第1回(2017/3/26)

参加PC



難破海岸

WRECK ASHORE
商人メナイ・バンテクは、グレイホーク市での商売に成功し、ひと財産作ったので、それをもって故郷のコールドロン市に帰ろうと考えているのだが、その旅の間の護衛を求めていた。まずコールドロン市にとっては首府にあたるサザリン市まで船旅をし、サザリン市からコールドロン市までは陸路を行くことを考えていた。
プレイヤー・キャラクターたちはさまざまな理由からグレイホーク市に滞在していたサザリン市の市民であり、メナイの護衛として雇われた。故郷に帰るつもりのところでちょうど良い仕事で、まさに渡りに船といったところ。この依頼を受けることになった。PCたちは約束の期日にグレイホーク市にとっては外港にあたるハードバイ市に集まることとなった。

約束の日、ハードバイ市ではメナイが片目が緑色の宝石の義眼になっている船乗り風の男と何かの交渉をしていた。どうやらグレイホーク市に残してきた家屋敷を拳ほども大きな黒真珠と交換する取引をしていたようだ。メナイは黒真珠を受け取り、片目が宝石の男は機嫌よく去って行った。メナイによればこの男はキャプテン・ゴーントマンという名前だとか。

メナイの仕立てた帆船ノーブル・ゴブリン号に乗船してハードバイ市を出港するとき、たまたまキャプテン・ゴーントマンの船シー・ワイヴァーン号の出港と重なった。船首に羽ばたくワイヴァーンの像を取り付けたその船からキャプテン・ゴーントマンが機嫌よく手を振ってきた。「いい取引だったよ。君の船旅が良い旅であることを祈っているよ!」

50日ほどの航海の末、フック半島先端にあるブラックウェル砦近海の灯台が見えてきた。
夜間航海の中、突如ノーブル・ゴブリン号は座礁する。
熟練の船長は海図と灯台の光とにらめっこしつつ、こんなところに暗礁地帯はなかった筈だと首をひねる。
乗組員は必死で浸水を食い止めようとしていた。
と、そこに夜間の海をこっそりボートで近づいてきた8人の海賊たちの襲撃が行われる。
これを撃退して捕らえた者を尋問すると、どうやら、灯台守の一家を虐殺して別の場所にやぐらを作って偽物の灯台を作って航行する船をだまして座礁させているのだという。
偽の灯台の近くに彼らの仲間たちが野営しているのだという。
PCたちは座礁した船の修理のための資材を求めにブラックウェル砦まで行くためにも、邪魔になるこの偽灯台の海賊の残りの連中を排除しに出かけた。
油断していた海賊の残りを始末したPCたちはその海賊たちが蓄えていた略奪品を手に入れ、ブラックウェル砦へと向かった。
船を修理して再びサザリン市へと出港する。
そこからは2週間ほどの旅路でサザリン市に到着した。

サザリン市は海側からはその街並みをほとんど見てとることができない地形になっている。
一見、そこは何もない荒れ果てた岩がちな崖にしか見えないのだ。
しかしやがて2つの岩山の間を繋いでいた、今では崩れてしまっているテラクニアン・アーチの姿が見えてくる。それこそがサザリン市への入り口であるのだ。
“ノーブル・ゴブリン号”は崩れたアーチを潜り抜け、サザリン市の商人地区の波止場へと向かった。
普通であればそこで港湾役場の役人たちがあやつる牽引船がやってきて波止場まで牽引してくれるはずなのだが、やって来た牽引船の役人はしばらくその場で待つように告げた。
波止場に停泊していた1隻の船が爆発炎上して現在消火活動中なのだという。
確かに波止場の方を見ると、1隻の帆船からもうもうと黒煙が上がっているのが見て取れた。
結局ノーブル・ゴブリン号は暗闇海岸にある別の波止場を使わせてもらって入港することになった。
ここでメナイから報酬を受け取って任務は完了した。


