シュヴァルツェスマーケン・えくすとら♪

最終話「俺が好きなのは・・・!!」


1.幸せの日々


 『お帰りなさい、お兄ちゃん♪』
 『ただいまリィズ。今帰ったよ。』

 とても穏やかな笑顔で、仕事帰りのテオドールを優しく出迎え、首に両腕を回してテオドールと唇を重ねるリィズ。
 長いキスを終えた後、ふうっ、と大きな溜め息をつきながら、テオドールはスーツを脱いでリィズに手渡した。
 やはり我が家が一番落ち着く。仕事で疲れ切った心と身体を、リィズの笑顔と優しさが癒してくれる。
 今日はローテンブルクへの系列店舗の出店準備や、アルバイトの学生たちへの教育などに追われて本当に大変だったのだが、それでも何とか無事にやり遂げる事が出来た。

 『もうすぐ晩御飯出来るから、先にアイリスと一緒にお風呂に入ってきたら?アイリスもさっき仕事から帰ってきたばかりだから。』
 『ああ、今日の風呂の当番はアイリスだったか。』
 『その代わり、今日の夜にお兄ちゃんと愛し合うのは私なんだからねっ。』

 ちょっと妬けちゃうけど、それでもお兄ちゃんの正妻はこの私なんだから。
 リィズの意地悪な笑顔が、テオドールに無言でそう告げていた。
 テオドールもリィズの心情を察し、とても穏やかな笑顔でリィズの頭を撫でてあげる。
 テオドールの大きな右手の感触が、何だかリィズにはとても心地良かった。

 『お帰り、テオドール。今日も仕事でとても疲れただろう。』
 『ただいま、アイリス。』
 『さあ、椅子に座って力を抜くがいい。私がお前の身体を洗ってあげよう。』

 浴室で互いに一糸纏わぬ姿になり、椅子に座ったテオドールの身体を、ボディーソープで優しく洗うアイリスディーナ。
 そして全身が泡だらけになったテオドールの身体を、アイリスディーナが背後からぎゅっと抱き締めた。
 そこからさらに全身を使って、テオドールの全身を舐め回すかのように、テオドールの身体を癒していく。
 そのアイリスディーナの身体の柔らかい感触が、とてもくすぐったくて気持ちいい。

 『相当疲れが溜まってるようだな。全く兄上もテオドールの事をこき使い過ぎだろうに。』
 『それだけ俺が部長から信頼されてるって事だよ。』
 『今度の日曜日は休みが取れそうなのだろう?また皆でどこかに出かけようか。それとも家でのんびり過ごすか?』
 『そうだな、久しぶりに家でゆっくりしたいよ。』
 『ははは、了解だ。』

 互いに身体を洗った後、一緒に湯船に浸かりながら、テオドールとアイリスディーナは他愛ない会話をする。
 ファミレスの運営という仕事をしている関係上、テオドールはどうしても休みが不定期になってしまっていた。
 その分しっかりと休みが取れるのはいいのだが、専業主婦のリィズ以外は全員が土日が休みの仕事をしているので、どうしても皆との休みが合わない事が多かったりする。
 それでもテオドールは、今の仕事にとてもやりがいを感じていた。

 『・・・本当なら、このままお前と愛し合いたい所なのだが・・・今日はリィズが当番だからな。これだけで勘弁しておいてやる。』

 とても意地悪な笑顔で、そっ・・・と、テオドールに唇を重ねるアイリスディーナ。
 そんなアイリスディーナの身体を、テオドールはぎゅっと抱き締めた。
 アイリスディーナの豊満な胸が、テオドールの胸に押し付けられて潰れてしまう。

 『・・・んっ・・・ちゅっ・・・ふふふ・・・またキスが上手くなったな・・・テオドール・・・。』
 『そりゃあ、毎日毎日皆にキスされまくってるからな、俺は・・・。』
 『さあ、そろそろ上がろう。お前のキスが気持ち良過ぎて、のぼせてしまいそうだ。ふふふ・・・。』

