第8回(2017/10/15)

参加PC

ドーラ
レイノール
JM
ヘクトール


交易公の伝説

Legend of Merchant Prince
交易公オーブレック・ドラリオンは、かつてサザリン市で最も裕福な資産を築き上げていた。彼の幾艘もの持ち船は、海を、大胆な海賊の略奪を、水棲モンスターたちを、そして嵐の吹き荒れる大海原を乗り越えて、世界中をまたにかけて商品を運んでいた。オーブレックの交易船団は、仲間内で最も大規模で、最も成功しているもののひとつであった。
しかし、オーブレックの成功はあまりに性急かつ容易に過ぎるものであったに違いない。そのうち利益は頭打ちになったが、彼の野望は留まることはなかった。南方のジャングルにいる彼の情報筋が、その地レンクルー村に住む強力なシャーマンに魔法のアイテムの在庫を提供することで、いくつかの香辛料と希少なハーブを独占的に取り扱うことができるという情報を伝えてきたとき、彼はその話に飛びついた。彼は求められたアイテムを購入するため、一夜にして資産の大部分を売却してしまい、それらを彼の所有する最高の船、エンペラー・オヴ・ザ・ヴェイヴス号に積載したのである。彼は全財産をこの巨船に託して出航させたのである。
しかし運命は残酷であった。エンペラー・オヴ・ヴェイヴス号は行方不明になってしまったのである。嵐によってその船は護衛艦から引き離されてしまい、その最終的な位置は不明となってしまった。財務上の大損失によって打ちのめされたオーブレックはただの商人となってしまった。彼がかつての栄光を取り戻すことはなく、数多くいた潜在的なビジネス・パートナーたちも、彼のこの悲惨な失敗は、彼自身の傲慢によるものであり、当然の報いだとすら見なしていた。

そして月日が流れ、今から4日前、遺棄船と化したエンペラー・オヴ・ザ・ウェイヴス号が海岸から目撃された。オーブレックは落ちぶれたものの、今なお、1隻の船、護衛数人、そして経験の浅い冒険者一行を雇い入れ、海に乗り出してかの船の運命を確かめる程度の資産は有している。オーブレックは、エンペラー号に積み込んだ魔法のアイテムを取り戻すことができれば、かつての栄光を取り戻すことができると信じている。彼に必要なものは、冒険を厭わない勇敢な者数人だけなのである。

オーブレックは、かつての交易仲間の中でもとりわけ信頼がおける人物であったヴェリク・ヴァンデルボーレンの遺児ラヴィニアを頼ることにした。彼はラヴィニアの下に適当な冒険者一行を派遣してくれるよう依頼した。
ラヴィニアはこの話に乗ることにした。
首尾よく魔法の品を収集できれば、ラヴィニアがそれを買い取り、レンクルー村との専売契約を引き継ぎ、オーブレックは手にした金で再起を狙うのである。
ラヴィニアはPCたちを派遣することにした。

絶望的運命

Desperate Fortunes
オーブレック(秩序にして中立、男性の人間、ノーブル)にも良い時代はあった。彼の邸宅は大きかったが今は落ちぶれている。着古しの衣類は10年前には最先端ファッションであったが、今では擦り切れてぼろぼろである。そんな今でも、彼はその鉄灰色の髪を後頭部できゅっと短くひっつめにし、口髭をこざっぱりと整えている。
遺棄船エンペラー・オヴ・ザ・ウェイヴス号から品物を取り戻すための探険行に同行してもらうに際し、オーブレックは各キャラクターに100gp、前金として渡すことを申し出る。任務が達成されたなら、各々にさらに100gpずつ出すことを約束する。彼は、船が最後に目撃されたのは港から1週間ほどの場所だと説明する。彼はすでに船1隻と乗組員を雇い入れている。PCたちには、エンペラー号を発見したなら、その船に乗船し、捜索し、“個人的な品々”が入っているある箱を確保し、それをオーブレックの下へ持ち帰ってほしいと依頼する。
その箱は青く煌めく金属でできており、“A”の焼き印を押した木箱の中に収められている。それはオーブレックだけが知っている合言葉を唱えた場合にだけ開くことができる。
中身については初め話すことをしぶっていたが、説得に成功して明らかにさせた。
中にはクリスタル・ボールといくつかのフィギュリーンズ・オヴ・ワンドラス・パワーが入っているという。
オーブレックはこれらのアイテムをラヴィニアに売却することで、新たな野心的事業の資本としようと考えている。ラヴィニアは次に計画している“恐怖の島”への旅の途上、レンクルー村に立ち寄る予定であり、十数年前にオーブレックとレンクルー村のシャーマンとの間でなされた約束を引き継ぎ、これらの品々をもって香辛料や稀少なハーブの取引の独占権を引き受けるつもりである。

