38 名前：名無しさん＠お腹いっぱい。 (ﾜｯﾁｮｲ 4bbb-53i4)[sage] 投稿日：2018/07/29(日) 02:29:43.16 ID:2EM+utFh0 [1/3]
まだ憶えている。
まだほんの子供のころの夏の記憶だ。
「アライさん・・・かな・・・・」
「・・・ああ、そうだろうね」
そう答えたばあちゃんの背中は少し小さく感じられた。
祖母、ばあちゃんの畑が動物の食害を受けるのは初めてではなかった。
だから毎年
カラス対策に網を張った。
タヌキ対策に矢板と網の端を埋めた。
でも、入り口の重りをどけて畑に入ってくる人間、いや人間に似た何かに対しては無力だった。
「来年は、もう、植えるのはやめておこうかね・・・」
そうつぶやくばあちゃん。
何も言えず、僕はただ肩を震わせた。
39 名前：名無しさん＠お腹いっぱい。 (ﾜｯﾁｮｲ 4bbb-53i4)[sage] 投稿日：2018/07/29(日) 02:30:44.93 ID:2EM+utFh0 [2/3]
「ここは5匹か」
夏の夜明けは早い。
早朝からの見回りで2個目の罠にはしっかり獲物がかかっていた。
「お～い、お前。アライさんは何もしていないのに閉じ込められてしまったのだ」
「早くここから出すのだ。早く畑に行かないとヒトがまんまるを横取りするかもしれないのだ」
罠にかかったのはアライさん１匹。アライちゃんとよばれる小さいアライさんが4匹だ
あの時、あの日から僕は決めたのだ。
あいつらを駆除してやると。
箱罠にカバーをかぶせる。
たたみ1畳分ほどしかない、かつてはイノシシ用で使われていた箱罠だが、この作業は骨が折れる。
まあ、他で駆除にあたっている人たちに比べればどうということない作業だ。
「何をしているのだ。ここから早く出すのだ」
うるさい、今やってる最中だ。この箱からお前たちを出す手続きをな。
箱罠をすっかり覆うと軽トラからボンベを運んできてチューブと接続する。
カバーは僕の趣味で透明だ。
他のアライさんに見られると警戒されるという意見もあるが、農家にはすこぶる好評のようだ
「何を遊んでいるのだ！アライさん危機なのだ！！」
ボンベのコックを開くとしばらくしてアライちゃんたちに反応が出始める
「！？・・・なんだかむねがくるしいのだ」
「はぁー・・はぁー・・・気分も悪いのだ」
「い・・・き・が・・・・でき・・・・・」
「お・・か・・・しゃ・・・た・・・・・」
「？？？どうしたのだ。ちびたちの様子がおかしいのだ」
駆除に使う炭酸ガスは二酸化炭素だ。
比重が重い分、どうしても下にいるアライちゃんから吸うをことになる。
41 名前：名無しさん＠お腹いっぱい。 (ﾜｯﾁｮｲ 4bbb-53i4)[sage] 投稿日：2018/07/29(日) 02:32:47.50 ID:2EM+utFh0 [3/3]
「どうしたのだ？ちびたちが苦しんでいるのだ！！！」
すぐに酸欠を起こして転がり始める。
「おい！！！ヒト！！何をしてるのだアライさんのちびがピンチなのだ」
「どうして何もしないのだ！！アライさんの危機なのだ！！！」
必死の訴えだが、すぐにやむ。
「う・・・ぐ・・・？？」
一酸化炭素と違って吸気して昏倒を起こす訳ではない。
「ぐぶ・・・い・・・きっ・・・・」
「あ・・が？・・・ご・・・・」
「ぐ・・・ぉ・・・・」
「・・・ぇ・・」
大事な「ちび」とやらを取り落として喉を押さえるアライさん。
窒息死は水死と同じで苦しいと聞くが、あがく姿は体の大小関係なく一様だ。
足をばたつかせながら次第に動きが鈍くなっていく。
頭部に致命傷を受けた時の動き。いわゆるゴキガイジムーブとの違うそれは、
次第にゆっくりとなっていき、最期を迎える。
「市役所には連絡完了っと・・・」
スマホを操作して、メールが来ていたことに気づく。
今日は アライさんが沢庵さんかかりました あとでみてきてくだい
ばあちゃんからだ。
あと2つ罠を見回ったらばあちゃんの家に行こう。
畑では今年もトマトやキュウリが元気に生っている事だろう。
大量に持ち帰った時の母親の困り顔を思い浮かべながら、次の罠をを仕掛けた畑へと軽トラを発進させた。
42 名前：名無しさん＠お腹いっぱい。 (ｽﾌﾟｯｯ Sd52-Afk7)[sage] 投稿日：2018/07/29(日) 07:40:00.75 ID:Y0sNwq1Yd
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面白かった
アライさんたちが苦しみながら死んでいくのはいいね！
44 名前：名無しさん＠お腹いっぱい。 (ﾆｸｸｴ 4b12-53i4)[sage] 投稿日：2018/07/29(日) 21:54:46.64 ID:Ek1VZd0h0NIKU [1/3]
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乙
お婆ちゃんが可哀そうだったね
最終更新：2018年08月02日 00:18