ある貴族の依頼

A NOBLE IN NEED
それから1ヶ月が過ぎた。
PCたち1人1人の下にひとりの初老のハーフリング女性がある貴族の手紙を持って訪問する。
その女性はコラという名前で、ヴァンデルボーレン家に長く仕えている女中だという。
手紙の差出人はラヴィニア・ヴァンデルボーレン。
1ヶ月前にヴァンデルボーレン家を継いだ若き女性である。

+ 『ラヴィニアの手紙』
『ラヴィニアの手紙』
拝啓 皆様のご健勝をお喜び申し上げます。
私の名前はラヴィニア・ヴァンデルボーレン。
謹んで、明夜弊宅にて執り行う予定の夕食会に皆様方をお招き申し上げます。
弊宅は祝祭通りと青蜥蜴小路に面しております。
そこで私は、皆様方の技量にこの上なく最適なお仕事をご提供することができると思慮しております。
どうかこの手紙を配達した者に、私の招待へのお返事を賜りますようお願いします。
近いうちに皆様方とお会いできることを待ち望んでおります。
(署名)ラヴィニア・ヴァンデルボーレン

PCたちの何人かはこんな話を知っていた。
  • ヴァンデルボーレンとはこの町の貴族のひとつの家名である。
  • ラヴィニアはその一族の最年長の娘である。
  • 1ヶ月ほど前、ヴェリクとラリッサのヴァンデルボーレン夫妻は悲劇的な船火事で死んだ。ヴァンデルボーレン家には現在この夫婦の2人の子供だけが生き残っている。ラヴィニアとヴァンサスである。

手紙にあった約束の時間にヴァンデルボーレン邸を訪問するとコラが出迎え、客間に通される。
そこで、ラヴィニアと邸宅の大食堂で面談していた先客4人が帰るところとすれ違う。
  • レザー・アーマーと半ダースもの変わった形状のダガーを装備したしゃれた男性のハーフエルフ。
  • 緑と茶色のローブを着て大きく湾曲したスピアを握った気難しそうな表情の浅黒い肌をしたドワーフ。
  • 暗い紫色のローブを着て頬に三日月の刺青をした魅惑的だが高慢そうな外見の女性。
  • 磨き上げられたブレストプレートを着用してバスタード・ソードを背負った背が高くハンサムな男性。
彼らはヴァンデルボーレン家が雇っているという傭兵部隊「翡翠の鴉部隊」である。
彼らは何かの任務を与えられて出発するところのようであった。

ついでPCたちが大食堂に呼ばれる。
家族用の大食堂は落ち着ける雰囲気で、居心地良く、壁に掛けられたランタンでやさしく照らされていた。
窓からはこの屋敷の中庭を見渡すことができ、絨毯は分厚く柔らかい。
壁には大きな肖像画が掛かっており、短いあごひげを生やしたハンサムな若い男性が繊細なタッチで描かれていた。
その肖像画の前に、長く流麗な青いドレスを着た魅惑的な女性が立っていて、彼女は自分がラヴィニア・ヴァンデルボーレンであると自己紹介をした。
ラヴィニアから夕食が振る舞われ、夕食の後、彼らにひとつの仕事が依頼された。
彼女はヴァンデルボーレン家に昔から出入りしている商人のメナイ・バンテクからPCたちのことを聞いたのだという。

