Savage Tiding 02『サザリン市を越えて』

残忍な潮流(Savage Tide)の増大に対する反撃を行なうために、この連載記事はプレイヤーである君たちに、流れ込んでくる者たちを回避するのに必要な秘訣、要領、そして小道具を提供する。『Dungeon』誌ではDMに対して『Savage Tide』キャンペーンを運用していくのに必要な卑劣なプロットやずる賢いモンスターを提供していく一方、この『Dragon』誌では、君たちが流れを外れないようにするための助けとなる細かな情報や選択肢を提供する。今月の記事では、サザリン市周辺の野外の全体像を提供し、同時に安全な文明圏から外へと踏み出した場合の新しい情報と展開を提供する。

サザリン市を取り巻く環境

海の恩恵を受けるには適したところに位置しているが、サザリン市はその周囲の土地に注目すると、数々の挑戦に直面している。敢えてその安全な石壁を超えて冒険に出る者たちにとって、下記の記事は、サザリン市の影響範囲の中で最も注目に値するような場所と地形についての概略を紹介するものである。

地勢

頻繁な降雨、湿気を帯びた熱波、流れの強い河川、そして季節的に訪れる雨季が、サザリン市周辺の地域に絡みつくジャングルと不規則に広がる湿地帯を育てた。敢えてこの野生世界に挑む者は、これらの肥沃な広がりの中に繁茂する、豊かでしばしば危険な植物相や動物相に遭遇することは確実である。これらの野外へと行く冒険を行なう際には、プレイヤーとDMは『Dungeon Master’s Guide』の第5章にある「荒野」のルールについて良く理解しておくべきである。

アメディオ・ジャングル

Amedio Jungle
青々と茂った熱帯のジャングルがこの地域を特色付けている。非常に老いた、広い間隔で生えた木々が密生した樹冠を形成しており、それによってジャングルの地面は永遠の緑の暗闇に閉ざされている。あらゆる種類の昆虫や動物(そのいくらかは怪物的なサイズを持っている)、捕食性の植物、粘体、そして時にはウィル・オ・ウィスプやハグ、ヒュドラ、ブラック・ドラゴンさえもが、この青緑の深淵に巣を作っている。文明から遠く離れ、リザードフォーク、ブリーワグ、そして奇妙な色の皮膚をしたゴブリンの一族が、オーマン人として知られる背の低い人間や、グルガックと呼ばれるしなやかで黒い皮膚をしたエルフの原始的な部族と共に生息している。

鮮血湾

Blood Bay
鮮血湾の色には数多くの逸話が伝えられている。幾人かの老練な水夫は、船乗りによって大きな怪我を負わされて外海へと戻ることができなくなったガルロッサと呼ばれるクラーケンの血液によって真紅の波が生まれたと信じている。湾全体を赤く染めることで、彼らの秘密の取引を探ろうとする詮索好きな者たちを怯えさせて近寄らないようにさせるための海賊たちの陰謀であると信じる者たちもいる。賢者たちはこれらどちらの説も嘲笑しており、この湾の独特の色彩は、単にハングリー・フィッシュ川によって山から押し流されてきた鉄を含む堆積物のせいであると主張している。

クラブ川(蟹川)

Crab River
アメディオ・ジャングルのより大きな捕食者たちから――ある程度――切り離されており、クラブ川周辺の湿地帯の大部分は、その東側よりも安全であると考えられている。それゆえに、密輸業者、追放者、そして恐ろしい宗教団体の信者などが、この河岸に隠れ家を作っている。この川の名前にも関わらず、ザリガニやヤドカリの小さな個体群を除けば、この曲がりくねった流れには、それほど大きな種類の甲殻類は生息していない。地元の伝説によれば、信じ難いほど大きなチュールのようなクリーチャーが湿地帯の奥深くに巣を作っていると言われており、この川で誰かが謎めいた失踪を遂げた場合には、地元の民はすぐにそれが「オルレック・クローが彼らを連れ去った」と主張する。

エメラルド川(緑玉川)

