アライさんだけがいらない街

64: 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/04/07(日) 05:39:30 ID:gDV4U7Nw
「ただいまなのだ!」
「おかえりなのだ、まま」

今日の狩りを終えて、アライさんは家に帰ってきたのだ
この雨が降るとにぎやかなトタン板が屋根、その下の隙間がアライさんのおうち
集めた新聞紙が、アライさんの布団なのだ

体を冷やしたのか、チビがお漏らしをして茶色いシミが広がっている
昨日は冬の雨で、冷え込んだからきっとそのせいなのだ

「さむいのだぁ、まま」

「静かにするのだ!」
「ヒトにみつかるのだ」

ふう、また新聞を見つけてこないといけないのだ
チビの寝床はきれいにしたい

チビはかわいい、でも...

望んだ子供ではなかった、淘汰してしまおうかと思った
でも、生まれてみればアライさんに良く似たかわいい子で
情がうつって育ててきたのだ


65: 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/04/07(日) 05:43:37 ID:gDV4U7Nw
「やめるのだ、アライさんに何をするのだぁ」

「いいことだよ、まあ楽しめや」
「お前がかば......まあ、思い出したら反省でもしてろよ」

何なのだ?

「さーて、お楽しみの時間だ」

「痛いのだぁ」
「アライさんに、なにするのだぁ!」

「黙れよ!」
「おっ、結構気持ちいいぜこいつ」

アライさんに何かが入ってくるのだ
「やめるのだ、痛いのだ、気持ち悪いのだぁ!!」

「もうぐちゃぐちゃだ、ココ」
「結構喜んでんじゃねーの」

何なのだこれ
「やめ、やめるのだぁ」
「アライさんが、アライさんがかわいそうなのだぁ」


66: 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/04/07(日) 05:45:16 ID:gDV4U7Nw
「誰が聞くかよ、次お前行くか?」

「随分楽しんでんな」
「まあ、顔見なけりゃな」
グチャ、グプ 

「ふう、でたでた」

「お前、良く中にだせんなぁコイツ相手によ」

「おう、なんか病気はないらしいしな、コイツ初物みてえだし」

終わるのか?、やっと

「ふーん、じゃ次俺ね」

「お前ら、良くやれんなぁ」

「けじめだよ、けじめ」
「あははは」

「い、痛いのだあ、お願いだからもうやめるのだ」
「アライさんが....」

そして、アライさんは気を失ったのだ


67: 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/04/07(日) 05:47:25 ID:gDV4U7Nw
「ママ、どうしたのだ」
「どこが痛いのだ?」

どうやら、アライさんは真っ青な顔をしていたらしいのだ
こんな暮らしなのに、チビはいい子にそだっていると思う

「大丈夫なのだ」
チビに心配させるなんて、アライさんに似合わないのだ

「いい子なのだ、チビはアライさんの誇りなのだ」
頭を撫でてやる、嬉しそうにしているチビはかわいいのだ

「まま、その袋はごはんなのか?」

「そうなのだ、美味しそうなごはんを手に入れたのだ!」
「やっぱり、ままは凄いのだ!」
「当然なのだ!」

これは、近くの狩場で見つけたのだ
そこはここと同じ”ごみ集積場”と書いてある所で時々おいしいごはんが
取れるポイントなのだ

このあたりには美味しいおやさいの獲れる畑はないのだ
でも時々袋にはいったごはんは獲れるのだ


68: 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/04/07(日) 05:48:45 ID:gDV4U7Nw

「まま、もう食べていいのだ?」
「駄目なのだ、アライさんが準備をしてからなのだ」

袋を開け、おやさいの皮やおさかなの頭を並べる
「チビ、ごはんができたのだ」
「いっしょに食べるのだ」

「いただきますなのだぁ」
「おいしいのだ、ままのごはんはおいしいのだぁ!」

余程おなかが空いていたらしい、どんどん並べたごはんがなくなってゆくのだ
本当は甘いまんまるとかお肉をチビには食べさせたいのだ
でも、アライさんには....


