シュヴァルツェスマーケン・えくすとら♪
最終話「俺が好きなのは・・・!!」
4.俺が好きなのは・・・!!
キルケ、アネット、カティア、ファム、ベアトリクスと、立て続けに告白されてキスをされたテオドール。
5人の唇の柔らかくて優しい感触が、5人のテオドールへの想いが、テオドールの唇に・・・そして心に深く刻まれ、いつまでもテオドールをキスの余韻から離さない。
戸惑いを隠せないテオドールだったが、それでもまだまだこれで終わりではないのだ。
と言うか彼女たちは、こんな朝っぱらから一体何をやっているのだろうか・・・。
「さて、これで残るは私とリィズの2人だけとなったわけだが・・・。」
「ええ、次は私がお兄ちゃんに告白する番よ。」
そう言い放ったリィズは、胸元のポケットから一枚の紙切れを取り出した。
それはリィズが以前、テオドールがバイトをすると言い出した際に書かせた、高校卒業後もずっとこの家で暮らすという誓約書(第2話参照)・・・だったのだが・・・。
「・・・ねえ、お兄ちゃん。これは確かにお兄ちゃんが直筆でサインした誓約書だよね?」
「あ、ああ・・・て言うかお前、そんな物を何で今更・・・。」
リィズは誓約書の最後の方に書かれた文章を、テオドールに指差したのだった。
「・・・じゃあこれに関しても、お兄ちゃんは同意したって事でいいんだよね?」
「・・・は?・・・はあああああああああああああああああ!?」
『私、テオドール・エーベルバッハは、高校卒業後にリィズ・ホーエンシュタインと結婚する事を誓います。』
誓約書には思い切り、そう書かれていた・・・。
全く身に覚えの無い文章に、テオドールは思わず動転してしまう。
「待て待て待て待て待て!!こんな事書いて無かったはずだろ!?お前これ絶対俺が署名した後に付け足しただろ(泣)!?」
「本当にそう?確信が持てる?お兄ちゃんが見落としてただけなんじゃないの?お兄ちゃんったら慌てん坊さんなんだから、契約内容を良く確認せずにサインしたんじゃないの?」
「・・・ううっ・・・それは・・・」
そう凄まれると、何だか本当に確信が持てなくなってしまったテオドールであった・・・。
いや、結婚云々の文章は本当に書いて無かったはずなのだが・・・リィズに凄まれると何故か自分に見落としがあったのではないかと本当に思ってしまう。
テオドールの首に両腕を回し、物凄い表情で迫るリィズ。
その凄まじい迫力に、思わずテオドールはたじろいてしまう。
と言うか、最早告白をすっ飛ばして恐喝になっていた・・・。
「ねえ、お兄ちゃん。もう諦めて。諦めて私の恋人になって。私、お兄ちゃんの為に、これまでずっと頑張ってきたんだよ?」
リィズはとても潤んだ瞳で、戸惑うテオドールをじっ・・・と見つめた。
「・・・私に告白してくる男共だって何人も振ってきた!!」
「お前俺が知らない間にそんな事されてたの(汗)!?」
「・・・不純異性交遊は駄目だとか言う先生たちを垂らし込ませる為に、この間の数学のテストで100点を取った!!」
「お前本当に凄ぇな(汗)!!」
「・・・アスクマンを調教して犬にした!!」
「お前が犬にしたのかよ(汗)!?」
家の外では相変わらずアスクマンが亀甲縛りされた状態で、必死にテオドールの名前を叫びながらぎゃあぎゃあ騒いでいたのだが。
「うるさい!!黙れポチ!!」
「わんわんわん!!・・・くーんくーんくーん・・・。」
リィズの一喝で、情けない表情で黙り込んでしまったのだった・・・。
「・・・ねえ、私と一緒に来て、お兄ちゃん・・・私はただ、お兄ちゃんと一緒にいたいだけ・・・。」
「リ、リィズ・・・んんっ・・・。」
目に涙を浮かべながら、リィズはテオドールと唇を重ねた。
そしてすぐに唇を離し、テオドールの事をじっ・・・と見つめながら、アイリスディーナの隣に座ったのだが・・・。