Emerald River
エメラルド川は、ゆっくりと流れる川面に生える独特な形状の藻類からその名をとっている。河岸から鉱物を奪い取り、地獄炉山脈から流出してくるこの緑の植物は、遠くから見ると、まるで浮遊するエメラルド色の薄膜のように見える結晶質の層を形成する。非常に美しいものではあるが、この輝く藻類は、滑らかな鱗を持つクロコダイル、スネーク、フロッグ、そしてその他ありとあらゆる、その中に潜む巨大生物たちに完璧なカモフラージュを提供することになる。

地獄炉山脈

Hellfurnaces
火山性の不安定さ、極めて移ろいやすい様相、極寒の風、そして焼けつく溶岩の流れといったものが、この恐ろしい山地の特徴のすべてである。大方の生物にとってここは旅することが極度に困難な場所であり、生活するにはあまりに不毛な場所であるが、最も粗野で意志強固なクリーチャー――しばしば、焼けつくような高温や炎を好む者たち――は、この危険な高地において狩りを行なう。

ハングリー・フィッシュ川(飢魚川)

Hungry Fish River
密生したジャングルの広がりの中を流れ、タイガー川と合流し、鮮血湾に流れ込んでいるこのハングリー・フィッシュ川は、危険な動物がたくさおり――もっと悪いことには――この川の名前の由来ともなっている、その浅瀬に潜む凶悪なピラニアの群れが付け狙ってくるために、地元の人々からも避けられている。この超小型の魚は、群れを成して舷側から殺到することで、カヌー(丸木舟)やスキフ(1人用ボート)を転覆させる方法を知っているという噂がある。

ジェクリー湾

Jeklea Bay
一方では地獄炉山脈によって、もう一方ではフック半島によって青空海から切り離されている海域であるこのジェクリー湾は、緋色団によって画策された政府の混乱と暗殺によって無政府状態に陥るまでは、長年シー・プリンス国の支配下にあった。現在は自治権を持っているサザリン市は、この地域の中心的な権力として存在感を示し始めているが、いまだに、南方の肥沃で資源豊富なジャングルを確保するために、頻繁にこの海岸沿いを緋色団の船団が航行している。この湾の形状のおかげで、穏やかな波が、海岸沿いを反時計回りに流れおり、商人、密輸業者、そして奴隷商人の船の水路をはかどらせており、彼らによるアメディオにおける植民地の急速な再建に拍車をかけている。

クラーケン入江

Kraken's Cove
伝説的なクラーケン、ガルロッサによって守護されているという噂があるこの入江は、神秘のベールに包まれている。岩がちな崖の中に暗い断片として僅かに見えている、ここにあるすべての安全な港は、幅広い帯状の暗礁、岩、そして場合によっては、マストの先端だけが波間から顔を覗かせているような難破船によって、湾の他の部分から遮断されている。

スカイフロス川(空泡川)

Skyfroth River
地獄炉山脈から轟音を立てて流れ下り、激しく滝のように墜落し、容赦ない速さで走り抜けるという表現が、この泡立つ白い流れにぴったりである。2つの最大規模の滝、クラッシュウォーター(サンダー川から5マイル地点)とジェレイダーズ・リープ(サンダー川から10マイル地点)とによって、この水路は商業や旅のために使用するには役に立たないものとなっている。しかしそれだからこそ、“咆哮道の話者”と呼ばれるモンクたちの半永久的な野営地が、この2つの大滝の間に無数に存在する、より小さな滝や崖面の洞穴といった場所に存在している。

サンダー川(雷川)

Thunder River
サンダー川は、サザリン市で発達している製材業にとっての活力源である。レイキン城の南の密生したジャングルの上流では、樹木伐採人がとてつもない数の異国風の堅木を伐り倒し、枝を払って丸太にして川を遡行させて、製材所や船積みのために下流のサザリン市まで運ばれる。その道中、この丸太は勇敢で向こう見ずなログライダー(丸太乗り)たちによって面倒を見られる。彼らは大雑把に縛られた丸太の集まりの上に平衡をとって乗り、長い槍を使って流れが詰まってしまうのを防いだり、利害関係のある伐採業者たちから船団を護衛したりするために、30マイル以上の行程を旅する。樹木伐採人たちとログライダーたちへの賃金はどちらも高いものである。彼らの仕事には、仕事本来の危険に加えて、リザードフォークや川のモンスターたち、そしてこの川の名前の由来ともなった容赦ない早瀬や滝を見逃さないように注意しなければならないためだ。