69: 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/04/07(日) 05:50:37 ID:gDV4U7Nw
「今日のご飯を獲ってくるのだ」

「いってらっしゃいなのだ、まま」

「行ってくるのだ、いい子で待っているのだ」

「はいなのだ!」

昨日とは別の狩ポイントに向ったのだ、だがごはんは無かったのだ
「無いのだ、そろそろヒトがごはんを置いて行くはずなのに」

そこにはいつもの袋はなく、大きな箱があったのだ邪魔なのだ
「変なのだ、ごはんのにおいはするのだ」

この箱のなかに隠しているのか?
「アライさんにはお見通しなのだあ!」
箱に付いた出っ張りを引っ張ってみた
「ここが動くのだあ、アライさんは偉大なのだ!!!!」

箱が開くと中には見慣れた袋が入っていたのだ
「ごはんの袋があったのだぁ」
「ささっと袋を獲って、帰るのだ」
「チビが待ってるのだ」


70: 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/04/07(日) 05:53:19 ID:gDV4U7Nw
バン
「痛いのだあ!!」
足に激痛を感じて振り返るとヒトが数人いたのだ

「いつも、ごみを漁って行くのはコイツか!」
「逃がすなよ!」

ガン
「アライさんに何をするのだ!」
痛、頭を棒で叩かれたのだ

「さすがはアライさんだな、金属バットくらいじゃ駄目か」
「ほれ、もう一回速くするんじゃ」

そんなに叩かれたらアライさんでも大変なのだ、逃げないと
「アライさんは逃げるのだあ!!!!!」


71: 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/04/07(日) 05:54:49 ID:gDV4U7Nw
「ちくちょー」
「銃が使えれば...」
「だが街中で銃もあるまい」
「それなりのダメージは与えたと思うぞ」

痛む体を引きずって何とか家に帰り着いたのだ

「まま、おかえりなのだ!」
「どうしたのだ、血が出てるのだ」

「ヒトがいきなり襲ってきたのだ、アライさんのごはんが奪われたのだ」
「頭が痛いのだ」
それから数日身動きが取れなかったのだ
チビはおなかが空いたと言ってくる


72: 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/04/07(日) 05:57:26 ID:gDV4U7Nw
ここはそれなりの道路の脇で、近くに横断歩道もある
雑踏ざわめきも、ヒトやフレンズの会話も聞こえる

「それ、どう?暖かい?」
「うん、もちろん」
「だって、かば...もらったマフラーなんだからぁ」
「うー、妬けるなあ」

かば....、
かばんさん?いまそういったのか

耳を欹てても
街の雑踏に紛れ、離れていくフレンズ達の会話の声は
アライさんには届かないのだ

みんな幸せそうなのだ

アライさんはヒトに見つかるとそれだけで大変なのに


73: 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/04/07(日) 05:58:45 ID:gDV4U7Nw
「うん、そうなんだよー」
えっ、今の声
「今度、ご主人様と一緒に行くんだよー」

「ふぇ、フェネック!」

「あれ、今私のこと誰か呼んだ?」
大きな耳を回すように周囲の音を聞いている

でも、今のアライさんの姿をフェネックに知られる訳には...
「まま?」
「静かにするのだ!」
チビの口を押さえた

「あれー、変だなー、耳には自信あるんだけどなー」

「空耳ってこともあるでござるよ」

「そうだねー」


74: 以下、名無しが深夜にお送りします :2019/04/07(日) 05:59:57 ID:gDV4U7Nw
道を渡り、雑踏に紛れフェネックは消えていった

「まま、くるしいのだぁ!!」
痛い、チビに引っ掻かれた

こんなに苦労しているのに
何でアライさんが
なんでアライさんだけ
急に何かが込み上げて来た

アライさんがぁ
「なぜなのだ、どうして....」
「どうしてアライさんがぁぁぁーーーー」


「ままぁ!、どうしたのだ!」


最終更新:2019年04月09日 00:18