女神の宴

ヴァンディリオ・パンテオン系の神話のひとつ。

エブリアス神が酒を自ら味わい、それの虜になってしまった時のこと。
明るく楽しみは何でも分け合いたい性質の女神は、姉妹のアルジュハ神にも当然のようにそれを薦めた。
最初こそ「酒より口づけのほうが甘い」と主張していたアルジュハ神であったが、あまりの酒の美味さに最終的には意見を翻す。
すっかり気を良くしたエブリアス神は毎日のように神々を招きよせては酒宴を開くようになった。
もちろんアルジュハ神も毎度顔を出し、姉妹そろって酔っぱらっては、あられもない恰好で踊り狂う始末だった。
当然毎夜の乱痴気騒ぎは、ほどなくフィーシア神の耳に入った。
優しき女神もさすがにこれには呆れ、女神らしい慎みを保つよう姉妹を諭したが、一向に宴は止む気配を見せなかった。
困り果てたフィーシア神は、姉妹の兄であるジガイウス神に説得を依頼する。
ジガイウス神も連日の大騒ぎには迷惑していたので、二つ返事でこれを引き受けた。
宴に乗り込み、大騒ぎの神々を薬で眠らせたまでは良かったが、しかしすっかり出来上がった姉妹はまともに取り合おうとしない。
兄神の前で大笑いしながら裸で踊り、あげく彼の禿頭を指さして馬鹿にした。(兄神の前で交わりはじめたとする異説もある)
ジガイウス神は激怒したものの、理性を失うことなく一度その場を去った。
そしてフィーシア神へ、酒の原料となる植物に新たな毒の性質を付け加えるよう進言したのであった。
姉妹の兄神への仕打ちを聞いたフィーシア神は、これにすぐさま同意した。
これより、度を越して酒を飲んだ者には、この新たな毒の効果が及ぶようになった。
「二日酔い」の誕生である。
その上、ジガイウス神は戒めとして、二日酔いの特効薬の調合法を厳重に秘匿してしまった。
そのため未だに二日酔いを完全に治す薬は知られていないのだという。
ちなみにアルジュハ神は二日酔いに苦しみながら、こう言ったと伝えられている。
「酒は口づけのように甘く、杯を干せば恋のときめきのように身体を熱くする」
「そして過ぎれば、愛の終りのごとく、痛みをもたらす」と。


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  • 酒甕座 同源流の神話と思われる


最終更新:2019年05月21日 19:45