デザイナーズノート

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> これは『[[ゆらぎの神話・アリュージョニスト・アリスピ Advent Calendar 2016>https://www.adventar.org/calendars/1766]]』)の記事である。  雑に書いて(はぁと)という感じで勧誘されたので「じゃあなんかゆTでちょっと書くか」と適当に思っていたら質の高い記事があれこれ出て来て冷や汗が滝となり洪水となって下界を押し流し後には小さな木の苗だけが残った。これがロディニオ世界の始まりである。  それはそれとして、このノートはゆらぎの神話TRPG製作についての雑記である。  今回は『ゆらぎの神話TRPGができるまで』。  できるまでも何もまだ完成していないが、形が完成するまで、くらいの意味合いで捉えて欲しい。 **●とっかかり  ゆらぎの神話をTRPGにしたらかなりハマるだろう、と前々から考えていた。  自由に設定を付け足してよく、既存の設定と矛盾してよい、というのはお誂え向きだ。  これはゆらぎの神話を知った時からずっと考えていたことだ。  実際に作り始めたきっかけは……なんだったか。なんとなくだ。  技を自由に作れなくてはならない。  まず一番最初にそれを考えた。  この時点でSRS(スタンダード・RPG・システム。汎用TRPGルール)に頼るセンは消えた。  何かベースになるシステムが一つ欲しかった。  最終的にどうなるかは別として、とっかかりとして何か既存の形式を引っ張ってくるつもりでいたのだ。  ひとえに手間の問題である。  さっと思い浮かんだのは三つだ。  ダブルクロス、ソードワールド、Aの魔法陣。  このあたりならそれらしいことができるのではないかと考えた。  Aマホこそ殆どプレイ回数はないものの、ダブルクロスとソードワールド無印はそれなり以上のプレイ経験があり、ルールにも詳しい。  そして真っ先にダブルクロスを切った。  理由は、ルールとデータが複雑だからだ。  数値がいっぱいあれこれあって、スキル同士のコンボが無数にある。  それを比較してあーでもないこーでもないとキャラを作る。  出来たキャラのオリジナルコンボで楽しむ、というのがダブルクロスの戦闘面の主な遊び方だ。  あれはデータ知識の豊富なプレイヤーが強いゲーム、アリュージョニスト風に言えば杖的価値観が支配するゲームだ。  邪視者――ロールプレイヤーは立ち向かえない。  あと、用意するべきデータも膨大になる。主な理由はこっちだ。  アリュージョニスト、ひいてはゆらぎの神話の特徴をデータに落とし込むのはかなりの手間だ。一工夫いる。  そしてダブルクロスは完全なデータ偏重ゲーム故に一工夫差し込む余裕がない。  だからソードワールドとAの魔法陣を比べることにした。  どちらもかなり簡素なシステムで、「らしさ」を表現するのに十分な自由度もあった。  データとRPどちらを重視してもゲームが成立するだけの懐の深さがある。  ……という表現は少々贔屓目がすぎるか。  もうこの時点で、デザインの骨子は出来ていた。  ルールを簡素にすること。数字を減らすこと。  キャラメイキングの自由度を「異常に」高く保つこと。  ロールプレイ・データプレイ双方を妨げないこと。  その上でどちらにするか――あまり悩まずに、両方とも試作してみた。  SWは技能を自作してよいことにした。  原作における「ファイター」「シャーマン」なんかを、プレイヤーに創作させる。  SW2.0がそうであるように、技能レベルが上昇するに従って戦闘技能やら何やらを追記していけるようにする。  これで無茶苦茶な自由度は担保できた。  キャラクターがどんな呪術を持ちどれほど習熟しているかは技能レベルが表してくれる。  能力値については悩んだが、ひとまず原作通りにした。  経験点周りの整備を終えて、大枠はそれで完成だ。  