 風呂から上がりパジャマに着替えたテオドールの身体を、仕事を終えて帰宅したばかりのカティアとアネットが、左右からぎゅっと抱き締めた。

 『ただいまです、テオドールさん。』
 『今日も疲れた~。テオドール~、私たちをぎゅっと抱き締めて~。』
 『お帰り、カティア。アネット。』

 左右から抱き着いてきたカティアとアネットに、順番に優しく唇を重ねるテオドール。
 そんな3人の光景を、アイリスディーナがとても穏やかな笑顔で見つめている。

 『2人共お帰りなさい。とても疲れたでしょ?もうすぐ晩御飯が出来るから、もうちょっと待っててね。』
 『リィズさん。キルケさんとファムお姉ちゃんとベアトリクスさんは、まだ帰ってきてないんですか?』
 『キルケとファムお姉ちゃんは、もうすぐ帰るってLINEで連絡があったよ。ベアトリクスさんは、今日はユルゲンさんの所に行くって。』 
 『ベアトリクスさんも大変よね~。ユルゲンさんを夫にしてテオドールを愛人にするとか、私にはとても真似出来ないわ。』

 どちらか片方に絞ればいいのにとアネットは苦笑いするが、まぁアネットたちもこうしてテオドールの側室になっているので、そんなに偉そうな事を言えた義理ではなかったりする。
 この統一ドイツで一夫多妻制が認められてからというもの、テオドールはリィズを正妻として、アイリスディーナたちを側室にするという形で、賑やかな同居生活を送るようになっていた。

 リィズが専業主婦として皆の生活を支え、他の者が働いて収入を得る。
 常識的に考えれば歪んでいるとしか言いようが無い光景であり、そんなテオドールたちの事を批判する者たちも未だに多いのだが、これもまたテオドールたちにとって1つの幸せの形なのだろう。
 まあそんなテオドールの事を、物凄い妬みと恨みの形相で睨みつける、女子にモテない男共もいたりするのだが・・・。

 『ただいま~。ふぅ、今日もとても疲れたわ~。』
 『もう、キルケちゃんったら、本当にはしたないんだから。うふふ。』
 『お帰り。キルケ、ファム姉。』

 自分に抱き着くキルケとファムに、テオドールはそっ・・・と優しく唇を重ねた。
 キルケとファムは、とても幸せそうな表情でテオドールを見つめている。
 自分と同じ男の人を愛する彼女たちの幸せそうな姿に、正妻のリィズは嫉妬するどころか、逆に幸せさえも感じていた。

 『これで全員揃ったわね。たった今晩御飯が出来た所だから、丁度良かったわ。』
 『リィズさん、私もうお腹ペコペコです~。』
 『もう、カティアちゃんったら本当にだらしないんだから。』

 もう高校を卒業して社会人になったというのに、未だに子供っぽさが抜けないカティアの姿を見て、苦笑いを浮かべるリィズ。
 何だかリィズは手がかかる妹が出来たみたいで、幸せな気分になったのだった。

 『おっ、今日は青椒肉絲なのか。』
 『そうよ。アスクマンが得意な青椒肉絲。だけど私だってあいつより美味しく作れるんだから。』
 『いっただきまーす。』
 『・・・どう?お兄ちゃん。あいつの青椒肉絲とどっちが美味しい?』
 『そんなの、お前の作った青椒肉絲の方が美味いに決まってるだろ。』
 『嬉しい!!お兄ちゃん大好き!!』
 『俺もお前の事が好きだぜ、リィズ・・・いや、お前だけじゃない。ここにいる皆も、今日は部長の所に行ってるベアトリクスも、全員な。』

 テオドールの言葉に、リィズたちは満面の笑顔で応えたのだった。
 そう、これこそがテオドールたちが選んだ道。テオドールたちが掴み取った幸せの形。
 周りからどう思われようが関係ない。これが自分たちが選んだ道なのだから、胸を張って歩いていこう。
 とても幸せそうに夕食を食べるリィズたちの姿を見て、テオドールは改めてその決意を胸に秘めたのだった・・・。

 「・・・う~ん・・・リィズ・・・アイリス・・・カティア・・・アネット・・・ファム・・・キルケ・・・ベアトリクス・・・」
 「「「「「「「・・・・・。」」」」」」」
 「みぃ~んな、大好きだぁ・・・あは、あはははは・・・。」
 「「「「「「「・・・・・にやそ。」」」」」」」 

 温かい布団の温もりに包まれながら、とんでもない夢を観ているテオドールの寝顔を、名前を呼ばれた7人が物凄い笑顔で見つめていたのだった・・・。

2.決着を付ける為に


 あの遊園地での凄まじい出来事の後の、翌日の月曜日の午前6時。
 新聞配達のアルバイトに精を出す学生たち、犬を散歩に出す人たち、ジョギングをする人たち、こんな朝早くから会社に出勤する人たち・・・清々しい快晴の早朝の最中、暖かな太陽の光が彼らを優しく包み込んでいた。
 そんな中でもテオドールは、普段はまだ寝ている時間帯だからというのもあるが、未だに安らかな寝顔で寝息を立て続けている。
 1階の食卓ではリィズの母親が、とても穏やかな表情で朝食を作っていたのだが。

