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アルセナルプラウダが企業歴235年2月16日、20時をお伝えします。

本日のニュースです。

2月13日から各地で発生していた反バレンタイン同盟による大規模動乱は、本日18時に数万人が参加したモスクワ市でのデモが鎮圧され、終結しました。
内務部広報局によると参加総数は全土で20万人を超えており、負傷者は8000名に及ぶとの事です。幸いにも死者は出ておりません。
ここで鎮圧に参加したモスクワ市警第八騎行警察中隊隊員のインタビューをお送りします。

随分負傷されているようですが。

お恥ずかしい話ですが制圧突撃の際に負傷しまして。

お大事になさってください。当時の詳しい状況をお話頂いても?

そのために来ていますので。

私たち第八騎行警察中隊は、他のモスクワ市警部隊と共に赤の広場に集合していたデモ隊を包囲監視していました。

警備時点では暴動には発展していなかったはずですが、なぜ監視を?

皆カチカチに凍りついたチョコを大量に持っていましてね、一応武器になるだろうという事で監視していたわけです。

なるほど。

デモ隊がシュプレヒコールを上げ始め、熱気が充満していくのがわかりました。正直なところ異様でしたね。

ところで、今回の暴発の発端が警察側の失言だったというのは事実でしょうか。

あまり申し上げたくはないのですが事実です。

そのようにはっきりとご発言されて宜しいのですか?

今回の出演に関して、上層部から包み隠さず話せという命令を受けておりますので大丈夫でしょう。

熱気が最高潮に達し、司令部から警戒態勢の命令が出たあたりでした。誰かがいったんです、今日は彼女とデートなのにモテない野郎どもの所為でついてねェと。

無線通信でしか流れない程度の小声でしたが、デモ隊に傍受されたのでしょうね。デモ隊が急激に興奮し始め、前衛に詰め寄り始めました。

発言についてどう思われました?

まぁ、彼の言う事も理解はできます。記念日にこんなことで呼び出されたんですから。愚痴の一つも言いたくなるでしょう。ただ......

ただ?

私もチョコの宛はなかったので、後ろから轢き潰してやろうかと思いました。あの瞬間はデモ隊と心が一つになったと思います。

まぁ、その、それは。

何も言わないでください。あなたみたいな美人に何か言われたら心が持たない。

はい、わかりました。現場は緊迫感が増したと思いますが、そのあとどのように?

前衛部隊から司令部に鎮圧許可を求める通信が何度も入りましたが、暴力行為が確認できておらず許可はおりませんでした。そうこうしているうちに興奮が収まり始め、このまま解散するかと思ったんですが。

そこで例の発言があったと?

はい、浴びせられる罵声に耐えかねた隊員が「家に帰ってママのチョコでも舐めてろ!この童貞野郎ども!」叫んでしまいまして。ここからはもう大暴動です。互いに銃や刃物こそ使いませんでしたが、スタンロッドや投石が飛び交い、前衛部隊は瞬く間に後退する羽目になっていました。

事件当時の映像からもその混乱がわかりますね。

ええ、まさか中央大隊の大盾隊が抉じ開けられるとは思いませんでした。引きずり倒した警官の口に大量のチョコをねじ込んでいたのは今でも夢に見ます。

私も中継で見ていましたが、殺意を振るうわけでもないのが印象的でした。

そういう意味では秩序だっていましたね。そのまま前衛どころか中衛まで打ち破ったデモ隊に対し、司令部は鎮圧を指示しました。

そこであの惨事が起きたと?

はい。高圧放水とAPPENDEXガスで混乱したデモ隊に我々が突撃しました。追い散らす事でデモの危険性を落とすことが目的でした。

大多数の方が逃走を図り、一部が投石を行いましたね。

投石というか投チョコでしたね。雨あられと降り注ぐ上に結構痛かったです。結局大混乱に陥ったデモ隊はあちらこちらに逃走しようとしてドミノ倒しが発生し、大量の負傷者が出てしまいました。

警察部隊にも相当数の負傷者が出たそうですね?