タイガー川(虎川)

Tiger River
タイガー(虎)やその他の大型の捕食動物たちがこのアメディオ・ジャングルの東側一帯に棲息しているが、タイガー川はその水棲動物の残忍性からその名を取っている。この川は希少な淡水種のシーキャットが少数生息していることで最も良く知られている。この熱帯種魔獣の光り輝く鱗と皮革は高額で取引されるため、とてつもない利益をもたらすものとしてこの水棲種の大型猫が狩りの対象となる原因となっている。

サザリンの土地

この都市の市壁の外側では、サザリン市が周辺地域に持ついくつかの資産を直接に支配し、そこからの産物に依存している。

アメディオ幹線道路

Amedio Highway
その全長のほとんどをサンダー川と平行に走っているアメディオ幹線道路は、サザリン市をコールドロン市と結んでいる。この姉妹都市は休火山のカルデラの高地に位置している。この2つの都市の交易と交流は非常に活発であるが、この道路の長さは、他の旅人たちぶつかることなく旅することができるほどである。川と同じように、アメディオ幹線道路は比較的安全で、商人と材木によって混雑しており、沼沢地とサザリン市近辺の大農園を通っているが、ジャングルを押し進む者たちは、リザードフォーク、ジャングルの捕食者たち、そして地獄炉山脈の高みから時折やってくる狩人たちによる待ち伏せの危険がますます増加していくことに気づく。

ブリスターウォール要塞

Blisterwall
恐ろしい外観の、地獄炉山脈の赤い岩と、ぞっとする沼地のかび類の継ぎはぎとは、ブリスターウォール要塞にその名前と絶え間ない苦痛とを与えることになり、壊疽にかかったような見た目となっている。サザリン市東部の荘園をジャングルの脅威から守るために置かれたもので、比較的遠隔で隔離されており、絶え間なく湿った地域であるため、サザリン市の軍の中ではここに配属されることを嫌がる傾向がある。他部署への転属をいつも拒否しているただ1人の軍人がアーリン・シュヴェルド(男性のハーフエルフ)であり、彼は何匹もの地獄炉山脈に住むヒッポグリフを捕まえては訓練を施す偵察兵であり、この地域で最も経験を積んだ山岳追跡者であると見なされている。

レイキン城

Castle Rakin
レイキン城の補強された木製の柵は、サンダー川を通る樹木伐採人たちと交易商人たちの正規の停泊地点である。この城は本来さほど印象的なものではなく、2面の頑丈な木製の壁によって囲まれた3階建ての石造りの要塞であるが、この砦全体は“城”と言及される。ここには小さな部隊が詰めているだけであるが、この砦は防衛拠点というよりも交易拠点としての役割で発展しており、その波止場沿いに、商品やサービスを売りに来る商人、ガイド、ジャングルの原住民、そして山師らで賑やかにごったがえしている。レイキン城で行なわれている商売の多くは、サザリン市の中では眉をひそめて見られるようなものであるが、砦の司令官、大オーグスティン・メラヴァンチ(女性の人間)への相当量の賄賂によって、これらの商売が妨害されないことが保障されている。

フェンデワー砦

Fort Fendawor
分厚い壁で囲まれた海岸沿いの砦であり、かつてこの地を支配していたシー・プリンスの手によって建造された。現在、フェンデワー城はサザリン市の弱体化した海軍の軍港として使われている。砦の防衛用バリスタの下にあるこの天然の港には、航海に耐えるような船は数少ないが、そのほとんどが、海賊を撲滅するために海岸沿いと遠洋をパトロールしている。気性の激しいコモドア・ブランドロック(男性の人間)がフェンデワー砦でこの海軍を指揮しており、彼の個人的使命感から、この地の海賊行為を撲滅しようと奮迅している。不幸なことに、彼の努力は、限られた人員、限られた資源、限られた船舶、そしてまた誤った報告によって挫折している――彼が最も恐れているのは、彼の砦の内部に、“深紅の艦隊”のスパイが入り込むことである。

