第3回(2017/5/28)

参加PC



夕暮れの評議会

Dusk Council
PCたちが飢えと渇きに苦しみつつ3日間を過ごした地下トンネルから救出されたのと間をおかず、サザリン市を駆け巡る最新のニュースを耳にする。
サザリン市の港湾長である、老ケルター・イスラランが殺害されたというニュースである!
犯行がどのように行なわれたのかという細部についてはさまざまな憶測が飛び交っている。
さまざまな噂の中で唯一話が一致しているのは、彼がPCたちが救出された日の前夜遅くにベッドの中で殺されており、その死体は、内臓が摘出されるというとりわけ恐ろしい状態で残されていたということである。
PCたちのこの話をトンネルから救出されてひと段落したときにラヴィニアから聞かされる。

老ケルター・イスラランはサザリン市の港湾長であると共に、青空地区の地区代議員でもある。
彼の死はサザリン市政にとっての大きな問題であり、暁の評議会が開催されることになる。
本来港湾長は世襲職ではないのだが、イスララン家は代々港湾長を務めてきていた。
ケルターには6人の子供(男2人と女4人)がいたのだが、最愛の娘アリッサが数年前に行方をくらまし、長男であり最もケルターが期待をしていたアーロンはグレイホーク市に留学していたのだが、行方不明になった妹を探しに行くといって手紙をよこしたきり連絡が途絶えてしまった。
残された4人のうち3人の娘は家業には全く興味がなく、おしゃれと花嫁修業にしか興味がない。
残る末っ子の息子ロニーは、死ぬほど水を怖がってボートにすら乗れない男である。

開催される暁の評議会にはサザリン市の貴族全員が集められる。
一部の不参加はあるが、全部で20家余りの貴族家が出席する。それぞれの貴族家は当主と側近が出席するので議場には200人を超す人数が詰めかけることになる。
議題はイスララン家の世継ぎの承認、港湾長の人事、青空地区の地区代議員の選出である。
ヴァンデルボーレン家もラヴィニアが当主として出席することになるが、彼女はPCたちをも伴って出席する。
年若い彼女としては助言が欲しかったのである。
なお、主な貴族家の出欠状況は次の通り:
貴族家 地区 出席代表者 出欠状況
イスララン家* 青空地区 ロニー 出席
ケラーニ家 青空地区 ヘルドラス 出席
ローチェスター家* 闘士地区 ネルドラク 出席
トレグソン家 闘士地区 ウリク 不参加
タスカーヒル家* 棍棒地区 カルマダール 不参加
アラバニ家* 商人地区 アンウィン 出席
ヴァンデルボーレン家 商人地区 ラヴィニア 出席
リドゥ家* 貴族地区 ウォリン 出席
メラヴァンチ家 貴族地区 ジービュラ 出席
ドラクタス家* 暗闇海岸 エミル 出席
ノウラン家* 旭区 アニフェイタス 不参加
* 地区代表
ウリク・トレグソンは鍛冶屋ギルドの仕事で海外出張中のため不参加である。
カルマダール・タスカーヒルは最近あったコールドロン市における彼の兄が関わるスキャンダルの後始末に出かけているために不参加である。
アニフェイタス・ノウランは、ジービュラ・メラヴァンチとの不仲から最近は会議に欠席することが多くなっている。自身の興味ある案件以外はすべて中立を表明しており、今回も欠席である。
ジービュラ・メラヴァンチは息子のアヴナー・メラヴァンチを連れてきており、アヴナーはアンウィン・アラバニに付きまとってしきりに口説こうとする。

イスララン家の後継者

会議の開幕一番にヘルドラス・ケラーニから発言がある。
「ケルター老の殺害についてだけど。ずいぶんひどい殺され方だったみたいじゃない。
殺した奴はずいぶん剣の立つような話だけど。
ラヴィニアさん、あんた随分たくさん傭兵を囲い込んでるみたいだねぇ。
ご両親が何やら怪しげな投資に金つぎこんで火の車だっていう話を聞いてるわりには、どうしてそんなに傭兵を雇い入れてるのかしら?
それに、ケルター老があなたのご両親の遺産の船を不当に占拠してたって話も聞いてるわ。
ずいぶんあのじい様には煮え湯を飲まされたことじゃなくって?」

