Savage Tiding 07『暗黒の中心』

高まりつつあるサヴェッジ・タイドを押し戻すために、この連載記事ではプレイヤーである君たちに、押し流されるのを回避するために必要な秘訣、要領、そして小道具を提供する。『Dungeon』誌ではDMに対して『Savage Tide』キャンペーンを運用していくのに必要な卑劣なプロットやずる賢いモンスターを提供していく一方、この『Dragon』誌では、君たちが航路を保っていく助けとなるような細かな情報や選択肢を提供する。今月の記事では、“恐怖の島”の中央高地にある神秘的な都市についての情報と、同時にこの地域の原住部族によって発明された、彼らの古代の国を汚した暗黒の中心と戦う新しい戦いのための技術を紹介する。
元々の3.5版のルールでは上級クラスとして紹介されていたトーテミック・デーモンスレイヤーであるが、5版にアップデートするにあたり、上級クラスのルールは採用せず、その上級クラスが有していた能力を魔法のアイテムに似た“刺青”で表現する。この“刺青”を手に入れるためには、オーマン人部族と“怒りの竜巻寺院”の両者によってトーテミック・デーモンスレイヤーの称号を授与されていなければならない。トーテミック・デーモンスレイヤーの称号を手に入れるためには前提条件を満たす必要がある。

君は何を知っているか:中央高地

“恐怖の島”の中央高地は物言わぬ神のように島の上にぬっとそびえ立っており、そこは過去の栄光をほのめかし、またそこから新たな恐怖がやって来る恐れをはらんでいる。この遥かにそびえ立つ地理的特徴から、タナクラン文明とそれを倒すことになった破壊の種の両方が勃興した。この“恐怖の島”の暗い心臓部に実際には何があるのかについては、島中あちこちにたくさんの噂がある。情報を求めるPCたちは地元民たちから下記のような事柄を知ることができる。
  • この高地の古代人たちこそが、地峡の巨壁や、ジャングルの中に埋もれた数多くの遺跡や彫像といった、この島の偉大な建築上の偉業を成し遂げた最初の建築者たちである。
  • ある者はこれらの建築者たちを神と考えており、またある者は彼らをこの世界ではない別の領域からやってきた旅人であると考えている。
  • この高地の最初の居住者たちの遺風は、いまでも蒸気の湖に存在している。そこは大地の下で島の神々が不安を誘うような轟音を立てている場所である。
  • 高地の上に居住する村人たちは、石造りの不死の首長に仕えている。
  • 今日この島を煩わしている恐怖は、この高地から立ち昇る異世界の霧に由来している。
  • 秘密の非人間的クリーチャーが、この高地の上に居住する村人たちの耳に囁きかけている。
  • この島の高地には近づかない方が良い。その居住者たちは、食人や他の獰猛な慣習に落ちている。
  • この高地を探検する者たちは、下界のジャングルから精巧な作りの寺院の廃墟まで続く敷石で舗装された道路などの、偉大な建築物のことを口にするが、居残っている居住者たちは粗野な村に住むばかりである。彼らはそうした寺院を建てたのが誰なのかすら知らない。
  • この島の中央部近辺の山の峰の上で、奇妙な空飛ぶ獣が目撃されている。それらは、この大きな高地の上に巨大な巣を持っている。
  • この高地はこの島の心臓部である。神々は暗黒と悪とが横行していることに激怒しており、罰としてオーマン人の民から背を向けている。


トーテミック・デーモンスレイヤー

暗黒が心臓を汚したなら、槍の穂先をもってそれを抉り出せ。
あるオーマン人の言葉

“恐怖の島”の原住オーマン人たちは、彼らの帝国が滅亡して以来、自然なものと非自然なものの両方の捕食者の略奪に苦しめられてきた。何世代にも渡って、この島に残された僅かな生き残りの人々は絶滅の間際で何とか生き残ってきた。そして島の中心にある孤立した台地から忍び寄るジャングルの夜に潜む未知の危険に晒されてきた。彼らは高い壁と組織的な防衛によってジャングルの危険を防ぐことができると学んできたが、別世界からやって来る危険を防ぐには異なる種類の武器が必要とされた。トーテミック・デーモンスレイヤーを立ち上げたこの招請のために、原住民たちによる小さな教団が、“怒りの竜巻の寺院”からやって来た伝道師たちと力を合わせて、フィーンドを打ち破るための強力な武器を開発した。
トーテミック・デーモンスレイヤーというのはオーマン人と“怒りの竜巻寺院”が挙行する儀式によって指名される特別な魔法的な力を持つ称号であり、この称号を持つ者だけがトーテムの刺青をその身に宿すようになり、その力を行使する。

トーテミック・デーモンスレイヤーになる

フィーンドの非自然的な侵入という形の脅威と戦うために発展してきたトーテミック・デーモンスレイヤーたちは、別世界の敵と対決するための技能を磨き上げた荒野の戦士である。自然世界との親和性と、彼らの祖先のトーテムへの信仰の力を使って、デーモンスレイヤーたちは、こうした恐るべき相手と戦うのに有益な、特別な適応力と力とを獲得する。
トーテミック・デーモンスレイヤーになることができるのはオーマン人に限定される訳ではないが、オーマン人と“怒りの竜巻の寺院”の両方による特別な祝福と儀式を必要とするため、他の者たちがなるのは困難である。そうした儀式が完全に挙行されたときにだけ、デーモンスレイヤーはトーテムの刺青を集め始め、それによって与えられる能力を利用し始めるのである。
トーテミック・デーモンスレイヤーになる者のほとんどは、レンジャー、バーバリアン、ドルイド、そして自然と強力な絆を持つキャラクターたちである。ファイターとモンクたちは、その軍事技量と、オーマン人入植地の人々を守るためにトーテミック・デーモンスレイヤーになることが知られている。同様に、ときおりソーサラーたちもトーテミック・デーモンスレイヤーになり、彼ら自身の生得の魔法能力を利用し、暗黒の力と戦うためにトーテムの霊によって与えられる力でそれらを増強することがある。パラディンもトーテミック・デーモンスレイヤーにはぴったりであるが、“恐怖の島”の内部や周囲のオーマン人文化圏においては、このパラディンそのものが極めて珍しいクラスである。

前提条件

トーテミック・デーモンスレイヤーの称号を得るためにはいくつかの前提条件を満たす必要がある。下記に示す前提条件の内、“特殊な作業の完遂”と“キャラクター・レベル5”については必須の前提条件である。それ以外の5項目については、任意の4つを満たすことで構わない。
  • 特殊な作業の完遂。その候補者は、オーマン人の聖者と“怒りの竜巻の寺院”とによって挙行される儀式を受けなければならない。そのためにはオーマン人部族と“怒りの竜巻の寺院”の両者から認められるような偉業を成し遂げる必要がある。
  • キャラクター・レベル5。怒りの竜巻グウィンハーウィフは強力な魂の持ち主にしか自らの祝福を与えようとはしないため、5レベルに達している必要がある。
  • 【筋力】13。邪悪な敵との直接的な戦闘こそトーテミック・デーモンスレイヤーの一番の仕事であり、然るべき腕力を要する。
  • 【判断力】13。ただ闇雲に敵を追い求めれば思わぬ反撃を受けることがある。トーテミック・デーモンスレイヤーには的確な判断力が求められる。
  • 軍用武器への習熟。トーテミック・デーモンスレイヤーの最も重要な仕事は、武器をもってデーモンを倒すことであり、軍用武器への習熟が求められる。
  • 〈自然〉技能への習熟。ジャングルに生息する生物たちを自らのトーテムとして呼び込むトーテミック・デーモンスレイヤーにとっては、自然に関する知識は必須条件である。
  • 〈魔法学〉技能への習熟。“恐怖の島”に浸透している異次元からの脅威について良く知り抜くことが彼らの敵を知ることに繋がるため、魔法学に関する知識をよく理解しておく必要がある。