荘園

Plantations
サザリン市のすぐ外側、サンダー川沿いのおよそ25マイルほどのジャングルや沼地はきれいに取り除かれ、広大な、私有地荘園となっている。この都市に食用作物と輸出品を提供するものであり、この川の定期的な氾濫によって土地は特別肥沃になっているが、この土地を耕作する農民たちは、ジャングルの草木や獣による再侵略と戦い続けている。キャッサバ、コーヒー、綿花、雑穀(アワ、ヒエ)、サトウキビ、茶――さらにいくつかのもっと伝統的な農産物――が、サザリン市の荘園において最も大量に生産されている作物である。これらの作物の他には、いくつかの荘園では何も生産していない。

ブーディノット荘園

Boudinot Plantation
太っちょボスのレミング・ブーディノットによって経営されており、噂によれば、彼の背の高いサトウキビ農場は、違法な作物を偽装したものであるとか、他の不正な取引を隠すためのものであるという。

ドロンダル荘園

Dromdal Plantation
この地域には、口は悪いが育ちの良いヨシア・イムフリッド・ドロンダルが経営する最大の荘園(綿花と茶)がある。彼の一番の自慢は、彼の素晴らしい大邸宅と、彼が大きく期待している娘チャブリスである。ヨシアの6人の大柄な息子たちは、彼と彼らの妹の名誉を守ろうとする。

ミシュロイ荘園

Misroi Plantation
呪われた場所、この放棄された荘園と燃え尽きた屋敷は、かつて、底なし沼に妻を突き落として殺した残酷な男、アントン・ミシュロイの持ち物であった。裏切り者の夫を殺しに彼女の死体が舞い戻ってきたとき、この荘園の怯えきった働き手たちがこの屋敷を焼き払って逃亡し、二度と戻ってこなかった。

この地の廃墟

数え切れないほどの文明が、アメディオ・ジャングルの奥深くで勃興しては滅亡してきた。彼らが存在したことを示す証拠はこれらの廃墟だけである。

チェキテワン

Chekitewan
古代と恐怖とが見守る、この真夜中のような黒い岩でできた大きく急勾配なピラミッドには、植物の侵食が一切見られない。6つの大きな段で構成されており、何百もの浅い、人間サイズの窪みがこの構造物を穴だらけにしている――それぞれには萎びた人型生物の死体がもたせかけられている。1年の大部分の間、チェキテワンはただ神秘的で避けられている場所であり、獣も、ジャングルの原住民も、そして探検家もあえてそこに挑戦したりはしない。月食の夜になると、オーマン人の神テツカトリポカがその用心深い目をこの世界に向け、これらの死体はその剥き出しの墓場から立ち上がって歩きまわると言う。こうした呪われた夜の間ずっと、このアンデッドたちは彼らの黒い廃墟に引きずって連れ帰る犠牲者を探しており、彼らの死者の火の松明は、時にはるか北にあるサザリン市の掌握している荘園でも見ることができる。これらの誘拐された者は失われた異教の神への生贄にされるという数多くの噂がある一方、オーマン人の末裔たちは―魔除けの印を切った後で――これらの歩く死者たちが古代の英雄であり、彼らが流した血によって、かの恐るべきジグラトの中に長く幽閉されているある種の永劫の悪の不死の飢餓を一時的に満たしているのだと主張する。

エヴァーマイア(終わりなき沼地)