ラヴィニアはこう答える。
「傭兵を雇い入れるのはヴァンデルボーレン家の伝統ですから。
我が家の家計事情までご心配いただき、ありがとうございます。
しかし、ご心配いただかなくとも家計はきちんと回っておりますのでお気になさらず。
それとケルター老人は長いこと行方知れずのお子様方のご心配をされていたことを私ずっとご心配申し上げておりましたが、含むところなど何ひとつありません。
父の船を占拠していたソラー・ヴァークという男もケルター老の目が届かぬのを良いことに勝手をしていただけという事が判明しています。
ケルター老を哀れむ気持ちはあれど、お怨みする理由などなにひとつございません。」

このヘルドラスの発言は言って見れば何の証拠もない言いがかりであるため、それ以上ヴァンデルボーレン家に疑いを向けられるようなことはない。

イスララン家の家令ジグロム(男性のノーム)が20歳前後の青年を連れて部屋に入ってくる。
ジグロムは100年に渡ってイスララン家に仕えてきた。
彼が連れてきた青年は、イスララン家に残された唯一の男子ロニーである。
イスララン家の後継者として他の貴族家から承認を受けるためである。
ジグロムがロニーを他の貴族家の者たちに、新しい当主となるのでよろしく、と紹介する。
これは誰もが当然の成り行きと思っており、異議もなく承認されると思われていた。
ラヴィニアはこう言う。
「私もちょっと前にこの会議において当主就任を宣言して承認を受けたところです。
本来、誰が当主になるかというのはその家の問題ですから、評議会の承認などは形式に過ぎませんわ。」

しかし、そこでネルドラク・ローチェスターから異議が申し立てられる。
ネルドラクの息子ジェミルはケルターの長女マイラと婚約している。
「ジグロム殿、しばし待たれよ。イスララン家にはご嫡男アーロン殿がいたはずではないかね?
アーロン殿は確かグレイホーク市にご留学されているはずでしたな?
なぜアーロン殿を差し置いてロニー殿が当主になられるのかね?
まずはアーロン殿を呼び戻されてお父君の死を伝え、当主になっていただくのが筋というものではないかね。」
彼の発言が行なわれたとたんに議場全体に微妙な空気と緊張感が同時に走る。
アーロンが留学先から行方をくらましたという事はすでに貴族たちのほとんどが知っている公然の秘密なのだ。
ケルターはアリッサとアーロンの行方が分からなくなってしまった事を公式にはどこにも届けていない。彼は子供たちがまだ生きている筈だという希望を捨てきれなかったのである。
ジグロムの後ろに隠れるようにしている気弱そうな青年ロニーは顔を青くしたり赤くしたりしつつ、ネルドラクを睨みつけるが、老練な大貴族ローチェスター卿からぎょろりと睨みかえされると下を向いて黙ってしまう。
ジグロムは
「アーロンおぼっちゃまは、もう何年も連絡がつかない状態だ。そんなことはここにいる皆様がた全員がご存じのはず!
今更そんなことを持ち出すなど・・・もはやロニーおぼっちゃましかおらんのですぞ!?」

すると、ネルドラクこう答える。
「なるほど。ではイスララン家としてはアーロン殿の廃嫡を正式に認めるということですな。
では、嫡子がいなくなった今、ロニー殿ではなく、長姉であり、我が息子の嫁マイラ殿や次姉チェイナ殿、三女のモニカ殿が後継ぎであっても何ら問題はないのに、なぜ最も年下のロニー殿が継がれるのかね?
聞けば、ロニー殿は少々海が苦手だと聞いているが、イスララン家の大切な家業である港湾長の仕事がきちんと勤まるのかね?」

そこにヘルドラス・ケラーニが口をはさむ。
「いやいや、全くその通りだね。あたしゃイスラランをロニーが継ごうが、他の誰が継ごうが知ったこっちゃないが、ロニーでは港湾長は勤まらないだろうってことには賛成だよ。
なんといっても泳ぐこともボートに乗ることもできないときちゃ、サザリン市でも重要な港湾長の仕事が務まるはずがないものね。
まあ、ネルドラク、あんたは要するにイスララン家を自分の嫁に継がせたいんだろ?」

