はじめに
DRAFIXです。本記事ではスマブラSPECIALのシステム変更点について私が特に気になったものを5つ取り上げ、仕様の解釈やゲームバランスに与える影響を考察します。
私は検証勢なので、ゲームプレイの実感というよりも
理屈で考えるとどうなるか
を重視した内容になります。
特にここ2週間は検証がメインだったため、多少エアプが入っているかもしれません。ご容赦ください。
参考までに、新作が出てからの私のプレイ状況を記しておきます。
- 起動時間:75時間
- 総対戦回数:600回(うちオンライン350回)
- スピリッツ、勝ち上がり乱闘:ノータッチ
対戦の実力は"ガチ勢"としての中級者程度です(多分)。
前作でそこそこ使ったファイター(10体前後)はすんなりVIP部屋に入れるが、それ以外のキャラはボーダーの下を彷徨うくらい。
嘘です。シュルクだけ100戦以上かかりました。
それではさっそく参りましょう。
攻撃を受けたファイターの向き
攻撃を受けた時、ファイターの向きが変わらなくなった。
SPの不可解な調整個人的No.1。
forまでは基本的に相手の方を向いて、背中向きにふっとんでいたのが、今作では攻撃される前の向きを保ったままふっとぶ。
この仕様は初心者に全く優しくない。
ステージ外に出されたときに今までは必ずステージの方向を向いていたのが、外を向いた状態でふっとぶことが起こりうるためだ。
マリオやキャプテン・ファルコンなど、正面に復帰技が出るファイターはまさしく致命傷となりうる。
最も手軽な向き反転方法である横Bは復帰に使えないファイターも多いし、初心者には指が忙しい。
反転上Bが出せれば良い話だが、果たして自在に使いこなせるユーザーがどれだけいるだろうか。
「ファイターの向いている方向に戻ればいい」という視覚的な直感にも合致していた今までの仕様は、始めたての人にも優しいシステムだったはずだ。
どうして今更変えることになったのかは皆目見当がつかない。
復帰面の問題を置いておくと、裏を取ることの重要性が増したと言えるだろう。
適当な弱・空N暴れが通りにくくなり、着地後の展開も攻撃側に有利になった。
自分と相手の向きが固定されないのはスマブラらしいと言えばそうなのかもしれない。
特徴の一つを奪われた、悲しみのバックスラッシュ。前作では他にネスの後投げなどでも"正面向きに"ふっとんでいた。
ヒットストップの長い弱攻撃
地上の連続ワザは軒並みヒットストップが長くなった。最たる例が弱攻撃。
おそらくだが、調整班は
弱1段当てからの連携を快く思っていなかった
のだろう。
forでは弱1→つかみ のような連携が横行していたが、弱攻撃の硬直時間が短くなったことで、最速の弱派生以外はほとんどつながる余地がなくなった。
解析値はまだ出ていないが、おそらく
弱攻撃のほとんどがKBの弱い361°ワザに変更されている
と思われる。
一方で硬直が短いと弱攻撃を引っかけたときに派生するかどうかの判断がしにくくなるため、
確認の時間を設ける意味でヒットストップを長くしている
のだと思う。
ヒットストップが長ければ受ける側にも状況を確認してインチキ臭い連携から抜ける余裕が生まれるため、なおのこと都合がよい。
しかし、ヒットストップが長いために強い攻撃を当てている感覚が生まれてしまうのはどうにもいただけない。
弱攻撃はしょせん"弱"攻撃だ。調整班も苦渋の決断だったのではないか。
2段目を出させる気のない弱1(for)。最初はこんなんじゃなかったんだけど。
重量演出の削除
重量級ファイターはジャンプ踏切フレームが長い傾向にあったが、今作では全ファイター3Fに統一された。
およそ半数の投げが該当していた「重量依存投げ」の仕様が削除され、投げのフレーム数が相手キャラによらなくなった。
ジャンプ踏切フレームは、ジャンプの前にファイターが踏ん張るモーションの長さ。
重量依存投げは、相手ファイターが重いほど投げモーションが遅くなる投げのこと。
いずれも
ファイターの重量感を演出する仕様だった
が、今作では廃止された。
重量級ファイターにとって前者は有利に、後者は不利に働く仕様変更である。
手が込んでいて個人的には両方とも好きな仕様だったのだが、操作感の画一化は色々なファイターを気軽に触れるようにしてくれるためこれはこれで嬉しい。
前作のジャンプ踏切フレームは標準5F。1F速い4F組は、以下の13キャラだった。
シーク、フォックス、ベヨネッタ、クラウド、ゼロサム、ピカチュウ、ロックマン、メタナイト、ゲッコウガ、ダックハント、ディディー、カービィ、サムス
…うわあ。強キャラの多いこと。やはり速いは正義か。
こういう側面を考えると、
バランス調整の意味でも踏切フレームを統一した
のは英断だろう。
ちなみに、ストリートファイター5ではほぼ全キャラのジャンプ移行が3Fになったかと思いきや、