 (テオドール君ったら、寝顔も本当に可愛らしいのね・・・。うふふ。)

 キルケがとても穏やかな笑顔で、テオドールの頬を右手人差し指でツンツンしていた・・・。

 (ちょっとキルケ、どさくさに紛れて何お兄ちゃんの唇を撫で回してるのよ!?)
 (わざとじゃないわよ~。手元が狂っただけよ~。)
 (キルケさんだけずるいです~。私もテオドールさんの頬にツンツンしたいです~。)
 (あらあら、あまり騒ぐとテオドール君が起きちゃうわよ?)
 (いや、て言うか、むしろ起こさないとまずいんじゃないですか?ファム先輩。)
 (ああん、私にはユルゲンがいるというのに、テオドールの寝顔にどんどん引きこまれていってしまうわ!!これが恋愛原子核の力だというの!?)

 なんかテオドールは、まどろみの夢の中でリィズたちの声を聞いたような気がした。

 (いいかお前たち、事前に示し合わせた通り、告白の時間は1人1分までだ。そしてキスは1人3秒まで、舌を入れるのは禁止、さらにキス以上の性的行為も一切禁止だからな。ルールを破った者は即刻退場処分とする。)

 レッドカードをちらつかせるアイリスディーナに、リィズたちは仕方が無いといった表情で頷く。
 テオドールへの愛の告白は、あくまでも全員で平等に公平に。
 そして全員の告白を終えた後に、テオドールに誰が好きなのかをはっきりして貰う。
 その為にこんな朝早くから、こうして全員揃って集まってきたのだから。

 (仕方が無いわね。でもまあいいわ。お兄ちゃんの愛を掴むのは、この私以外に有り得ないんだから。)
 (それじゃあ皆さん、そろそろテオドールさんを起こしてあげましょうか。)
 (そうだな。この後の皆の告白タイムの事を考えると、そろそろ起こしてやらないと本当に遅刻してしまいそうだ。)

 「よーし、今日もリィズたちの為に・・・仕事を頑張るぞぉ・・・」

 (よーし、私の合図の後に、全員で一斉にテオドールを叩き起こすぞ。いいな?)

 アイリスディーナたちが一斉に眠っているテオドールの布団を掴み・・・そして・・・

 「カウント開始・・・5・・・4・・・3・・・2・・・ひと・・・今!!」
 「「「「「「いい加減、起きろーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」」」」」
 「どああああああああああああああああああああああああああ!?」

 いきなり布団をひっぺ返され、一斉に大声で起こされたテオドールは、まどろみの夢から強制的に目覚めさせられたのだった。
 目覚めたテオドールの目の前にいたのは、毎朝自分を起こしに来るリィズやアイリスディーナだけではない・・・カティア、アネット、ファム、キルケ、ベアトリクスの姿も。
 一体全体何がどうなっているのか、全然意味が分からないテオドール。

 「・・・は!?・・・あ!?・・・ちょ、えええええええええええええええええええ!?」
 「やあ、おはようテオドール。今日はお前に添い寝が出来なくて本当に残念だ。」
 「何で!?この部屋に!?お前らが!?いるの(泣)!?」

 6畳ちょっとの広さのテオドールの部屋に、一斉に押しかけてきた7人・・・ぎゅうぎゅう詰めとまでは言わないが、何だかテオドールは自分を見つめるアイリスディーナたちに、押しつぶされてしまいそうな気分になってしまっていた。

 「昨日の夜、お前とリィズが帰宅した後に、皆でLINEで話し合ったのだがな・・・このままズルズルと今の状態を続けるのは良くないから、いい加減お前にはっきりと決めて貰う為に、こうして学校に行く前に皆で集まったという訳だ。」
 「決めて貰うって何を(汗)!?」
 「お前が私たちの中の誰を、本物の恋人にするのかを・・・だ。」

 とても真っ直ぐな瞳で、テオドールをじっ・・・と見据えるアイリスディーナ。
 アイリスディーナがテオドールに見せたスマホの画面には、リィズたちとのLINEのやり取りがびっしりと埋まった画像が。