冬の魂

The Soul of Winter
屈強なドワーフの乗組員が運営するソウル・オヴ・ウィンター号は、小さいが快速のキャラベル船である。その船長、ウォルガー・ウィンドルーン(真なる中立、男性のドワーフ)は厳格に部下たちを取り仕切っている。
20人の乗組員たちそれぞれは、男性のドワーフである。
また、船には2人の解放奴隷が乗船する。彼らはウォルガーの召使として仕えていた。
1人はオーマン人男性でケトフエトル。もう1人はハーフエルフの男性でジェイマ。
ケトフエトルは無口で、ただ淡々と仕事をこなすだけで、人とまじわろうとはしない。ドワーフたちからは解放されても奴隷根性が抜けない腰抜け呼ばわりされて小突き回されてこき使われる。彼はときおり凄まじい憎悪の目つきをしてドワーフたちを睨みつけるが、決して反抗はしない。
ジェイマはハーフドラウの元奴隷であり、快活で明るい人物である。ドワーフたちからドラウの血筋について口汚く罵られることもあるが、それを軽く受け流してジョークのネタにしてしまう。困っている人を見つけると進んで手助けをしたりしてそれなりの信頼を受けている。PCたちにも積極的に話しかけてくる。
またオーブレックは、一行が遺棄船を捜索するための助けになるよう、生活必需品を購入してある。ソウル・オヴ・ウィンター号には、PCたちのためのいくつかの装備品を蓄えてある即席の兵器庫を備えさせた。そこには、5着のスタデッド・レザー・アーマー、5枚のシールド、シミター10本、ライト・クロスボウ2挺、ボルト40本、50フィートのロープ5巻き、ひっかけ鉤2つ、松明12本、錬金術師の火6瓶、耐毒剤6瓶、ポーション・オヴ・ヒーリング2本、火口箱2つ、船から財宝を運び出すための袋6枚が含まれる。

商船

Merchant Ship
遺棄船への船旅は平穏無事なものであるが、途上で馬と馬具を載せた商船と出くわした。
特に何も購入せず先を急ぐ。

漂流者

The Drifters
さらにその翌々日、2艘のボートに乗って海を彷徨っている漂流者たちを発見する。それぞれの船に7人が乗っており、嵐に巻き込まれて船が沈没し、救命ボートで脱出したのだと伝えてくる。
ここでは海の掟にしたがって彼らを救助することになる。14人にはは当面船倉に入っていてもらうことになった。


遺棄された皇帝

The Derelict Emperor
海に出て5日目、ソウル・オヴ・ウィンター号はついに遺棄船エンペラー号を視界に捉える。遠くから、その巨船の引き裂かれた船体がぬっと姿を現す。マスト――は折れているが、上甲板に瓦礫は見当たらず、何かの力がマスト、帆、索具を持ち去ってしまったかのようである。かつては天駆ける壮麗なエンジェル像だったその船首像は、今では略奪によって残骸と化している。オーブレックは、荒廃したかつての持ち船を見て、絶望と希望が入り混じった反応をする。
ウォルガーはこの遺棄船の200フィートまでソウル・オヴ・ウィンター号を近づけ、そこから2人の船乗りにPCたちを手漕ぎボートで搬送させる。船乗りたちは、PCたちが簡単に主甲板に登れるようにと、ロープとひっかけ鉤をボートに積み込む。エンペラー号は修理されないままに傷んでいるが、今でも船は構造上は完全なままである。その甲板と外壁の木材は腐敗しており、ところどころ崩壊している。風の中で船はうめき声を上げる一方、波が甲板で砕ける場所には水たまりができている。この船は目につくほどに傾いており、上甲板は緩やかに左舷に向かって下がっているが、乗船中に何らかの判定を要求されるほどにはまだ傾いていない。この遺棄船がいまだ海底に沈んでいないということはちょっとした奇跡である。
レイノールはエンペラー号がいくらか浸水の被害を受けていることに気付く。これは、乾ドックに入れての大規模な修理を施さない限り、翌日か翌々日にでも沈んでしまいそうである。
ソウル号はこの遺棄船から500フィートの地点に留まる。