Evermire
エメラルド川の東にある広大で人跡未踏の沼沢地には、木製の脚柱に乗った村がある。この小さな開拓者の町の建物は、さまざまな高さで水の上に浮くように設置されている。水面上わずか1インチ程度の波止場から、裕福な者の家屋の数階建ての建物並みの高さまであり、すべてが縄橋子と狭い渡り板とで結ばれている。小動物の巣がある他は全く何もなく、これらの建築物は風化したままであるが、まだ使用に耐える状態のままであり、住民たちがなぜここを放棄したのかという事を示す手がかりはどこにもない。不思議な事はまだあり、町の中央に立っている古代の木にはエルフ語がびっしり書き込まれており、それらを翻訳しても、何度も何度も“エヴァーマイア(終わりなき沼地)”という言葉が繰り返されている他は訳の分からない戯言にしかならない。沼地の奥まで踏み入れたサザリン市の人間はほんの僅かしかおらず、また、この地域にエルフの居住地があったという公式記録も存在しない。

メガラーヴ

Megalarve
係争中の鱗ある者たちの都市、リザードフォークの部族とブリーワグの部族の両方が、この略奪された木造の都市の正当な所有者であると主張している。たくさんの意外なほど複雑な建造物が地面を覆っている一方で、都市のほとんどの部分が古代のデクロの木の枝々に覆われた足場の上に建っており、橋や朽ちたロープによる複雑なネットワークで結び付けられている。この都市を争っている爬虫類部族は、どちらも現在はここには住んでおらず、両者の戦士たちは10年来のゲリラ戦を戦っており、どちらも発見した侵入者を追い払おうとしている。

マッシュワン

Mashwan
古代オーマン語で“記憶”という意味のマッシュワンは忘れ去られた場所である。この広いジャングル開墾地の中には、12本の石のオベリスクがあり、それに囲まれるようにして地面に寝かせられた、信じられないほど入り組んだ彫刻が施された石の円盤がある。これを調査した者は、この円盤上の正確な区分けとルーンとは、ある種の時計かカレンダーとして機能するものであるという仮説を立てているが、この円陣の近くにいた者は皆気絶してしまい、直前の数時間の記憶を失ってしまうので、正確なことは誰にも分からない

長き影の尖塔

Spire of Long Shadows
ひところは、ここは半神カイウースのパワーの中心地であった。廃墟と化した都市クルスマーが、このそびえ立つ、崩れた石のジグラトを取り囲んでおり、葉のない木か、秘術的な象形文字を様式化したかのような見事な姿を見せている。邪悪な神に捧げられた大広間がこのモノリス(一枚岩の石塔)の地下に存在しており、その邪悪な蟲の神は打ち破られたにも関わらず、彼の暗く恐ろしいパワーを示す証拠が今なお、その滅びた玉座の下に渦巻いていることは疑いないという風説が流れている。

近場のダンジョン

数多くの悪名高い場所がこの地域の周辺に点在しており、その危険が探検家たちを惹きつけ、富と破滅の両方をもたらしている。

ベローラクの大口

Beroarak's Maw
ハングリー・フィッシュ川の沼地めいた土手のわきから破裂するようにして、30フィートの高さで、つる草に巻きつかれた、巨大なクロコダイルあるいはドラゴンの頭部の彫刻が突き出している。地上の空気を吸いにパカッと大きく口を開いたかのようなこの大顎、これは高度に様式化されたオーマン人の遺跡であり、石の食道のような湿った地面の中へと続く深い縦穴の入口である。100フィート以上降りると、この通路はたくさんの骨で埋まっている―数え切れないほどの死体が未知の深さにまでいっぱいに詰まっているのだ。ベローラクの大口は、日中はただ恐ろしげなランドマークに過ぎないが、夜になると、ここにはオーマン人の神官の幽霊が現れ、地下深くに隠された秘密の霊廟で儀式を行なったり、それを守護したりしているのだと言う。

彫刻屋の穴

Carver's Pit
100年間、彫刻屋の穴はサザリン市の主要な石切場であった。年々、この石切場深くなっていき、ついにある日、1人の人夫が石の床を掘り抜いて恐るべき怪物たちの群れを解き放ってしまったのである。その恐ろしい者たちは瞬く間に石切場の床にあふれ出して全ての生き物を抹殺し、それからすぐに渦巻きながらその開口部へと戻っていき、消え去った。
しかし、生存者とサザリン市に対する攻撃の噂とによってパニックが巻き起こり、オーレン・テラクニアンの解任と、それに続くシー・プリンス国による乗っ取りは、町が混乱に陥ってから僅か2~3日後のことで、そのまま速やかに、彫刻屋の穴は忘れ去られたのである。