「さて、最後に残ったのはこの私だな。」
立ち上がったアイリスディーナが、テオドールの首に両腕を回す。
そして。
「・・・お前は私の未来の夫だ。お前は私の未来の夫だ。」
テオドールの耳元でうわ言のように、物凄い笑顔でそう呟き続けたのだった。
いきなりのアイリスディーナの行動に、リィズたちは仰天した表情になる。
「お前は私の未来の夫だ。お前は私の未来の夫だ。お前は私の未来の夫だ。お前は私の未来の夫だ。お前は私の未来の夫だ。お前は私の未来の夫だ。お前は私の未来の夫だ。お前は私の未来の夫だ。お前は私の未来の夫だ。お前は私の未来の夫だ。」
「・・・あ・・・あへ・・・あへへ・・・」
「お前は私の未来の夫だ。お前は私の未来の夫だ。お前は私の未来の夫だ。お前は私の未来の夫だ。お前は私の未来の夫だ。お前は私の未来の夫だ。お前は私の未来の夫だ。お前は私の未来の夫だ。お前は私の未来の夫だ。お前は私の未来の夫だ。はい復唱。」
「・・・お、夫・・・俺はアイリスの・・・夫・・・俺はアイリスの夫・・・」
「そうだ。お前は私の未来の夫だ。」
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も同じ事を耳元で呟かれたテオドールは、だんだん頭の中がボーッとなってきた。
そして口からヨダレを垂らして目をグルグルさせながら、テオドールは完全にアイリスディーナにされるがままになってしまっている。
アイリスディーナの身体の温もり、柔らかい胸の感触、そしてとてもいい匂いが、さらにテオドールの理性を失わせていく。
「・・・ふ~っ。」
「はあ・・・ん・・・っ。」
アイリスディーナがテオドールの耳元に甘い吐息を吹きかけると、テオドールは身体をビクンビクンさせたのだった・・・。
「そしてリィズはお前の妹だ。リィズはお前の妹だ。リィズはお前の妹だ。リィズはお前の妹だ。リィズはお前の妹だ。リィズはお前の妹だ。リィズはお前の妹だ。リィズはお前の妹だ。リィズはお前の妹だ。リィズはお前の妹だ。リィズはお前の妹だ。はい復唱。」
「・・・い、妹・・・リィズは俺の・・・妹・・・」
「そうだ。断じてお前の恋人などではない。妹だ。」
勝ち誇った笑顔でテオドールの耳元で呟き続けるアイリスディーナの姿に、リィズが全身から漆黒のオーラを放ちながら立ち上がったのだった。
「ちょっとアイリス!!お兄ちゃんに一体何やってんのよ!?」
「リィズさん駄目です~!!告白中は一切の手出し口出しはしないって、皆で約束したじゃないですか~!!」
「いや告白というか、最早告白ですらないわあああああああああああああああっ(激怒)!!」
アイリスディーナに飛びかかろうとするリィズを、必死に背後から押さえ込むカティア。
しまった、その手があったのか・・・!!キルケもアネットも、そして部屋の外に追い出されたベアトリクスもファムも、とても悔しそうな表情でその様子を見つめている。
どれだけ自分たちがテオドールへの愛と想いを込めた告白をしようとも、肝心のテオドールの脳内に強い暗示を刷り込まれてしまっては、何の意味も無いのだ。
アイリスディーナは今日の朝に集合した際、皆との打ち合わせの最中において、自分が一番最後にテオドールに愛の告白をすると率先して名乗り出たのだが、初めからこれが目的だったのだ。
テオドールへの暗示が解けてしまう前に、確実にテオドールに自分が好きだと言わせる為に。
言葉は言霊・・・実際にテオドールに「アイリスが好きだ」と口にさせる事さえ出来てしまえば、それはとても重い意味を持つ物になるのだから。
そうこうしている内に、制限時間の1分ギリギリまでテオドールの耳元で呟き続けたアイリスディーナは、そっ・・・とテオドールと唇を重ねたのだった。
そしてすぐにテオドールから離れて、物凄い笑顔でリィズの隣に座る。
