小説 > 風零龍緋 > テウルギア・ギガ > 賛美の食料その2

任務はごくごく簡単なものだった。数日前謎の爆発事故を起こしたヴェーダ領域内施設の極秘調査。正直何故技仙のトップが向かわなければいけないのかよく分からなかった。微妙な疑問を持ちながら女神は秋というのに生い茂るジャングルをかき分け現地へ向かう。

『なんで俺達がこんな』
「なんだか新兵の頃を思い出すわ。 ワクワクする!」

偵察のみならただのマゲイア部隊を派遣すればいいものを技仙の顔を持ってくるということは誰がみても何かがあると思うだろう。索敵レーダーを広げれるだけ広げ周囲を警戒する。
しかし何事も無く現地についてしまった。こんなもんかと少し腑抜けた顔をしながらウズマは自機のカメラ越しに現地を眺める。
施設は地下に作られていたようで外観はほぼ残っておらず、すり鉢状に抉れた空き地が広がっている。ウズマは自機をすり鉢の中に突入させる。すり鉢の中腹あたりに更に地下に続くのであろうと思わしき穴が空いている。恐らく何らかの事故があり地下の中腹から上は吹き飛び、奇跡的に下層区域は無事だった。ということでいいのだろうか。
一見何もない事故現場である。が、おかしい。

『おい、 流石に何もなさ過ぎねぇか??』
「何が?」
『瓦礫……もっと言うならば人工物だ。 普通あるはずだろ? 連中の施設は虫みたいに土くれをツバで固めてできたんじゃねぇんだろ?』

ドゥムジの言うとおり人工物が何もない。なさ過ぎる空間。爆発事故ならば施設の残骸が無ければならないはずだがそれがキレイさっぱり無くなっている。

「てっきり遠くに吹っ飛んでここにないだけかと」

言われてみればとウズマは足元をズームしてみる。確かにネジ1本すら見当たらない。何者かが回収したのか?しかし自分たち以外にやってきた痕跡がない。

「とりあえず、 レポートを送信するわ。 後はヴェーダだか技仙だがの特殊捜査班に任せましょう」
『不思議ミステリーだな……まったく』

早く帰ろうぜと言いながらけだるそうなドゥムジが技仙のレポート送信ネットワークを展開しウズマが自機の画像をアップロードしている時だったった。
広げていた索敵レーダーが何かを感知。まもなく自身と邂逅する事を表すアラーム音が鳴る。

「来たっ!!」

ウズマは兵装をアイドリングモードに切り替え待機。指を鳴らしながら不敵な笑みを浮かべ操縦桿を握りしめる。ドゥムジが敵の所属を確認するが何も反応が無い。それどころか規模まで分からない。分かるのは何か塊が迫ってくるというだけだった。

『敵間もなく邂逅。 レーダーがおかしい……正直どこから来るか分からん』
「面白い。 どこからでもどうぞ!!」
『残り5秒、 4、 3 、 2、 1』





それは下から現れた。


最終更新:2019年02月01日 16:10