――――後輩が魔女となって。

――――私は後輩の死を嘆く子を撃ち殺して。

――――そして後輩に殺されて。

――――そして今、此処に居る。





深夜、ビルの屋上から街並みを見下ろす二つの影。ひとつはベレー帽を被った少女。一つは眼鏡を掛け、マントを羽織った青年。
二人が見下ろす先には公園が在り、そこでは四つの人影が交錯していた。

「ハルバートを持っているのはランサーでしょう。もう一つの双剣の方は分かりかねますが。」

公園で戦う四人を遠見の珠で見て、青年がサーヴァントのクラスを推測する。

「どうでも良いじゃない。今なら一撃で倒せる」

少女はそんな事に関心は無いというように応えた。

「よろしいのですか、マスター。彼らを殺しても」

「もう人殺しだもの、私は。それに聖杯を取ったら皆生き返らさせて貰うわ。私だって、そうして此処にいるんだもの」

サーヴァントの青年に応えてマスターの少女は両手にマスケット銃を出現させた。

「キャスター、貴方はサーヴァントをお願い」

「承知しました」

応じたキャスターの周囲に膨大な魔力が吹き荒れ、キャスターのマントが翻る。凄まじい魔力に圧されながら、精確に狙いを付ける。必要なのは殺意、標的の命を確実に射抜く意思。
殺意を持たずに殺せる程少女は外れておらず。相手を正しく人として認識し、引鉄を引く。そうして少女は殺した相手の命を背負う。

「………汝に普く厄を逃れる術も無し」

魔術と銃撃の応酬を行っていた二人のマスターが、遮蔽物の陰で相手に動きを窺い、動きを止めた機を少女は逃さない。
キャスターの呪文が完成し、最後の一節を唱える前に、少女は引鉄を引いた。

「メテオスォーム」

放たれた弾丸が過たずに二人のマスターを撃ち抜いた直後、降り注ぐ隕石が二騎のサーヴァントを消滅させた。

「ふう…ふ…ふうう…」

荒い呼吸を押し殺し、マスターの少女は踵を返す。今日は二組の主従を脱落させた。また一歩、聖杯へと近づいたのだ。

「う…くう……」

少女の顔は、苦悩に満ちて暗かった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


翌日。ロールに沿って与えられた住居である一軒家の寝室で少女が目を覚ますと、彼女のサーヴァントが陣地の強化を行っていた。
少女の両親は、少女が元いた世界と同じで事故死している。
この戦いに巻き込まれて死ぬことは無い、NPCとはいえ両親を危険に晒すのは避けたい少女には都合が良かった。

「お早うございます、マスター。良くお休みになられましたか」

見る度にハリー・⚪️ッターを連想する顔を見て、周囲を見回す。

「どれ位進んだの?」

「この家の異界化は完了しました。内部にはドラゴントゥースウォーリアを始めとするモンスターを放ち、警備も万全です。街に放った使い魔も他の主従の情報を継続して集めています」

「じゃあ防御(ディフェンス)は完璧ね」

何でもこの家の内部の空間に手を加え、迷宮として作り替えて魔物を放すとか言っていたが終わったらしい。

「まだまだ手を加える余地は有ります」

「任せるわ、他の主従の件で何か判ったことは?」

「魂喰いを行っている主従とサーヴァントを用いて私欲を満たす者を発見しています。魂喰いを行っている方の拠点は不明ですが、私欲を満たしているマスターの居所は判明しています」

「では今晩出撃します」

「承知しました。マスターに武具を作成しておきましたのでお使いください」

「有難う、キャスター」

――――愚かな小娘だ。

朝餉を取りに去ったマスターを見送り、キャスターは心中毒を吐く。
聖杯を取りに行くと決めたなら、今は身を潜めるべきなのだ。下らぬ正義感に身を任せて戦いを仕掛ける等、愚の骨頂。
存在自体を悟られぬようにし、キャスターの持つ錬金術と屍霊術を用いて、動植物やNPCを魔物や不死者に変え、周到に罠を構築し、詳細を調べ上げた敵を誘い込んで殺す。
これこそがキャスタークラスのあるべき戦い方というものだ。
しかぢ、あのマスターは、動き回り、戦いを繰り広げている。
いざとなれば転移魔法で拠点へと戻るだけだが、余計なリスクを犯されるのは好ましくない。
もっともマスターの使う武器が銃という遠距離攻撃が可能な武器であったのが、キャスターが強く制止せずに従う理由でもあった。
遠隔からの狙撃。キャスターは銃を作ることは出来ぬが、弾丸は作れる。キャスターが作った弾丸を、マスターが使用すればサーヴァントすら倒せよう。
“魔弾の射手(Il franco cacciatore)”とか言って喜んでたがどうでも良い。
正面切っての戦闘を苦手とするキャスターには、今のマスターは能力的には不足は無い。
だがそれだけだ、今のマスターはでは己が全能を発揮出ぬ。

――――マスターを探さないといけませんね。

一度マスターをグールパウダーを用いて傀儡にしようとしたが、魂が妙な形に加工されていた為に出来なかった。
非常に興味深くはあったが、迂闊に手を出してマスターが死んでしまえば、己の名は道化の代名詞となるだろう。
こうなればマスターを変えるより他に無い。

キャスターには抱き続けた想いがある。この戦いには断じて勝たねばならないのだ。
その為にはマスターを裏切る事など容易いこと。

――――我が女神。レナス・ヴァルキュリアよ。もうすぐ再びお目に掛かります。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