Aマホは……このWikiを読んでほしい。  ただ最初は〈個性〉九種の概念や【絶技】はなかった。  〈呪力〉と【呪術】、これだけだ。後は全部Aマホだ。  僕は3.0の根源値とか4版のパワーだとかが非常に気に入らなかったので、完全に廃した。  文章だけで動くように設計されたゲームに数字を持ち込むのは美しくない。  動作的にも、思想的にも。  特に根源値は面倒な計算が必要になっただけで完全な改悪だと思っている。  その後パワーという形にまとめたあたり、成功要素に優劣をつけたいというのは芝村先生の方針だったのだろう。  4版は可能な限り万能な要素を少数保持するという形式で、すっきりしたいいデザインだ。  ただ「ぼくのかんがえたさいきょうのじゅじゅつ」と相性が悪かったのでボツだ。 **●ベースの決定  んで、どっちもプレイした。サークルの友人諸兄には感謝してもしきれない。  結果として「遊びやすいのはSWで、楽しいのはAマホ」という結論を得た。なのでAマホを遊びやすく調整することにした。  SWベースは数回の調整を経てそれなりにスムーズにゲームが進むようになった。  GMもシステム周りの処理はとても簡単で、即興もやりやすかった。  ただこれは元からSW慣れしている奴らだったからというのもあるので、厳し目に受け止めている。  ロールの上手い奴らでも何度かやらないとスムーズに進まない、という具合に。  あと、淡々としてしまうのも問題だった。  システム側にロールプレイを補助する力が薄いのだ。日頃遊び慣れた、与太話を盛るのが得意な……ロールプレイ気質の奴らが多いので初めは気付かなかったが、初心者はロクに行動宣言も出来ない状態だった。  一方Aマホの方は、まぁ度々進行が止まる。  数値面でSDへの負担がデカいし、参照されたデータを把握しないと有効な裁定が下せない。  と色々問題が噴出したのだが、ある一点がかなりウケた。  【呪術】という概念だ。  オリジナル呪術をシステム側が奨励してくるそのデザインがたまらなく楽しい、と。  誰でもぼくのかんがえたさいきょうのじゅじゅつを使って並み居る敵を倒したい。  誰でも、巨大な壁を知恵と機転で乗り越えたい。  そういうニーズに、成功要素というシステムは完璧に合致していた。  多少ではない数の問題点も、結局これから解決すればよいだけの話なので、Aマホをベースにすることに決定した。 ●製作開始  まず真っ先に、キャラのプロフィールを整備させようと思った。  後出しで「俺は実は○○の戦士なのだ」みたいなのは、確かに物語的には格好いい。  だがシナリオを完全に破壊することがある。俺は一度やられた。  SDに却下権限をもたせればいいのだが、SDが何かを判断する回数を可能な限り減らしたかった。  なので、偽られるとSDが困る部分を五つ書き出した。  性別、容姿、職業、所属、種族だ。  で、肝心の「実は俺は」ムーブは、成功要素についてSDには見せるけど他のプレイヤーには公開しないシステムを用意して誤魔化すことにした。今はまだ未実装だ。  ところで、ゆらぎの神話において9というのは特別な数字だ。  創世竜の数、悪魔の九姉、など。なので個性は九つに揃えようと思った。  現在の個性九種……社会性、生物性、特性の三相は結構良く出来たと思っている。  ちなみに、この「よくできた」という考えは制作進行においてとても邪魔になることを付記しておく。  ……今こうして書き出してみると「個性」という単語を当てはめたのは失敗だったかもしれない。  キャラの特徴を書き出す時に頻出する単語だからだ。  特性とか、要素とか、識別子とか、もう少しヒネるべきだったような気もする。今更だ。  次に、エネルギーとしての呪力の表現が必要だった。  〈膨大な呪力〉なんて呪力を取られた時に気付いたのだが、Aの魔法陣は量的なものを表現するのにとことん向かない。  それに、ロールプレイ要素が濃すぎてデータ系プレイヤー、杖術師が割り込む余地が薄かった。  