 朝5時30分までにテオドールの部屋に集合。
 朝6時までに全員で最終的な打ち合わせ。
 告白は1人1分まで、キスは1人3秒まで、舌を入れるのは禁止、キス以上の行為も禁止。
 ルールを破った者は即刻退場処分とする。
 誰がテオドールの恋人になっても恨みっこ無し。

 ところでリィズ。テオドールの部屋には、やっぱりエロ本とかあったりするのかな?
 この間ベッドの下に、巨乳のお姉さんの写真が沢山載ってる本があったよ。アネット。
 そうかテオドールは巨乳が好きなのか。やはり私こそが奴の未来の妻として相応しいな。
 くっ・・・胸の大きさが女子力の決定的な差では無いという事を、明日テオドールさんに教えてあげます!!

 そう言えばこの間、テオドールのパソコンをハッキングしたんだけど。
 お前は何をやっているのだベアトリクス!?
 動画フォルダの中にレズ動画が大量に落とされていたわ。
 何ぃ!?テオドールめ、まさかそんな趣味があったとは・・・!!
 ならば男も女も両方いける私こそが、テオドールの未来の妻として相応しいわね。
 だからお前には兄上がいるだろうが!!と言うか男も女も両方いけるって何だ!?

 「何で俺のパソコンがハッキングされてるんだよ!?ベアトリクス先輩怖えよ(泣)!!」

 もうプライパシーも何もあった物ではなかった・・・。
 恐怖におののくテオドールの表情を、ベアトリクスが物凄い笑顔でドヤ顔で見つめている。

 「まあ途中でアスクマンに私のLINEのアカウントをハッキングされていたと、ベアトリクスに教えて貰ったのだがな・・・奴なら今あそこに縛り付けてあるから安心しろ。」
 「ぬおおおおおおおお、私にもテオドール君に告白させろおおおおおおおお!!キスさせろおおおおおおおおおおおおおおお(泣)!!」

 玄関の前ではアスクマンが、何故か半裸で亀甲縛りされた状態で放置されていた・・・。
 そんなアスクマンにハッハッハッハッ言いながら鼻を近付ける犬を、慌てて飼い主が近付いたらいけませんとか叫びながら、リードで引っ張って引き離している。

 「・・・とまあ、見ての通りだ。突然の事で申し訳無いが、今日、今この場で、私たちはお前に愛の告白をする。」
 「ア、アイリス・・・。」
 「だからお前にはっきりと決めて貰いたいのだ・・・この中で誰が一番好きなのかをな。」

 スマホを胸元のポケットにしまったアイリスディーナが、とても真剣な表情でテオドールをじっ・・・と見つめた。
 その真っ直ぐで澄んだ瞳に、思わずテオドールは引き込まれてしまう。
 これは冗談でも何でもなく、本気なのだと・・・テオドールは瞬時に感じ取ったのだった。

 7人の女子に同時に告白される・・・ギャルゲーでも有り得ない無茶苦茶なシチュエーションだが、それでも彼女たちが真剣である以上、テオドールも真摯な対応で向き合わなければ、彼女たちへの真剣な想いに対して失礼という物だろう。
 例えそれによって、テオドールが選んだ者以外の6人が、傷付く事になったとしても。
 生唾をゴクリと飲み込み、テオドールは緊張した面持ちでアイリスディーナたちを見つめる。

 「皆、テオドールが誰を選んでも恨みっこ無しだからな。ではまずはキルケ。お前からだ。」
 「ええ、分かったわ。アイリス先輩。」

 促されたキルケがテオドールの首に両腕を回し、顔を赤らめながら抱き着いたのだった・・・。

3.告白タイム


 自分に抱き着いてきたキルケの身体の温もり、胸の感触、とてもいい匂い・・・そして眼前に迫るキルケの顔と甘い吐息に、思わずテオドールは赤面してしまう。
 そしてキルケはとても潤んだ瞳で、じっ・・・とテオドールの顔を見据えていた。
 こんな状況だと普段のリィズなら、全身から漆黒のオーラを放ちながら妨害してきそうな物なのだが、やはり今日この場で全員の恋の決着を付けると皆で決めた以上は、さすがに妨害行為はしてこないようだった。
 とても真剣な表情で、リィズはテオドールとキルケのやり取りを見つめている。