「さて、これで私のテオドールへの洗脳・・・じゃなかった、愛の告白が終わったわけだが。」
「洗脳って言ったよね!?今アンタお兄ちゃんへの洗脳って言ったよね(激怒)!?」
「ではテオドール。今この場で迅速にすぐに決めてくれ。私たちの誰を恋人にするのかをな。」
目をグルグルさせながら、混濁とした意識の中で、テオドールの脳内で
『俺はアイリスの未来の夫』
『アイリスは俺の未来の妻』
『リィズは俺の妹』
という言葉が、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も繰り返し再生され続けている。
アイリスディーナはボイスレコーダーをテオドールに向けながら、とても勝ち誇った笑顔でテオドールを見つめている。
この恋の争奪戦の勝者は自分だと・・・そう信じて疑わないとばかりに。
「・・・お、俺が好きなのは・・・」
「俺が好きなのは・・・?誰なのだ?テオドール。ん~~~~~~?」
俺はアイリスの未来の夫。アイリスは俺の未来の妻。リィズは俺の妹。
俺はアイリスの未来の夫。アイリスは俺の未来の妻。リィズは俺の妹。
俺はアイリスの未来の夫。アイリスは俺の未来の妻。リィズは俺の妹。
俺はアイリスの未来の夫。アイリスは俺の未来の妻。リィズは俺の妹。
俺は・・・
「・・・ア・・・アイ・・・」
(・・・お兄ちゃん・・・。)
「・・・!?」
ふと、混濁した意識の中で、テオドールの頭の中にリィズの可愛らしい笑顔が浮かんだ。
ホーエンシュタイン家に引き取られた幼少時から、両親を事故で失い寂しい想いをしてきた自分の傍にずっといてくれて、ずっと自分の事を慕ってくれていた、義理の妹の姿が。
とても不安そうな表情で自分を見つめるリィズの姿を見たテオドールは、アイリスディーナの洗脳を完全に打ち破ったのだった。
そうだ・・・俺が好きなのは・・・俺がこれまでずっと好きだったのは・・・!!
「・・・違う・・・!!」
「な・・・!?」
「俺が好きなのは!!」
驚愕の表情を見せるアイリスディーナを無視し、テオドールはリィズの身体をぎゅっと抱き締め、はっきりと告げたのだった。
「俺が好きなのはリィズ!!お前だ!!」
「・・・っ!?」
リィズは一瞬、テオドールが何を言っているのか理解出来なかった。
だが自分を抱き締めるテオドールの身体の温もり、そして力強い腕の感触が、すぐにテオドールの言葉の意味を理解させた。
とても真剣な表情で、テオドールはリィズの身体をぎゅっと抱き締め続けている。
「俺はずっと昔から、お前の事が好きだった・・・だけどお前は義理とは言え俺の妹だから・・・お前を好きになるのはまずいんじゃないかって、ずっとお前への気持ちを押し込めていたんだ。」
「・・・お兄ちゃん・・・。」
「お前が俺の恋人になる事で、お前が周囲から白い目で見られるんじゃないかって・・・お前が学校でいじめられるんじゃないかって、ずっとそう思ってた・・・だけど違うだろ・・・そうじゃないだろ・・・!!」
リィズを酷い目に遭わせたくないから、自分が身を引かなければ・・・そんな物は言い訳に過ぎないのだ。
テオドールはとても真剣な瞳で、涙目になったリィズを見つめる。
そして今にも泣きそうなリィズの頬を、そっ・・・と右手で撫でてあげたのだった。
今にも不安で押し潰されそうなリィズを、安心させる為に。
「もしお前に酷い目に遭わせる奴らがいるのなら・・・俺がお前を守る!!」
「お兄ちゃん・・・!!」
「だって俺は・・・俺はお前の・・・お兄ちゃんなんだから!!」
「お兄ちゃああああああああああああああああああん!!」
互いの唇を貪り合い、互いの身体を抱き締め合うテオドールとリィズ。
キスは1人3秒まで・・・だが互いに兄妹の縛りを解き放ち、恋人同士となった今となっては、そのルールは最早何の意味も成していなかった。
