遙か昔に鉄があった。鉄は人に憧れていた。
その意志は永き時を生き、やがて人の体を渡り歩き、その中でもよく物を見ることが出来る魔導師に宿る。
人に愛された鉄は人に力を与え、他とは違うものとした。
だがそれを人は恐れた。失くしてしまわねば、自分たちが危ういと感じたのだ。
かつて人に憧れ、愛し愛された鉄は歪みを見せる。寂しさに狂い、憎むようになる。
意志は渡り歩く。同じ寂しさを持つ魔導師の中を。
意志は変化する。かつて愛した人を憎み、そして最後の希望である主人を下がる。
鉄の意志は、寂しさと憎しみの皇子と語り合う。
どうしてこの世界、君がいない世界なのかと。
最終更新:2017年01月08日 20:17