トーテムの刺青

トーテミック・デーモンスレイヤーは彼らの土地(恐怖の島)に生息するクリーチャーの図柄(刺青)で表される祖先霊(トーテム霊)の力を通して、別世界の敵と戦うための特殊能力を獲得する。
トーテミック・デーモンスレイヤーは別世界の敵と戦うための特殊能力を、彼らの土地(恐怖の島)に生息するクリーチャーの図柄で表される祖先霊の力を通して獲得する。この刺青は通常の刺青のように墨師が彫るのではなく、トーテミック・デーモンスレイヤーが祖先霊を受け入れることで自然と体に浮かび上がってくるものである。いったん、トーテミック・デーモンスレイヤーによってトーテムの刺青が選択されたなら、その選択は決して変更できないし、祖先霊がその魂の中に入り込むことをそのキャラクターが許していることを示すものであるため、刺青を消すこともできない。もし刺青が切断されたり、焼き払われたり、あるいは刺青の入っている四肢を失ったりしたなら、数日の内にその刺青が肉体のどこか別の場所に再出現する。どちらにせよ、トーテミック・デーモンスレイヤーは刺青の力の使用能力を失うことはない。
各刺青には、それを獲得するための前提条件、獲得するためのコスト、そして同調するためのコストが定められている。
トーテミック・デーモンスレイヤーの称号を得た者が大休憩を取る際、獲得するためのコストを支払い、前提条件を満たしているのであれば、1つの刺青を獲得できる。いったん獲得した刺青は変更することはできない。獲得するために支払ったコストはいかなる手段をもっても取り戻すことはできない。獲得するためのコストとして支払ったヒット・ダイスは永続的に喪失するが、それによってヒット・ポイント最大値や現在のヒット・ポイントが減少する訳ではない。
ひとりのトーテミック・デーモンスレイヤーが獲得できる刺青の数は、キャラクター・レベルに応じて次の通りである:
キャラクター・レベル 刺青の最大数
5~6 2
7~8 3
9~10 4
11~12 5
13~15 6
16~18 7
19~20 8
トーテムの刺青は所有している数に関わらず、すべてまとめて同調を必要とする魔法のアイテム1つとして扱われる。そのため、1回の小休憩の間にこれらの刺青すべてと同調でき、別の小休憩の間に同調を解除することができる(すべての刺青との同調が同時に解除される)。ただし、望むのでれば獲得している刺青の内一部とだけ同調することや、同調を解除することもできる。同調するためには同調するためのコストを支払わなければならない。同調を解除すると、同調するためのコストは即座に回復する。そのようにして解除している間は刺青の能力を使用することはできないが、肉体の表面から刺青そのものが消えることはない。
刺青の効果に持続時間がある場合、1つの刺青の効果が持続している間は他の刺青を起動することができない。またすでに起動している刺青の効果は自分のターンにおけるボーナス・アクションを使うことで終了させることができる。
トーテムの刺青は1日の使用回数が定められている。キャラクターは有している刺青の数+1に等しい使用回数を有し、この使用回数は所有するすべての刺青で共通である。消費した使用回数については、毎日の夜明けに所有する刺青の数の半分(端数切り捨て、最低でも1)に等しい分だけ回復する。

ジャイアント・バット

Giant Bat
前提条件:キャラクター・レベル5
獲得するためのコスト:なし
同調するためのコスト:なし
自分のターンにおけるボーナス・アクションで刺青の使用回数1回分を消費することで、30フィート以内にデーモンがいるかどうかを知り、またそのクリーチャーがいる場所も知る。同様に、君は自分の30フィート以内の場所や物品がデーモンによる影響を受けて冒涜されているかどうかも知る。この能力はトーテミック・デーモンスレイヤーが精神集中をしている間(あたかも呪文に対する精神集中であるかのように)、最大1時間まで持続する。
この刺青を起動し、その効果が維持されている間、トーテミック・デーモンスレイヤーの背後に巨大なコウモリのトーテム霊が姿を現し、デーモンの気配に耳を澄ましている。
この能力はほとんどの障壁を貫通することができるが、1フィートの厚さの石、1インチの厚さの普通の金属、鉛の薄膜、あるいは3フィートの厚さの木や土によって遮られる。

ツリーレッグ・スパイダー

Treeleg Spider
前提条件:キャラクター・レベル5
獲得するためのコスト:なし
同調するためのコスト:なし
一部のデーモンたちは自らの同族の援軍を呼び寄せて破壊を撒き散らすことがある。デーモンたちの持つ最も危険な道具の1つはこうした招来能力にある(『Monster Manual』の“デーモンの招来”の選択ルール参照)。
トーテミック・デーモンスレイヤーの60フィート以内にいる者が“デーモンの招来”能力を使用したり、名称にコンジュアが含まれる呪文を発動したりした場合や、トーテミック・デーモンスレイヤーの60フィート以内を起点としてそれらの能力や呪文が使われた場合、リアクションとしてこの刺青の使用回数1回分を消費して、効果を起動することができる。
効果が起動すると、トーテミック・デーモンスレイヤーの背後から巨大なツリーレッグ・スパイダーの姿をしたトーテム霊が出現して霊的な蜘蛛の巣を周囲に吐き出す。招来されたクリーチャーは出現すると同時にこの蜘蛛の巣に捕らえられ、そのまま元いた場所へと追い返される。
この能力は“デーモンの招来”能力など招来が成功するかどうかが不確実な能力に対する場合には、その招来が成功したことを確認した後に使用するかどうかを決定することができるが、招来されたクリーチャーが何らかの行動や移動を起こす前でなければならない。

アロサウルス

Allosaurus
前提条件:キャラクター・レベル7
獲得するためのコスト:ヒット・ダイス1つを喪失
同調するためのコスト:ヒット・ポイント最大値1減少
トーテミック・デーモンスレイヤーが1体のクリーチャーに向かって直線状に最低でもその移動速度の半分を移動した後、同じターンに近接武器攻撃をそのクリーチャーに対して命中させたとき、ボーナス・アクションを使って2回分の刺青使用回数を消費し、この刺青を起動することができる。トーテミック・デーモンスレイヤーの周囲に半透明のアロサウルスのトーテム霊が出現し、そのクリーチャーを蹂躙する。その目標は難易度13の【筋力】セーヴィング・スローを行なわなければならず、失敗すると打ち倒されて伏せ状態に陥る。もしその目標が伏せ状態になったなら、トーテミック・デーモンスレイヤーはボーナス・アクションを使い、アロサウルスの霊に1回の噛みつき攻撃を行なわせることができる。この噛みつき攻撃は自動的に命中し、2d10+4の[刺突]ダメージを与える。アロサウルスの霊はその攻撃を行なうかどうかに関わらず、即座に消える。

エイプ

Ape
前提条件:キャラクター・レベル7
獲得するためのコスト:ヒット・ダイス1つを喪失
同調するためのコスト:ヒット・ポイント最大値1減少
自分のターンにおけるアクションとして刺青の使用回数2回分を消費し、半透明のジャイアント・エイプのトーテム霊を呼び出し、100フィート以内にいる1体のクリーチャーに向かって霊的な岩を投げつけて攻撃させることができる。目標は難易度13の【敏捷力】セーヴィング・スローに成功しなければならず、失敗すると7d6+6の[殴打]ダメージを受け、成功するとその半分のダメージを受ける。

クロコダイル

Crocodile
前提条件:キャラクター・レベル7
獲得するためのコスト:なし
同調するためのコスト:ヒット・ポイント最大値1減少
自分のターンにおけるボーナス・アクションとして刺青の使用回数1回分を消費することができ、それによって15分間息を止めていることができる。息を止めている間、トーテミック・デーモンスレイヤーと重なり合うようにして半透明のクロコダイルのトーテム霊が出現する。刺青の使用回数を連続して使うことで、途中で息継ぎをすることなく、さらに長時間に渡って息を止め続けておくことができる。

シー・タートル

Sea Turtle
前提条件:キャラクター・レベル7
獲得するためのコスト:なし
同調するためのコスト:ヒット・ポイント最大値1減少
自分に対する武器攻撃が命中したときにリアクションとして刺青の使用回数1回分を消費してこの刺青を起動することができる。トーテミック・デーモンスレイヤーの周囲に頑丈な甲羅を持つシー・タートルのトーテム霊が出現し、ACに+2のボーナスが与えられる。このボーナスはリアクションの起点となった攻撃に対して適用することができるが、ダメージを適用する前でなければならない。このACへのボーナスは次のトーテミック・デーモンスレイヤーのターンの開始時まで持続する。

ボア

Boar
前提条件:キャラクター・レベル7
獲得するためのコスト:なし
同調するためのコスト:ヒット・ポイント最大値1減少
ヒット・ポイントが0まで減少したときにリアクションとして刺青の使用回数2回分を消費することができる。その瞬間、トーテミック・デーモンスレイヤーの周囲に獰猛なボアのトーテム霊が出現し、その脳内に脳内興奮物質を分泌させ、トーテミック・デーモンスレイヤーのヒット・ポイントは0になる代わりに1ヒット・ポイントになるだけで済む。

ヴェロキラプトル

Velociraptor
前提条件:キャラクター・レベル7
獲得するためのコスト:ヒット・ダイス1つを喪失
同調するためのコスト:ヒット・ポイント最大値1減少
自分のターンにおける近接武器攻撃を行なう際にボーナス・アクションを使ってこの刺青の使用回数2回分を消費して起動することができる。トーテミック・デーモンスレイヤーから半透明のヴェロキラプトルのトーテム霊の群れが出現し、攻撃目標の周囲に群がり、その相手を撹乱する。トーテミック・デーモンスレイヤーが行なう近接武器攻撃の攻撃ロールには“優位”が与えられる。この効果はトーテミック・デーモンスレイヤーの次のターンの開始時まで持続する。

スネーク

Snake
前提条件:キャラクター・レベル7
獲得するためのコスト:ヒット・ダイス1つを喪失
同調するためのコスト:ヒット・ポイント最大値1減少
自分のターンにおける“攻撃”アクションを使って組みつきを実行し、それに成功したとき、ボーナス・アクションで刺青の使用回数2回分を消費することができる。組みつきをしているトーテミック・デーモンスレイヤーの周囲に半透明のコンストリクター・スネークのトーテム霊が出現し、敵の体を締め上げ始める。こうして組みつき状態を開始すると、トーテミック・デーモンスレイヤーによって組みつかれたクリーチャーは組みつき状態である間、同時に拘束状態と見なされる。この組みつきが終了するまで、トーテミック・デーモンスレイヤーは別の目標に組みつきを実行することができない。この効果は組みつきが解除されるまで持続する。

