄弟への対策技が全て再現される。
 現在は、ウルトラ兄弟の正体を看破する「特殊スペクトル光線」や、ウルトラ兄弟に大きなダメージを与える「ウルトラ兄弟必殺光線」など、ウルトラ兄弟の六人が正面から攻撃してきても負けない武装が整っている。
 ただし、逆を言えば、正真正銘、「対ウルトラ兄弟」で、それ以外にはあまり意味のない宝具なので、多くのサーヴァントに対しては有効とは言えないゴミみたいな宝具。
 ウルトラ兄弟必殺光線に至っては、「ウルトラ兄弟にしか効かない」という説もあり、これに準じた設定だと本当にゴミ宝具。
 まあ、それでも特殊スペクトル光線は何らかの反応をキャッチする事は出来るし、ウルトラ兄弟必殺光線はゼットンに向けて放っているのでそこそこ使えるかもしれない(実際効いてないが)。


『ダサイ円盤』
ランク:D 種別:対城宝具 レンジ:1~100 最大捕捉:1~100人

 テンペラー星人が乗っていたクソダサい円盤。デザインは原典と同じだが、本人はこれを「ダサイ」と言われるとキレる。
 遠足で地球に行く時の移動手段として候補に挙がったが、没になったという逸話がある。
 テンペラー星人自身が巨大化できない現状、これを使って戦えばかなり強いのだろうが、デカイうえにダサイので目立ち、魔力消費も大きく、しかもやっぱりダサイのであまり使いたくない宝具。
 尚、この宝具はテンペラー星人本人ならば『騎乗』のスキルがなくても操作できる。

【weapon】

 特になし。
 ただし全身は武装だらけ。詳しくは後述。

【人物背景】

 原典では『ウルトラマンタロウ』第33話、第34話に登場(それぞれ別個体だが作中描写ではどちらの記憶も有している)。
 身長2メートル~52メートル。体重120キロ~3万5000トン。出身地はテンペラー星。
 ウルトラ兄弟を倒す為に、地球にやってきてタロウと戦い、何度かタロウを破った強敵。
 だが、最終的にタロウに敗れた為、美少女となって怪獣墓場学園に転送された。
 一体目がウルトラボール作戦で負けたトラウマから、赤い球が苦手という弱点がある。くす玉を見てもビビるらしい。
 幼児体型で、語尾に「~だわよ」をつけて喋る。
 宝具はゴミ同然だが、それ以外の技が普通に強い。

 たとえば……

  • 首の両側面からのびる管からは、毒ガスを噴射することができる。これでタロウを苦しめた。
  • 両手のハサミから相手を関電させるビーブロッドや破壊閃光などの強力な技を放つ。右手からは三万度の超光熱火炎を放射。力も強靭。
  • 黄金マントと呼ばれているマントは、光太郎を拘束した時に使われた他、どんな攻撃も防ぐ事ができるといわれている。
  • ニーグリップを得意とする脚。腕同様ひざの力も強靭だ。
  • 小型のクモのような姿に変身できる。赤いガスを噴射して、さおりを気絶させた。

 という感じで、平和な学園生活ではそこまで使う事はない全身の強力な装備や多彩な技がある。
 ゼットンには敵わなかったが、おそらくかなり強い部類の擬人化怪獣だろう。

【サーヴァントとしての願い】

 地球侵略だわよ!ウルトラ兄弟必殺だわよ!

【基本戦術、方針、運用法】

 光線技のお陰でアーチャーの座に収まっている擬人化テンペラー星人。
 目的は地球侵略とウルトラ兄弟の「必殺」であるが、怪しい物を見ると偵察を行う真面目な面もある。
 この性格上、放っておいても聖杯や敵の調査を行ってくれるだろう。
 また、武装も強力で、性格も好戦的なのでまともに戦えばかなり強いはず。
 赤いボールを見るとトラウマが発動する事や、高飛車すぎる性格などは弱点といえるかもしれないが、聖杯の為に真面目に戦うだろう。



【マスター】

 ペガッサ星人@ウルトラ怪獣擬人化計画 ギャラクシー☆デイズ

【マスターとしての願い】

 ペ、ペガッサシティの再興……?(不本意)

【weapon】

『ダークガン』
 隠している武器。
 痴漢撃退くらいならできるらしい。
 彼女にはこれしか戦闘能力がない。

『怪獣図鑑』
 怪獣図鑑というより、円谷学園の生徒のデータ。
 つまり、原典の怪獣ではなく、擬人化怪獣たちの写真と足跡とデータ(スリーサイズ等)が載っている。
 鈍器として使えば人殺せそうなアイテム。

『キャンパスノート』
 今は白紙。
 コレに敵のデータを埋めて怪獣図鑑を更新しよう。

【能力・技能】

 超頭が良い優等生。
 怪獣図鑑制作部に属しているので怪獣に詳しいかも。
 まあ、怪獣図鑑といっても原典の怪獣ではなく、「ギャラクシー☆デイズ」版の擬人化怪獣のみだが……。
 ダークゾーンを形成してひきこもる事も可能(ただし使用は控えている)。

【人物背景】

 気弱なかくれんぼ宇宙人ペガッサさん。
 擬人化怪獣たちが集う「私立円谷学園」の怪獣図鑑制作部に所属する部長で、まじめな性格。
 身長が低く、胸も小さい幼児体系で、それを気にしている。
 原典での体の模様はゴスロリっぽくアレンジされている。

 現在は普通の高校に通っているが、その辺な髪型は友達によく馬鹿にされている模様。
 普通の人と比べると明らかに髪型や服装が浮いているが、それは誰も気にしていない。
 ちなみに、友達が手鏡で髪を化粧していた後ろに立った瞬間、何故か記憶が呼び戻った。

【方針】

 怪獣図鑑の作成。ここでも、敵のサーヴァントや怪異のデータを調査しておく。
 一応、アーチャーとは協力していくが、ペガッサさん自身は別に聖杯を狙うつもりはあまりない。



候補作投下順



最終更新:2016年03月03日 12:03