深夜の山道。縦に不法駐車された5台の乗用車から、10mほど離れて一組の男女が立っていた。
赤銅色の肌と銀髪が特徴的な男は、精悍な美男子と言えなくも無かったが、
口元に浮かぶ、鮫の様な獰猛な笑みと、血に狂った人喰い虎でさえ尻尾を巻いて逃げ出しそうな狂猛な眼が、男の印象を魔獣のそれにしていた。
男のやや後方に立つのは、二十歳位の娘。筋肉の付き方や、立ち姿から、かなり鍛え込んであることが判る。
整った顔立ちだが、美人と呼ぶにはやや童顔であった。美少女、と呼ぶべきだろうか、大きめの瞳が不安げに揺れている。

「俺の実力を疑うと言うなら、見せてやろう。嘗てメジャーで屍山血河を築いたこの一投!」

男がそう言い、前傾姿勢を取り右手を高く掲げる。野球の投法でいうアンダースローの構えだ。
見よ。その右手から燃え上がる漆黒の炎を。手にした球が漆黒に染まっていく様を。

「見るが良い監督!!これが俺の!!!!」


猛  り  奔  る  黒  犬  獣(ブラックドッグ)


投げ放たれた球がイギリスの伝説に語られる魔獣、黒犬獣の姿を取って奔るのを女は見た。
猛り狂う魔獣は凶悪な牙を剥き出し、路駐された5台の車の最後尾に喰らい付き、
一気に5台の車両を粉砕しながら貫き、奔り抜けて行った。

「……………………」

呆然と眼前の光景を見守る女に。

「今ので二割…といったところだ」

傲然と男は言い放った。


◆遡ること八時間前◆


結城千種はプロレスラーである。
彼女は親友兼ライバルの武藤めぐみ共々未来の日本のプロレス界を背負って立つ逸材である。
そんな彼女はタッグ式バトルロイヤル、ホーリー・グレイル・ランブルの優勝目指し、召喚したサーヴァントと共に戦うのだ。

などということは無かった。

「はうぅぅぅぅぅ……」

結城千種はホテルの部屋で頭を抱えていた。
武藤めぐみと組んで、大空みぎり&ジェナ・メガライトのタッグと戦い。バックドロッププリンセスと呼称される彼女の必殺技、バックドロップでメガライトを沈めたのが一昨日。
昨日はホテルで一日眠りこけ、激闘の疲れを癒していたのだった。
そして今日。ふと窓から外を見た時、思い出したのだ、自分の本来いるべき場所を
額然とする千種の脳裏によぎる聖杯戦争に関する知識。

「どうしよう…めぐみ」

混乱と恐怖から親友の名を呼んでも、その親友はNPC。本物の、千種の知る、武藤めぐみでは無い

「はうぅ…どうしたら……」

頭を抱えて俯いた時、そのサーヴァントは顕れた。

「娘。お前が俺の監督か」

俯いて頭を抱えていた千種の前に、いつの間にか立っていた男。
顔を上げた千種の眼に映ったのは、鍛え抜かれた赤銅色の肉体。全身から立ち上る獰猛な覇気は、目の前にいきなり熊が現れても、素手で立ち向かっていきそうだ。

「へ……?」

千種は何の反応も返さなかった。ひたすら硬直しているだけだった。

「……おい」

焦れた男が短く怒気を発した時。

「ひぃやああああああああああ!!!!」

頓狂な悲鳴を千種は上げ、男は自分が全裸だということに気が付いた。


十数分後。叫び声を聞きつけてやってきためぐみを何とか誤魔化し、男と改めて相対した時、男は黒いロングコートの様なものを身につけていた。

「済まんな。なにせあの世に旅立った時、俺だけ服を着ていなかったので
な。それはそれとして、娘。お前が俺の監督か」

眼に炎を燃やし、サメの様な歯を剥き出しにして聞く男。心なしか銀髪が逆立っている様な気がする。

「え、え…と、そう、みたいですけど…あの、監督って?こういう時は、『聞こう、貴方が私のマスターか』みたいな感じな事を言うんじゃないんですか?」

怯えながら聞く千種に、男は怪訝な顔をした。

「リーガーである俺を招いたのなら監督だろうがッッ!」

「はぅぅ〜ごめんなさい〜」

思わず謝る千種。ふと気付く。

「あの、リーガーということは、野球選手だったんですか?」

「野球…?ふん。俺を成仏させたサムライに免じて、その呼び方を許そう」

恐ろしく尊大な態度だった。

「あ…ありがとうございます」
千種が思わず礼を言ってしまう程に。

「確かに、そう、俺は野球選手だった」

千種は愕然とした。歴史に名を残した強者や神話の英雄を相手に、事もあろうに野球選手が挑むのだ。勝ち目が有るなど到底思えなかった。

「アーサー王、ジークフリート、ヘラクレス、さぞかし殺(や)りがいがあるだろうな。世界中より集った猛者共ですら、一握りの本物を除いて、俺の前には立て無かったが、奴等はそんな腑抜けではあるまい」