わずか1ヵ月半で垂直・バックジャンプ移行が4Fに変更されたという経歴がある(参考:
考察記事
)。
こんな風にはなってほしくないが…。
重量依存投げは、
前作の詳細な検証・解析の末にようやく全貌が明らかになった
仕様であった。
こうもあっさり消されてしまうとちょっぴり無力感を感じる。
いや、楽になるからいいんですけど。
全体フレーム増加でコンボが入りづらくなるという数少ない長所が重量級からなくなったのは少々痛いが、投げコンボ自体が減少傾向にあるので意外と影響はないと思う。
ヨッシー、プリン、ファルコ、ワリオといった空中移動に命を懸けるファイターは踏切フレームが6Fでした。
そしてルフレ、剣術Miiは何故か7F。
ジャストシールド
ジャストシールドの判定が、シールドを解除した瞬間に変更された。
SPきってのびっくり調整。
格闘ゲーム界を見渡してみても、ガードを解除するときにボーナスのつくゲームは他に類を見ない。
「今までは大きなリスクもなく使えていましたが、これからはちゃんと使う必要があります」とは公式の言葉。
非常に挑戦的なシステム
だと言っていいだろう。
SPのジャスガは、「シールド解除→通常攻撃」という反撃の取り方をより強固にするシステムである。
せっかくジャスガしたのに反撃が取れない!という人は、とりあえず今までのガード解除反撃の感覚で運用するようにしてみるといいだろう。
演出から見て、今作のジャストシールドはストリートファイターⅢの
ブロッキング
に影響を受けているのは確実だ。
ストⅢにおけるブロッキングの仕様は以下の通りである。
- 攻撃を受ける直前にレバーを前or下に入力すると、それぞれ上/中段、下段を取れるブロッキングが発生。
- 受付時間は、地対地で
10F。
- ただしレバーを入れっぱなしにしていると6Fになる。
- ブロッキングが成立すると両者一時停止ののち、受けた側はガード硬直が無くなりすぐに行動できる。
削りダメージを受けず、SAゲージも増加する。
- 一度ブロッキングを入力すると、地上ガードでは23Fの間ブロッキングの再入力ができなくなる。
次に今作のシールドまわりのフレームデータを以下に示そう。
- シールドの発生は1F。
- シールドを一度展開すると、
3Fの間は解除することができない。
- ジャストシールド判定は、
シールド解除の1-5F目。
- シールド解除硬直は
11F。
(ジャストシールド判定を含む)
まずSPジャスガの大きな特長として、
失敗時のリスクの大きさ
が挙げられる。
前作まではジャスガに失敗しても、継続してシールドで防御することができた。
ブロッキングは、一定時間ブロッキング不能になるだけで済む。
一瞬の前歩き/しゃがみにブロッキング判定がついているだけなので、ガードなり攻撃なりすぐに他の行動を取ることが可能である。
しかしSPジャスガは、シールド解除硬直により
失敗した場合は無防備な時間が発生し、防ぐはずだった相手の攻撃を食らう
。
ミスした場合のリスクがあまりにも大きく、相当に自信がある状況以外で使うのは危険だ。
それでありながら、ブロッキングに比べて
受付時間はたったの半分。
ゲームスピードによって狙いやすさは違うとはいえ、リスクも込みでかなりシビアなのは間違いない。
スマブラはもともとジャスガ受付が短いゲームだからという思想が背景に見えるが、成功確率の面でもちょっと割に合わない。
さらにSPジャスガを高難度たらしめているのが、
強制展開時間の存在
である。
最速ジャスガ狙いでシールドボタンを一瞬押して離す場合、ファイターの状態は次のように変化する。
展開時間3F→ジャスガ判定5F→解除隙6F
この通り、
ジャスガの最速発生は4F
なのである。
例えば不意に飛び道具が飛んできてジャスガしようと思った場合、今までは受け止める瞬間にシールドボタンを押せばよかったのが、SPでは発生4Fのワザを使う感覚でいなければならない。
"ジャスト"シールドとは名ばかりで、感覚的な操作が難しくなっているというわけだ。
飛び道具なり差し込みなりにジャスガでリスクを付けるためには、これまで以上に相手と間合いを取って確認できる時間を確保しなければならない。
差し込み側が有利になるのはゲームのテンポアップには望ましいが、飛び道具が強いのは意図のうちなのだろうか。
かなりこき下ろしてしまったが、ゲームをより硬派にしてくれる面も実はある。
格ゲーではワザを空振った後隙に攻撃を受けるとカウンターヒットとなり、受けるダメージや硬直が大きくなってしまう。
しかしスマブラでは、後隙にペナルティはない。
そしてシールドを入れ込んでおけば、1F遅れの反撃ミスに対してはジャスガを取れて逆に有利になる。
つまるところ、for以前のスマブラは
適当にワザを振ってシールドを入れ込む
というムーブが比較的強かったのだ。
SPジャスガの仕様では1-3F遅れの反撃を取ることはできないので、雑な牽制が少し弱くなる。