なので呪力を管理するためのリソースを設けた。  これはキャラの成長つまり要素の追加に必要であり、消費することで達成値1点を得られる「呪力のもと」だ。  そのままだと効果は弱いが何にでも使えるし、要素として定着させれば用途は限るが二倍の力を得る。  膨大な呪力トークンを持っている奴はうまく解決出来ない判定でもトークンぶっぱで成功に持っていける。  これはAマホのリアルアイデアロール依存のデザインの緩和でもあるわけだ。  解法が思いつかなくてもとりあえずこつこつトークンを貯めておけばなんとかなるのだ。 **●【呪術】と〈呪力〉  呪術と呪力について整備していくうちに、それらがシステム上で及ぼす作用について分かってきた。  Aマホにおいて、キャラは持っている成功要素の用途を散らすことで汎用性を得るが達成値の出力量が減る。  成功要素の被ったキャラはその被った範囲においては無敵だが、その他の方面に弱くなる。  この相関がキャラビルドの醍醐味だ。  つまりプレイとしては、「ロールプレイに見合った成功要素を取る」か「取った成功要素に合わせたロールプレイをする」かとなる。  ゆTにおいて、〈呪力〉は広範で便利に使えるものを作りやすい。  【呪術】は先鋭化するが、組み合わせて出力を上げやすい(これについては別の機会に詳しく話そう)。  つまりAマホに当てはめると〈呪力〉は前者、【呪術】は後者なのだ。  実は【呪術】は初め非常に弱い成功要素だった。何にしろ状況が限定的で一アクションしか起こせない。  達成値を3点にする案もあったが、そういう差はつけたくなかった。  狭い範囲にしか影響しないものがシステムとして存在するなら、それはせめて高い達成値出力を持っているべきだ。  なので〈適性〉という要素を追加した。  これは【呪術】に系統をつけるためのモノのように見えるが実際は逆。  【呪術】の強化のために取り入れられた概念だ。  なぜならすべての〈〉でくくられた単語は呪力、つまり判定に対し提出可能な概念だからだ。  【呪術】に強く紐付けられた概念なので、どんな判定だろうと【呪術】を提出するなら必ず一緒に提出できる。  そして単独でもそれなりの汎用性がある。これにより【呪術】は状況と合致していれば安定して複数の成功要素を提出できる強力なシステムに変わった。  これはもっとWikiで明言するべきだなと今は反省している。後で直す。  この辺りでおおよそ完成でいいかな、と思った所で「通常技と必殺技が同じ威力なのが気に入らない」という意見が出た。  「そうだよなみんな必殺技ほしいよな……わかる……わかりみが深い……」と思った。  なのでAマホ3.0から【絶技】を引っ張ってきた。  元々は「使用するとダメージを受ける5点換算の成功要素」なのだが、少々いじって「コストとしてトークンを使うことで追加3点を得られる成功要素」とした。  煩雑になるので要素をなるべく増やさない方針だったのだが、これは追加してよかったと思う。  ゲーム的にも「万能で便利だが、使い切りかつ1点のみ」「用途を限るが、以後ずっと使える2点」「用途が非常に限られる上使い切りだが、3点」とトークンの用途に出力と用途のバランスが取れた選択肢を用意できた。 **●その他問題点諸々  経験値に類するシステムを導入したことで、それを餌にプレイヤーの行動を制御できると考えた。  それを良しとするプレイヤーもいるので難しい所だが、自発的に行動しないと与えられた状況に諾々と従うだけのゲームになってしまう。  「判定成功のたびに一個配布」という破格の条件を設定してじゃんじゃん判定をやらせることにした。  キャラの成長には積極的に行動を持ちかけることが重要になっている。  この辺りは多分、Wikiの文章がよくなかったかもしれない。