今度は待つ必要が無さそうだ――――と獰猛な笑みを浮かべるリーガー。その自信はどこから来るのか千種は考え、一つの結論にたどり着いた。

「ひょっとして…聖杯戦争って……野球?だったら私、頑張ります!9番ライトだったけど、未経験ってわけでも無いですし!!野球は好きだし!!」」

僅かに見えた希望に縋る千種。しかし、

「殺し合いに決まっているだろうが」

無慈悲に打ち砕かれる希望。へなへなと崩れ落ちる千種を横目にリーガーは猛る。

「安心しろ監督。立ち塞がる敵は全員屠って優勝トロフィーをくれてやる。最も敵が屑ばかりならトロフィーを叩き壊すが」

「な…なんでそんなに自信満々なんですかっ!?」

絶叫する千種。同業者には喧嘩で大の男を血祭りに上げるヤツや、過去に人殺したことがあると言われても納得できる性格の奴もいるが、彼女は喧嘩などしたことが無い、普通の性格と感性の持ち主である。
いきなり殺し合いに巻き込まれ、しかも自分の相方は野球選手。これで冷静でいろというのは酷だろう。

「フ…監督。俺の名を聞けば納得できるぞ。俺の名はジョン・ウェイズ。アランズ・ロードと言った方が良いか?ベースボールが好きならば、聞いたことが有る筈だ」

「うぅ…誰ですか?そんな人知りません!」

「なにぃいいいいいい!!!!」


リーガーのサーヴァント、アランズ・ロードことジョン・ウェイズ。
彼が生きた球場(フィールド)で繰り広げられた戦い。
それが己の知る野球とはかけ離れたものであり、球場(フィールド)に生きるリーガー達が人知を超越した修羅であることを結城千種が知り、
ベースボール=修羅の国の競技。という認識を抱くのはもう八時間後のことである


【クラス】
リーガー

【真名】
アランズ・ロード(ジョン・ウェイズ)@サムライリーガーズ

【ステータス】
筋力:C+  耐久:C  敏捷:B  幸運:C  魔力:E  宝具:A++

【属性】
混沌・中庸

【クラススキル】
メジャーリーガー:D
メジャーリーガーとしての能力。投擲スキルと飛来物を打ち返す技能と、集団で行動する際にプラス補正が加わる。
リーガーは投手としては史上最強の豪速球投手であったが、チームワークが存在しない上に打者としての活動も無いので低ランクに留まっている。
B+の投擲技能を得る。

【保有スキル】
威圧:B
投球フォームに入った時、その殺気は荒れ狂い。球場全域に暴風となって荒れ狂う。
Cランク以下の耐性ならば気絶。Bランクならば硬直する。
Aランク以上でも確率次第で竦む。

情報抹消:B
アランズ・ロードというリーガーは経歴が存在しない。リーガーの過去やスキルは知ることができない。
ジョン・ウェイズの名を知られれば過去やスキルが明らかになる。

荒ぶる魂(ソウル・エフェクト)A+
人間の脳に直接イメージを送り込むことで、存在しないものを存在していると誤認させる。言わば意思力によるヴァーチャル・リアリティ。
低ランクのものはただの幻だが高ランクになれば、対象の精神を砕く事が可能。
リーガーの荒ぶる魂は黒犬獣やケルベロスとして現れる。
威圧スキルと合わさることで威圧のランクを一つ上げ、抵抗に失敗した者に魔獣ケルベロスに食い殺される幻を見せて気絶させられる。
この幻を見た者はその後も魔獣の幻影に悩まされ続ける。

完全なる人類(ファイネスト・シングス):A
人類として最高と言われ、唯々力に任せて荒れ狂うだけで屍山血河を築き上げたジョン・ウェイズの肉体に、肉体的には恵まれないながらもそのポテンシャルを引き出し、世界をねじ伏せた比類無きサムライ、王漸源路郎の脳を移植して完成した肉体に基づくスキル。
高ランクの天性の肉体スキルと頑健スキル。身体運用に関してのみA+++の日本武道スキルを発揮する。



