A.D.20XX──。
 かつてと異なり、「それ」が現界する事を、誰も予期できなかった。

 何故なら、この世界には来訪者がいなかったから。
 人々が新宿で銀色の流星を見ていなかったから。
 空っぽの人間たちには希望がなかったから。

 そして、この世界には、英雄もいなかったから──。






 ────諦めるな!────






 その言葉が孤門一輝の脳裏に浮かぶと共に起きたのは、聖杯戦争の始まりであり、孤門一輝の終わりであった。
 新宿の人込みでふと「思い出す」と同時に、彼には聖杯戦争の証──令呪が刻まれる。

 しかし、それは、当の孤門にとって、この上なく無意味な事だった。
 次の瞬間、孤門の意識は、強制的にシャットダウンされてしまったのだ。


 ……。
 …………。
 ………………。


 聊かの時間が経過した後で、孤門は目を覚ましたように、──

「……キャスター、か。丁度良い」

 ──ふと、独り言ちた。
 もし、彼を知る者が見れば、その口調や邪悪な笑みは、彼らしからぬ物に見えるかもしれない。
 孤門という男は、元々、温和で、どこか頼りなくもあるような男だった。
 こんな風に、不気味に頬を引きつらせる事などない。
 しかし、確かに、今、彼は、孤門一輝の顔かたちのままそれを形作ったのである。

「バーサーカーなどにされるよりも、このクラスの方が、いろいろと動きやすいからな……」

 ──一瞬だけ、孤門の全身を紫色の闇が包んだ。
 まるで、大きく息を吐くように……彼の身体から、何かが放出される。
 瞳の色が薄黒くなり、孤門は都会の風の中で──人と人とがすれ違う雑踏の中で、誰にも視線を受ける事なく、立っていた。
 誰も孤門に目を向けない、不気味な人の群れ。
 決して、誰もが周りが見えないほど焦って歩いているわけではない──。
 彼らには、きっと、孤門の事が、「見えなくなっている」のだ。

「……──」

 今、彼は「操作」を始めている。
 ここにいる全員の記憶から、孤門一輝のデータを──『改竄』する。
 彼自身の持つ、『スキル』がそれを行い始めていた。

(──皮肉だな、孤門。かつて、俺を倒したキサマが、今回はこうして俺に肉体を奪われるとは……)

 そう──。
 孤門のその意思は、とうに彼のサーヴァントたる「キャスター」の魔力が消し潰していたのである。
 彼が意識を取り戻し、聖杯戦争のマスターとなった瞬間こそ、キャスターが介入する最初で最後のチャンスであった。
 そして、それが見事成功したというわけである。

「ほう。これが、令呪か」

 キャスターは己の左手の甲にある幾何学模様に目をやった。
 目立つ所に出てしまったが、まあ良い。
 とにかく、この令呪さえもサーヴァント自身が自在に使い、自身の魔力をこの肉体で制限する事が出来る。
 令呪の効力は、時に自身の限界さえ超える生還さえも可能とするらしいので、その三つを自分の手に収める事が出来たのは見事な手際だった。
 こうした形で、聖杯戦争に、マスターとサーヴァントとの連携など、もはや不要である。
 サーヴァントのみで、聖杯戦争を勝ち残る──という、この野望の一歩を得た訳だ。

「──ふっふっふっ」

 孤門一輝はもういない。
 キャスターの敵だった孤門という存在は、キャスターに乗っ取られ、聖杯戦争の参加資格さえ失ったのだ。
 彼がノアを再臨させ、キャスターを破ったあの屈辱は、二度と忘れる事はあるまい──。
 再び肉体を取り戻し、今度こそ、正真正銘、かつてキャスターを破った「ノア」と孤門に復讐を遂げ、そして、宇宙に「虚無」を齎す。
 それこそがキャスターの生前の悲願にして、絶対の野望。──その為にも、聖杯を得る必要があった。
 しかし……この時点でも、既にキャスターの胸中はかつてない充足感でいっぱいだった。

「はっはっはっはっはっはっはっはっ!!!!!!!!」

 高笑いする孤門の姿が、ようやく、人々の意識の中に現れた。
 そして、そこを通り過ぎる人々に避けられ始めたのだ。
 しかし、それでもキャスターは高笑いを辞めなかった。
 ただの狂った若者を見るかのように、ひそひそと話しながらどこかへ消えていく人々の前で──。