ディメトロドン

Dimetrodon
前提条件:キャラクター・レベル7
獲得するためのコスト:なし
同調するためのコスト:ヒット・ポイント最大値1減少
この刺青の持ち主は、それを起動することで唐突に素早く移動する能力を手に入れる。
自分のターンにおけるボーナス・アクションとして刺青の使用回数2回分を消費すると、背中に特徴的な帆を持つディメトロドンの姿をした半透明のトーテム霊が出現し、太陽からその帆に蓄えた熱エネルギーをトーテミック・デーモンスレイヤーに伝える。その熱エネルギーは走る能力へと変換され、それを格段に高めてくれる。そのターンの終了時までトーテミック・デーモンスレイヤーの歩行移動速度は3倍になる。いったんこの刺青を起動すると、次のターンの間は移動できず、たとえ使用回数が残っていたとしても、この刺青を起動することはできない。

プレシオサウルス

Plesiosaurus
前提条件:キャラクター・レベル7
獲得するためのコスト:なし
同調するためのコスト:ヒット・ポイント最大値1減少
自分のターンにおけるボーナス・アクションとして刺青の使用回数2回分を消費し、歩行移動速度に等しい水泳移動速度を獲得する。この水泳移動速度を獲得している間、トーテミック・デーモンスレイヤーと重なり合うようにしてディメトロドンのトーテム霊が姿を現す。この水泳移動速度は1時間持続する。この持続時間の間、水泳を行なうための【筋力】〈運動〉判定には“優位”が与えられる。

バジャー

Badger
前提条件:キャラクター・レベル7
獲得するためのコスト:なし
同調するためのコスト:ヒット・ポイント最大値1減少
自分のターンにおけるボーナス・アクションとして刺青の使用回数2回分を消費し、10フィートの穴掘り移動速度を獲得する。この穴掘り移動速度を獲得している間、トーテミック・デーモンスレイヤーと重なり合うようにしてバジャーのトーテム霊が姿を現し、穴掘りのために手を貸してくれる。このため、トーテミック・デーモンスレイヤーは穴掘り移動の際に自分の手で穴を掘る必要がなく、両手を別のことに使うことができる。この穴掘り移動速度は10分間持続する。この穴掘り移動では砂、土、泥、あるいは氷の中を通過して移動できるが、固い岩を掘ることはできない。

バブーン

Baboon
前提条件:キャラクター・レベル7
獲得するためのコスト:なし
同調するためのコスト:ヒット・ポイント最大値1減少
自分のターンにおけるボーナス・アクションとして刺青の使用回数2回分を消費し、歩行移動速度に等しい登攀移動速度を獲得する。この登攀移動速度を獲得している間、トーテミック・デーモンスレイヤーと重なり合うようにしてバブーンのトーテム霊が姿を現し、移動の際にその霊的な手を貸してくれる。このため、トーテミック・デーモンスレイヤー自身は両手を壁面から離したまま登攀することができ、その両手を別のことに使うこともできる。この登攀移動速度は10分間持続する。この持続時間の間、登攀や跳躍を行なうための【筋力】〈運動〉判定には“優位”が与えられる。

アンキロサウルス

Ankylosaurus
前提条件:キャラクター・レベル13
獲得するためのコスト:ヒット・ダイス1つを喪失
同調するためのコスト:ヒット・ポイント最大値3減少
攻撃の命中を受けたときのリアクションとして、刺青の使用回数3回分を消費することができる。トーテミック・デーモンスレイヤーの周囲に半透明のアンキロサウルスのトーテム霊が姿を現し、それによって[殴打]、[斬撃]、[刺突]ダメージに対する完全耐性を得る。この抵抗はリアクションの起点となった攻撃のダメージに適用することができ、トーテミック・デーモンスレイヤーの次のターンの開始時まで持続する。

ジャイアント・ワスプ

Giant Wasp
前提条件:キャラクター・レベル13
獲得するためのコスト:ヒット・ダイス1つを喪失
同調するためのコスト:ヒット・ポイント最大値3減少
自分のターンにおけるボーナス・アクションとして刺青の使用回数3回分を消費することで起動できる。この刺青を起動すると、トーテミック・デーモンスレイヤーが保持している任意の刺突武器か斬撃武器1つの周囲に半透明のジャイアント・ワスプのトーテム霊が出現しその周囲を飛び回る。このワスプはトーテミック・デーモンスレイヤーがその武器による近接武器攻撃を命中させる毎に1回、同じ目標に対して自動的に攻撃を命中させ、1d6+2の[刺突]ダメージを与える。加えて、その目標が悪のクリーチャーである場合、難易度15の【耐久力】セーヴィング・スローを行なわなければならず、失敗すると3d6[毒]ダメージを受け、その者の次のターンの終了時まで毒状態に陥る。セーヴに成功するとその半分のダメージを受け、毒状態には陥らずに済む。
この毒は聖薬と呼ばれる種類のものであり、悪のクリーチャーに対してのみ効果を持ち、フィーンドの持つ[毒]ダメージに対する抵抗や完全耐性と、毒状態に対する完全耐性を無視する。
ワスプのトーテム霊は1分間存在する。

ファナトン

Phanaton
前提条件:キャラクター・レベル13
獲得するためのコスト:ヒット・ダイス1つを喪失
同調するためのコスト:ヒット・ポイント最大値3減少
自分のターンにおけるボーナス・アクションとして刺青の使用回数2回分を消費すると、トーテミック・デーモンスレイヤーと重なり合うようにして半透明のファナトンのトーテム霊が出現し、その皮膜を使った飛行能力を付与してくれる。この飛行移動速度は20フィートである。この飛行能力は10分間持続する。この飛行の間、トーテム霊が飛行能力を与えてくれるため、トーテミック・デーモンスレイヤー自身はその両手を他の用途に使うことができる。
あるいは、意図せずして高い位置から落下したときには、難易度10の【敏捷力】セーヴィング・スローに成功することで、自分のターンでなくても、リアクションとして咄嗟に刺青の使用回数1回分を消費してこの刺青を起動し、飛行に入ったり、すでに起動状態にあるなら飛行に移ることができる。セーヴに失敗すれば落下する。

ティラノサウルス

Tyrannosaurus
前提条件:キャラクター・レベル13
獲得するためのコスト:ヒット・ダイス1つを喪失
同調するためのコスト:ヒット・ポイント最大値3減少
この刺青は“恐怖の島”の真の王である大ティラノサウルスの姿を描いたものである。自分のターンにおけるアクションとしてこの刺青の使用回数3回分を消費して刺青を起動することができる。半透明のTレックスのトーテム霊が出現し、トーテミック・デーモンスレイヤーの10フィート以内にいる目標1体を攻撃する。目標は難易度15の【敏捷力】セーヴィング・スローを行なわなければならず、セーヴに失敗すると4d12+7の[刺突]ダメージを受け、組みつき状態になる(脱出難易度15)。この組みつきが終了するまで、その目標は拘束状態である。セーヴに成功した場合は半分のダメージを受けるだけで済み、組みつき状態にはならない。
組みつき状態を確立した場合、以後組みつきが終了するか、3ラウンドが経過するまでTレックスのトーテム霊は存在し続け、トーテミック・デーモンスレイヤーのターンの開始時に自動的にその目標に4d12+7のダメージを与える(起動から3ラウンド目のターン開始時にはダメージを与えずにトーテム霊は消え失せる)。この間このトーテム霊を制御するためにトーテミック・デーモンスレイヤーが精神集中や何らかのアクションを取る必要はない。組みつきが終了するか、確立しなかった場合には、トーテム霊は即座に消え失せる。

トリケラトプス

Triceratops
前提条件:キャラクター・レベル13
獲得するためのコスト:ヒット・ダイス1つを喪失
同調するためのコスト:ヒット・ポイント最大値3減少
トーテミック・デーモンスレイヤーが1体のクリーチャーに向かって直線状に最低でもその移動速度の半分移動した後で、同じターンに近接武器攻撃をそのクリーチャーに対して命中させたとき、ボーナス・アクションで刺青の使用回数2回分を消費し、この刺青を起動することができる。半透明のトリケラトプスのトーテム霊が出現し、その目標は4d8+6の追加[刺突]ダメージを受ける。

ラカスタ

Rakasta
前提条件:キャラクター・レベル13
獲得するためのコスト:なし
同調するためのコスト:ヒット・ポイント最大値3減少
この刺青を帯びている者は、一時的に、かのキャットフォークたちが使う“鉄の爪”を模倣する。ボーナス・アクションとして使用回数3回分を消費してこの刺青を起動すると、モンク・クラスの特徴である“マーシャルアーツ”、“鎧なし移動”を4レベル・モンクであるかのように獲得する。もし元々モンク・レベルを有しているのであれば、この2つの特徴について4レベル高いモンクと見なすことができるようになる(最大20レベルまで)。また、その素手攻撃は[殴打]ではなく[斬撃]ダメージを与えるようになり、非魔法の攻撃とダメージに対する抵抗と完全耐性を打ち破るかどうかの判断の際には魔法のものと見なされる。この効果は1時間持続する。