はい。現時点で486名が負傷入院しており、警察業務にはかなり問題が発生しております。

今回の事件で死者が出なかったことの要因は何だったと思いますか?

一つ目は迅速な救助活動です。ドミノ倒し発生後は鎮圧ではなく救助に方針が転換され、我々も負傷者の救助に当たりました。デモ参加者たちも我々の活動に協力してくれたため、危険な状態の人物もいましたが、幸いにも死者が出る事はありませんでした。

なるほど。

もう一つはデモ参加者に女性や老人、子供がいなかったことでしょう。ある程度頑丈な成人男性しかいなかったのも、死者が出なかった要因であると考えています。

ありがとうございました。

以上、第八騎行警察中隊隊員の方へのインタビューでした。

些細な発言からの悲劇的な結末でした。このような事が二度と起きないよう軍民双方に自重を求めたいものです。





次のニュースです。

本日未明、クラスノヤルスク周辺で47名の死傷者を出していたミュータントが討伐されました。

2ヵ月前から断続的に被害を出していたイノシシ型ミュータントを、捜索していた地域大隊が補足。マゲイア一機が中破する被害を出しつつもこれを討伐しました。
全長5m、体重42tの死骸は毒性分析後食料として地域住民に分配されました。

はぎとられた皮は傷の修復後村の集会所に展示されるとの事です。

また、統合軍生体情報分析局によりますと、生殖機能は存在しておらず、人為的な遺伝子操作の痕跡がみられる。このような個体が自然増殖する可能性は非常に低いとの事です。

行動分析を担当したモスクワ生命科学大学リドヴィック教授によると、これまでに発見されている自然発生型ミュータントと異なり、意図的に村を襲うなど行動パターンに人為的学習がみられ、何らかの組織の関与が浮かび上がっているとの事です。

ここ連日の人為的ミュータント被害を重く見たアルセナル本社は、このようなミュータントを発見した場合、決して近づかず即座に本社緊急コールセンターへ通報するよう再度声明を発表しました。

今回の巨大ミュータントイノシシについて、ミュータント研究の第一人者であるレニングラード生命医療大学創造生命科学部部長ハイフェッツ教授をお招きしております。教授宜しくお願いします。

よろしく。

今回のミュータントはどのような形態の物でしょうか。

今回のミュータントは、単純な巨大化対応実験の産物とみてよいでしょう。

といいますと?

通常のミュータントに多く見られる筋肉量比や神経系の強化が全く見られませんでした。そのほか胃の改造も施されておらず、ただイノシシを巨大化させたものでした。

なるほど。では過剰に恐れる必要はないということでしょうか?

今回の個体が増えることはないでしょう。ですがミュータント、特に人為的な操作を受けたものはどんな能力を持っているかわかりません。異常な存在には近づかず、可及的速やかな通報が望ましいでしょう。

ハイフェッツ教授ありがとうございました。






次のニュースです

今年の漁解禁初日である本日、アトランティックサーモンの一般販売が始まりました。
最大の水揚げ港であるでは、地域の小学生に無料でアトランティックサーモンがふるまわれ、子供たちは普段口にする事の出来ない天然魚に舌鼓を打っていました。
海洋資源調査局の発表によると、今年のアトランティックサーモンの汚染度は例年よりも低く、低強度AntiRADを服用すれば日常食でも問題ないとの事。
この影響か、例年より豊漁でしたが、価格は高水準で初日の取引を終えました。
地元漁業関係者の話では、かなりの数が戻ってきているが、その分大型ミュータントも海域にやってきている。海軍艦艇の護衛か海域掃討を要請したい。とのことでした。
統合軍最高司令部は、水上総軍、航空宇宙総軍に敵対的なミュータントの撃滅を指示した。だが、大部分のミュータントは人間に敵対的ではない為、挑発行動をとらないようにしてほしい。と広報を行っています。
水上総軍広報部はこの問題に対し、複数の戦隊を派遣し実践演習も兼ねて対応するが、全てを守る事は出来ないことを陳謝する。との声明を発表しました。
また、航空宇宙総軍はこの件について、対潜攻撃部隊による実弾演習を実施し、海域の安全に寄与したいとの声明を発表しました。

北方海上輸送研究所グランドフェロー、パチンスキさんにスタジオに来てただいております。このニュースをどのようにご覧になりますか?