 キャスター────『ダークザギ』はただ、己を祝福し続けた。





【CLASS】

キャスター

【真名】

邪悪なる暗黒破壊神 ダークザギ@ウルトラマンネクサス

【パラメーター】

筋力■■ 耐久■■ 敏捷■■ 魔力■■ 幸運■■ 宝具■■

【属性】

混沌・■■

【クラススキル】

陣地作成:■■
 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げるスキル。
 彼は一時的にダークフィールドGという異空間を形成して、その場で自分に有利な戦闘を行える。
 ただし、このスキルは戦闘力を取り戻している前提での能力。
 ダークザギとしての本来の姿を現界する事ができなかった為、実質的にダークフィールドGを展開するのは不可能。

道具作成:■■
 魔力を帯びた器具を作成する為のスキル。
 ダークザギは、ダーク■■ウストや、ダークメ■■■■などのダ■クウルト■■ンを作成し、彼らを媒介にスペ■■■ーストを現界させる。
 高い技術力や科学力も持ち合わせ、地球人の未だ持っていない技術の道具を作り出せる。

【保有スキル】

改竄:■■
 自分に関する記憶や過去のデータ全てを改竄するスキル。
 ダークザギの持つスキルは全て検閲・改竄・修正済。
 各種パラメーターやスキルのランクも同様。
 故に、これ以外にいかなるスキルを持っているのかは不明。

【宝具】

『影(アンノウンハンド)』
ランク:■■ 種別:対界宝具 レンジ:■■■■■ 最大捕捉:■■■■■

 人類を暗躍する黒い影。
 [改竄済]

『魔人(ファウスト)』
ランク:■■ 種別:対界宝具 レンジ:■■■■■ 最大捕捉:■■■■■

 キャスターが生成する「魔人」の意思。
 心に闇を持つ者に植え付けられ、その人物の意思を「魔人」が乗っ取り、キャスターの傀儡とする。
 生前にこの「魔人」を作り上げたのは、「悪魔」であったが、現在はキャスター自身が生成できる。
 [改竄済]

『悪魔(メフィスト)』
ランク:■■ 種別:対界宝具 レンジ:■■■■■ 最大捕捉:■■■■■

 キャスターが生成する「悪魔」の意思。
 心に闇を持つ者に植え付けられ、その人物の意思を「悪魔」が乗っ取、キャスターの傀儡とする。
 [改竄済]

『異生獣(スペースビースト)』
ランク:■■ 種別:対界宝具 レンジ:■■■■■ 最大捕捉:■■■■■

 キャスターが宇宙から招き入れた怪物たち。
 情報を得ることで急激に成長し、知的生命体の恐怖を餌に成長する。
 さらには、他の生物を捕食する事で成長・増殖する。
 個体には、人間大の物もいれば、数十メートルの巨大の異生獣もいるが、使用する魔力はその大きさ・強さ・量などに比例する。
 『魔人(ファウスト)』や『悪魔(メフィスト)』の脳波で操られる。

【weapon】

 マスターの肉体。

【人物背景】

 [全データ抹消済]

【サーヴァントとしての願い】

 再び肉体と力を取り戻し、宇宙を虚無に還す準備を始める。

【基本戦術、方針、運用法】

 マスターの手に負えない。
 引いた時点でマスターが乗っ取られる。
 運用もクソもない。諦めるべし。

【備考】

 キャスターのクラスで召喚されたダークザギは、肉体を持っておらず、「因子」としての姿で現界しています。
 誰かの肉体を乗っ取らなければならない為、彼はマスターの肉体と意識を乗っ取りました。




【マスター】

孤門一輝@ウルトラマンネクサス

【マスターとしての願い】

(キャスター:ダークザギによって身体と意思を乗っ取られています)

【weapon】

 不明。

【能力・技能】

 情報処能力。
 戦闘能力。
 射撃能力。

【人物背景】

 警視庁の警察官。階級は巡査。
 サイバー犯罪を専門とするが、技量も高い。

 [以上、全データは改竄によるもの]

【方針】

(キャスター:ダークザギによって身体と意思を乗っ取られています)

【備考】

 素体となった孤門一輝は、闇の戦士としての素養が最も高かった、斎田リコ死亡後からの参戦です。
 この世界ではレスキュー隊員が役割でしたが、それもダークザギの改竄で消失しました。



候補作投下順



最終更新:2016年03月03日 12:43