ノリャッノリャ♪
昼下がりの森、
大きなしっぽを左右にもふもふとゆらし、1列になって赤ん坊のようなヨチヨチハイハイで移動する一見人の赤ん坊に見えるそれは、愛らしい笑顔で御満悦そうにお腹を膨らませている。
この近くの畑に侵入した食害獣だ。
アライさん「ちび達!今日もお野菜おいしかったのだ!」オナカサスリサスリ
アライちゃん1「ノリャ♪ノリャ♪ノリャー♪」
アライちゃん2「おやさいしゃんしゃきしゃきで甘かったのりゃー(≧▽≦)」
アライちゃん3「おねーしゃーん!あゆくのはいのりゃー!」
アライちゃん4「のりゃーあうあうのりゃー。」
どうやら一匹はまだ生まれたばかりのようで、言葉を発せず野菜を食してた形跡はない。母から乳を貰っている。フレンズは姿が人に似ている分、その姿は不気味の谷というか、気色が悪い。
見かけは人でも獣程度の知能のようで、まったく回りに警戒などしていない。
アライさん「何があっても、ちび達はアライさんが守るのだ!」
アライちゃん1「おかーしゃん!たよりになるのりゃー!」
アライちゃん2「うゆ!この森はアライしゃんのてんかなのりゃー!」
アライちゃん3「おかーしゃんふらぐぜんかいなのりゃー!」
アライちゃん4「すぴーふぴー」
アライさん「ちび、おっぱい吸ったまま寝ちゃったのだ。天使みたいな子なのだ!」
アライちゃん1「おかーしゃん!いもーととしゅりしゅりさせてほしいのりゃ!」
アライちゃん2「アライしゃんもなのりゃ(*≧∀≦*)」シッポフリフリ
アライちゃん3「のりゃ!あらいしゃんもお顔とでしゅりしゅりしたいのりゃ!」
せがまれた母のアライさんが乳児アライちゃんを柔らかい草の上に下ろした。その揺れでどうやら乳児アライちゃんが目を覚ましたようだ。
そこにヨチヨチと姉たちが向かってくる。
アライちゃん1「いもーちょはあったかくてぷにぷになのりゃ!」(*≧∀≦*)
アライちゃん2「おいしそうだけどたべちゃだめなのりゃ!」
アライちゃん3「しっぽのもうふなのりゃ!」
姉アライちゃん達は乳児アライちゃんにあま噛みをしたり、頬でさすったり、しっぽを擦り付けたりして遊んでいる。乳児アライちゃんもそれがとても嬉しいのか、キャッキャと喜んでいる。
アライさん「ああ、かわいい天使達なのだ!アライさんがずっとずっと守っていくのだ。」
このアライさんは大層娘達を可愛がっており、娘達をよくみると毛並みが輝くほど手入れされており、ヨチラーが自分でできるレベルではない。ペットショップのアライちゃんと遜色ないと言っていい。
対してアライさんは髪やしっぽこそちゃんと手入れしているとはいえ娘ほどではなく、毛皮も破れや汚れが随所にみられ、大量の古傷がそこから覗いている。
この母親は自分が死ぬとしても絶対に娘を守るだろう。
俺はゆっくりと後ろから近づく、大丈夫。寂しくないようにお前達全員ちゃんと送ってやるよ。
母アライさんがこちらに気づいた、流石に臭いがしなくてもこの距離に近づけば気づかれるか、だがかまわない。
アライさん「知らないチビなのだ?どこからきたのだ?」
は?チビ?
