撃墜に必要なふっとばし力

このページでは,撃墜に必要なKBの一覧と,それを用いた計算例について記述する.
なお,「内部のふっとび計算式や,そのパラメータを感覚として理解すること」がこのページの目的であり,
実際の対戦に役立つような情報はほとんど書かれていない.

ふっとばし力 の内容を前提とするので,予め読んでおくこと.

撃墜に必要なKBの一覧

  • このページでは「撃墜」は「致命エフェクトの発生」として定義している.
  • どのデータも相手はマリオで測定
  • 空欄は,別方向に撃墜してしまうため測定が不可能なものを示す

横方向への撃墜
角度 終点 戦場
崖端 中央 崖端 中央
90
80
70
60 201.8 201.8
50 177.9 217.7 177.9 217.7
40 164.1 200.0 164.1 200.0
30 153.3 187.9 153.3 187.9
20 147.6 180.5 147.6 180.5
10 143.9 176.1 143.9 176.1

上方向への撃墜
角度 終点 戦場
メイン台 中央台 左右台 メイン台
90 192.5 181.6 192.5 202.4
80 199.1 183.6 193.9 204.2
70 205.3 188.9 200.2 210.4
60 208.4 192.4 202.9 213.4
50 209.5 220.8 232.0
40
30
20
10



計算例

上のデータを用いた計算例として,「強い後ろ投げ」として名高いネスとガオガエンの後ろ投げを比較してみる.
計算の際の条件は以下の通り

  • 相手はマリオ(重量98)
  • ほかほか補正,OP相殺は考慮しない (トレーニングモードでの「ワンパターン相殺: OFF」に対応)
  • 終点の崖端と中央からの撃墜

計算に必要な技のデータを次の表にまとめた.
( Smash Ultimate Data Viewer を参照)

攻撃側 ダメージ KBG BKB 角度 備考
ネス 11 130 15 135 計算上は45度として扱えば良い
ガオガエン 0 340 57 47 投げの前に14%の打撃

以上の条件とデータの下で計算してみよう.
技のふっとばし角度がそれぞれ45(180-135)度,47度で上の表には載っていないので,
直線的(一次関数的)に近似して撃墜に必要なKBを求める.

  • ネス後ろ投げ(45度)
 崖端: (164.1 + 177.9) / 2 = 171.0
 中央: (200.0 + 217.7) / 2 = 208.85
  • ガオガエン後ろ投げ(47度)
 崖端: (164.1*3 + 177.9*7) / 10 = 173.76
 中央: (200.0*3 + 217.7*7) / 10 = 212.39

ふっとばし力(KB)の計算式は以下の式であった.
KB = [{(0.1 + ダメージ * 0.05) * 敵%/W' * 1.4 + 18} * KBG * 0.01 + BKB] * 補正値
ただし W' = (100 + 敵重量) / 200
これを変形して,「KB」から「敵%」を計算する式にすると
敵% = {KB/補正値 - (0.18*KBG + BKB)} * 100 * W' / {1.4 * (0.1 + ダメージ * 0.05) * KBG}
ただし,今の状況では
補正値 = 1.0 (ほかほか補正なし)
W' = (100 + 98) / 200 = 0.99 (対マリオ)
である.

例えばネス後ろ投げで終点崖端から撃墜する際は,
KB=171.0, ダメージ=11, KBG=130, BKB=15 となるので,
敵% = {171.0 - (0.18*130 + 15)} * 100 * 0.99 / {1.4 * (0.1 + 11 * 0.05) * 130} = 111.0
これは「攻撃ヒット後の敵%」なので,プレイヤーが通常用いる「撃墜%」すなわち「攻撃ヒット前の敵%」は
撃墜% = 111.0 - 11 = 100.0
となる.

ガオガエン後ろ投げで終点崖端から撃墜する際は,
KB=173.76, ダメージ=0, KBG=340, BKB=57 となるので,
敵% = {173.76 - (0.18*340 + 57)} * 100 * 0.99 / {1.4 * (0.1 + 0 * 0.05) * 340} = 115.6
ガオガエン後ろ投げの投げ自体の「ダメージ」は0だが,投げる前の打撃部分に14のダメージが入ることに注意すると,「撃墜%」は
撃墜% = 115.6 - 14 = 101.6
となる.

終点中央についても同様に計算すると,以下の表のようになる.

攻撃側 崖端 中央
ネス 100.0 131.6
ガオガエン 101.6 181.9

実際にトレーニングモードで撃墜%を測定してみると,概ね上の値と一致していることが確認できる.
なお,掴んでから投げるまでに相手が移動するという投げの性質上,ふっとび開始位置を調整することは困難である.
そのため,厳密な実測値を載せることはできない.

撃シュルク + ほかほか

最後に次のような極端な状況を考える

  • 相手は撃状態のシュルク (重量97,撃は補正値1.2倍)
  • 攻撃側(ネス,ガオガエン)は,ほかほか補正最大 (補正値1.1倍)
  • 終点崖端での撃墜

つまり,上の計算式における「補正値」が 1.1*1.2 (= 1.32) となる.
この場合にも同様に計算して,前のものと合わせて表にまとめると以下のようになる.

攻撃側 崖端 中央
ネス 64.9 100.0 131.6
ガオガエン 13.8 101.6 181.9

この計算結果も,トレーニングモードでの実測値と概ね一致している.

そしてガオガエンの後ろ投げの撃墜%が「13.8%」と驚異的な値となった.
この現象について,計算式の上から考察してみよう.

まず,KB計算式を少し変形して以下の形にする.
KB = {1.4 * (0.1 + ダメージ * 0.05) * KBG * 敵% / (100 * W') + (0.18 * KBG + BKB)} * 補正値
このままでは見辛いので,以下のように式を分解して整理しよう.
A = 1.4 * (0.1 + ダメージ * 0.05) * KBG / (100 * W')
B = 0.18 * KBG + BKB
無補正KB = A * 敵% + B
KB = 無補正KB * 補正値

以下では「無補正KB」を基準として考察する.
すなわち,撃+ほかほか最大の場合には
無補正KB = KB / (1.1 * 1.2)
を「撃墜に必要なふっとばし」として考える.
(これは,撃墜ラインまでの距離を縮めることと同等であると考えられる)

それぞれの技で撃墜に必要な「無補正KB」は,

  • ネス後ろ投げ 171.0 / 1.32 = 129.5
  • ガオガエン後ろ投げ 173.76 / 1.32 = 131.6

となる.
ここでそれぞれの技のデータを代入してA, Bを計算すると,以下の表が得られる

攻撃側 A B 無補正KB
ネス 1.195 38.4 1.195 * (撃墜% + 11) + 38.4
ガオガエン 0.481 118.2 0.481 * (撃墜% + 14) + 118.2

この式を見ると,以下のことが分かる

  • ネスの後ろ投げは A が大きく,B が小さい.つまり,低%のうちはあまりふっとばさないが,高%でのふっとばしの伸びが強い.
  • ガオガエンの後ろ投げは A は小さいが,B が非常に大きい.つまり,低%のうちから強くふっとばすが,高%になってもそれほど伸びない.

特にガオガエンが「撃シュルクにほかほか最大で後ろ投げ」をする場合に必要な「無補正KB」は 131.6 であり,B = 118.2 でその9割近くを達成している.
そのため,10%台という超低%でも撃墜できるのである.

式で見ても分かりづらいかもしれないので,グラフにしておいた.
なお,撃墜に必要な「無補正KB」は(角度の違いから)2つの技で異なるが,
その差はそれほど大きくないので下のグラフでは両者で共通して平均値を採用した.

最終更新:2021年07月10日 10:51