はい、私はアトランティックサーモンに目がなくて、現地の知人から初物を頂けることになっているんですよ。楽しみで仕方ありません。特に低強度AntiRADで日常食できるというのは嬉しいことですね。

そ、そうですか。軍の動きについてはどのようにお考えですか?

海空軍の動きは現時点では及第点といってよいでしょう。今回集結してきた海棲ミュータントのほとんどが、船や人間を襲わないタイプである事がわかっています。一部の攻撃性の高い種族を選別して討伐するのは暴走を防ぐという点で必要であると考えます。北方海域における航行の安全を考えれば当然の対応です。

パチンスキさん、ありがとうございました。




次のニュースです。

先日発覚した、違法なキャストオフ機構とマニピュレート操作できる触手を実装した、成人向け魔法幼女社長フィギュア(1/3サイズ)の製造販売事件について、警察軍は首謀者三名の逮捕を発表しました。
裏社会で著名な原型師と生産工場社長、資金提供者の三名が逮捕され現在尋問を行っているとの事です。
調べに対し、原型師は「社長の美しさをこの手で再現する最高の機会だった。事実として私の人生で最高の作品が仕上がっている。後悔はない」
生産工場長は「私は無給で生産に従事していた。これは社長の魅力を世に広めるための聖務であり、私達に批判されるべき点はない」
資金提供者は「最高のモデルデータを手に入れたので、どうしても三次元に落とし込みたかった。出来上がったものは素晴らしく、私の人生はこのためにあったのだと確信している。」と証言しています。
警察軍はモデルデータの入手元の調査と、販売されたフィギュアの回収を急いでいますがモデルデータに関する調査は難航しています。
現在法務部特別企業犯罪調査局が司法取引による減刑を求め、警察軍および法務部特別企業犯罪裁判局に申し入れを行ったという情報が、当局の独自取材で明らかになりました。

この件を受けて社長は「ま、またこんなのが出回ってるんですか!?もう!死刑ですよ死刑!?」と涙目で大変かわいらしくコメントされました。

社長の発言を受け、法務部広報担当は夕方の会見で、社長が死刑を要請されているがわが社の法ではこの罪状では死刑にできない。彼らは適切な強制労働刑に処せられるべきである。とコメントしました。

元法務部特別検察局検察長官を務め、現在法律事務所所長であるマートンさんに来ていただいております。今回の事件についてどのような量刑が妥当であるとお考えですか?

はい、今回の事件においては社長侮辱罪の適応が可能で、この場合死刑以外ありえません。ですが、検察側は司法取引に伴う減刑を求めており企業機密漏えい罪及び特定創作物製造・所持禁止令違反での立件を目指しているでしょう。この場合、三名は強制労働刑7年前後が妥当であると考えています。

社長の意志に反する量刑となりますがそのあたりの問題はどうでしょうか。

例え社長であったとしても、被害者の感情や立場で量刑が定まってはならないというのが、法務部の基本的なスタンスです。こればかりは覆しようがないでしょう。

マートンさん、ありがとうございました。





内務部社長広報室から提供された、先程の社長のコメント及びその後の自室ベットでのじたばたシーンは32K・HFHD、AHDVR形式の二つが当局HPにアップロードされております。合わせて1029GBとサイズが大きいので通信方式、記憶媒体残量にご注意ください。

以上夜のニュースをお伝えしました。
20:30分からの放送は、社長密着100日間 -衝撃お宝映像満載・果たして放送できるのかスペシャル-をお送りします。
最終更新:2018年07月21日 14:51