アライちゃん1「にんげんしゃんのおちびちゃんなのりゃー!」シッポフリフリ
アライちゃん2「うゆー?あそんでほしいのりゃー?」コスリコスリ
アライちゃん3「おとーとにしゅりゅのりゃぁ!」
俺はアライちゃんに視線がどんどん近づいていくことに気づく、服も既にだぼだぼで、するりと地面に落ちていく。
「まさか、ヨチラー判定バグ!?」
サンドスター異常の一種で、成体のヨチラー化、ヨチラーの成体化などの異常が報告されている。
まずい、このままでアライさん達の餌にされる可能性がある、逃げなくては。
元アライさん「おお!かわいいおちびしゃんなのりゃー!」
母アライさんは気づけば四つん這いになり、体がみるみる小さくなっていった。
元アライさん「??なんなのだこれは……!まさかこの『赤ん坊』が……!!チビ達ィィ!そいつからはなれるのだぁぁぁぁぁ!」
デカアライちゃん1「のりゃー!」のそのそ
デカアライちゃん2「チビ人間しゃんが余計にチビなのりゃー!」しっぽぶんぶん
デカアライちゃん3「天上天下唯我独尊なのりゃゃ!」地面バンバン
デカアライちゃん4「ぐがー……ぐがー……。」
アライちゃん達は逆に成体になってしまったらしい。正直ヨチラー気分のまま大人になったのは不気味極まりない。
元アライさん「ぬぬぬぬぬきさまぁ!きさまがげんきょうなのだぁ!倒してアライさんたちをもどすのだぁぁぁ!」
アライさんがこちらにヨチヨチと突進してくる。だが所詮はヨチラーなので大したダメージにならず、お互いに横にこてんと転がった。
デカアライちゃん1「お母しゃーん、がんばるののりゃー!」
デカアライちゃん2「そいつはもう弟にしなくていいからぶっころしゅのりゃー!」
デカアライちゃん3「打ち首獄門なのりゃー!」
デカアライちゃん4「ぐがーごーぐがー」
どうやら加勢するつもりはないらしい。されたらひと溜まりもなかった。
元アライさん「くらうのだ!くらうのだ!しぬがよいなのだ!」
元アライさんは爪をぶんぶんと振り回すが、頭がでかくて深くは届かず、空を切るばかりだ。最もこちらも手は届かず、爪がないので分はわるいのだが。
……
……
……
元アライさん「ハァハァハァハァハァ……おまえぇ!おまぇぇぇ!」
一向に決着が着かないまま、時間だけが過ぎていく。元アライさんは体力の限界が近いのか、息を切らしながらもはや猫パンチならぬアラパンチを繰り出している。
俺ももはやエネルギーは底を尽きている。一旦帰るにもこの体じゃあねぇ。
元アライさん「このいちげきに全てをかけるのだぁぁぁぁぁぁぁぁ!おおおおおおおお!」
当たることのない腕を強く振りかぶり、ただむなしく空をき
ボゴォ
ん??いてぇ!!なんだ?
どうやら俺は右頬に強くストレートが入ったらしい。その勢いのまま何回転かして地面に転がり込む。
アライさん「??!元に戻ったのだ!アライさんの声が天にとどいたのりゃ!!」
アライちゃん1「おかあしゃんのかちなのりゃ!」ヨチヨチ
アライちゃん2「きょあくはたおされたのりゃ!」
アライちゃん3「てんはわれにありなのりゃ!」
アライちゃん4「あうーのりゃー……のりゃ」
すべてのアライさんが元に戻ったようだ。どうやら顎が外れ、歯が何本か抜けたらしい。さすが野生、とんでもない馬鹿力だ。嬉しいよ。
昔はあんな非力だったのに。
俺は地面に這いつくばりながら脱げた服のあるところまで移動し、バッグからベルトを取り出す。
アライさん「さあ、ちび達。かえるのだ。」
アライちゃん達「「「のりゃー!」」」ヨチヨチ
アライさん「ん?お前まだ生きてたのだ?いい加減死んでおけばよかったものを!」
アライちゃん1「ふしゅー!あらいしゃんもかせいしゅるのりゃー!」
アライちゃん2「おかあしゃんにみじめにやぶれるのりゃ!」
アライちゃん3「くうかくわれるかのさだめなのりゃ!」
アライさんが爪をむき出し、次こそは確実に仕留めるつもりだろう。だがまだ死んでやる訳にはいかない。
アライさんが飛びかかったところを狙い俺はレバーを捻る。
瞬間、熱気が放出されてアライさんは後ろに吹っ飛ばされる。アライちゃん達も熱気にすこし飛ばされたようだ。
アライさん「いたたた……何事なのだ……ひっ!ぴ、ピラニアのバケモノなのだ!」
アライちゃん1「ぴぃぃぃぃぃこわいよぉぉぉたしゅけてぇぇぇ!」