リアルで伝えた時はみんな目の色変えて判定に望んでいたし、自分からあれこれ判定をもちかけてきたのだが、ネットでのテストプレイ時は――状況でプレイヤーの自由意志を縛っていたとはいえ――自発的に判定を持ちかけられることが少なかったので寂しかった、じゃなくてシステムが想定通りの動作をしなかった、と言える。もう数回テストプレイをしてみないと判断出来ないか。  システムの問題と言えば、判定周りもそうだ。  プレイヤーは中間判定を嫌う。これは想定外だった。  判定に成功できないまでも、それなりに提出できていれば状況が極端に悪化することはない。  そのため時間を取らず素早く判定を終え、結果成功要素が足りなくても問題なくシナリオが進む、というのが中間判定の存在意義なのだが――そして僕は明確に「中間判定なら状況はイーブンのまま」とWikiにも書いたしシナリオ中にも度々言うのだが、プレイヤーは中間判定と失敗を区別せずひとくくりに失敗と考える傾向にある。  まぁ気持ちは分からんでもないが、ぶっちゃけ失敗したってシナリオは進むので、進行を優先したい。  したいのだが、大体そういう時は「多分ここで強引にすすめると不満が残るな」というくらいに熱中しているので、難しい所だ。  でもAマホ3.0みたいに質問回数に制限をかけるなどの方法はPLの自由度を損ねるだけだ。  「行動を吟味するために質問を吟味する」という状況になるためあまり結果は変わらない。  オフセでは時間制限をかけたが、オンセだとそういうわけにもいかない。今後の課題だ。  まだある。SDの負荷を減らすことを目的にしたデザインだと先程述べた。  が、「提出上限数」なるものを設定したせいで判定をその場で作る際にかなり邪魔になっていた。  判定におけるしっかりとした指標を用意するか、いっそ撤廃してもいい気がする。  元々これを導入した理由は、「器用貧乏なキャラを作り、汎用性の高い呪力で固めて、簡単な判定を無数にこなしてトークンを稼ぎ、難しい判定は手持ちの呪力を全部こじつけて提出し、後は【絶技】とトークン消費で乗り切る」というスタイルが文句なく最強であったからだ。  これはキャラの特徴がシナリオで決まってしまう。  選択肢の一つとしてはアリだが、それが他を大きく上回る最大効率というのはよろしくない。  何より、大量に提出される呪力をSDがいちいち精査する必要があり面倒くさい。  なのでそのスタイルを制限するために判定ごとに提出できる呪力の数を限ることにしたのだ。  なのだが、上限数は適切な値の指定がかなり難しい。  大量の呪力を精査するのは必要経費と割り切りたくないくらいに面倒くさいが、現行の仕様だと調整が難しくSDが頭を使う。  このゲームは題材上ストーリーテリングにおけるSDの負担が高くなるので、それ以外の部分で負担をかけないようなデザインにしたかったのだが、難しかった。 **●終わりに  色々問題は残っており、完成とはいい難い状況だが、書こうと思えばいくらでも書ける話だ。ひとまずここで終わりとする。  改善点ばかり書いたが、良かったこともある。  特筆すべきはオフセでアリュージョニスト沼に二人ほど引きずり込んだことと、オンセで一人TRPG沼に引きずり込んだことだ。  あまりそういう意識を持って書いていなかったのだが、こうなるとアリュージョニスト沼に落とすためのツール(ひでえ書き方だ)としてのゆTというものを考えてもいいのかもしれない。……それにはまずA-dicの編纂という絶望的な作業が待っているわけだが……。  趣味で作っているだけなので、全く手を付けていない日も多いわけだが、気長に見ていて欲しい。 ***●おまけ:告知  最後に、第二回ゆらぎの神話TRPGテストプレイの告知をしておく。  12月上旬に小規模なアップデートを挟んだ後、17~18の土日、21:00~25:00を目安にやる予定だ。  もっとも私自身もあまり余裕がないかもしれない。これはあくまで予定である。  うつろな目をして「進捗ダメです」と呟いていたら諦めて欲しい。  詳しくは決行可能になったら伝える。恐らくどどんとふで三~四人という形になるだろう。