錆と火のダンジョン

Dungeon of Rust and Fire
石の多い高山の峡谷の高みに、窓のないギザギザに尖った金属性の塔である、巨大な錆と火のダンジョンが立っている。この遺跡に通じる道はまったくないが、エメラルド川を遡って地下の源流まで行けば、時々、空に対する塔の輪郭がちらっと見えることに気づく。夜には、その静かな塔の頂上部が周期的に炎を閃かせ、夜明けが近づくにつれて弱まっていくのが見られ、時折、その基部周辺を虫のような姿が重苦しく蠢いているのが見える。そういう時には、この流れはエメラルド色を飲み込んで黒と赤に変わり、魚は腹を上にして泳ぎ、奇妙な突然変異を遂げる。この塔を遠方から観察調査した学者たちは、ここがコールドロン市の地下にある廃墟と化したノームの孤立村落ジャディルーンと何らかの関係があると確信しているが、ともかく何か恐ろしい事が起こったことだけは確かである。

フィドル奏者の洞穴

Fiddler's Cave
カルネリオ・フェンダーサンは、サザリン市の歴史上最も偉大な音楽家であり、また同時に最も神秘的な人物でもある。カルネリオの音楽が有名になるほどに、彼の行動には奇行が増えていき、彼は自分の世界に引きこもって、ほとんどの時間を荒野で過ごすようになった。彼が25歳のとき、彼は完全な世捨て人となり、誰とも話をせず、満場の聴衆を前にサザリン・オペラ・ハウスで1年に1回だけ演奏を行い、その後、沼地とジャングルの中へと消え去った。人々は、彼自身の音楽の美しさが彼を狂気へとかき立てたのだとか、その素晴らしい才能を得るために彼はデーモンに魂を売り渡したのだと、噂し合った。そしてついに、昨年の“燃える空の鎮魂歌”の演奏が貴族地区のすべての者を涙させた後、カルネリオの熱狂的なファンの1人が、山岳地の洞窟の奥まで彼の後をつけて行き、その洞窟が輝く緑の光の壁で行き止まりになっている事を見出した。カルネリオはどこにも見当たらなかったのである。恐ろしくなって、そのファンは町まで逃げ戻り、そこで彼が見つけた事についての話は瞬く間に酒場やダンスホール中を駆け巡った。そして現在、次のコンサートの時期が徐々に近づき、あと数週間を残すだけとなって、フィドル奏者の洞穴についての好奇心は熱狂的なまでに高まっている。

フックフェイスのねぐら

Hookface's Lair
地獄炉山脈の奥深くに悪名高いレッド・ドラゴンのフックフェイス(訳注:かぎ面)の住処がある。彼の住処は大口を開けた穴で、数百フィートの深さがあり、火山の融けた中心部の中にまで切れ込んでいる。溶岩プールの真ん中にあるただ1つの大きな空間で、フックフェイスはほとんどの時間を彼の大量の財宝に囲まれて眠っており、目覚めるのは狩りを行なうとき、侵入者を焼き払うとき、あるいは彼が自らの領土と考えている山岳地で起こった騒動を調査するときだけである。(フックフェイスの破壊活動についてのより詳細な情報については、『Shackled City Adventure Path』参照。)

君は何を知っているか:深紅の艦隊

南方の海を駆け巡る、良く組織された海賊艦隊である、この悪名高い深紅の艦隊についてはほとんど何も分かっていないが、多くの推測が流れている。サザリン市で時間を費やすことで、PCたちはこの海のならず者たちについていくつかの情報を得ることができるだろう。ここに記載してある情報は、深紅の艦隊について街中で情報を集めればすぐに手に入る内容のものである。
深紅の艦隊
緩やかに組織された海賊集団がアメディオ・ジャングル周辺の海域で活動している事が知られている。これらのならず者たちは公海上でのあらゆる種類の海賊行為、奴隷売買、禁制品密輸など従事しており、はるか南にある不正な港でそうした事業の基地としている。深紅の艦隊の船長たちは、無慈悲で酷薄なことで悪名高いが、それでも決して曲げられない掟に縛られている。この艦隊による破壊活動についての噂や略奪行為はたくさんあるが、この海賊のアメディオ居留地は、サザリン市に広く停泊地を提供している。