アライちゃん2「よくもおねぇしゃんをふっとばしたなぁ!ゆるしゃないのりゃ!」ポコポコ
アライちゃん3「あらいしゃんじゃないのりゃ!」
アライちゃん4「のぎゃー!のぎゃー!」
なんだ、ピラニアの絵本ちゃんと覚えてるじゃないか。
俺は後ずさるアライさんに間髪入れず顔面を殴打した。
アライさん「ぎゃあぇ!ぶひゅ!の゛ぁ゛ぁ゛!」
殴る、殴る、殴る、殴る。
アライさん「やめ!ぐぉ!ぁ!ぎじぃ!ぶひゅ!ぎゅる!!」
腹にきついのをいれようとした。が、違和感に気づいた?お前まさか……。
俺は殺すのは一旦やめ、膝関節を蹴りで逆に曲げた。
アライさん「いだいのだぁぁぁぁぁぁぁぁ!ああああアライさんのあしがぁぁぁぁぁあしがぁぁぁぁ!」
倒れ込むも打ち所は悪くない、大量の出血もなく、ほっておいても死なないだろう。
さて、俺はアライちゃん達に向き直った。
アライちゃん1「ぴ!ぴぃぃぃ!」ビクビク
アライちゃん2「おかぁしゃん!おかぁしゃん!!」
アライちゃん3「なんなのりゃ!なんなのりゃ!」
アライちゃん4「のぎゃあ!のぎゃあ!」
アライさん「やめて、やめるのだ!チビはなにも悪くないのだ!おやさいをとってきたのはアライさんなのだ!チビ達は何もわからず食べてただけなのだ!そうだ!アライさんをいたぶって殺すといいのだ!アライさんは死んでやるから!チビだけは生かしてほしいのだ!」
野菜を盗ってる自覚もあったのか、お前はやっぱり頭がいいなぁ。誇らしい限りだ。
アライちゃん2「おかぁしゃん!おかぁしゃん!ぴぃぃ」
アライちゃん1「やめるのりゃ!いもーとにちかづくなぁ!」
アライちゃん2「お、おねーしゃん!?ダメなのりゃ!逃げるのりゃ!」
慈しむ心まで子供達に教えてたのか、ああ、かわいいなぁ、本当に天使だ。そしてごめんな。
アライちゃん1「ぴぃぃぃぃ!」
俺はアライちゃん1の頭を持ち上げた
アライちゃん1「やめてぇ!いだいのだぁぁぁぁぁぁぁぁ!おかぁしゃん!おかぁしゃん!」
アライちゃん2「ああ!おねーしゃんがぁ!」
そしてそのまま右半身に食らいついた
アライちゃん1「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛だじげでぇぇぇぇ」ドッタンバッタン
牙は肋骨に食らいつき、ミシミシと食感がつたわる。そろそろ折れるかな?
アライちゃん1「おがーじゃん!じんじゃうのだ!だずげにぎでぇ!!」
アライさん「あぁ!ちびぃ!ちびぃ!やめるのだぁ!おねがいなのだぁ!」
アライさんは折れた脚を引きずりながら、腕の力だけでこちらに近づいてくる。とても鈍足だ。
アライちゃん1「きぇ……ぴぃ、いきたいのだ……。まだ……いきた……おがーしゃん!いぎだ(グチャ)
肋骨がついに耐えきれずに割れる、その勢いで内蔵を牙がぐちゃりと噛みきった。アライちゃん1は力なく左腕と脚をたらし、しっぽは足元のアライちゃん2の上に落ちた。
アライちゃん2「びぇぇぇぇん!おねーしゃんがぁ!おねーしゃんがぁ!」
アライちゃん1「ギュピ……マァァァァ……」ガクガク
アライちゃん1は意味不明な鳴き声を発し、小さく痙攣している。既に意識がない事を祈るばかりだ。
俺は咀嚼していた分を飲み込むと、残りを一息に頬張った。
アライちゃん2「や゛め゛て゛ぇ!!おねーじゃんのみごまないでぇぇぇ!お゛ね゛ぇ゛し゛ゃぁぁぁぁん!」
モグモグ
ゴクン
おそらく一番お姉さんであろうアライちゃんは食べ終わった。さて、次行くか。
アライさん「あ……ちび……おまえは……お前……アライさんに勝てないからって……ふしゅるるるるる!!おまぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
勝てないわけないだろ?愛ゆえの言動なのか、それともアライさん特有の根拠のない自信なのか。
アライちゃん2「いやなのりゃぁぁぁぁ!たべられたくないのりゃぁぁぁ!」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチ
足元に目をやると、アライちゃん2が必死で背丈の高い草の方へ逃げている、ヨチラーの渾身のスピードなのだろう、膝も手のひらもボロボロになっている。まだ発達していない足腰でよくここまで移動したものだ。だが、
アライちゃん2「きゅるるるるる!?」