> これは『[[ゆらぎの神話・アリュージョニスト・アリスピ Advent Calendar 2016>https://www.adventar.org/calendars/1766]]』)の記事である。  雑に書いて(はぁと)という感じで勧誘されたので「じゃあなんかゆTでちょっと書くか」と適当に思っていたら質の高い記事があれこれ出て来て冷や汗が滝となり洪水となって下界を押し流し後には小さな木の苗だけが残った。これがロディニオ世界の始まりである。  それはそれとして、このノートはゆらぎの神話TRPG製作についての雑記である。  今回は『ゆらぎの神話TRPGができるまで』。  できるまでも何もまだ完成していないが、形が完成するまで、くらいの意味合いで捉えて欲しい。 **●とっかかり  ゆらぎの神話をTRPGにしたらかなりハマるだろう、と前々から考えていた。  自由に設定を付け足してよく、既存の設定と矛盾してよい、というのはお誂え向きだ。  これはゆらぎの神話を知った時からずっと考えていたことだ。  実際に作り始めたきっかけは……なんだったか。なんとなくだ。  技を自由に作れなくてはならない。  まず一番最初にそれを考えた。  この時点でSRS(スタンダード・RPG・システム。汎用TRPGルール)に頼るセンは消えた。  何かベースになるシステムが一つ欲しかった。  最終的にどうなるかは別として、とっかかりとして何か既存の形式を引っ張ってくるつもりでいたのだ。  ひとえに手間の問題である。  さっと思い浮かんだのは三つだ。  ダブルクロス、ソードワールド、Aの魔法陣。  このあたりならそれらしいことができるのではないかと考えた。  Aマホこそ殆どプレイ回数はないものの、ダブルクロスとソードワールド無印はそれなり以上のプレイ経験があり、ルールにも詳しい。  そして真っ先にダブルクロスを切った。  理由は、ルールとデータが複雑だからだ。  数値がいっぱいあれこれあって、スキル同士のコンボが無数にある。  それを比較してあーでもないこーでもないとキャラを作る。  出来たキャラのオリジナルコンボで楽しむ、というのがダブルクロスの戦闘面の主な遊び方だ。  あれはデータ知識の豊富なプレイヤーが強いゲーム、アリュージョニスト風に言えば杖的価値観が支配するゲームだ。  邪視者――ロールプレイヤーは立ち向かえない。  あと、用意するべきデータも膨大になる。主な理由はこっちだ。  アリュージョニスト、ひいてはゆらぎの神話の特徴をデータに落とし込むのはかなりの手間だ。一工夫いる。  そしてダブルクロスは完全なデータ偏重ゲーム故に一工夫差し込む余裕がない。  だからソードワールドとAの魔法陣を比べることにした。  どちらもかなり簡素なシステムで、「らしさ」を表現するのに十分な自由度もあった。  データとRPどちらを重視してもゲームが成立するだけの懐の深さがある。  ……という表現は少々贔屓目がすぎるか。  もうこの時点で、デザインの骨子は出来ていた。  ルールを簡素にすること。数字を減らすこと。  キャラメイキングの自由度を「異常に」高く保つこと。  ロールプレイ・データプレイ双方を妨げないこと。  その上でどちらにするか――あまり悩まずに、両方とも試作してみた。  SWは技能を自作してよいことにした。  原作における「ファイター」「シャーマン」なんかを、プレイヤーに創作させる。  SW2.0がそうであるように、技能レベルが上昇するに従って戦闘技能やら何やらを追記していけるようにする。  これで無茶苦茶な自由度は担保できた。  キャラクターがどんな呪術を持ちどれほど習熟しているかは技能レベルが表してくれる。  能力値については悩んだが、ひとまず原作通りにした。  経験点周りの整備を終えて、大枠はそれで完成だ。  Aマホは……このWikiを読んでほしい。  ただ最初は〈個性〉九種の概念や【絶技】はなかった。  