ワールウィンド

Whirlwind
前提条件:キャラクター・レベル13
獲得するためのコスト:ヒット・ダイス1つを喪失
同調するためのコスト:ヒット・ポイント最大値3減少
伝統的なオーマン人の様式には存在しなかったが、“怒りの竜巻の寺院”が新たにこの刺青を付け加えた。自分のターンにおけるボーナス・アクションとして刺青の使用回数3回分を消費してこの刺青を起動すると、トーテミック・デーモンスレイヤーの周囲に渦巻く激しい旋風が巻き起こったかのようにビュービューという音が聞こえ、激しく空気が揺れ動いているかのような錯覚を起こすが、実際には周囲のものは何一つ揺れ動かず、トーテミック・デーモンスレイヤーの衣類や髪の毛も一切靡いてはいない。この荒れ狂う竜巻の幻は定命の者には何の影響も及ぼさないが、フィーンドには有害である。トーテミック・デーモンスレイヤーの60フィート以内にいるあらゆるフィーンドは、そのターンの開始時に難易度15の【魅力】セーヴィング・スローを行なわなければならず、失敗すると次のターンの開始時までトーテミック・デーモンスレイヤーに近づくように移動することができず、すべての攻撃ロールに“不利”を受ける。もしそのフィーンドがトーテミック・デーモンスレイヤーの5フィート以内でターンを開始したのであれば、このセーヴに失敗したときに20フィート吹き飛ばされて2d6[殴打]ダメージを受け、打ち倒されて伏せ状態になる。セーヴに成功すれば次のターンの開始時まではこれらの効果を受けずに済む。この刺青の効果は1分間持続する。

トーテミック・デーモンスレイヤーをプレイする

トーテミック・デーモンスレイヤーは、古代オーマン人の文化を現在の宗教観と組み合わせた最高の理想を表している。彼らは、この島から人間という存在を根絶しようと脅かしてくる名状し難き恐怖と対決する守護者の役割を果たし、またそれらの脅威が時々ジャングルから現れる普通の獣や危険を超えた脅威として具体化してきたとき、それらと前線で戦う戦士の役割を果たす。壁、火、あるいは槍を持った戦士たちが脅威を撃退するに不十分となるとき、トーテミック・デーモンスレイヤーの出番である。これはまさに、彼らが真剣に果たすべき責務である。
デーモンスレイヤーはこれらの脅威と対決するにあたって、より自然主義的な手法を取り、オーマン人の伝統と信仰、そして彼らの祖先霊の用心深さを維持している。“怒りの竜巻の寺院”からの贈り物と教えを組み合わせることによって、デーモンスレイヤーは最終的に行動を起こすための道具を彼ら自らの手で見つけ出すことになる。多くのデーモンスレイヤーは、彼らの民を餌食にしているデーモンたちについて、一部の神のイデオロギーに敵対する存在としてではなく、むしろ自然法則そのものに対する憎むべき脅威と考えるためにそうしたクリーチャーと戦っているが、中にはこの土地を浄化することそのものに、より深い信仰上の動機付けを見出している者もいる。

戦闘

トーテミック・デーモンスレイヤーは通常一人で行動し、彼らの部族の仲間が犠牲になることを事前に妨げるためにフィーンドを捜し求めている。まだまだ物質界に不慣れでその地形を良く知らないフィーンドと戦うとき、彼らは荒野とその自然の特徴を有利に利用することに長けている。彼らは巧みな罠つくり師であり、危険な地元の動物たちを上手に利用する。そしてときに疑いを抱いてもいないデーモンを島の強力な捕食者のあぎとへと誘いこむ。しかしながら、直接対峙するときには、彼らはひるむことなく魔法の刺青によって祖先霊の力を呼び起こし、その敵との戦いに臨む。また、もし必要なら、大勢のデーモン略奪団による襲撃と効果的に戦うために、すべての村々を組織化する術をも彼らは知っている。

トーテミック・デーモンスレイヤーに関する知識

“怒りの竜巻の寺院”の高位の地位にある者や、オーマン人部族の者は、トーテミック・デーモンスレイヤーについてより多くのことを知っている。また、〈宗教〉や〈魔法学〉技能に習熟しているキャラクターは、彼らのことをより深く知るために彼らについて調査することができる。この知識は3段階から成り、より深い段階の知識を有する者はそれより前の段階の知識も有する。
“怒りの竜巻の寺院”に属する者は、その名声値が3以上であれば知識1を、名声値が10以上であれば知識2を、名声値が25以上であれば知識3を持つ。
“オーマン人部族”に属する者は、その名声が1以上であれば知識1を、名声値が3以上であれば知識2を、名声値が10以上であれば知識3を持つ。
〈宗教〉や〈魔法学〉技能に習熟しているキャラクターは、オーマン人部族の村において【知力】〈宗教〉か〈魔法学〉判定を行なうことでトーテミック・デーモンスレイヤーについて調査することができる。この判定には“怒りの竜巻の寺院”の名声値-10か、“オーマン人部族”の名声値-5に等しいボーナス(最低でも+0)を得て行なうことができる。難易度10の判定に成功すれば知識1を、難易度15の判定に成功すれば知識2を、難易度20の判定に成功すれば知識3を入手できる。一度判定を行なったなら、1週間経過するまでは再度の判定を行なうことはできない。
知識1:“恐怖の島”のオーマン人の間には、デーモンを殺害し、島の非自然の驚異から人々を守る、名高い英雄たちが存在する。
知識2:オーマン人は、島に蔓延る悪の来訪者と戦うために、物故した彼らの祖先と彼らの氏族にとって神聖なる動物のトーテムの力の両方を利用することができる。
知識3:デーモンスレイヤーとして知られる戦士たちの神聖なる刺青は、移動速度、力、あるいは不可思議な能力など、そこに描かれた動物の力が具現化されたトーテム霊を呼び出し、彼らの力を増幅する。こうしたデーモンスレイヤーたちは、彼らの祖先崇拝に近代的な信仰心を融合し、彼らの戦闘能力をさらに高めている。

トーテミック・デーモンスレイヤーの例

ジャカラは、“恐怖の島”のコプルーに従う軍勢の捕虜となってしまったトーテミック・デーモンスレイヤーである。彼はラオグロートのトログロダイト村に捕まっているが、『Savage Tide』キャンペーンの6シナリオ目に該当する『光なき深淵』においてPCたちの手で救出されているかもしれない。この捕虜経験によって、彼は半分頭がおかしくなった廃人と化しているが、グレーター・レストレーションかヒール呪文、あるいはウィッシュ呪文などの手段によって治療されたのであれば、彼はそのトーテミック・デーモンスレイヤーの称号を得るための秘密をプレイヤー・キャラクターたちと共有できるほどに回復する。君が彼への対応を慎重になせば、ジャカラはNPCとしてパーティに加わることすらできるほどにその苦難から回復できる。そうした場合、彼の装備品は隠し場所にしまわれており、この冒険を続ける前にそれらを回収することができる。
ここに示すデータは戦闘に関わるデータだけであり、彼は12レベル・レンジャーとしてのその他のあらゆるクラスの特徴を有している。“戦闘スタイル”は決闘を(その効果はデータに反映済み)、“得意な敵”については野獣とフィーンド、“自然探検家”の得意な地形としては森林、山岳、沼地を、レンジャーの類型としては“狩人”を選択している。また、“始原の意識”、“影隠れ”を使うこともできる。これらの能力については『Player’s Handbook』参照。

勢力陣営へのボーナス

トーテミック・デーモンスレイヤーの称号を得たキャラクターは、“怒りの竜巻の寺院”から大きな評価を得ることができる。こうしたキャラクターは、刺青1つを手に入れる毎に、その勢力陣営の名声値に+1のボーナスを得る。


フィーンドバインダー

こいつの汚い言葉遣いを許してやってください。私のババウは言葉を交わす事よりも、はらわたを抉り出す事の方が得意なものでね」
――フィーンドバインダーのニヴィール

“恐怖の島”のアビスの邪悪に侵食された大地は“魔女看守団”の一部の者たちの大きな興味をひいた。この島はデーモンたちに穢されているが、逆にその力を利用して人々を守ることもできるのではないか?
一方で、“探求者団”によって組織された大規模な探検調査によって、この島の多数のオーマン人遺跡が調査され、オーマン人古老たちが伝えている伝承知識が収集されてきた。彼らの調査によって、古代タナクラン帝国がいかにしてデーモンの脅威に屈したか、それらのデーモンたちがどのようにして出現したか、そしてデーモンたちとどのようにして戦ってきたかが明らかになりつつある。そうした調査の中で、古代オーマン人たちがフィーンドの真名を解き明かして使役する術を有していたことが明らかになってきた。
“魔女看守団”と“探求者団”の一部の過激な一派が結託することになった。彼らは古代タナクランに由来する秘術に現代の魔法を組み合わせた新しい魔法を生み出したのである。フィーンドバインダー(悪魔を呪縛する者)と呼ばれるようになった彼らは、デーモン、デヴィル、その他の邪悪極まるフィーンドたちの真名を解き明かし、その知識を使って彼らを呪縛し、使役する。