下記の内容は、深紅の艦隊に関するいくつかの噂である:
  • 深紅の艦隊の船長は全員麻薬中毒者で、その目は恒久的に血走った赤に変わってしまっている。
  • 緋色団がサザリン市にはびこることが妨げられている唯一の理由は深紅の艦隊の脅威のおかげである。
  • 深紅の艦隊のリーダーはただ“提督”としてだけ知られており、その衝撃的な正体を隠すために、どんな時でも顔の半分を覆う血のように赤いマスクを身に着けている。
  • 深紅の艦隊の船乗りたちはすべて食人の習慣があり、苦悩と苦痛を広めるために出帆するのだという。
  • この艦隊は至る所に目と耳を持っており、うわべは無害な印や合図を使って意思疎通を図っているという。不注意に彼らの悪口を言ったりした者は不慮の事故に合うという。
  • この艦隊は100隻もの船舶を保持しており、その最大のものは奴隷にしたドラゴン・タートルに牽かせた移動可能な島であるという。


代わりのPC

冒険者の人生に死はつきものであり、死んだ仲間の代わりとなる新しいPCが必要となることもありうるだろう。幸運なことに、サザリン市周辺地域と、このキャンペーンの中で築いた人間関係によって、新しいプレイヤー・キャラクターを導入する供給源は豊富にある。

翡翠の鴉部隊

ヴァンデルボーレン家の信頼する傭兵部隊は具体的に詳述されているが、彼らの仲間は新しいPCの供給源としては最適なものとなりうる。パーティにスパイとして潜入するために雇われた鴉部隊の同国人は、優れた才能を持った二枚舌のPCとなりうるだろう。あるいは、翡翠の鴉部隊のメンバーの1人の親類――鴉部隊に参加するには若過ぎ、経験不足な――が彼の価値を示すため、あるいは家族を困らせるためにPCたちのパーティに参加したりするかもしれない。

原住民

人間のオーマン人と、アメディオ・ジャングルのグルガック・エルフは、異国風のキャラクターの供給源としては全く的をえたものである。バーバリアン、ソーサラー、そして未開の神格に仕えるクレリックは、いずれもPCたちと行を共にしようという計り知れない理由があるのであろう。深紅の艦隊の海賊もまた、主に彼らを奴隷として緋色団に売り飛ばすという理由で、オーマン人の原住民に対して特別な興味を持っている。PCたちがそうした捕虜を解放したおかげで、ある部族のメンバーは命の恩人に借りを返さなければならず、そのためパーティに参加したのかもしれない。

サザリン市の軍隊

この都市のさまざまな軍隊組織はそれぞれ新しいキャラクターを輩出する可能性がある。ブリスターウォール要塞とレイキン城はどちらもジャングルや山岳地、そして沼沢地の道やクリーチャーを追跡したり、それらを扱ったりするのに熟練した兵士を扶養している。フェンデワー砦は、海での経験に富み、海賊と戦う訓練を受けた船乗りや水兵を供給することができるだろう。すべてのクラスと種族のものがサザリン市の軍隊で働き口を見つけることができるだろうが、高位を占めているのは、ほとんどが人間のファイターとレンジャーである。

沼地の世捨て人

これらの社会から厄介者扱いされていたり、追放されていたりする者たちは沼沢地の中で厳しい生活を送っている。密輸業者、沼地の狩人、湿地の魔女、そして奇怪な宗教の信者たちは、蛇と昆虫たちに囲まれた寂しい場所を好んでおり、そういった場所で見受けられる。文明から逃げ出さなければならなかった理由のある、あらゆるクラスと種族の者が、沼沢地でパーティと出合い、同じ道を歩むことになるかもしれない。

最終更新:2017年07月28日 08:17