〈呪力〉と【呪術】、これだけだ。後は全部Aマホだ。  僕は3.0の根源値とか4版のパワーだとかが非常に気に入らなかったので、完全に廃した。  文章だけで動くように設計されたゲームに数字を持ち込むのは美しくない。  動作的にも、思想的にも。  特に根源値は面倒な計算が必要になっただけで完全な改悪だと思っている。  その後パワーという形にまとめたあたり、成功要素に優劣をつけたいというのは芝村先生の方針だったのだろう。  4版は可能な限り万能な要素を少数保持するという形式で、すっきりしたいいデザインだ。  ただ「ぼくのかんがえたさいきょうのじゅじゅつ」と相性が悪かったのでボツだ。 **●ベースの決定  んで、どっちもプレイした。サークルの友人諸兄には感謝してもしきれない。  結果として「遊びやすいのはSWで、楽しいのはAマホ」という結論を得た。なのでAマホを遊びやすく調整することにした。  SWベースは数回の調整を経てそれなりにスムーズにゲームが進むようになった。  GMもシステム周りの処理はとても簡単で、即興もやりやすかった。  ただこれは元からSW慣れしている奴らだったからというのもあるので、厳し目に受け止めている。  ロールの上手い奴らでも何度かやらないとスムーズに進まない、という具合に。  あと、淡々としてしまうのも問題だった。  システム側にロールプレイを補助する力が薄いのだ。日頃遊び慣れた、与太話を盛るのが得意な……ロールプレイ気質の奴らが多いので初めは気付かなかったが、初心者はロクに行動宣言も出来ない状態だった。  一方Aマホの方は、まぁ度々進行が止まる。  数値面でSDへの負担がデカいし、参照されたデータを把握しないと有効な裁定が下せない。  と色々問題が噴出したのだが、ある一点がかなりウケた。  【呪術】という概念だ。  オリジナル呪術をシステム側が奨励してくるそのデザインがたまらなく楽しい、と。  誰でもぼくのかんがえたさいきょうのじゅじゅつを使って並み居る敵を倒したい。  誰でも、巨大な壁を知恵と機転で乗り越えたい。  そういうニーズに、成功要素というシステムは完璧に合致していた。  多少ではない数の問題点も、結局これから解決すればよいだけの話なので、Aマホをベースにすることに決定した。 **●製作開始  まず真っ先に、キャラのプロフィールを整備させようと思った。  後出しで「俺は実は○○の戦士なのだ」みたいなのは、確かに物語的には格好いい。  だがシナリオを完全に破壊することがある。俺は一度やられた。  SDに却下権限をもたせればいいのだが、SDが何かを判断する回数を可能な限り減らしたかった。  なので、偽られるとSDが困る部分を五つ書き出した。  性別、容姿、職業、所属、種族だ。  で、肝心の「実は俺は」ムーブは、成功要素についてSDには見せるけど他のプレイヤーには公開しないシステムを用意して誤魔化すことにした。今はまだ未実装だ。  ところで、ゆらぎの神話において9というのは特別な数字だ。  創世竜の数、悪魔の九姉、など。なので個性は九つに揃えようと思った。  現在の個性九種……社会性、生物性、特性の三相は結構良く出来たと思っている。  ちなみに、この「よくできた」という考えは制作進行においてとても邪魔になることを付記しておく。  ……今こうして書き出してみると「個性」という単語を当てはめたのは失敗だったかもしれない。  キャラの特徴を書き出す時に頻出する単語だからだ。  特性とか、要素とか、識別子とか、もう少しヒネるべきだったような気もする。今更だ。  次に、エネルギーとしての呪力の表現が必要だった。  〈膨大な呪力〉なんて呪力を取られた時に気付いたのだが、Aの魔法陣は量的なものを表現するのにとことん向かない。  それに、ロールプレイ要素が濃すぎてデータ系プレイヤー、杖術師が割り込む余地が薄かった。  なので呪力を管理するためのリソースを設けた。  