船内捜索をすると、そこにはジャイアント・スパイダー、ジャイアント・ウルフ・スパイダー、巨大ムカデ、蜘蛛のスウォームなどが溢れていた。
また蜘蛛の巣にとらわれたオークのゾンビ2体も発見する。
そうした中、毒と蟲のデーモン・ロード、タルザクスに捧げられた祭壇を発見する。
さらにこの船の会計元帳と船長の航海日誌を発見。
航海日誌は共通語で書かれており、この船の最後の航海の詳細について書かれていた。
そこには、エンペラー号が恐るべき嵐と遭遇して航路を外れてしまい、護衛艦と離れてしまった事が書かれていた。
食糧と飲み水が尽き、船は海図に載っていないある島に錨を下ろさざるを得なくなった。
最後の記述は、さまざまな蟲の大群を伴ったオークたちによる攻撃があった事が記されていた。
乗組員たちはこの最初の攻撃を追い払ったものの、大量の戦死者を出してしまった。
最後の記述では、この攻撃がより大規模な攻撃の前哨戦に過ぎないのではないか、という船長の恐れが記録されていた。

そして下甲板の部屋でひとりのハーフオークのドルイド、クレル・グロールグと遭遇する。
彼はタルザクスの信者であり、PCたちに攻撃をしかけてきた。

それを倒し、船倉を調べると、そこで目的の箱を発見する。
そこにグールとガストの襲撃を受ける。
これをも倒して無事目的の品を手に入れたのだが、そのとき、船が激しく衝撃を受けた。


エンペラーの死

The Death of The Emperor
PCたちが遺棄船エンペラー号にやって来る24時間ほど前に、弱り過ぎて深海へ戻れず、年老い死にかけたジャイアント・スクイッドが船の近くに流れ着いていた。
そして飢えに駆り立てられてエンペラー号を攻撃して来たのだった――この攻撃によって、船の傾きとたくさんの漏水が悪化し、船倉はゆっくりと水没し始めた。
クレルはアニマル・フレンドシップ呪文を使って、狂ったスクイッドを幸運にも魅了状態に陥れて宥めることができたが、スクイッドはこの海域を離れなかった。
代わりに、ここ数時間の間、100フィート下の水中に潜んでいたのである。
そして、PCたちがクレルを倒したことによって魅了状態の対象がいなくなったスクイッドは、飢えと病気に駆り立てられて再び水面へと舞い戻り、エンペラー号に最後の攻撃を仕掛けてきたのだった。
スクイッドの攻撃とともに蜘蛛の群れは恐慌に駆られて物凄い勢いで這い回り、かつてない規模のスウォームを形成した。
船殻はきしむ音を立てて傾き、支柱がぽきっと折れて船倉に大量の水が流れ込んできた。
スクイッドに襲撃を受けるエンペラー号から逃げ出すべく甲板を駆け上がるPCたち。
状況は次のように進んだ。