これにはジグロムが口を出す。
「ちょっとお待ちを。なぜイスラランの家の問題に他家の皆様がたが口を出すのですか。
そもそもおぼっちゃまが港湾長にふさわしくないなどとこの場で決めつけないでいただきたいですな。」

エミル・ドラクタスがドスの利いた声で発言する。
「ひとまずは、他の3人の相続権者の意見も聞いてからの方が良さそうだな」

ジグロム「つい先だってのヴァンデルボーレンさんのときにはそんな事しなかったじゃないか!
ヴァンデルボーレンさんの所にだって、弟のヴァンサスがいるじゃないか!」

ラヴィニア
「・・・!」

エミル「まあ、ヴァンデルボーレン家の話はここでは関係ないことであるし、父親のヴェリク氏の遺言状がありましたからな。
ともかく、サザリン市にとって重要極まりないイスララン家の家督の問題だ。
のちのちになってもめごとが起こっては市政にも影響が出かねないですからね。」

ジグロム
「も、も、もめごとを起こしているのは、あんたらじゃないか!」

ウォリン・リドゥ
「まあまあ、しかし、こんなにもめるのであれば、まずは家の中できちんと決めてもらってから再度当主を紹介してもらうということが良さそうですな。
今日はひとまずこの話題は打ち切りましょう。
イスララン家できちんと話し合ってください。」

ネルドラク
「そうですな。我が嫁も交えてまずは内輪の話をしてからにしましょう」

ジグロム
「あなたは、あなたは内輪には入っていない!」

ともかく、この日はイスララン家の家督の承認は行なわれずに終わる。

港湾長の人事

続いて、港湾長の後任人事について議題が移る。
70年にわたってイスララン家が継いできた役職であり、ほとんど世襲職のように思われていたが、イスララン家がさきほどのような状況であり、今回は立候補できる者がいなくなる。

そこでヘルドラス・ケラーニが自らの現在の立場と仕事振りを強調して港湾長に立候補する。
ネルドラク・ローチェスターとエミル・ドラクタスが即座にそれに賛意を示す。
どうやら先ほどのイスララン家の家督における異例の反対意見表明からも、ローチェスター家、ドラクタス家、ケラーニ家が結託しているようである。

イスララン家は当主不在ということで、港湾長への立候補は許されない。
ケルターの曽祖父の代から70年に渡ってイスララン家が港湾長を事実上世襲してきたため、誰も港湾長に立候補する準備など整っておらず、結局ケラーニ家が港湾長の候補として最有力となる。

7つの地区代表議員の内、2家は欠席(タスカーヒルとノウラン)で、イスララン家も当主不在で欠席扱いとなる。残る4家のうちドラクタスとローチェスターが賛意を示しており、アラバニとリドゥの2家の意見が求められるが、特に対立候補を出す準備もないため、結局ケラーニ家の港湾長就任を認めることになる。
あとは市民集会での承認を得るだけとなる。

青空地区代議員の選出

代議員選出は市民による選挙で決定されることであるので、この評議会では決定はできないが、誰が誰の味方であるかを明らかにするために全員がこのことを議するのに時間をかける。

イスララン家の家督が承認されなかったが、ロニーには地区代議員への被選挙権がある。
地区代議員は別にその地区に住んでいる必要はなく、サザリン市に在住する貴族であれば誰でも立候補できるためだ。
選挙権を持つのはその地区の一般市民であるため、通常はその地区の利益代表となってくれる貴族が選出される。

青空地区の貴族には有力な貴族がそれほどないため、港湾長になったケラーニ家が地区代議員候補として筆頭に名乗り出る。
ローチェスター家とドラクタス家はそれに賛意を示す。

リドゥ家とアラバニ家はヘルドラス・ケラーニの前歴に関する黒い噂(元海賊ではないのか、という噂)から、あまり支持するつもりはない。

ヴァンデルボーレン家、メラヴァンチ家などの小貴族たちはどっちに付くのが得かを見極めようとしている。
しかし、ヘルドラスはラヴィニアにケルター暗殺の疑いをかけているため、彼女はケラーニ家を支持するつもりはない。
メラヴァンチ家は、ヴァンデルボーレン家とは共同事業を行なっている関係から、もしラヴィニアが犯人にされてしまうような状況になりそうなら、すみやかに手を切りたがるが、今のところはそこまで思い切るほどの証拠も出ておらず、様子を見ている。