ラヴィニアの話はこんなものであった。
「すでにお聞き及びかもしれませんが、最近私は両親の遺産を相続しました。しかし不幸なことに、この快適な屋敷を相続すると同時に、暁の評議会、港湾長、そしてかなりの数のギルドから借りた相当の借金をも相続することとなったのです。どうも私の両親は、冒険者としては申し分ない成功を収めたようですが、こうした地位にある者として期待されるような金融知識には長けていなかったようです。これらの支払いを完済するためにも、私はテラクニアン城にある地下金庫に行く必要があるのです。
「しかし1つ問題があるのです。その地下金庫には魔法の鍵が掛けられており、特殊な印章付きの指輪でしか開けることができないのです。両親はそれぞれその指輪を持っていました。少なくともつい最近までは。母は2~3ヶ月前に指輪を失くしてしまいました。新しいものを手配していたのですが、それが手元に届くにはまだあと1ヶ月はかかりそうなので、今の私には遅すぎます。残されているのは父の指輪だけです。彼はけっして指輪を嵌めませんでした。父は、男は装飾品など身につけないという主義の持ち主だったのです。父は自分の持ち船であるブルー・ニクシー号のどこかにそれを隠し続けていたのです。問題は、港湾長がその船を差し押さえており、4ヶ月分の係留にかかった港湾使用料を支払うまでは差し押さえを解除しないという事なのです。私は船に課された罰金を港湾長の下にいる野獣のような男、ソラー・ヴァークに支払いました。私が船を引き取りに行ったとき、ヴァークの手下たちは私を乗船させず、まだ罰金を支払っていないと主張してきたのです。再びヴァークと話をしに行ったのですが、彼は決して私の支払いを受け取ろうとはしないのです。港湾長に苦情を訴えに行ったのですが、何を言っても聞き入れられませんでした。彼は自分の部下を信じきっており、けっして態度を軟化させない、よぼよぼで耄碌した老人なのです。
「ヴァークと彼の手下たちは私の船に何かを積んでいるようです。彼らが何を積んでいるのか、私はそれを正確に知りたいのです。残念なことに、ヴァークは交渉や道理が通じる相手ではありません。私は彼流のやり方を心得ている人を探しているのです。つまり皆様方です。もし皆様方が、彼らが私の船に何を積んでいるのか突き止めることができたなら、それに私が彼に支払ったお金が取り戻せたなら猶良いのですが、私が金庫に行ってお金を引き出してきた後で皆様方お一人お一人に200枚の金貨をお支払い致します。」


ブルー・ニクシー号のもめ事

TROUBLE ON THE BLUE NIXIE
ラヴィニアの依頼に基づいて港湾のブルー・ニクシー号を見に行くと、夜間には船が見当たらなかったが、朝になると戻ってきていた。
午後になってスコールに見舞われる中、PCたちはブルー・ニクシー号の元を訪れる。
見張りになっている男2人のうち1人をチャーム・パースンにかけ、まんまとだまして侵入する。
そこで手薄になったところから男たちを切り倒していき、ソラー・ヴァークとその部下たちを倒したのだが、
1人の悪漢が船の倉に火を放った。
船の倉にはヴァークたちひそかに載せた禁制の危険動物たちが檻に入れられていたのだ。
ヴァークたちは危険な生物の密輸にブルー・ニクシーを使っていたのである。
証拠隠滅のために船に火を放ったのだが、その火はそうした危険動物の中の1体、原始的な蜘蛛に似た生物ラゴデッサを恐慌状態に陥らせただけであった。
暴れまわって檻を破ったラゴデッサはその悪漢を殺害すると、倉に降りてきたPCたちを襲ってきた。
これを何とか倒したPCたちは、無事ブルー・ニクシー号を奪還したのであった。
(火はつけ方が下手だったので、ラゴデッサを怯えさせただけですぐに鎮火した)
ラヴィニアは父親の印章付き指輪を取り戻すことに成功したのである。


ヴァンデルボーレン家の金庫

THE VANDERBOREN VAULT
PCたちがブルー・ニクシー号と父親の印章付き指輪を首尾よく取り戻したことに、ラヴィニアは大いに喜びを表す。
PCたちの力量に大いに感じ入ったラヴィニアは次なる仕事を依頼してくる。
彼女はサザリン港にあるテラクニアン城に出かけて、一族の金庫を確認する必要がある。
すべてのサザリン市の貴族たちはこの城の地下に金庫を持っているが、彼女はまだそれらをいずれも見たことがない(彼女の一族のものも含めて)。
噂によれば、いくつかの一族の金庫は非常に広大で罠で守られているという――何年も前に彼女が父親から立ち聞きしたことによると、ヴァンデルボーレン家の金庫は比較的小さく安全なものだと予測しているが、そこにはおそらく人造の守護者がいるようである。
彼女はPCたちにテラクニアン城に一緒についてきて、護衛と金庫の中身を調べるための手伝いをして欲しいと依頼したのである。

