『第6試合:遊園地その1・試合後のおまけ』



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妹とのあれこれを終えた俺・矢塚 一夜とその弟・白夜は、炎天下の中ジェットコースターの順番待ち行列に並んでいた。

俺たちの前には無数のババアと海坊主の群れが行儀よく列を作っているのが見える。だが、肝心のジェットコースターの姿はまったく見えない。遠すぎるのだ。俺たちはかれこれ三週間は並んでいるが、いつまで経っても到着する気配はなかった。

どうやらこれは夢の戦いにおける敗者へのペナルティらしい。白夜に協力していた俺も参加者扱いで引きずり込まれたようだ。本戦の時に入れてくれればもっと活躍できたのになあ……

しかし暑い。むしろ熱い。直射日光とコンクリートの照り返しで二倍熱い。俺の全身から汗が滝のように流れるが、夢の中なので脱水症状で倒れるようなことはない。ひたすらに熱いだけだ。悪夢か。悪夢だった。

列が動く。少しだけ前に進むが、目的地はまだまだ遠い。

俺は横の白夜を見る。我が弟は俺と一緒に三週間立ちっぱなしの並びっぱなしだが、その顔はジェットコースターへの希望に満ち溢れている。そうだよなあ。楽しみだよなあ。ガキのころ遊園地に行ったときは身長制限に引っかかって乗れなかったもんなあ。

そもそも、俺の能力を使えばここから脱出することも可能だろう。だが俺はそうしなかった。今回もいろいろあったが、正直戦いに貢献できていたとは言い難い。むしろ足を引っ張っていたのかもしれない。だから、一緒にペナルティを受けてやるのも当然といえば当然だ。

それに、弟がこんなにも目を輝かせてジェットコースターを心待ちにしているんだ。いまさら乗らずに帰るだなんて、兄貴として恰好がつかないじゃあないか?

列が動く。少しだけ前に進むが、目的地はまだまだ遠い。


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最終更新:2016年04月26日 05:43