 「・・・テオドール君。私はあの日、あのファミレスで、身体を張ってカティアちゃんを守った貴方の誠実な姿に一目惚れしたの。それはあの時ちゃんと話したわよね?」
 「お、おう・・・。」
 「貴方は他の男の人のようなクズ共とは違う・・・私の隣に並ぶべき男性は貴方しか考えられないわ。この間、両親が私にお見合いの話を持ちかけてきたんだけど、もう私は貴方以外の男の人を好きになる気になれないの。」
 「お見合いってお前、まだ高校1年なのに、そんな・・・」

 キルケもアイリスディーナと同様に名家の令嬢だと、テオドールはヨアヒムに聞かされていたのだが・・・だからと言ってまだ高校生なのに、お見合いなどさせる物なのだろうか。
 と言うか誰を好きになろうが、そんな物は本人の自由だろうに。何故そんな事まで両親に束縛などされないといけないのか。
 それ故にキルケにとってのテオドールに対しての想いは、誰よりも真剣なのだろう。

 「このままでは私は、他のクズ共とお見合いをさせられてしまう・・・だけど私が心の底から愛しているのは貴方だけ・・・だからテオドール君。そうなる前に、私を貴方だけの物にして。」

 とても潤んだ瞳で、キルケはテオドールをじっ・・・と見つめ・・・そして・・・

 「・・・キスは1人3秒・・・短いけれど、まあ仕方ないわね。」
 「キ、キルケ・・・。」
 「この3秒に、私の貴方への想いの全てを込めるわ。」

 ちゅっ。
 キルケはテオドールに唇を重ねた。
 そしてすぐに唇を離したキルケは、とても愛らしい笑顔でテオドールにウインクをして、テオドールから離れてアネットの隣に座ったのだった。

 「よし次はアネット。お前だ。」
 「了解~。ねえテオドール。私もアンタの事が好きだよ。」
 「どああああああああああああああああああああ(泣)!!」

 物凄い勢いで、アネットがテオドールをベッドに押し倒した。
 いきなりの出来事に戸惑うテオドール。そして身動きが出来ないテオドールの顔を、アネットがじっ・・・と笑顔で、しかし真剣な表情で見つめている。

 「・・・本当ならこのままアンタを襲ってあげたい所なんだけど、アイリス先輩からキス以上の行為は禁止って言われてるから、これだけで勘弁しといてあげる。」
 「襲うっておま・・・むぐぐ。」

 ちゅっ。
 アネットはテオドールに唇を重ねた。
 そしてすぐに唇を離し、自らの唇をペロッと舐め、じっ・・・とテオドールの顔を見据えた。

 「私、こう見えて意外と肉食系なんだよ?だから心だけじゃなくて、アンタの身体も存分に満足させられると思う。」
 「ア、アネット・・・。」
 「・・・あ、よく考えたら、これってキルケとの間接キスじゃん・・・レズ好きのアンタなら、こういうシチュエーションも燃えるでしょ~?」
 「いやいやいやいやいや、いきなり何言ってんのお前(泣)!?」
 「・・・この続きは、私と恋人同士になってから思う存分しようね?」 

 とても意地悪な笑顔を見せながら、アネットは自分が押し倒したテオドールを助け起こし、テオドールから離れたのだった。
 隣に座るキルケと何やら小声で話し込んでいるようで、クスクスと笑い合っている。

 「よし、次はカティアだな。」
 「はい・・・テオドールさん。昨日も言いましたけど、私はテオドールさんの事が好きです。お兄ちゃんとしてではなく、1人の男性として。」

 とても真剣な表情で、カティアはベッドに座るテオドールの首に両腕を回し、じっ・・・とテオドールを見つめた。
 カティアの身体の温もり、胸の感触、そしてとてもいい匂い・・・先程のキルケやアネットに続いてこんな物を立て続けに味わってしまうと、なんかもうテオドールの理性が吹き飛んでしまいそうだ。
 と言うか女子にモテない他の男たちにこんな光景を見られたら、本当に心の底から恨まれて殺されそうな気がする・・・。

 「・・・わ、私、見ての通り幼児体型ですし、胸も小さいですし、だからさっきのキルケさんやアネットさんに比べたら、テオドールさんにとっては物足りないかもしれないですけど・・・」
 「いやいやいやいやいやカティア、お前まで何言ってんの!?」
 「ですがこんな私でも、テオドールさんへの想いは本物なんです!!」

 とても真剣な表情のカティアの瞳に、思わずテオドールは引きこまれてしまう。

 「私、テオドールさんの心も身体も思う存分満足させられるように、その・・・これから色々と勉強しますからねっ!!」
 「お前はこれから色々と何を勉強するつもりなんだ(汗)!?」
 「テオドールさん、好きです・・・愛しています!!」