結論として、
とにかくSPのジャスガは難しい。
だが、これは決して悪い点ばかりではない。
攻める側が有利な設計は、ゲームスピード高速化という今作のコンセプトにマッチしている。
大きな仕様変更という名のジャストシールド弱体化により、攻めが安定して強くなるのは望ましいことだ。
それに、今は仮にも発売直後である。
使いこなしている人はまだ少ないが、猛者たちはいずれ順応しスト3ばりの神業ブロッキングを見せてくれるだろう。
ただし、私は勝手ながら
何かしらのテコ入れが来るのではないかと予想している。
受付5Fはリスクのわりにあまりにもシビアだ。
解除硬直11Fや強制展開3Fの方をいじるかもしれないが、とにかくもっと成功しやすくなる方向に舵を切ってくると思う。
ただ、少なくとも1年はこのままで様子を見てくるだろう。
個人的には
くらいまで攻めた調整をしてもいいと考えるが、いかがか。
あまりにも有名な"背水の逆転劇"。
ブロッキングの「よく分からないけどなんかすごい」演出は、プレイヤー以外の観客も盛り上がれると評判。
ジャンプ行動
小ジャンプから出した攻撃に0.85倍のダメージ補正が乗るようになった。
「いつでも小ジャンプ攻撃」の実装。ジャンプ踏切中に攻撃を入力すると、最速小ジャンプ攻撃が出るようになった。
大ジャンプは初速が速くなり、素早く頂点にたどり着くようになった。
小ジャンプダメージ補正は、
小ジャンプから出した空中攻撃のダメージが少し減少する
というもの。
これを初めて知ったとき、私はただただ唸るほかなかった。
このゲームでは移動制御の点から見て 空中攻撃>地上攻撃 なのは明らかである。
地対空の構図で相対的に地上側を強くするにはどうすればいいか…と頭を10年単位で悩ませただろう結果がこれだ。
とにかく頭が良い。
いつでも小ジャンプ攻撃は、ジャンプ踏切短縮で
小ジャンプの入力が難しくなった分の救済措置
である。
地上攻撃の出始め2Fをジャンプでキャンセルできる仕様のおかげで、
SJ最速攻撃に関しては
Aボタンとジャンプボタンのずれは合わせて6Fまで許される。
小ジャンプを難しく感じる脱初心者レベルのプレイヤーにはとても有難いはずだ。
しかし、小ジャンプから降り空中攻撃を振るのは前作よりも難しくなった。
また大ジャンプ最速攻撃は、この仕様のせいで先行入力を利用できなくなった。
とりわけ大ジャンプ攻撃に関してはちょっと残念というのが個人的な感想。
どうやったところで"いつでも小ジャンプ攻撃"との共存は不可能なのだが、どうにも諦めきれない。
なんとかならないものか…。
よりにもよってマリオの空前で実演しなくても…。
まとめ
総じて、直感的に理解しづらいゲームになった。
ここで取り上げたヒットストップの長い弱や小ジャンプ補正に加えて、ガード硬直倍率が攻撃種類で変化したり、ヒットストップとガードストップに異なる式が使われるようになったところなど、状況による仕様の細分化が進んでいるためにこれらを意識して動かないといけない。
しかし地上・空中ともに移動は素早くなっており、考える時間は短いというジレンマ。
いつでも小ジャンプ攻撃やステップが簡単なおかげで、ゼロからスタートした人がそれっぽい動きをできるようになるまでは早いと思う。
一方で大ジャンプ攻撃やジャストシールドなど、中級者以上が極めるべきテクニックの入力難度は増している。
キャラ対策の大変さも考えると、for以上に成熟に時間のかかるゲームになるのではないか。
おわりに
今はforの思い出補正が濃く、批評気味になってしまったのは反省しています。
繰り返しますが今は発売直後。テンポアップされた1on1は、競技シーンとしてもfor以上に盛り上がっていくことでしょう。
対戦と関係ないので書きませんでしたが、
とにかく今作のトレモは素晴らしい。
ZLで1コマ送りは「これホントにくれるの?」と目を疑った神の機能です。スピードx1の隣なのもホントに嬉しい。
L+R+Aの位置リセットとか実装したヤツ誰だよ。一生信奉しますわ。
ほかにも無敵表示、1PとCPのダメージの別設定、アップがどアップすぎたカメラの修正などなど。
テキストエディターをメモ帳からサクラエディタに変えた時くらいの革命がここにあります。
しかし!ステージ作りを削除したのはいただけない!!
検証作業に支障が出る(出ている)ので、DLCなどでの追加をお願いしたいところです。
記事の執筆にあたって、格闘ゲームのシステムに詳しい友人に色々と話を聞きました。
この場で感謝申し上げます。
検証が一段落したらプレイヤーとしても楽しみたいなと思ってます。
私はいつ休めるんでしょうね、と言うほど忙しくはないんですけど、まだまだ調べることはいっぱいあります。
今後ともどうぞよろしくお願いします。
文:DRAFIX
コメント
最終更新:2018年12月21日 02:00