長い長いキスの後、互いに潤んだ瞳で、互いを見つめ合うテオドールとリィズ。
その様子をアイリスディーナが、信じられないといった表情で見つめていた。
「馬鹿な・・・私がお前に施した洗脳を、こうもあっさりと打ち破るとは・・・!!」
「ああそうさ、俺は危うくお前の言葉に飲み込まれる寸前だった・・・だが俺のリィズへの想いが、リィズの俺への想いが、俺を正気に戻してくれたんだ・・・!!」
「くっ・・・それ程までの強い絆だとでも言うのか・・・!!」
2人の想いの強さをこうもはっきりと見せ付けられてしまったのでは、さすがのアイリスディーナも何も言い返す事は出来なかった。
誰がテオドールと恋人同士になっても恨みっこ無し・・・それを言い出したのは他でもない、アイリスディーナ自身なのだから。
いや、アイリスディーナだけではない・・・カティアもアネットもキルケもファムもベアトリクスも。
誰もがテオドールとリィズの事を、複雑な表情で見つめていた。
「お兄ちゃん、大好き・・・世界中の誰よりも、お兄ちゃんの事が大好き!!」
あおーーーーーーーーーん(泣)!!
家の外でアスクマンが、何やら変な叫び声を上げていたのだった・・・。
5.何はともあれ日はまた昇る。
かくして、テオドールとリィズは無事に恋人同士となった。
その事をテオドールとリィズは朝食を食べながら、すぐに両親に報告した。
突然の出来事にさすがに驚きを隠せなかった両親だったのだが、それでも2人なら大歓迎だと温かく祝福されたのだった。
ただし少なくとも2人が高校を卒業し、テオドールが就職するまでは、絶対に一線を超えない事・・・それだけは両親から強く念を押され、テオドールもリィズも快く了承したのだった。
まだ高校生の内にリィズを妊娠させるような事態になってしまったら、それこそテオドールもリィズも、周囲から侮蔑の目で見られてしまいかねない・・・それはテオドールもリィズも重々承知しているのだから。
そして噂が流れるのは本当に早い物で、2人が恋人同士になったという事実は、すぐに学校中に伝わる羽目になってしまった。
その事でリィズがいじめられるんじゃないかと正直不安だったテオドールだったのだが、意外にもそんな事は無かったようで、リィズはクラスメイトたちからすんなりと祝福されたのだった。
またバイト先のファミレスでも、テオドールとリィズはすぐにユルゲンに報告し・・・ユルゲンは正直残念だ、君には妹と添い遂げて欲しかったと苦笑いしながらも、それでも妹の分まで2人で幸せになってくれと祝福されたのだった。
まさに名実共に、テオドールとリィズは恋人同士となった・・・はずなのだが・・・。
「・・・な・・・何で・・・!?」
その翌日の朝・・・テオドールを起こしに来たリィズが目撃したのは・・・これまでと同様にテオドールに添い寝をするアイリスディーナだった。
アイリスディーナは勝ち誇った笑顔で、威風堂々とリィズを見据えている。
「やあ、お早うリィズ。」
「お早うじゃないわよ!!何でアンタは未だにお兄ちゃんに添い寝してるのよおっ!?」
全身から漆黒のオーラを放ちながら、リィズは無理矢理アイリスディーナを引き離そうとする。
だがアイリスディーナもまた全身から白銀のオーラを放ち、必死にテオドールにしがみついてリィズに抵抗しようとする。
「あのねえアイリス、お兄ちゃんは私と恋人同士になったのよ!?」
「ああそうだ。誠に遺憾ながら、テオドールが将来の妻として選んだのは私ではなくお前だ。」
「だったら何でアンタはお兄ちゃんにちょっかいを出してくるのよぉっ!?」
リィズの質問に、アイリスディーナは威風堂々と、はっきりと宣言したのだった。
「私はテオドールの妻になるのは諦めた。だから私はテオドールの愛人になる事にしたのだ。」