結局、地区代表への選挙にはヘルドラス・ケラーニとロニー・イスラランの2人が立候補することになる。

こうして、古くからの伝統ある貴族家イスラランが排斥され、新しい貴族家であるケラーニ家やドラクタス家が抬頭してきている様子が見て取れる結果となったこの日の暁の評議会は閉会となる。
評議会の名前とは正反対にそれはサザリン市の未来が暗い方向へと向かっていることを暗示しているものであった。


ロータス・ドラゴン団の待ち伏せ

Lotus Dragon Ambush
評議会が終わり、ひと段落したところで、PCたちがラヴィニアから受けていたヴァンサスを捜索するという任務に戻ることになる。

PCたちがペンカスの走り書きを見せ、ヴァンサスによって彼らが洞窟に閉じ込めたことを語ると、彼女は大いにショックを受け絶望に打ちのめされるが、すぐにその感情を押さえつける。
彼女はヴァンサスが手に負えない悪党になってしまった事を認めたくはなく、PCたちに彼を生きたまま捕まえて来て欲しいと依頼する。
しかしもし彼が抵抗してそれが不可能であるなら・・・
彼女は、彼の死が慈悲深く速やかなものとなるように、とだけ依頼する。

ひとまず、ペンカスの残したメモから剥製師ギルドの様子を見に近くまで行ったPCたちは、そこの居酒屋に入り、様子を聞く。
剥製師ギルドの長ネミエン・ロブラクは夜遅くまで仕事にかかりきりだという話を聞く。
と、居酒屋に気の触れた蓬髪の男が乱入してくる。
そして店の客に向かって何か叫びだす。
「間もなく恐るべき悪魔の高波が世界を襲うであろう。
裂けた口から吐き出される呪いなのだ。
師は言われた。神を信じよ!神を信じよ!救いを求めるのだ!」

居酒屋の人々の話では、彼の名前はロムニスといい、元々は聖カスバートの助祭だった人物で、ノルトゥス・イナーソル神父と共にヴェリク・ヴァンデルボーレンの南方遠征事業に同行したのだという。
1ヶ月ほど前にヴェリクと一緒に帰ってきたが、帰ってきたときには気が触れていたという。
彼との会話はまともに続かず、ひたすら終末を訴えるだけである。

そして再び剥製師ギルド周辺を探ると、水路の中から探っているレイノールがエイに似た恐るべきクリーチャー(イシトサチトル)に襲われるが、何とか脱する。

翌日、メロスの衣類の中にいつの間にか警告のメモが入っていることに気付く。

+ 『脅しのメモ』
『脅しのメモ』
お前たちはロータス・ドラゴン団に見張られている。
お前たちの詮索は苦難をもたらすことになるだろう
すべてを放っておいて家でのんびりしておくのが一番だ。
これ以上の介入は悲劇をもたらすだけだぞ。

という内容であった。
その後、PCたちはロータス・ドラゴン団の3人による待ち伏せに合うが、これを撃退した。


睡蓮と竜1

THE LOTUS AND THE DRAGON 1
剥製師ギルドを白昼堂々襲撃するのは気がひけたPCたちは、その周辺を探ることにした。
空き家を4軒発見するが、それらは入口の扉に板が打ち付けてあって入れないようになっているように見せかけているが、実際にはその扉が容易に開くことができる、偽装の空き家であることに気付く。
そこから地下に潜入する秘密の引き上げ戸を発見し、侵入。

中はレンガ作りのトンネルが続く地下施設であり、そこを進んでいく。
最初に発見した部屋にいたロータス・ドラゴン団3人との戦闘になり、これを倒すが、PCたちもかなりの消耗を受け、撤退。

翌日再び侵入するが、トンネルは完全な警戒態勢に入っていた。
ロータス・ドラゴン団の盗賊どもが次から次へと襲い掛かってくるものを退治し、合計で8人を倒した。
このトンネル施設をくまなく捜索すると、一か所の隠し扉を発見するが、ここでいったん撤退を行うことにした。


報酬と時間経過

経験点

1人あたり700XP

金銭報酬

なし

時間経過

暁の評議会の会議=1日
市内探索=1日
ロータス・ドラゴン団ギルドホール探索=1日

名声

なし


最終更新:2017年07月21日 14:30