――――貴女がどう思っているのか。それこそが重要なのですよ。

キャスターの言葉を思いだし、少女は一人頷く。

――――誰にどう思われても構わない。私は私の願いを叶える。その為に戦う。許しも請わない、救われようとも思わない。そんな事は関係無く、私は皆を救いたい。

折れていた心を再起させたキャスターの言葉を胸に、少女は血の道を行く。

迷いも絶望ももはや無い。

――――もう何も恐く無い。

その先にあるのは救済か安息か絶望か、それは女神にもわからない。






【クラス】
キャスター

【真名】
レザード・ヴァレス@ヴァルキリープロファイルシリーズ

【ステータス】
筋力:E  耐久:B  敏捷:D  幸運:C  魔力:A++  宝具:EX

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
陣地作成:A
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
“工房”を上回る“神殿”を形成することが可能。

道具作成:A+
原子配列変換を用いることで、宝具の作成すら可能。

【保有スキル】
魔術:A+
元いた世界で使用されていた戦闘用魔術を、より上位の大魔術も含め習得している。

屍霊術:A+
死体や魂を用いた外法の術。キャスターはこの術を得意とし、不死者を作成することも可能。


錬金術:A+++
賢者の石を作成することを目的とする魔術体系。原子配列すら変換することが可能。
キャスターは賢者の石を作成し、その中に収められた知識をある程度習得している為に最高ランクとなっている。


信仰の加護:A+++
一つの宗教観に殉じた者のみが持つスキル。 加護とはいうが、最高存在からの恩恵はない。あるのは信心から生まれる、自己の精神の絶対性のみ。
愛する女神への想いを叶える為なら如何なる外道な事でもやってのける。
あらゆる精神攻撃を無効化する。
また、レナス・ヴァルキュリア以外の神格のカリスマを無効化する。

神殺し:A+++
オーディンから神としての力を奪い、新世界の創造神となったレナスを封じた事から獲得したスキル。
神性持ちを相手にした時、その神性に応じステータスをダウンさせる。
また、神造宝具の性能をそのランクに応じ下げる。


変態:ー (A)
レナス・ヴァルキュリアのスリーサイズを鎧の上から正確に看破する眼力。
レナスそっくりのフィギュアを大量に製作する能力。
レナスの思考を正確に読む推理能力
レナスの為なら神にすらなる執念。
etc…。






【宝具】
Should Deny The Divine Destiny of The Destinies.(運命の女神の与えたもうた宿命を拒絶すべし)
ランク: EX 種別:対神宝具  レンジ:10 最大補足:1人

対峙した神格の神性や権能を無効化し、ただの人間とする宝具。
神威と神意を否定するこの宝具は、神格による干渉は令呪による命令すら無効化する。
固有結界として現れ、対象となった神格と神造宝具をを無力化する。
女神を愛し、女神を自分と同じ人間とする為に生きたキャスターの生涯の具現化。レナス・ヴァルキリアに捧ぐ愛。
来歴の都合上、キャスターの抱く想いが強い神格程効果を発揮する。


【weapon】
大いなる教書:

あらゆる魔術について述べられた魔道書
外法と呼ばれる屍霊術にも詳しい

【人物背景】
錬金術、屍術、魔術を始めとする諸学に比類無き才を発揮した天才。
ある日偶然見た戦女神レナス・ヴァルキュリアに恋い焦がれ、レナスと人間として結ばれようとする。
その努力は実らず、レナスを新世界の創造神とする結果を導き、レナスとレザードは遥かに隔たってしまう。
レザードが時を越え、戦女神の一人、シルメリアの力を用い、最高神の力を奪い。時を超えてレザードを滅ぼしに来たレナスを捉え、融合しようとする。
結局は失敗し、レザードはその生を終えた。


【方針】
露見しないように慎重に立ち回る。当面は賢者の石を作る事を目的とする。不死者を作れるか、マスターを傀儡に出来たら楽だなーと思っている。
もっと良いマスターがいたら鞍替えする。その為にも忠僕を演じてマスターを油断させる。

【聖杯にかける願い】
受肉。聖杯の持つ魔力の獲得。



【マスター】
巴マミ@魔法少女  まどか✨マギカ

【能力・技能】
魔力でマスケット銃を生成できる。巨大マスケット銃ティロ・フィナーレが必殺技
リボンを使った拘束も出来る
錯乱している様に見えていても、冷静に状況を把握し、効率良く物事を進める判断力と思考能力を持つ。

【weapon】
リボンで作ったマスケット銃

【ロール】
女子中学生

【人物背景】
事故にあって死に掛かっていたところを、淫獣と契約して魔法少女となる。
主人公達の良き先輩であり、結構な時間を一人で魔法少女として魔女と戦って来ても折れない強い心を持つが、
目の前で後輩の美樹さやかが魔女となり、魔女が魔法少女の成れの果てだと知り、錯乱。魔女となる前に皆で死のうとし、まどかに殺される。


【令呪の形・位置】
左手の甲に蛇の形をしたもの

【聖杯にかける願い】
魔法少女達に人としての生を、聖杯戦争で殺した者達の蘇生。

【方針】
当面は様子見。機会があれば暗殺。巻き添えが出さず、害を撒き散らす輩は積極的に倒す。

【参戦時期】
10話回想シーン。まどかに殺された後

【運用】
キャスターとしては最高峰だが宝具が弱い。積極策を取らずに待ちに徹するのが賢明か
主従共に飛び道具主体なので近接戦はなるべく避ける
最終更新:2016年05月10日 02:05