小説 > 風零龍緋 > テウルギア・ギガ > 賛美の食料その1

某日、某所。天候は晴れ、季節は秋。気温は18度、湿度は56%。
静かな某所は突如轟音に飲まれてしまった。木々はごく小規模ながらなぎ倒され中心部の施設は吹き飛んだ。その爆発は一般人には気づかされずしかしながら企業の上層部にはすぐに知らされた。それを聞いたライズの上層部は苦虫を苦虫をかみつぶしたような、苦い顔をしていた。

ところ変わって更に某所。技仙某所のレストランで一人の女の子が目を輝かせていた。
彼女の目の前にはこの秋限定の限られた人間でしか食べられない食べ物がある。
山を模した茶色いクリームの頂上には大岩か溶岩ドームのように鎮座する甘栗が乗っている。よく煎られたおかげで焦げ茶色の艶があり更に照りを出すために砂糖で煮詰められてある。更に金箔の化粧をしており私を食べてくださいと言わんばかりの輝きを放っている。

『おめっとさん。 だがさっさと食べたらどうなんだ?』

突如ポケット内の通信端末が男性と思える声を発する。彼女は少しムスッとした表情で無視をする。
端末の声は少し悪態をつき始めた頃彼女が甘栗の乗った食べ物をフォークで切り始める。柔らかいクリームがフォークで歪に歪みながら静かに皿のある方向へとめり込んでいく。

『柔らかいんだな。 海溝みたいだぜ』
「何それ? 何か知らないけどロマンスが無いわね。 そもそもどこで見てるのよ。 ポケットの中でしょう? ドゥムジ」
『どっからでも見ようと思えば見れるさ。 それよりも早く食っちまえよ。 さっきから招集連絡が来てるぜ?』

え、うそ!?と驚いた顔をしながら大事にしてた食べ物を頬張る。栗の甘さが口の中に広がり、後から皮の渋み、甘栗の香ばしさがまるで一つの物語のように流れてくる。クリームの中は甘さを抑えしっとりとしたスポンジと薄くひいたホワイトチョコレートで層ができており、咀嚼する度にパリパリと口の中で音を立てる。うっとりと彼女はその甘味に舌鼓をうった。

『ウズマ?』
「わかっへる!!」

彼女は咀嚼しながら足早に席を立ち頭を下げるシェフやウエイトレスに片手をあげてお礼を言った後、ブリーフィングルームへと急いだ。

最終更新:2019年02月01日 16:03