フィーンドバインダーになる

ほとんどのフィーンドバインダーは秘術呪文の使い手である。しかしながら、不謹慎な一部のクレリックの中には、恐るべきフィーンドに使役を強制する呪縛を行うために、必要とされる複雑な儀式と真名について学ぶことに献身している者もいる。フィーンドの呪縛は、フィーンドに罰を下し、苦役を与える行為であるように見える(そして事実、フィーンドはそう考えている)にも関わらず、フィーンドの呪縛そのものは多くの場合邪悪な行為とみなされる。

前提条件

フィーンドバインダーの技術を獲得するためにはいくつかの前提条件を満たす必要がある。下記に示す前提条件の内、“特殊な作業の完遂”と“キャラクター・レベル5”については必須の前提条件である。それ以外の5項目については、任意の4つを満たすことで構わない。
  • 特殊な作業の完遂。この技術は秘密の技術であり、その候補者は、魔女看守団と探求者団の双方からの信頼を得る必要がある。そのために彼らが納得するような探索行を果たし、さらに技術の秘密を守ることを誓約する必要がある。
  • キャラクター・レベル5。フィーンドを制御するためには強靭な力を持つ人物である必要があるため、5レベルに達している必要がある。
  • 【耐久力】13。フィーンドバインダーは自らの肉体にフィーンドを呪縛させることになるため、強靭な肉体が求められる。
  • 【魅力】13。フィーンドを呪縛してなお自我を保つだけの強力な個性を持つ必要がある。
  • 錬金術用品への習熟。フィーンドを呪縛する儀式に必要とされる各種の触媒は錬金術の技で作り出される。
  • 〈宗教〉技能への習熟。世界中の神話に登場するフィーンドの知識は彼らを呪縛するためにも必須の知識といえる。
  • 〈魔法学〉技能への習熟。“恐怖の島”に浸透している邪悪の根源を知ることは、フィーンドの弱点や呪縛するために必要とする知識の獲得にもつながる。----

真名の修得

フィーンドバインダーは“探究者団”と“魔女看守団”によって収集された複数のフィーンドの真名について学ぶ機会が与えられる。真名はその発音や表記が非常に複雑であるため、正確な修得には時間と相応の労苦がかかる。
それぞれのフィーンドの真名には修得するための前提条件が設定されており、修得する際にはそれを満たしていなければならない。また、それを修得することそのものがキャラクターの魂に傷を与える行為となるため、修得によって支払わなければならないコストが存在している。さらにフィーンドを呪縛するときには追加でコストを支払う必要があり、これは呪縛が終了したときに戻ってくる。
真名を修得すると、そのフィーンドを呪縛して同調せずとも、ちょっとした利益を得ることができる。これは常時利益として記述されており、これはそのフィーンドを呪縛していない場合でも使用可能である。通常はそのフィーンドが有する同名の能力と同じ効果を持つ(難易度や使用回数などもそのフィーンドのデータを使用すること)。フィーンドを呪縛(下記参照)した場合、そのフィーンドそのものと化すことができるようになる。
キャラクター・レベルが上昇するときには、すでに修得している真名1つを放棄して、前提条件を満たしている別の真名を修得することもできる。その場合、放棄した真名のために支払っているコストは戻ってくるが、新たに修得した真名のためのコストを支払わなければならない。
ひとりのフィーンドバインダーが修得できる真名の数は、キャラクター・レベルに応じて次の通りである:
キャラクター・レベル 真名の最大数
5~10 2
11~16 3
17以上 4

フィーンドの呪縛

フィーンドバインダーはその真名を知っているフィーンドを呪縛するために必要とされる複雑な儀式を会得している。この儀式は大休憩を取り終えた直後に実施することができ、1時間を要する。同時に呪縛できるフィーンドは1体だけであり、それは同調を必要とする魔法のアイテム1つとして扱われるが、次に大休憩を取り終えるまでは同調を解除することはできない。大休憩を取り終えたときに新たな儀式を実行しないのであれば、同調を解除することを選択できる。
同調している間、アクションでそのフィーンドに変身することができる。この変身はポリモーフ呪文による変身と同様に扱うが、持続時間は最大10分までで精神集中を要する。一度使用すると大休憩を取り終えるまでは再び使用することはできない。

ババウ

Babau
前提条件:キャラクター・レベル5
修得するためのコスト:ヒット・ダイス1つを喪失。
同調するためのコスト:ヒット・ポイント最大値を2喪失。
常時利益:弱体化の凝視(ババウのデータ参照)。

サキュバス/インキュバス

Succubus / Incubus
前提条件:キャラクター・レベル5
修得するためのコスト:ヒット・ダイス1つを喪失。
同調するためのコスト:ヒット・ポイント最大値を2喪失。
常時利益:生命力吸収の接吻(サキュバスのデータ参照)。

ヴロック

Vrock
前提条件:キャラクター・レベル7
修得するためのコスト:ヒット・ダイス1つを喪失。
同調するためのコスト:ヒット・ポイント最大値をキャラクター・レベルあたり1喪失。
常時利益:朦朧化の金切り声(ヴロックのデータ参照)。

ヘズロウ

Hezrou
前提条件:キャラクター・レベル11
修得するためのコスト:ヒット・ダイス1つを喪失、ヒット・ポイント最大値を5喪失。
同調するためのコスト:ヒット・ポイント最大値をキャラクター・レベルあたり1喪失。
常時利益:魔法に対する抵抗(ヘズロウのデータ参照)。

マリリス

Marilith
前提条件:キャラクター・レベル17
修得するためのコスト:ヒット・ダイス1つを喪失、ヒット・ポイント最大値を10喪失。
同調するためのコスト:ヒット・ポイント最大値をキャラクター・レベルあたりさらに1喪失。加えて同調している間はずっと治癒することのできない消耗状態1レベルを受ける。
常時利益:君は戦闘中の全員のターン毎に1回のリアクションを取ることができるが、追加のリアクションは機会攻撃のためにしか使用できない。

スパインド・デヴィル

Spined Devil
前提条件:キャラクター・レベル5
修得するためのコスト:ヒット・ダイス1つを喪失。
同調するためのコスト:ヒット・ポイント最大値2減少。
常時利益:なし。

バーブド・デヴィル

Barbed Devil
前提条件:キャラクター・レベル5
修得するためのコスト:ヒット・ダイス1つを喪失。
同調するためのコスト:ヒット・ポイント最大値5減少。
常時利益:炎の投擲(バーブド・デヴィルのデータ参照)。

ボーン・デヴィル

Bone Devil
前提条件:キャラクター・レベル11
修得するためのコスト:ヒット・ダイス1つを喪失、ヒット・ポイント最大値を5喪失。
同調するためのコスト:ヒット・ポイント最大値をキャラクター・レベルあたり1喪失。
常時利益:魔法に対する抵抗(ボーン・デヴィルのデータ参照)。

アイス・デヴィル

Ice Devil
前提条件:キャラクター・レベル17
修得するためのコスト:ヒット・ダイス1つを喪失、ヒット・ポイント最大値を10喪失。
同調するためのコスト:ヒット・ポイント最大値をキャラクター・レベルあたりさらに1喪失。加えて同調している間はずっとACが1低下する。
常時利益:ウォール・オヴ・アイス呪文を発動する能力を得る。この呪文に対する難易度は17で、1回使用すると大休憩を取り終えるまでは再び使用することはできない。