これはキャラの成長つまり要素の追加に必要であり、消費することで達成値1点を得られる「呪力のもと」だ。  そのままだと効果は弱いが何にでも使えるし、要素として定着させれば用途は限るが二倍の力を得る。  膨大な呪力トークンを持っている奴はうまく解決出来ない判定でもトークンぶっぱで成功に持っていける。  これはAマホのリアルアイデアロール依存のデザインの緩和でもあるわけだ。  解法が思いつかなくてもとりあえずこつこつトークンを貯めておけばなんとかなるのだ。 **●【呪術】と〈呪力〉  呪術と呪力について整備していくうちに、それらがシステム上で及ぼす作用について分かってきた。  Aマホにおいて、キャラは持っている成功要素の用途を散らすことで汎用性を得るが達成値の出力量が減る。  成功要素の被ったキャラはその被った範囲においては無敵だが、その他の方面に弱くなる。  この相関がキャラビルドの醍醐味だ。  つまりプレイとしては、「ロールプレイに見合った成功要素を取る」か「取った成功要素に合わせたロールプレイをする」かとなる。  ゆTにおいて、〈呪力〉は広範で便利に使えるものを作りやすい。  【呪術】は先鋭化するが、組み合わせて出力を上げやすい(これについては別の機会に詳しく話そう)。  つまりAマホに当てはめると〈呪力〉は前者、【呪術】は後者なのだ。  実は【呪術】は初め非常に弱い成功要素だった。何にしろ状況が限定的で一アクションしか起こせない。  達成値を3点にする案もあったが、そういう差はつけたくなかった。  狭い範囲にしか影響しないものがシステムとして存在するなら、それはせめて高い達成値出力を持っているべきだ。  なので〈適性〉という要素を追加した。  これは【呪術】に系統をつけるためのモノのように見えるが実際は逆。  【呪術】の強化のために取り入れられた概念だ。  なぜならすべての〈〉でくくられた単語は呪力、つまり判定に対し提出可能な概念だからだ。  【呪術】に強く紐付けられた概念なので、どんな判定だろうと【呪術】を提出するなら必ず一緒に提出できる。  そして単独でもそれなりの汎用性がある。これにより【呪術】は状況と合致していれば安定して複数の成功要素を提出できる強力なシステムに変わった。  これはもっとWikiで明言するべきだなと今は反省している。後で直す。  この辺りでおおよそ完成でいいかな、と思った所で「通常技と必殺技が同じ威力なのが気に入らない」という意見が出た。  「そうだよなみんな必殺技ほしいよな……わかる……わかりみが深い……」と思った。  なのでAマホ3.0から【絶技】を引っ張ってきた。  元々は「使用するとダメージを受ける5点換算の成功要素」なのだが、少々いじって「コストとしてトークンを使うことで追加3点を得られる成功要素」とした。  煩雑になるので要素をなるべく増やさない方針だったのだが、これは追加してよかったと思う。  ゲーム的にも「万能で便利だが、使い切りかつ1点のみ」「用途を限るが、以後ずっと使える2点」「用途が非常に限られる上使い切りだが、3点」とトークンの用途に出力と用途のバランスが取れた選択肢を用意できた。 **●その他問題点諸々  経験値に類するシステムを導入したことで、それを餌にプレイヤーの行動を制御できると考えた。  それを良しとするプレイヤーもいるので難しい所だが、自発的に行動しないと与えられた状況に諾々と従うだけのゲームになってしまう。  「判定成功のたびに一個配布」という破格の条件を設定してじゃんじゃん判定をやらせることにした。  キャラの成長には積極的に行動を持ちかけることが重要になっている。  この辺りは多分、Wikiの文章がよくなかったかもしれない。リアルで伝えた時はみんな目の色変えて判定に望んでいたし、自分からあれこれ判定をもちかけてきたのだが、ネットでのテストプレイ時は――状況でプレイヤーの自由意志を縛っていたとはいえ――自発的に判定を持ちかけられることが少なかったので寂しかった、じゃなくてシステムが想定通りの動作をしなかった、と言える。