ラウンド1:スクイッドが船の下の位置に移動する。病気に罹っているため、泳ぐだけで墨の雲が垂れ流しになっており、船尾側の水域に明らかな墨の染みが作られる。水面を見ることができる者であれば誰でも難易度12の【判断力】〈知覚〉判定を行なうことができ、成功すれば、墨で汚れた海の中に、スクイッドののたうつ触手を見つけることができる。
ラウンド2:スクイッドはエンペラー号の船体を引き裂き始め、元々できていた穴を広げる。この時点以降の毎ラウンド、エンペラー号に乗船しているPCたちとその他の人型生物は全員、船が前後に揺れ動くために、移動する際には難易度10の【敏捷力】〈軽業〉判定か【筋力】〈運動〉判定を行なわなければならず、失敗するとそのラウンドは移動できず、倒れて伏せ状態になる。また同時にこの時点で、船上にいる小型の蜘蛛たちは恐慌状態に陥り、船の木材部分に群れを成して溢れかえる。これによってエリア1、3、10に新しく4つずつのスウォーム・オヴ・スパイダースが形成される。この間、スクイッドの触手は丸見えになり、外にいる者はそれを見ることができ、定期的に内部を見ることはできないものの、届く範囲にまで触手を探り入れてくる。
ラウンド11:船はかなり早いペースで浸水し始める。エリア12は完全に水没する。この時点より、ジャイアント・スクイッドの触手が船の穴を十分に開き、盲滅法に触手を突っ込んで船に乗っているクリーチャーを手探りで攻撃できるようになる。一般則として、何も見ることができないため、その触手を攻撃した目標だけを攻撃する。スクイッドは攻撃する相手のクリーチャーに対して盲目状態とした扱われるため、攻撃ロールに“不利”が課され、機会攻撃を行なうことはできない点を忘れないこと(PCたちが船内にいる間、実際にはその姿を見ることができないため)。
ラウンド12:ドワーフの船乗りたちがPCたちを探すための手漕ぎボートを準備して下ろし始める。
ラウンド16:この段階で、エリア5~11は半分水没する。生き残っているスウォーム・オヴ・スパイダースは、すべてエリア1へと逃げ込む。この時点で、ドワーフの船乗りたちは手漕ぎボートを接近させてPCたちを探そうとし始める。船は左舷側に向かって45度の角度にまで傾く。今や、移動には登攀を行なうための難易度10の【筋力】〈運動〉判定が必要となり、1フィート移動するためには余分に1フィートの移動コストを要する。5以上の差で失敗したなら、そのキャラクターは左舷方向に1d6×5フィート滑り落ちる。
ラウンド17:救助していた漂流者たち(ハーリス・ジェイヴェルとその部下たち)が反乱をおこす。ジェイマが船長を人質に取り、ハーリスがオーブレックを捕虜にする。
ラウンド19:ソウル・オヴ・ウィンター号はハーリス船長の支配下に陥る。ケトフエトルの機転でオーブレックと船長が逃げ出すことに成功し、海に飛び込む。
ラウンド21:エリア5~11は完全に水没する。
ラウンド27:たくさんの蜘蛛たちとタルザクスのカルト教団の残滓と共に、皇帝は波間の下に沈没する。

ハーリス船長はスクイッドの襲撃を受けることを恐れてエンペラー号には近付かずに拿捕したソウル・オヴ・ウィンター号で逃げ出す。海に飛び込んだPCやハーリス船長から逃げ出したオーブレック、ケトフエトル、ウォルガー船長らはドワーフの手漕ぎボートに助け出される。ボートはできる限り早くエンペラー号を離れて陸へ向かう。
スクイッドはエンペラー号に盲目的な怒りをぶつけることに集中するため、離れてしまえばそれ以上の危険が及ぶことはない。海の中にエンペラー号が沈んでいき、最後にスクイッドの巨大な触手が海面を叩きつけて渦巻きだけが残され、それもいずれ消え失せる。
水平線のかなたにはソウル・オヴ・ウィンター号も消え失せる。

実は助けていた漂流者はハーリス・ジェイヴェルという名の女海賊であったのである。


冒険の結末

Concluding The Adventure
もしPCたちがオーブレックの箱を彼の下へ持ち帰ったなら、彼は大いに喜ぶ。その中に入っているアイテムをラヴィニアに売却することで、彼はこの都市における商業上の覇権を新たに確立することができる。彼はPCたちに約束の報酬を支払ってくれる。


報酬と時間経過

経験点

1人当たり2,087点

金銭報酬

オーブリックからの報酬 200gp

入手アイテム


特別報酬


時間経過

エンペラー号発見までに=6日
サザリン市に帰還するまでに=30日

名声



最終更新:2018年04月09日 19:53