サザリン卿/女卿への道

一人に権力を集中してはならない。それは王の誕生に繋がるものだ。
――ケルター・イスララン卿

100年に渡るシー・プリンス国の独裁的な支配から脱した後、サザリン市の市民はかつての伝統的な政治体制である王政に戻ることには賛成しかねた。代わりに、市の統治はそれぞれが市の7つの地区を代表している7つの古い貴族家に委ねられることになった。この7つの貴族家を中心としてサザリン市の市政を運営しているのが暁の評議会である。暁の評議会は異国との交易や探検のための寄港地として栄光を誇った先祖の時代にサザリン市を戻すことを追求し、少数の貴族家による寡頭政体を守り、王政復古を妨げることにある。
しかし時代はまさに大探検時代に入っていた。デンサック湾北部のティルヴァノット半島は、何世代にもわたって緋色団と呼ばれるスエル人モンクたちが支配する地であったが、長く鎖国を守ってきていた。しかし30年ほど前、突如として彼らは大艦隊を建造し、整然と、しかし断固たる流儀で急進的な民族主義と世界征服を目標に掲げてのデンサック湾の探検を開始したのである。これほどの規模で本格的に探検を行った北方人は彼らが最初であった。こうしてフラネスに大探検時代が到来したのである。
サザリン市がシー・プリンス国からの独立を獲得したのも、緋色団によってシー・プリンス国が壊滅させられたからであった。時代の流れに従ってサザリン市やその姉妹都市たるコールドロン市も各地に探検隊を送り出し、いくつもの植民地を手に入れている。こうした入植地は本国との間に強い絆を感じつつも互いに遠く離れ、弱体な本国政府に防衛を頼ることができずにいる。緋色団はまさにそうした入植地を着々と自分たちの影響下に置いていっているのである。最強の海軍を備えた緋色団がこの地域を一気に制圧できずにいる最大の理由は残虐非道な海賊集団“深紅の艦隊”の存在があるがゆえである。彼らとの抗争が緋色団によるデンサック湾の支配を遅らせているに過ぎない。
サザリン市とその周縁植民地は自主独立を守るために強力な政府を必要としている。それは現在の7つの貴族家による寡頭体制では達成しえないであろう。7つの貴族家はサザリン市の利益よりも自家の利益を優先し、そのための権益をめぐって互いに争いあっているに過ぎないのだから。このままの政情が続けば、いずれサザリン市を含むこの地域の文明圏は、“深紅の艦隊”との決着をつけた緋色団か、あるいは緋色団を追いやった“深紅の艦隊”による過酷な支配のもとに置かれることになるだろう。それを防ぐためにも、サザリン市には強力なリーダーシップと、その理想を実現するための力を備えた人物の登場が待たれている。そうした人物には“サザリン卿/女卿”の称号が与えられて然るべきであろう。実際にはそれは新しい王朝の始まりに過ぎないかもしれないのだが・・・

サザリン卿/女卿になる

サザリン卿/女卿という称号は実際にはまだ存在していないし、そうした称号を得た人物が過去に存在したこともない。それは100年前にテラクニアン王朝がシー・プリンス国によって断絶させられて以降、サザリン市民による独立運動を推進していた秘密結社であった暁の評議会が市民をまとめるために作り上げた架空の称号である。実際の独立が暁の評議会とは無関係に緋色団によるシー・プリンス国壊滅という事件によって果たされた結果、この称号を名乗るにふさわしい人物は存在しないままとなり、独立後の政府は7つの大貴族家による合議制を取ることとなった。
暁の評議会を構成している7つの貴族家とは、リドゥ家、タスカーヒル家、アラバニ家、ドラクタス家、ノウラン家、イスララン家、ローチェスター家であったが、イスララン家の家長ケルターが殺害されたことでこの体制は覆った。イスララン家に代わって青空地区の代議員を拝命したケラーニ家であったが、このケラーニ家も“ロータス・ドラゴン団”という盗賊ギルドとの関連が明らかになり、失脚。その後、青空地区の代議員には、ほとんど無名の小貴族ゼルボ・ライドルが就いている。ライドル家は10年前の独立に際して突然姿を現してにわか貴族であり、その実態はエミル・ドラクタスの傀儡である。
君がサザリン卿/女卿としての地位を手に入れるためにはいくつかの段階を経る必要がある。まずはサザリンの貴公子と呼ばれる地位に上がり、この都市の支配者階級のひとりとして重要な役職を任されて経験を積む必要があるだろう。君は遠く“恐怖の島”のファーショアに滞在しており、サザリン市においてそうした役職を果たすことは困難であるかに思うかもしれない。しかし、ファーショアとサザリン市との間の定期航路が確立されたことで、ファーショアとサザリン市との結びつきは強化された。ファーショアにも暁の評議会の影響力が強く及ぶようになったことを意味している。今や、ファーショアの評議員であることはサザリン市での役職と同じ役職とみなされるようになっている。さらには、ファーショアはサザリン市を構成する7つの地区に並ぶ第8の地区ともいえる立場を持つに至っている。ファーショアの町長となることはサザリン市の地区議員のひとりとして選出されることと同等の価値があるとみなされるのである。
最終的にはサザリン市やコールドロン市を含めた都市国家群は緋色団や“深紅の艦隊”と対抗するために連合する必要があるだろう。そうした連合なしにはこれら強力な海軍力を持つ敵から都市国家を守り抜くことはできない。そのための人々からの支持と実績と軍事力を備えた者こそがサザリン卿/女卿として認められることになるだろう。

サザリンの貴公子

Scion of Sasserine
前提条件:サザリンの貴公子として認められるためには暁の評議会の勢力陣営の名声が10以上であり、かつキャラクター・レベルが5以上である必要がある。
利益:君は〈説得〉技能に習熟し、この技能を使って行う判定には2倍の習熟ボーナスを加算できる。元々〈説得〉技能に習熟している場合、〈威圧〉、〈看破〉、〈歴史〉、〈ペテン〉からいずれか1つに習熟できるが、2倍の習熟ボーナスを加算できるのは〈説得〉技能である。
義務:君は下記に示すいずれかの職務の1つ以上就任しなければならない。これらの職務のために1ヶ月に最低でも1日は休息時間の活動を費やさなければならない(これは裕福な生活様式を維持することができる“職能活動”として扱われる。これらの職務において説明されている休息時間の活動を実施した場合はこの義務を果たしたものとみなされる。この役職の義務を果たすことがなければ役職による利益だけでなく、サザリンの貴公子としての利益をすべて失う。君の名声が10を5上回るごとに役職を1つ追加して兼務することもできる。(名声15で2つ、20で3つ、25で4つ)。兼務している場合、特定の役職に設定された休息時間の活動(30日の活動)を実施することで他の役職の活動を1日だけ実施したものとみなしてよいが、そうでない場合、役職ごとに最低でも1日を“職能活動”にあてなければならない。たとえば、海軍提督、財務長官、法務総裁の3つの役職を兼務しているなら、3日間を“職能活動”にあてるか、あるいは“温情的な徴税”(財務長官の休息時間の活動)を30日間実施することで他の2つの仕事もついでにこなしたとみなすことができる。
役職に伴う休息時間の活動:暁の評議会の役職に伴う休息時間の活動は「名声の獲得」の休息時間の活動の効果の一部を兼ねている。これらの活動は(その活動自体に別途名声の獲得に関する記述がない限り)、実施した日数の3分の1に等しい日数だけ「名声の獲得」を行ったものとみなす。

海軍提督

Admiral of the Fleet
ファーショアはシー・ワイヴァーン号とブルー・ニクシー号、そしてラッツ・エンドの海賊から奪ったヘルフィッシュ号とヴァンサスの乗船であり、拿捕することに成功したブライン・ハーロット号の4隻の外洋航海が可能な船舶を所有している。これらはいずれもキャラベル船であり、軍用の船ではないが、改造を施すことによって即席の海軍を作ることは十分に可能である。また、いったんは撃退したものの“深紅の艦隊”の脅威は去っておらず、また緋色団も“恐怖の島”周辺で活動しているという噂があり、防衛のためにも海軍力の構築は必要な事柄でもある。
君は海軍提督に就任することで、有事の際に船主たちからこれらの船を一時的に徴発する権利を有する。また有事に備えた武装を整えたり、それに備えた訓練を実施したりすることも可能である。
船長:君は航海道具と乗り物(水上)の道具への習熟を得る。もし元々これらの道具への習熟を有しているなら、代わりに織工道具、大工道具、地図作成用品のいずれかへの習熟を得ることができる。これらのいずれもすべて習熟しているなら、別の任意の道具への習熟を得ることができる。
休息時間の活動「船の改修」:海軍提督としての権限によって、君は休息時間の活動としてファーショアの乾ドックを無償で使用することができる。また、2人の熟練作業者と8人の非熟練作業者からなる船の改修作業チームを無償で使うことができる。これらの改修作業チームは1日あたり100gp分の改修作業を進めることができる。また、船の改修や修理にかかる費用の半分はファーショア市に持たせることができるため、実際に払う費用は半額で済む。この休息時間の活動では裕福な生活様式を維持することができる。
休息時間の活動「乗組員の訓練」:君が休息時間の活動を使って乗組員と共に30日間の訓練を行った場合、その船の乗組員は乗組員経験を2点獲得する(通常は30日の航海につき1点しか得られない)。またこの訓練によって君自身も部下たちの士気を高めるコツを覚える。君はアクションとして周囲の人々を鼓舞し、30フィート以内にいて君の声を聴くことができ、君の姿を見ることができる味方全員に“霊感”を与えることができる。一度使えば再びこの休息時間の活動に従事するまでは使用することはできない。この休息時間の活動では裕福な生活様式を維持することができる。