【宝具】
一球勝負(フルカウント・ショウダウン)
ランク:B  種別:対人宝具  レンジ:ー  最大補足:2人

2ストライク3ボールの状態にして崖っぷちの一球勝負を相手に挑むリーガーの決闘スタイルが宝具化したもの。
リーガー達の戦場であるドラゴンシティの球場が固有結界として展開される。
リーガーが敗れた場合は48時間実体化が不能となるが、リーガーが勝った場合は何も起こらない。但し、対象は必ずバッティングを行わなければならない。
バッティングを行わなければ結界の展開と同時に現界する審判(パニッシャー)の英霊ユルゲンの鉄拳により、如何なるステータス・スキル・宝具を無視して座へと送還される。
なおこの勝負において不正を働いた場合。結界の展開と同時に現界する審判(パニッシャー)の英霊ユルゲンの鉄拳により、如何なるステータス・スキル・宝具を無視して座へと送還される。

発動条件として、対象がこの宝具の詳細を知っている状態で、対象とリーガーどちらかがショウダウンを宣告。申し込まれた側が受けることが必要となる。
勝負を断れば、クラスが48時間の間【臆病者(チキン)】へと変わり、勇猛・カリスマ・反骨の相・皇帝特権・星の開拓者・各クラスの固有スキルが使用不能となる。

この宝具の発動時は令呪によるバックアップは不正とみなされる。
既に行われている場合は発動不能。
宝具の発動は不可能。常時発動型を除く宝具の効果や、真名開放も不正とみなされ認められない。
リーガーが令呪のバックアップを受けている場合は使用不能。
バッターが素手でボールを触ることを禁ずるメジャーボールのルール上、素手で戦う相手には使用できない。

猛り奔る黒犬獣(ブラックドッグ)
ランク:B  種別:対人宝具  レンジ:1〜40   最大補足:1人

リーガーの必殺球が宝具化したもの。体内の鉄分でボールを覆い、地を這う様なアンダースローで投球、体内電流で射出する電磁砲。黒犬獣のソウル・エフェクトが出現する。
触れるもの全てを破壊するその投法はCランク以下の宝具を破壊する。


最後の一投・一球入魂(フルブラスト・ショウダウン)
ランク:B  種別:対人宝具 レンジ:ー   最大補足:2人

2ストライク3ボールにした上で、ランナーを三塁に進めた状態で、ピッチャーが即引退を賭け、バッターを指名して行うメジャーボール究極の決闘方が宝具化したもの。
リーガー達の戦場であるドラゴンシティの球場が固有結界として展開される。
リーガーが敗れた場合座へと送還される。
この場合も対象は必ずバッティングを行わなければならない。行わなければ、結界の展開と同時に現界する審判(パニッシャー)の英霊ユルゲンの鉄拳により、如何なるステータス・スキル・宝具を無視して座へと送還される。
なおこの勝負において不正を働いた場合。結界の展開と同時に現界する審判(パニッシャー)の英霊ユルゲンの鉄拳により、如何なるステータス・スキル・宝具を無視して座へと送還される。
発動条件として、対象がこの宝具の詳細を知っている状態で、リーガーがフルブラストを宣告。相手が了承する必要がある。
この宝具はピッチャーであった者しか発動できない。
この宝具は断ってもペナルティは発動しない。
この宝具を使用している時のみ、リーガーの真の宝具が発動できる。
この宝具の発動時は令呪によるバックアップは不正とみなされる。
既に行われている場合は宝具の発動は不可能。
宝具の効果や真名開放も不正とみなされ認められない。
リーガーが令呪によるバックアップを受けているときは使用不能。
バッターが素手でボールを触ることを禁ずるメジャーボールのルール上、素手で戦う相手には使用できない。

神裂き喰らう地獄の黒犬(ケルベロス・ザ・ブラックドッグ)
ランク:A++  種別:対人宝具  レンジ:1〜40   最大補足:1人

リーガーが全力で投げる一投。体内の鉄分でボールを覆い、地を這うようなアンダースローで投球、体内電流で射出する電磁砲。三つ首のケルベロスのソウル・エフェクトが出現する。
大地を揺るがし、神すら屠る。対城宝具の粋に有る威力を持つ対人宝具。
Aランク以下の宝具で受けると破壊されてしまう。
最後の一投・一球入魂(フルブラスト・ショウダウン)発動時でなければ使用不能。