「・・・あ・・・い・・・じ・・・ん・・・!?愛人~~~~~~~~~~(激怒)!?」
「だからお前はお前で、勝手にテオドールと仲睦ましくするがいい。私は私で勝手にテオドールと愛を深めさせて貰うからな。」
「はあああああああああああああああああああああああああああ(激怒)!?」
何だよ、こんな朝早くから、うるさいなぁ・・・耳元でリィズとアイリスディーナに騒がれて目を覚ましたテオドールだったのだが・・・目の前で何が起こっているのか一瞬理解出来なかった。
だが数秒後・・・自分の顔に押し付けられているアイリスディーナの豊満な胸の感触、そして物凄い形相で自分を睨みつけるリィズの姿に、すぐに今の状況を理解したのだった。
「・・・あっれええええええええええええええええええええええ(泣)!?」
「やあ、お早う我が愛人よ。」
「あ・・・い・・・じ・・・ん・・・!?愛人~~~~~~~~~~~~~(泣)!?」
「そういう訳だからテオドール。これからもよろしく頼むぞ。はははははは。」
「はははははは、じゃねえだろおおおおおおおおおおおおおおお(泣)!!」
アイリスディーナを振りほどいて慌てて起き上がったテオドールだったのだが、そこへテオドールの携帯電話にカティアからの着信が届いたのだった。
「・・・もしもし、こんな朝早くから一体どうしたんだよ?カティア。」
『テオドールさん、すぐにテレビを付けて下さい!!』
「テレビを付けろってお前、一体何を・・・」
『いいから早く!!大変な事になってるんですよ!!』
「・・・大変な事・・・?お前一体何を・・・。」
怪訝に思いながらテオドールが部屋のテレビを付けると・・・そこに映されていたのはドイツの首相の緊急記者会見の生放送だった。
そして何故か青ざめた表情の首相の隣には、何故か妖艶な笑みを浮かべるベアトリクスの姿が。
テレビに表示されたテロップに書かれていた内容・・・それは・・・。
『首相、一夫多妻制度の緊急成立を発表。』
「い・・・いっぷ・・・たさい・・・!?きんきゅう・・・!?は・・・あ・・・え・・・!?」
唖然とした表情のテオドールを尻目に、ドイツの首相が何故か怯えた表情で記者会見に望んでいたのだった・・・。
『・・・そ、そういう訳でありまして、昨日の夜に緊急で行った閣僚会議の結果・・・我ら統一ドイツにおいて、本日付けで一夫多妻制度を成立させる事と相成りました・・・。』
『首相、今回の一夫多妻制度という、極めて異例となる法案を成立させた事について、首相の真意をお聞かせ下さい!!』
『い、一夫多妻自体は、世界中で見れば特に異例という訳ではありません・・・皆さん意外にお思いでしょうが、じ、実は日本でも江戸時代までは側室制度という物がありまして・・・』
と言うかこの首相は、一体何をそんなに怯えているのだろう。
と言うかベアトリクス先輩は、こんな所で一体何をやっているのだろう。
と言うか一夫多妻制度って一体何。
色々とツッコミを入れたくなる衝動を必死に抑え、テオドールはテレビの緊急特番をじっ・・・と見つめていたのだった。
アイリスディーナもリィズも口をポカーンとさせながら、テオドールの奪い合いを一旦止めて、テレビの画面を眺めていたのだが・・・。
『今回の一夫多妻制度の導入によって、1人の男性に複数の女性が集中し、結果として結婚したくても出来ない若者が増えるのではないかと私は危惧しております。その点についてはどうお考えなのでしょうか?』
『そ、それに関しましては・・・』
なんかベアトリクスが妖艶な笑顔で、首相の耳元でブツブツ呟いていた。
『ほ、本来恋愛という物は、もっと自由であるべきであり・・・』
『私は首相に聞いているのです!!と言うか彼女は一体何なのですか!?』
『い、一夫多妻制度以外の質問に関しては、申し訳ありませんがノーコメントで・・・。』