監察官

Inspectorate General
官僚というものは放置しておけば腐敗するものである。それは君の同僚たちとて同様であり、ファーショアのように小さな共同体の政府であっても起こりうる事態である。また、サザリン市との航路の確立によってファーショアにもサザリン市の暁の評議会の目が向けられるようになった。君は本国政府から監察官に任命され、ファーショアの評議員や各種の役職者たちが不正を働いていないか監査する役目を負っている。
君の立場はファーショアの同僚たちからは不審の目で見られる傾向にある。彼らからすれば、これまでの自由な政治経済活動に何も知らない本国政府から容喙されることは我慢ならない事態に感じられるのである。
検査官:不正を働く者に対抗するためには彼らのやり口に精通する必要がある。君は偽造用具、ゲーム道具の1つ、そして変装用具に習熟する。さらにこの内のひとつを選択すること。選択した道具を用いた判定には2倍の習熟ボーナスを適用できる。また、まだ習熟していないなら〈捜査〉技能に習熟する。すでに〈捜査〉に習熟しているのであれば、別の技能1つに習熟する。
休息時間の活動「不正の調査と弾劾」:30日の休息時間の活動によってファーショアにいる特定の官職保有者の義務違反や非行などの証拠を集め、評議会において告発し、罷免し、処罰しようとする。君は【知力】〈捜査〉判定を行う。難易度はDMが設定するが、弾劾対象の人物が実際に不正を行っていることが明白な場合は15、そうでなければ20かそれ以上になる。成功するとそれなりの証拠が集まる。実際に弾劾するかどうかは君が決定すること。弾劾が行われた場合、君はその人物との対抗判定を5回実施する。このとき、偽造用具、ゲーム道具、そして変装道具のいずれかの道具から1つを、また〈威圧〉か〈ペテン〉のいずれかの技能から1つを選ぶこと(君が行った選択に弾劾された者も従わなければならない)。5回の判定は【知力】〈捜査〉判定、【判断力】〈看破〉判定、【魅力】〈説得〉判定で1回ずつと、先ほど選択した道具を用いた【判断力】判定と〈威圧〉か〈ペテン〉を用いた【魅力】判定を1回ずつである。最初に君が5つのうちどの判定を行うか決定し、それに対して弾劾された者がどの判定で対抗判定を行うかを決定し、対抗判定を行う。次に弾劾された者が残る4つからどの判定を用いるかを決定し、君がやはり残る4つの判定からどの判定で対抗判定を行うかを決定して対抗判定を行う。その次は君が残る3つの判定から1つを選び、弾劾された者がどれで対抗判定を行うかを決定する。こうして先に3回勝利した側の勝利となる。同じ判定は2度使用することはできない。また、対抗判定は相手と同じ判定で対抗する必要はなく、まだ使っていない判定の中から好きなものを選ぶことができる。君が勝利すれば弾劾された人物は役職から罷免され、罪の内容によってはファーショアから追放される。
休息時間の活動「会計監査」:30日の休息時間の活動を行い、ファーショアの各部門の会計監査を行う。この活動の後、君は“霊感”を獲得する。この活動は30日間の裕福な生活様式を支えることができ、さらに1d6×5gpの副収入を得る。
休息時間の活動「背任的会計監査」:30日の休息時間の活動を行い、ファーショアの各部門の会計監査を行うが、不正を発見した際にそのことを本国政府に黙っている見返りに多額の賄賂を受け取る。この活動の後、君は“霊感”を獲得する。この活動は30日間の10gp相当の貴族的な生活様式を支えることができ、さらに1d6×5gpの副収入を得る。

財務長官

Secretary of the Treasury
ファーショアの金融と財政はそれほど強力なものではないが、“恐怖の島”に産する資源はサザリン市から大きな期待を寄せられている。これまでのところファーショアに財務を取り締まる役職は置かれていないが、サザリン市との通商が確立された今となってはそうした役職を設置することは急務となっている。
ファーショアの初代財務長官に就任することで、君は各種の金融、財政政策を取り仕切ることになる。君に与えられた権限には徴税請負権が含まれており、課税によって得られた収入の何割かが君の取り分となる。
休息時間の活動「温情的な徴税」:30日間の休息時間の活動を実施することでファーショア市民から港湾使用税、関税、所得税、住民税などの税金を取り立てる。この活動の後、君は“霊感”を獲得する。この活動は30日間の裕福な生活様式を支えることができ、さらに1d6×5gpの副収入を得る。
休息時間の活動「過酷な徴税」:30日間の休息時間の活動を実施することでファーショア市民から港湾使用税、関税、所得税、住民税などの税金を厳格に温情なしで取り立てる。この活動の後、君は“霊感”を獲得する。この活動は1日あたり10gpに相当する貴族的な生活様式を30日間支えることができ、さらに2d8×5gpの副収入を与えてくれる。代わりに君はすべてのサザリン市の貴公子に与えられる〈説得〉技能を用いた判定に2倍の習熟ボーナスを得る利益を失う。失った習熟ボーナスの利益は温情的な徴税を2回連続して実施し終えるまで失ったままである。
休息時間の活動「非合法な徴税」:30日間の休息時間の活動を実施することでファーショア市民から港湾使用税、関税、所得税、住民税などの税金のみならず、弱い立場にある者や教育を受けていない者などからであれば違法な名目の税をも取り立てて私腹を肥やす。君は【魅力】〈威圧〉か〈ペテン〉判定を行い、その結果にd100をロールした結果を加算して下記の表を確認しなければならない。この活動の後、君は“霊感”を獲得する。どのような結果であれ、この活動によって1日あたり15gpに相当する貴族的な生活様式を30日間支えることができる。また、君はすべてのサザリン市の貴公子に与えられる〈説得〉技能を用いた判定に2倍の習熟ボーナスを得る利益を失う。失った習熟ボーナスの利益は温情的な徴税を2回連続して実施し終えるまで失ったままである。
表:非合法的な徴税
d100+【魅力】〈威圧〉か〈ペテン〉判定 結果
01~20 君の違法な徴税はファーショア評議会で大きな問題とされ、君は財務長官を罷免される。この30日分の生活費用などとして着服した450gpを支払わなければならず、暁の評議会の名声は5減少する。支払いができない場合、暁の評議会の名声はさらに5減少する。
21~30 君の違法な徴税は評議会で問題視されかける。君は評議員に多額の賄賂を支払って問題をもみ消すことになり、200gpを支払わなければならず、暁の評議会の名声は2減少する。支払いができない場合、暁の評議会の名声はさらに2減少する。
31~40 人々は君への恨みを連ねる。君の暁の評議会の名声は1減少する。
41~60 君は副収入として2d8×5gpを得る。
61~80 君は副収入として3d10×5gpを得る。
81~90 君は副収入として4d12×5gpを得る。
91以上 君は副収入として4d12×5gpを得ると共に、差し押さえ物件の中からコモンかアンコモンの魔法のアイテム1つを着服する。どんな魔法のアイテムかはDMが決定する

造営官

Secretary of the Infrastructure
サザリン市との定期航路確立に伴って多数の新規入植者がファーショアにやってきた。ファーショアでは未曽有の建設ラッシュが起こっており、次々と新しい建築物が建てられている。また先の2度にわたる海賊たちの襲撃によって破壊された建造物の解体撤去や再生、さらには見張り塔や市門といった防衛設備の強化なども引き続き行われている。
これらの建設が無秩序に行われることはファーショアの発展には良いこととは言えない。君は初代の造営官となり、こうしたファーショにおける土木建設作業をマネージメントする立場になる。
現場の親方:君は石工道具、大工道具の両方の道具への習熟を得る。もし元々これらの道具への習熟を有しているなら、代わりに別の任意の職人道具への習熟を得ることができる。
休息時間の活動「要塞建造」:君は「要塞建造」の休息時間の活動(『Dungeon Master's Guide』の第6章参照)について、ファーショアの利益になるものであればファーショアの費用と労働力を用いて実行することができる。建造コストは全額をファーショアが支払う(それがファーショアのためになると判断された場合)。この場合、この活動によって君の裕福な生活様式を維持することができる。もし君が建造コストの半額を支払うのであれば、完成した建造物の管理権を当面の間君のものとすることができる。この活動の後、君は“霊感”を獲得する。
休息時間の活動「街道敷設」:君は30日の休息時間の活動を行うことで平地であれば6マイル分(1ヘックス)、移動困難地形であれば3マイル分(1/2ヘックス)の街道を敷設することができる。費用や労働力はファーショアが負担する。この活動に生活様式の維持費は含まれない。この活動の後、君は“霊感”を獲得する。

