エペタム

神熊国の伝承に出てくる妖刀。
エペタムとは古い言葉で『人食い刀』という意味。
青鈍色の輝きを放つ片刃の直刀であり、その刃には悪神が宿っていたとも。
使い手がいなくとも自ら動きだして宙を舞い、近づく者に斬りかかってはその血を啜ったと云う。

またカンミ・カムイ島に住むカムイ族の間にもこれと良く似た刀の逸話があるらしく、両者の祖先に関わっているのではとも言われる。


【伝承】
神熊の民がユグレスの森や小島で暮らす様になるよりも遥か昔の事。
かつてその地に住んでいた我らが祖先のコタン(国・集落の意)には一振りの宝刀が納められていたが、ある日に王がこの宝刀によって命を落とした。

王には二人の王子が居たが、王子達は互いに相手が犯人だと疑い争う事となった。
そして長い戦いの末、争いに疲れた弟は自身の民を連れて国から出て行ってしまった。
だが実のところ兄弟はどちらも父王を手にかけてなどおらず、王を殺したのは悪神が宿った宝刀そのものだったのだ。

刀はコタンに残った兄の血を吸おうと宙を飛んで襲い掛かってきた。
だが兄はとっさに身を躱し、刀はそのまま『熊神』を祀る木像に突き刺さる。
兄は刀の柄を押さえながら一心に熊神へ祈りを捧げると、木像から伸びた無数の枝や蔓が次々と刀に巻き付き覆い隠してしまった。

兄は自分が弟を信じる事が出来なかった事を悔やみ、自らも僅かな民を連れてコタンを出てしまったと言う。
妖刀はかつてコタンがあった地にて今もなお神像に封印されているが、その地が何処にあったかはもはや誰にもわからない。


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最終更新:2023年11月23日 00:51