新米冒険者の短い人生

俺たちは冒険者パーティの一人、クライブだ。
これからスタートゥ王国国境の洞窟へ行く。仲間は軽戦士のベック、魔法使いのイワン、
僧侶のソコラだ。この三人を連れた四人パーティは洞窟の中に入っていった。
俺たちは周辺で一番の冒険者、この国を出るための洞窟くらいで死ぬわけがない。そこで声を上げたのは、
「俺たちの力量なら余裕だって!何回も言ってんじゃん」
ベックだった。自信過剰でも、それに見合う力を持っていた。俺が一番最初に仲間にした仲間で、
俺はベックに信頼を置いている。次に声を発したのは…
「ふっ、どこからその自信があるのですかね。まあ、天才である私がいるから大丈夫ですよ」
イワン。彼はスタートゥ王国一の魔法使いで、天才と言われた男。頭脳明晰ですぐに敵の特徴を見抜く。
「みなさん、あまり調子に乗らないでくださいね!」
おっと、あと一人。声を上げたこの子はソコラ。王国の教会で仲間にしたこの子は、回復魔法がうまい他に、
かわいい。純粋にかわいい。天使だ。そして俺が声を出す。
「大丈夫だよ、ソコラ。お前だけは守る」
っと、約束した。すると扉を見つけた。隠されていたようだ。俺たちはその中に入った。
「おっ、宝箱じゃないか!」
ベックが大声を出す。そして開けに行ったのだが…
『ジリリリリリ!!ジリリリリリ!』
その宝箱は…罠だった。その音を聞きつけたオーガ、ゴブリンが一斉に入ってくる。俺は叫んだ。
「お前等!うろたえるな!いつものように、いつものように倒してしまうんだ!」
そう、オーガやゴブリンはいつも倒していた。大勢になっても変わらないと思い、突撃した。まずベックが
一番前のオーガを切り伏せる。その後俺がゴブリンを三体くらい同時に回転切りで片づける。
そしてイワンが魔法で一掃し、それから俺が切り伏せベックが薙ぎ倒し、イワンの魔法というループが続いた。
が、俺たちの恐怖はそれでは終わらなかった。まず、ベックが【半分に潰された】。
これはまともな死に方ではない。そう思い上を見ると…
「キング…ゴブリン…!」
そこに飛び込んだのははゴブリンと思えない巨体だった…!
そして護衛のベックがいなくなったイワンを、ゴブリンたちが襲う。近づかれては魔法も撃てない。
あっさりと地に伏し、うつぶせの後頭部にゴブリンたちのこん棒が吸い込まれる。
それは続き、やがてイワンは動かなくなった。そうなれば次のターゲットは俺かソコラだ。
ソコラは近づかれているが、杖で何とか抵抗している。
「今行く!死なないでくれーっ!!!」
俺はそう叫びソコラの下へ向かった…が…
『ザクッ』
遅かった。短剣使いのゴブリンが、ソコラの背中を、しっかりと切ったのが見えた。

守れなかった。約束も、ソコラも。

そして、唖然としている間に、後ろからキングゴブリンのこん棒が振り下ろされる。


『ズゴッ』




「冒険者になるなら やはり死ぬ覚悟が必要ですね」
「博士?どういうことでしょうか。」
「また見たんですよ。冒険者の死体が見つかったニュース」
「ああ、そうですか…」










リスリー博士のモンスターレポート
キングゴブリン
ゴブリンの王であり、巨大なこん棒を持つ。
スタートゥ王国国境の洞窟に最近住み着いた様子。




最終更新:2017年01月12日 03:15