『では一夫多妻制度の質問に戻らせて頂きますが、首相は自由な恋愛を掲げてはいますが、やはり1人の男性が複数の女性と同時に結婚するというのは、やはり歪な形だとしか・・・!!』
なんかもう、何からツッコミを入れたらいいのか、全然意味が分からない。
唖然とした表情のテオドールに、カティアがさらにとんでもない事を告げたのだった。
『そういう訳なので、私は今からテオドールさんの愛人になります!!』
「・・・はあああああああああああああああああああああ!?」
『正妻の座はリィズさんに譲りますが、それでも私は愛人としてテオドールさんの傍にいますから!!それなら文句無いですよね!?』
「おまおまおまおまおま、お前いきなり何言って・・・!?」
『いやだって、たった今法律で認められたじゃないですか!!そういう訳なんで今からテオドールさんの家に挨拶に伺いますねっ!!それではっ!!』
「ちょ・・・!?」
ツー、ツー、ツー・・・。
ピロリロリン、ピロリロリン♪
カティアからの通話が一方的に切れた後、さらにキルケからの着信が鳴り響いた。
「も・・・もしもし・・・」
『・・・あ、やっと繋がった。テオドール君、テレビ見た?』
「・・・ま、まさか・・・!!」
『そのまさかよ。私、テオドール君の愛人になる事にしたから。』
「お前もかよおおおおおおおおおおおお(泣)!?」
『今から貴方の家に挨拶に行かせて貰うわ。それじゃあね。』
ツー、ツー、ツー・・・。
ピロリロリン、ピロリロリン♪
キルケからの通話が一方的に切れた後、さらにアネットからの着信が鳴り響いた。
「・・・お前も俺の愛人になるって言うのかよ(泣)!?」
『うわっ、びっくりした!!いきなり大声出さないでよ!!』
「わ、悪い・・・じゃなくて(泣)!!」
『まあ理解してるなら話は早いよ。そういう訳だから、今からアンタの家まで挨拶に行くわ。それじゃ。』
ツー、ツー、ツー・・・。
ガチャッ。
アネットからの着信が一方的に切れた後、さらにファムがいきなり部屋に入ってきた。
「うわあああああああああ!!うわああああああああああああああああああああ(泣)!!」
「テオドール君~、私、貴方の愛人になる事にしたわ~!!」
「アンタは一体何なんだああああああああああああああああ(泣)!?」
ファムに抱き締められたテオドールに、さらにテレビを通してベアトリクスが呼びかけてきた。
『・・・そういう訳だからテオドール・・・私は貴方の愛人になる事にしたわ。』
「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい(泣)!!」
『これで後腐れなく貴方の傍にいられるという訳ね・・・ふふふ・・・あははははははは!!』
なんかもう何が何だか、全然意味が分からないテオドール。
そんなテオドールを逃がすまいと、アイリスディーナもファムと競うようにテオドールを抱き締めた。
2人の女子に左右から抱き締められて、身動きが出来ないテオドール。
「成る程、これで何も気にする事無く、堂々とお前の愛人になれるという訳だな。」
「ぎゃあああああああああああああああああああああああ(泣)!!」
「・・・お~に~い~ちゃ~あ~ん(激怒)?」
「リィズーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(泣)!!」
リィズが放った漆黒のオーラが、部屋中を激しく暴れ回ったのだった・・・。
「これじゃあ今までと何も変わらないじゃないのよおおおおおおおおおっ!!お兄ちゃんの馬鹿あああああああああああああっ(激怒)!!」
あおーーーーーーーーーーん(泣)!!
家の外でアスクマンの叫びが聞こえたような気がしたのだった・・・。
最終更新:2016年07月17日 08:25