「竜の居城」

ラタス洋の上空に留まる巨大な嵐の渦。
名の由来はが巣食っていると言う訳ではなく、内部で常に迸る雷を竜に見立てて付けられたもの。

記録によると少なくとも200年間に渡って存在している嵐であり、多くの伝承や昔話にも登場する。
中には自然に出来た嵐とは考えにくいと主張する者も多い。


【各地の伝承】
+ 「王と竜の伝承」
伝承の一つ。
昔、この地は武芸に秀でた王が治めており、その王を愛した一頭の竜がいた。
彼女は嵐に巻き込まれ、怪我をしていたところを王により傷の手当を施された。
それ以来彼女は王を愛し、力となった。
魔族の軍勢を共に退け、大国の侵略に共に立ち向かう彼女は何時しか国の守り神としても扱われる事となった。

ある時、一帯を荒し回る悪名高い盗賊団を成敗する為に王は単身で戦いに赴いた。
しかし武芸に長けた王と言えども不意をつかれれば呆気なく果てるものである。
物陰から盗賊団が放った毒矢により、その命を散らす事となった。

その知らせを聞いた彼女は泣き叫んだ。
主人の仇を滅ぼした後に海へと飛び立ち、その姿を巨大な雷雲に変えた。
その雷雲こそが竜の居城といわれるあの雲である。

+ 「とある漁師の村に伝わる伝説」
かつてこの海には島と見紛う程の巨大なクジラがいた。
海にまつわる者たちはこのクジラを守り神として崇めていた。
だがある時、とある漁師が『あれはクジラであり魚と変わりない、ならば仕留めてみせる』と言い出した。

仲間達はそんな事は戯言としか受け止めなかった。
しかしその漁師は三日三晩に渡る戦いの末にそのクジラを仕留めた。
だがクジラの断末魔とも言えるであろう、最期の潮吹きは天を撃ち抜くものであった。

それはやがて巨大な荒れ狂う雷雲となった。
その雷雲から放たれた雷により、漁師は船共々海の藻屑となった。
以来、海の守り神とされたクジラが最後に作り上げた雷雲はずっとその場にある。
竜の居城と俗に言われるあの雷雲の事だ。

『とある漁師の村に伝わる伝説より』

+ 「大空賊ミスト・クラウドの伝説」
セレスフィア空賊達の伝承によれば「竜の居城」は世界を股に掛けた伝説の大空賊ミスト・クラウドが稲妻を操る秘宝で作り出した雷雲の要塞である。
今もなおミスト・クラウドの一味は生きていて、雲中の隠れ家に住んでいるという。

+ 「雲人征伐」
大昔には巨大な雲の姿をした雲人族と呼ばれる者が居て、我々ゾルバ族に対して暴虐の限りを尽くしていた。
ある日、我々が戦いで森に出かけた隙に、族長の娘が雲人に攫われ雲中に閉じ込められてしまった。

族長はすぐに助けに行ったが、娘は既に空から海に突き落とされていたのである。
弓に優れていた族長は矢を射って雲人を滅ぼしたが、雲人は最期の力を振り絞って互いの体を合体させて不滅の厄災となった。
それが「竜の居城」である。


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最終更新:2023年02月17日 15:25