 ちゅっ。
 カティアはテオドールと唇を重ねた。
 そしてすぐにテオドールから唇を離し、目に涙を浮かべながらその場を離れていく。
 物凄くとんでもない事を口走ってはいたが、それだけテオドールへの想いは本物なのだという事なのだろう。
 今にも泣きそうなカティアの顔を、キルケがとても穏やかな笑顔で、自らの豊満な胸に埋めたのだった。
 とても気持ち良さそうに、カティアはキルケの身体に身を任せている。

 「さて、次はファム。お前だ。」
 「・・・テオドール君。私は最初は貴方の事を、可愛い弟のように思っていたんだけど・・・いつの間にか貴方の事を本気で好きになってしまったみたい。」

 ちゅっ。
 ファムはテオドールの首に両腕を回し、そっ・・・とテオドールと唇を重ねた。
 だが、その瞬間。

 「待てファム!!それはルール違反だ!!」

 ピッピーッ!!
 ホイッスルを慣らしたアイリスディーナが、ファムにレッドカードを提示した。
 そして抱き着いているテオドールから強制的に引き離されてしまう。
 あまりの突然の出来事に、テオドールも戸惑いを隠せない。

 「そんな、いきなり何を言い出すのアイリスちゃん!?」 
 「お前どさくさに紛れて、テオドールのちんちんを思い切り触っただろう!?」
 「・・・な、そ、そんなのは言いがかりよ!?証拠はあるの!?証拠は!?」

 アイリスディーナはテオドールのパジャマの股間の辺りから、ファムの指紋を採取したのだった。
 決定的な証拠を突きつけられたファムは、驚愕の表情でその場に崩れ落ちてしまう。

 「一瞬の出来事だったから、他の者は気付かなかったようだが・・・私の目はごまかせんぞ。」
 「・・・そ・・・そんな・・・!!」
 「キス以上の行為は禁止、破れば即時退場処分・・・そう決めていたはずだがな?ファム。」
 「ああん、ちょっと待って、テオドール君、あああああああん!!」

 アイリスディーナとリィズに引っ張られながら、ファムは部屋の外に追い出されてしまったのだった・・・。

 「テオドール君、私が貴方の事を思う存分満足させてあげるわ!!だからこの続きは私と恋人同士になってから、思う存分しましょうねぇ~~~~!!」
 「まあ、あの馬鹿は放っておいて・・・次はベアトリクス。お前だ。」

 ファムも馬鹿な子ね・・・要はバレなければどうという事は無いのよ。
 そう言いたげな表情で、ベアトリクスはテオドールと唇を重ねたのだが。

 「待てベアトリクス!!それもルール違反だ!!」

 ピッピーッ!!
 ホイッスルを鳴らしたアイリスディーナが、ベアトリクスにレッドカードを提示した。
 そして抱き着いているテオドールから、強制的に引き離されてしまう。

 「な、いきなり何の真似よアイリス!?」
 「お前今、テオドールの口の中に舌を入れただろう?」
 「・・・な、何を、そんなのは言いがかりよ!?証拠はあるの!?証拠は!?」

 アイリスディーナはテオドールの舌から、ベアトリクスのDNAを採取したのだった。
 決定的な証拠を突きつけられたベアトリクスは、驚愕の表情でその場に崩れ落ちてしまう。

 「馬鹿な!?何でバレたのよ!?ほんの一瞬しか入れていないのに!?」
 「テオドールの表情が一瞬だが強張っていたからな。これはキルケたちがキスをした時には見られなかった。それが私が異変に気付いた理由だ。」
 「テオドール貴方、女性に対して免疫が無さ過ぎよ!!」

 いや、そんな事を俺に言われても・・・テオドールはそう言いたげな表情で、涙目になりながらベアトリクスを見つめている。

 「キスの時に舌を入れるのは禁止・・・そう決めていたはずだよなあ?ベアトリクス。」
 「ああん、ちょっと待って、テオドールうううううううううう!!」
 「と言うか、お前には兄上がいるだろうが。」
 「ユルゲンは私の夫よ!!テオドールは私の愛人にするのよおおおおおおおお!!」
 「・・・お前は一体何を言っているんだ・・・?」

 ずるずるとベアトリクスは、アイリスディーナとリィズに身体を引っ張られ、部屋の外へと放り出されてしまったのだった・・・。

最終更新:2016年07月17日 08:23