【weapon】
ボール:
魔力により作られるボール。普通の硬球だが、リーガーのプレーに耐えるだけあってCランクの宝具並みに頑丈。

グローブ:
ボールと共に作られる。リーガーのプレーに耐えるだけあってCランクの宝具並みに頑丈。

炎斬(ほむらきり):
日本刀の形状をした抜刀(バット)王漸源路郎の記憶から再現している。劣化している為Dランク並みの宝具と同等の強度


【人物背景】
月刊ヤングキングアワーズで連載されていた『サムライリーガーズ』のラスボス。
30年前にイギリス代表のチームとしてメジャーボールに参加。
たった半年間で対戦した数多のバッターを死亡・病院送りにし、遂には打者がバッターボックスから出て、ピッチャーを敬遠するという前代未聞の事態を生み出した、“イギリスの悪魔”ジョン・ウェイズ。
そのジョン・ウェイズが最強の兵士を造るアメリカ軍の計画に参加し、人類最高峰の肉体を活かせる脳(パーツ)の出現を待つため、事故死を装いコールドスリープにつく。
30年後、恵まれ無い身体の能力をフルに引き出し、世界をねじ伏せた比類無きサムライ、王漸源路郎の脳を移植され、完全なる人類(ファイネスト・シングス)としてメジャーボールにアランズ・ロードと名乗り帰還する。
この時、二つの人格が混じり合い、アランズ・ロードという人格が誕生するも、研究機関のトップにより消滅させられ、ジョン・ウェイズが完全に現世に甦る。

研究機関の意向に基づき、新チーム、ブラック・ゼウスを旗揚げ。各チームにヘッドハンティングをかけて優秀な選手を実験材料として集め、ブラック・ゼウス優勝の暁には、全チームへの強制トレード権を獲得することを運営委員会に認めさせる。
そして優勝を賭けた一戦で、源路郎の弟、全力を持って屠るに値すると認めた王漸一路太と、伝説の決闘方フルブラスト・ショウダウンで激突。
必殺のケルベロス・ザ・ブラックドッグを、地球と共に受け止めた一路太が返した打球により、魂を肉体の外に叩き出される。
そして源路郎に導かれ、彼岸へと旅立って行った。全裸で。

彼が最も強かった時期はアランズ・ロードの名で活動していた時期である為。リーガーは表向きはアランズ・ロードとして召喚されているが本当の真名はジョン・ウェイズである。

【方針】
一路太に匹敵する強者を探す。立ち塞がるものは全て屠る。

【聖杯にかける願い】
無い。聖杯を優勝トロフィーとしか思っていない。
強者と巡り会えなければ下らない勝利の証として叩き壊そうと思っている。


【備考】ユルゲン:
メジャーボールで主審を勤めていた人物。人外の域にあるメジャーリーガー達を裁くその姿は、選手達に負けぬ人気を誇った。
試合の進行を妨害する者には容赦が全く無く、鉄拳制裁(パニッシュメント)により強制退場させられる。
その人気と、選手達からの畏敬により座へと召し上げられたのちも、リーガー達の元に訪れ、厳正中立な審判を行っている。

メジャーボール:
野球の皮被った何か、多分修羅の国発祥の狂技。プレーの自由度が半端では無く。
ピッチャーはボールを殴って飛ばそうが、蹴って飛ばそうが問題無く。
バッターはバットをピッチャー目掛けてブン投げたり、バットを蹴り飛ばしたり、果てはボール投げてピッチャーの投げたボールにぶつけたりしても問題無い。
球場で行われているのは文字通りの死闘である。おい野球しろよ。


【マスター】
結城千種@レッスルエンジェルス  Survivor2

【能力・技能】
資質的には世界最高クラス。特技はバックドロップで“”バックドロッププリンセス”と呼ばれるほど。
根性がかなり有る。
元ネタが蝶野正洋なんで使う技も蝶野がベースになっている。

【ロール】
新日本女子プロレスの興行で来た。
一応あと何回か興行が有る


【人物背景】
身長161cm 3サイズB85W58H88  愛知県出身 2月28日産まれ  CV川澄綾子

おっとりとしていて、自分に自信が無さげだが、根性が人一倍あり逆境にも強い。
常に笑顔を絶やさない嘘を言わない明るい娘。武藤めぐみと違って、「来島さんじゃ勝てない」とか言いそうにない。
趣味は野球だが下手の横好きで、万年ライトで9番
フィジカル面はかなり強い。
武藤めぐみと出会った切っ掛けは、新女のテストを受けに行った時、道に迷って通りすがりの武藤に泣きついたのが馴れ初め。

【令呪の形・位置】
三つ首のケルベロスを模したものが腹部に有る。

【聖杯にかける願い】
おうち帰る

【方針】
出来るだけ戦わない殺さない。周りも巻き込まない。

【参戦時期】
15〜30歳まであるけれど21歳で

【備考】
団体経営ゲーのサバイバーは設定自体がほとんど無く、シナリオは存在していませんので、旧シリーズの設定も参考にしています。

【運用】
物陰からこっそりビーンボール黒犬獣が一番有効だが、リーガーが絶対にやらないのが難点。
出来るだけメジャーボールの説明をして回ってショウダウン発動させるのが賢明か…と思いきやこれまたリーガーが相手を選ぶという……。
最終更新:2016年06月22日 08:20