所詮はヨチラー、歩きでも間に合う。俺は追い付いたアライちゃん2のふわふわのしっぽを掴んで持ち上げた。
アライさん「ちびぃ!!やめろぉ!もうやめてぇ!」
ふわふわのしっぽだ。かわいいなぁ。
アライちゃん2「ピラニアしゃんやめてぇ!アライちゃんはてんしなのりゃ!こんなにかわいいのりゃ!」コスコスクシクシ
アライちゃん2はハムスターのように毛繕いをしている。俺はアライちゃん2を優しく掌で寝かせるように置いた。
アライちゃん2「うゆう?ピラニアしゃんわかってくれたのりゃ!?うれいしいりゃ♪アライしゃんのてんしのみわくにきづいたのりゃ♪おれいにアライしゃんのおうたをきかせてあげりゅのりゃ♪」
おや?お歌を歌ってくれるらしい。
アライちゃん2「あ~らいしゃんのし~ぽっは~♪ふわっふわ~のわ~たぐゅぇ~♪」
アライちゃん2「あ~らいしゃんのおてては~♪ち~ちゃくて~ぷ~にぷに~♪」
アライちゃん2は可愛らしく寝転んだまましっぽを振って歌っている。
アライちゃん2「そしてあ~らいしゃんのおめめはぁーおおきくちぇザシュッ!!
アライちゃん2「ゆう?まっくらになったのりゃ?ピラニアしゃん?おかーしゃん?どこなのりゃ?おかーしゃーん?」
アライさん「ち、ちび……あ…おげぇぇぇ!」
アライちゃん2「どうしたのりゃ?おかーしゃん?おめめがまっくらでなにもみえないのりゃ?」ヌルリ
ピラニア「あ~らいしゃんのお~めめは~♪小さなブドウ~」モグモグ
アライちゃん2「ぴ…ぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃおめめがいたいのりゃぁぁぁぁ!おかぁぁーしゃぁぁぁぁん!いだいのりゃぁぁぁぁぁぁぁ!」ジタバタ
アライちゃん2は鼻根点ごと両目を抉られたことにやっと気づいたようだ。
俺はすかさずアライさんの頭を鷲掴みに持ち替え、樹の幹に押し付け、
アライちゃん2「ぴぃ!ぴぃ!いたいのりゃ!!おめめがないのりやぁ!!」
アライちゃん2にめがけて、腕の刃を使って胸から下腹部を切り裂いた。
アライちゃん2「ぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
アライちゃん2は口から大量に吐血しながら、胃腸や肝臓を切り口からブリブリと漏らす。
大きく広がった股で両足は痙攣し、ゴキブリのようにドッタンバッタンしている。
ある程度して最早切り口からも口からも出すものがなくなったアライちゃん2は抵抗や震えをやめ、苦悶の口元は緩んでいった。
アライちゃん2「おかぁ…しゃん…しょこにりゅ?」
アライさん「今行くのだ!ちびぃ!死んじゃだめなのだぁ!」
アライさんがズルズルと近くまで来ている。あとちょっとで届くのだろう。無理に引きずった足は血の軌跡を作り、石に少しばかり肉を持ってかれている。
アライちゃん2「生んでくれて…ありがとなのり」バクゥムシャムシャ
ご馳走さま。
アライさん「あ、ああああああ、殺してやる…ごろじでやるのだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
アライさんはぼろ雑巾のような脚を無理やり元に戻し、砕けた膝の皿を使って渾身の飛びかかりをしてきた。残った子供達をなんとしても助けるつもりだろう。しかし、
「のぎぁ!!!ひっ~~~ !びぃ!!」
俺は彼女を左手でうけとめ、右手で首元に突きをお見舞いした。
「~~~~~~~~~~~」コヒューコヒュー
よし、呼吸はできてる、死にはしないだろう。
残りは、
アライちゃん3「いもーとといっしょにげるのりゃ!」ヨチヨチ
アライちゃん4「ぴぃ、のりゃあ!のりゃあ!」
アライちゃん3がアライちゃん4を乗せて必死にヨチヨチ歩きで逃げている。
アライちゃん4「ぴぃ?」
アライちゃん3「のりゃ?」
アライちゃん4を持ち上げ、俺はそのままアライちゃん3の上にボディプレスをお見舞いした。
アライちゃん3「ギェピェェェェ!!!」
つぶしどころ悪く、まだ生きているようだ。
アライちゃん3「ウンメイノ"ォォォォ!!」
俺はアライちゃん3を踏み直した。
アライちゃん3「ビェピ!!!」
次はちゃんと死ねただろうか、念のため肉塊になるまでふんでおこう
グシャ!メキョ!ビュ!ブニュ!ブニュ!