もう数回テストプレイをしてみないと判断出来ないか。  システムの問題と言えば、判定周りもそうだ。  プレイヤーは中間判定を嫌う。これは想定外だった。  判定に成功できないまでも、それなりに提出できていれば状況が極端に悪化することはない。  そのため時間を取らず素早く判定を終え、結果成功要素が足りなくても問題なくシナリオが進む、というのが中間判定の存在意義なのだが――そして僕は明確に「中間判定なら状況はイーブンのまま」とWikiにも書いたしシナリオ中にも度々言うのだが、プレイヤーは中間判定と失敗を区別せずひとくくりに失敗と考える傾向にある。  まぁ気持ちは分からんでもないが、ぶっちゃけ失敗したってシナリオは進むので、進行を優先したい。  したいのだが、大体そういう時は「多分ここで強引にすすめると不満が残るな」というくらいに熱中しているので、難しい所だ。  でもAマホ3.0みたいに質問回数に制限をかけるなどの方法はPLの自由度を損ねるだけだ。  「行動を吟味するために質問を吟味する」という状況になるためあまり結果は変わらない。  オフセでは時間制限をかけたが、オンセだとそういうわけにもいかない。今後の課題だ。  まだある。SDの負荷を減らすことを目的にしたデザインだと先程述べた。  が、「提出上限数」なるものを設定したせいで判定をその場で作る際にかなり邪魔になっていた。  判定におけるしっかりとした指標を用意するか、いっそ撤廃してもいい気がする。  元々これを導入した理由は、「器用貧乏なキャラを作り、汎用性の高い呪力で固めて、簡単な判定を無数にこなしてトークンを稼ぎ、難しい判定は手持ちの呪力を全部こじつけて提出し、後は【絶技】とトークン消費で乗り切る」というスタイルが文句なく最強であったからだ。  これはキャラの特徴がシナリオで決まってしまう。  選択肢の一つとしてはアリだが、それが他を大きく上回る最大効率というのはよろしくない。  何より、大量に提出される呪力をSDがいちいち精査する必要があり面倒くさい。  なのでそのスタイルを制限するために判定ごとに提出できる呪力の数を限ることにしたのだ。  なのだが、上限数は適切な値の指定がかなり難しい。  大量の呪力を精査するのは必要経費と割り切りたくないくらいに面倒くさいが、現行の仕様だと調整が難しくSDが頭を使う。  このゲームは題材上ストーリーテリングにおけるSDの負担が高くなるので、それ以外の部分で負担をかけないようなデザインにしたかったのだが、難しかった。 **●終わりに  色々問題は残っており、完成とはいい難い状況だが、書こうと思えばいくらでも書ける話だ。ひとまずここで終わりとする。  改善点ばかり書いたが、良かったこともある。  特筆すべきはオフセでアリュージョニスト沼に二人ほど引きずり込んだことと、オンセで一人TRPG沼に引きずり込んだことだ。  あまりそういう意識を持って書いていなかったのだが、こうなるとアリュージョニスト沼に落とすためのツール(ひでえ書き方だ)としてのゆTというものを考えてもいいのかもしれない。……それにはまずA-dicの編纂という絶望的な作業が待っているわけだが……。  趣味で作っているだけなので、全く手を付けていない日も多いわけだが、気長に見ていて欲しい。 ***●おまけ:告知  最後に、第二回ゆらぎの神話TRPGテストプレイの告知をしておく。  12月上旬に小規模なアップデートを挟んだ後、17~18の土日、21:00~25:00を目安にやる予定だ。  もっとも私自身もあまり余裕がないかもしれない。これはあくまで予定である。  うつろな目をして「進捗ダメです」と呟いていたら諦めて欲しい。  詳しくは決行可能になったら伝える。恐らくどどんとふで三~四人という形になるだろう。

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