法務総裁

Attorney General
ファーショアはサザリン市からやってきた入植者たちが作り上げた地であり、多くはサザリン市の法に従っている。元々非常に緩やかな法律しか存在しないサザリン市が母国であることもあり、ファーショアの法律もゆるやかなものが多い。しかしながら、遠隔の地であり、“恐怖の島”という特殊な環境でもあるファーショアは、サザリン市の法では解決がつかない問題も多数存在している。そのため、サザリン市にはない現地法がいくつも作られつつある現状は放置すれば収拾がつかないことにもなりかねない状況にある。
君はファーショアにおける初代法務総裁に就任し、乱脈気味でともすれば無秩序に陥りかけるファーショアに法の秩序をもたらす役割を果たすことになる。君の役割は法律問題に関して評議会や町長に助言を与えることを任務とし、裁判にあたっては検事総長の役割を果たすことになる。
検事総長:検事総長として犯罪者を告発する立場にある君は人々から恐れられる存在となる。君は〈威圧〉技能に習熟し、この技能を使って行う判定には2倍の習熟ボーナスを加算できる。元々〈威圧〉技能に習熟している場合、〈看破〉、〈歴史〉、〈ペテン〉からいずれか1つに習熟できるが、2倍の習熟ボーナスを加算できるのは〈威圧〉技能である。
休息時間の活動「評議会への助言」:30日間の休息時間の活動を実施することで評議会でのさまざまな問題について法律的な解釈に基づいた助言を行う。このとき難易度10、15、20のいずれかを選んで【知力】〈歴史〉判定と【魅力】〈説得〉判定をそれぞれ同じ難易度で行う。
これは暁の評議会に対する「名声の獲得」の休息時間の活動と同様の効果を持つが、この活動を行った30日分に加えて、【知力】〈歴史〉判定と【魅力】〈説得〉判定の両方に成功している場合はその成功した難易度に等しい日数分を追加で活動を行ったものとみなすことができる(たとえば難易度20に成功しているなら30+20=50日分の活動とみなされる)。判定に片方だけ成功した場合は30日分の活動を行ったものとみなす。両方に失敗した場合は15日分の活動として計算される。
休息時間の活動「新法の制定」:30日間の休息時間の活動を実施することでファーショアにおける新法を制定することができる。それはそれなりに妥当性のあるものでなければならず、どんな法律でも制定可能というわけではないが、君自身の個人的な利益につながるものであってはならないという事はない。30日間の活動の後、【知力】〈歴史〉と【魅力】〈説得〉の判定をそれぞれ行うこと。難易度はDMが決定する(下記の表はその指標である)。両方の判定に成功すればその法律は成立する。片方だけに成功した場合、さらに30日の活動時間を費やして再度失敗した方の判定を行うことができる。そこでも失敗した場合、もはやその法律成立を議題に上げることはできない。両方の判定に失敗した場合、もはやその法律成立を議題に上げることはできない。この活動の後、成否に関わらず君は“霊感”を獲得する。この活動を行っている間、裕福な生活様式を維持することができる。
表:新法の制定
難易度 法律の種類
10 あって当たり前の法律(殺人や盗みを罰する法律)やほとんど誰の権利も侵害せず罰則もないような法律(ジャングルの生水を飲んではいけない、など)
15 一部の権利者の反発を買うような法律(ジャングルでの狩りは誰でも自由にできる、逆にジャングルでの狩りには評議会の許可がいる、麻薬の取引の禁止など)や多数の者に特権を与えるが一部に除外されるような者がいる法律(オーマン人には一切の権利を認めない、土地の自由な売買を認める)
20 多くの者が反発するような法律(夜間外出禁止令、禁酒法)、ごく一部の者にだけ特権を付与する法律(貴族階級だけが奴隷を所有できる、家産の相続は長子に限るなど)
25 あからさまに特定の人物だけを優遇するような法律(PCだけに肉体の不可侵性を認める法律、ある人物だけ非課税とする法律など)

民兵隊長

Militia Captain
ファーショアの民兵は先の海賊の襲撃のために増員された結果40人ほどに膨れ上がった。民兵隊長はファーショアの評議員でもあり、ゼルカルーンの角団として知られる傭兵部隊の一員でもあるウルヴァー・カバンジャである。これまで最善を尽くして民兵隊を徴募して鍛え上げてきたが、彼自身はもともとあまりカリスマ性のある人物ではなかった。“翡翠の鴉部隊”のトリン・キエンタイも民兵隊に加わっているが、彼もまた指導者の地位に立つような人物とは言い難い。
もし君が民兵隊長に立候補するのであれば、ウルヴァー・カバンジャは潔く身を引くつもりである。君はファーショア防衛の任務を背負って立つことになる。
隊長:君は任意の軍用武器1つに習熟する。
休息時間の活動「軍事訓練」:民兵隊長として君は30日間の休息時間の活動を行って民兵を調練する。この訓練の後、君自身と20人までの民兵はその【耐久力】修正値に等しい分(最低でも1)だけヒット・ポイント最大値を上昇させる。このヒット・ポイント最大値の上昇は1ヶ月だけ維持する。
休息時間の活動「武器防具の改善」:民兵隊長として君は30日間の休息時間の活動を行って民兵が使用する武器防具の改良を指導監督する。君は500gp分の武器防具を自由に購入できる(資金はファーショアの資金から捻出される)。また連続してこの休息時間の活動を行うことで資金を貯めておいて購入することもできる。こうして購入した武器防具は民兵に支給することを期待されているが、必要だと隊長である君が判断するのであれば、自分自身で使用することにしても構わない。

地区議員/ファーショア市長

前提条件:ファーショア市長として認められるためには暁の評議会の勢力陣営の名声が25以上であり、かつキャラクター・レベルが10以上である必要がある。そしてファーショアにおける市長選挙(下記参照)で過半数の市民の賛同を得る必要がある。
利益:君はファーショアの役人たちを使って休息時間の活動を行わせることができる。君自身が休息時間の活動を1日行う毎に2日分ないし3日分の活動を実行可能である。2日分、3日分の活動を行う場合の追加の費用はすべて君が支払わなければならない。(生活様式による必要経費は自分の分だけ負担すればよい)。さらにファーショア市長としての特別な利益については下記参照。
ファーショア市長:君はどんな休息時間の活動を実施している場合であっても、最低でも裕福な生活様式を維持することができる。
休息時間の活動「市政運営」:10日間の休息時間の活動を実施することでファーショア市政の運営に積極的に携わる。この活動を実施したキャラクターは、そこから2d6日の間、毎日のはじめに“霊感”を獲得する。さらに、これは暁の評議会に対する「名声の獲得」の休息時間の活動と同様の効果を持ち、この活動を行った30日分がそのまま“名声の獲得”を行った場合の日数として勘定される。

ファーショア市長選挙

ファーショア市長の任期は1年である。ラヴィニアにせよマンサレイ・メラヴァンチ卿にせよ、現在の市長の任期が切れる際には新たな市長を選ぶ必要がある。君が立候補する場合、ラヴィニアは自らその地位を退くであろうが、マンサレイ・メラヴァンチ卿は必ず対抗候補として立候補してくる。
サザリン市から新しい入植者がやって来たことで、ファーショアの人口は、以前は240人だったものが450人にまで増えている。元々の住民のうち半数にあたる120人はラヴィニアを支持しており、君が立候補する場合には、出馬を辞退したラヴィニアによる推薦の申し出によって彼らは君の支持者となる。その一方でメラヴァンチ家の支持者も120人ほど存在しており、残る210人が態度を明らかにしていない。
選挙の遊説を1週間行なった後、PCは難易度15の【魅力】〈説得〉か〈威圧〉判定を行なうことができる。また、判定を行なう本人もしくは補助者によって両方の技能を適用することで、判定に“優位”を得ることができる。しかしながら、この判定に〈威圧〉技能を絡めた場合、反作用も引き起こされる。
判定に成功すると、浮動票の市民の内、1d10人が君へ投票することを決意する。この判定で難易度を3上回る毎に、さらに1d10人が君の陣営につく。失敗すると、反対に1d10人の市民が対立候補(メラヴァンチ家)に投票することを決意したことを意味する。もしこの判定に〈威圧〉を絡めていた場合、成功したか失敗したかに関わらず、上記の結果に加えて1d10人が対立候補に投票することを決意する。こうして210人のうち106人以上を自陣営にひきこむことができれば君はファーショア町長となることができる。
なお、選挙が始まると、対立候補の遊説者が同じように判定を行うようになる。メラヴァンチ家が対立候補であるなら、立候補者本人であるマンサレイとその甥のアヴナーの2人がそうした活動にあたるだろう。
ファーショア市長はサザリン市の7つの地区の議員と同等の権威を持つ。町長はサザリンの貴公子が着任できる役職と同様の利益と義務を持ち、また兼務する場合の制限も同様に課される。

サザリン卿/女卿

前提条件:サザリン卿/女卿として認められるためには暁の評議会の勢力陣営の名声が50以上であり、かつキャラクター・レベルが15以上である必要がある。さらにサザリン市の地区代議員やファーショア市長の4人以上の推薦をもらう必要がある。
利益:暁の評議会が君にサザリン市内の小さな邸宅と郊外に邸宅付きの大きな荘園を与えてくれる。この荘園は1日あたりの維持管理費用は10gp、熟練者の雇い人(2gp/日)3人と非熟練者の雇い人(2sp/日)15人を必要とするが、彼らの賃金は維持管理費用の10gpに含まれる。
したがって、1ヶ月あたり300gpを要する。この荘園は事業として収益を上げるようになる。『Dungeon Master’s Guide』の第6章にある「事業経営」の休息時間の活動として扱われる。
以後、名声が10上昇するごとに新しい荘園1つが与えられる。

サザリン卿/女卿への就任

サザリン卿/女卿と認められるために、君はいずれサザリン市へ戻る必要があるだろう。4人以上の代議員の推薦をもらうために必要な方法はDMが知っている。それはおそらく、弱体でバラバラであり、緋色団や“深紅の艦隊”の攻撃に対して脆弱な植民都市国家群をひとつにまとめ上げる広域国家連合の樹立を促すものとなるだろう。
最終更新:2019年06月02日 11:49