こんなもんか…。
さてと
アライちゃん4「のりゃ?のりゃ?」
握られてるアライちゃん4は事態をすっかり把握してないようだ。俺にむかって笑いかけている。
そのままアライさんのほうに向かい
アライさん「のだぁ!」
アライさんを仰向けにして、股がる。
アライさん「ぉまえぇぇ!よくもちびを!よくもちびをぉぉぉ!」
アライさんは両手の爪を俺に突き立てるが、勢いのないアライさんの爪は最早意味はない。
ピラニア「アライさーん。この子だけになっちゃったね?」
アライさん「やめるのだぁ!かえすのだぁ!」ジタバタ
アライさん「アライさんは確かに畑から盗んだことがあるのだ!でも、ちゃんと廃棄処分されてる野菜から食べてるのだ!腐ってる部分はアライさんが食べて、ちび達には綺麗な部分をあげてるのだ!」
ピラニア「あぁ、残念だったねアライさぁん。俺は畑から依頼された訳じゃない」
アライさんの横にによれよれの白い帽子を投げると、アライさんの目の色が変わる。どうやら俺の事を覚えてるようだ。
アライさん「うそなのだぁ…おにいさんはそんなことしないのだ…おまえが!お兄さんなわけないのだぁ!おにいさんはパークで…げんきにしてるはずなのだぁ!」
おにいさん「アライさん、ほら、懐かしいでしょ?指輪のおもちゃだよ!」
アライさん「うそ…………なのだ。」
………………
アライさんはフレンズで珍しく、産まれたときには同種のフレンズが既にいた。
上からの命令でそういった重複フレンズは管理ドームの中で飼育されている。
アライさん「ちゅかれたのりゃー!あるけないのりやー!」ワチェワッチェ
お兄さん「あーもうかわいいなぁ!食べちゃいたいよぉ!」
アライさん「た、たべにゃいでぇー!」
キャッキャッ(σ≧▽≦)σ
ヌートリア「きゅー!きゅー!」ヨチヨチヨチヨチ
アカミミガメ「わ、わたしも遊んで……ほしい……です……。」モジモジ
ミライ「おにいさーん!休憩終わり!持ち場に戻ってー!」
お兄さん「はーい!じゃあみんな、後で!」
アライさん「はーいなのりゃ!」
ヌートリア「きゅ!きゅー!」
アカミミガメ「……はーい。」
…
セルリアンが…最後の隔壁を破ろうとしている。このドームに入ってくるのも時間の問題だ。
お兄さん「みんな!早く2階へ上がれ!急いで!」
ミライ「このコントロール室に集まって!さぁ!」
管理ドームにいたフレンズ達がオフィスに集められ、押しくら饅頭に近い状態だ。
アライさん「びぇぇぇぇんこわいのだぁ!」
ヌートリア「ぴぇぇぇぇん!」
アカミミガメ「隠れなきゃ!隠れなきゃ!」
お兄さん「どうしよう。この子達を置いてはいけない。」
ミライ「……お兄さん、帰宅用通路ハッチを開けましょう。……」
お兄さん「!?ダメだ!フレンズが野に放たれたら何が起きるかわからない!俺達じゃ手に終えなくなるかもしれない!」
ミライ「まだ野生になるなんて決まってません!きっと平和になったら戻ってきてくれます!」
ミライ「いい?みんな?いつか私達がセルリアンを全部やっつけるから、そしたら必ず戻ってきてね?必ずよ?」
アライさん「うゆー。わかったのりゃ!」
アカミミガメ「ヌートリアちゃんは任せてください!」アセアセ
お兄さん「ダメだ!ダメだダメだ!なら俺があのセルリアンを追い出せばいいんだろ?」
俺は鎮圧用の閃光弾を装填し、オフィスを飛び出た。
ミライ「無茶です!早く戻ってきて!!」
ミライさんの制止を無視して俺はドームに戻る。
巨大なセルリアンが分厚い鉄の壁を既にボコボコに押し広げていた。
やるなら今しかない……。壁を壊す事に夢中になっている今しか。俺はセルリアンに接近し、巨大な目玉にむかって閃光弾を放つ。セルリアンの目が本物の目とは限らないが。一か八かだ。
ゴォォォンドガァァァァン!
