妖呼鎚

『あやかしこづち』

薫桜ノ皇国のかつての皇王、櫻華 光道が所持していたという古びた木製の小槌。
妖怪の総大将を名乗る老人から貰った物であり、持ち主に危機が迫った際に強く念じながら打ち付けると危機から脱する事が出来るとの事。

現在は紛失しており、存在しない。


【逸話】
光道がまだ幼名を名乗っていた頃、後に桃都の街となる場所に皇家の居城があった時代。
ある日の夜から毎晩のように多数の妖怪が現れ、寝ている光道を驚かせ始めたのである。
怪異は日を追う毎に過激さを増していったが、光道は持ち前の胆力で怯む事無く怪異を退けて行ったらしい。

そんな日々が続いた十三夜目、光道の枕元に長刀を構えた武者が現れた。
武者は刀を光道の頭に振り下ろしたが、光道は即座に飛び起き忍ばせていた懐刀で見事刀を受け止めて見せたのだった。

刀を受け止められた武者は満足げに高笑いをすると、後頭部が妙に長い小柄な老人の姿へと変わる。

老人は自らを『妖怪達を統べる総大将』と名乗り、『未来の皇王の度胸を試してみたくなった』と怪異の真相を語ったのだった。
そして光道の勇気を称え、これまで迷惑をかけた侘びとして古びた小槌を渡すと煙の様に消えてしまったという。


そして時は流れ、屍竜将軍の元から一振りの刀を盗み出した光道。
しかし追手として放たれた亡者の群れによって絶体絶命の危機に陥ったその時、彼の懐から持って来ていなかった筈の小槌が飛び出したのである。

考えるまでもなく、彼は小槌を手に取るとそれを力一杯地面に叩きつけた。
すると辺り一面に奇妙な霧が立ち込め、なんとその霧の中から幾百の妖怪達が踊りながら現われたのである。
そして亡者の群れを遮る様に百鬼夜行を形成し、追っ手が妖怪達に道を阻まれているその隙に光道は無事に墓石群から脱出する事が出来たのであった。


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最終更新:2023年08月31日 12:45