ラヴィニアは、彼女とPCたちが乗るために大型四輪馬車を雇い、屋敷から貴族地区の高級市場へ向かって、そこでテラクニアン城へ渡るフェリーを見つけた。
テラクニアン城内ではあまり時間を取られることはなく、ラヴィニアの身元と印章指輪を確認する事務員との会話にしばらく止められただけであった。
その後その事務員が先導して螺旋階段を降りて行き、城の地下にある大きな円形の部屋へと辿り着いた。
この中央の金庫室から放射状に1ダース以上の5フィート幅通路が延びている。
これらの通路はそれぞれ長さ10フィートで、終端には鉄製の扉があった。そこが各貴族家の金庫の入口なのである。
事務員は規則によってPCたちとラヴィニアと一緒に金庫に入ることはないと告げ、挨拶を述べると上の城にある自分の事務室に戻っていった。

金庫室では守護者の人造アイアン・コブラと遭遇することになった。
まともに武器もきかず、魔法にも抵抗を持つこの強力な人造にてこずるPCたちだが、コブラがラヴィニアを避けていることに気付き、ラヴィニアからコブラに停止を命じさせると、ぴたりとその動きは止まった。
ついで、最後の部屋のリドルから部屋の解除方法を見出したPCたちは見事にヴァンデルボーレン家の財宝室へと足を踏み入れた。

しかし、そこにはほとんど財産は残されていなかった。
この金庫に20あった箱のほとんどは空っぽだったのだ。
開けても開けても箱が空っぽであることが明らかになるにつれて、ラヴィニアはだんだんと取り乱していった。
最後の金庫室の箱において、ついに救いが得られた。
ここの箱のいくつかだけはまだ手付かずのままであったのだ。
この箱には硬貨と宝石がそれなりの量が入っており、また大量の元帳と小さな鉄の小箱が入っていた。
この小箱には分厚い書類の束が入っていた。
元帳のほとんどは、サザリン市のギルドや貴族家からヴァンデルボーレン家が受け取るべき借金のリストであった。
それによれば、ラヴィニアの両親はサザリン市の数多くの組織のために危険な仕事を頻繁に行なっていたが、それに対する適正な報酬を受け取ることがほとんどなかったことが示されている。この報酬は放棄されたわけではなく、ラヴィニアが正当に継承できる金であることが判明する。
鉄の小箱の中の書類はまったく別物で、彼女の母親の手書きの日誌とどこか分からない熱帯地域を示しているジャングル、海岸線、他の地図何枚かが含まれていた。
また書類には奇妙で珍しいクリーチャーのスケッチが何ダースも含まれていた。

お金と借用証書とによって、ラヴィニアは過去の支払い義務を果たし、彼女の遺産の後始末をし始めることができる以上には財産を得た。
PCたちの仕事はまたもやうまくいき、ラヴィニアは彼らの仕事ぶりに大いに満足した。


報酬と時間経過

経験点

1人あたり440XP

金銭報酬

メナイ・バンテクより70日分×2gp=140gp/1人あたり
ブラックウェル砦からの謝礼金=100gp/1人あたり
海賊の略奪品から鉄の塊120gp分/1人あたり
ラヴィニアからのブルー・ニクシー号奪還の報酬=200gp/1人あたり
ラヴィニアからの金庫同行分の報酬=50gp
合計=610gp分/1人あたり

時間経過

ハードバイ~サザリン市の船旅=70日
休息時間=30日
ブルー・ニクシー号調査=2日
金庫への同行=2日

名声

暁の評議会+1
怒りの竜巻寺院+1


最終更新:2017年07月12日 19:35