?やった!効果ありだ!このままもういっぱ…
ガシャッ
目をやられ暴れるセルリアンの足にあたったようだ。俺は顎を潰され、そのまま宙をまった。
ゴギィ
地面に叩き落ちた衝撃で足と腕はもうめちゃくちゃだよ。
でもこれで…ミライさん…みんなを連れて…。
??
ドームからガラス越しに見えるオフィスの中では、すでにミライさんがハッチを開いていた…
お兄さん「あ…あぁぁあ…。」
ミライさんは、俺の惨状をみて、謝罪と恐怖で震えている。
あぁ……なんて事をしてくれたんだ……そう叫ぼうにも……もう体が動かない……。
…………
アライさん「…………」
ピラニア「アライさん、結局誰も戻らなかったよ……全員この町で野生化して、人に被害を出しまくってた。」
ピラニア「ヌートリアも、アカミミガメも。人の畑や田んぼを荒らし回った。特にアカミミガメは人の肉を食っちまったんだよ。」
アライさん「…………」
ピラニア「わかるかな?お前たちフレンズはどうしたって結局は獣なんだ。それも特大の。生きてる限りどうしたって人に迷惑をかける。」
アライさん「……まだそうと決まった訳じゃないのだ……。」
ピラニア「いいや、決まってる。」
アライさん「ちび達には盗んじゃダメだと教えてたのだ……ちび達が大人になったらまたそのちび達におしえられるのだ!」
ピラニア「無理だよ。世代を跨ぐうちに言い付けは意味を失う。その時には繁殖数はとんでもないことになる。」
アライさん「決めつけるななのだぁぁぁぁぁぁぁ!」
アライさんは腕がひしゃげんとばかりの振りかぶりで拳をお見舞いしてきた。
アライさん「ぐげぇぇぇぇ!」
アライさんの拳をうけとめ、そのまま握りつぶし、骨を粉々に砕いた。
アライさん「ああ……アライさんのてがぁ……」コスリコスリ
ピラニア「それに、アライさんは雑食なんだよ。アカミミガメみたく人を襲われちゃたまったもんじゃない。」
俺はアライちゃん4をアライさんの前に晒した。
ピラニア「獣は飢えには逆らえない。現に俺もこいつがうまそうで仕方がないんだ。」
アライちゃん4「ぷゆぅ?」オメメコスリコスリ
アライさん「あぁ!ちびぃ!」
アライちゃん4が目を覚ましたらしい。おめめを擦ってまだ眠そうだ。
アライちゃん4「ぷゆ?」ブチィ
俺は構わず両足を噛みちぎった。
アライちゃん4「ギィィィィキュルルルル!?」ジタバダ
アライちゃん4は下腹部から下を失い、出血多量だ。
ピラニア「生き物を引き裂きたい気持ちが押さえきれない!」
アライさん「やめろぉ!一番下のおちびはまだ生まれたばかりなのだぁ!そんな……そんなむごいことするなぁ!!」
続いて右腕を
アライちゃん4「ノリャアアアア!」ブチチ
続いて左腕を
アライちゃん4「ピィィィィ」グチャァ
あっというまにだるまアライちゃんとなった。
だるまアライちゃん「ピュルルルル……」ピクピク
アライさん「もうやめて……もうやめるのだぁ!やなのだぁ!」
アライさんは無力なことに諦めたのか泣きながら見つめるだけだ。
アライさん「もう……ツラいのだ……こんなことなら生まれてくるべきじゃなかったのだ……。」
アライさんが大きく口をあけ、下を噛みきろうとしている、させない。
アライさん「ぶぐぅ」
だるまアライちゃん「ピギャァァァ!」
俺はアライさんのくちにだるまアライちゃんをツッコミ、自害を阻止した。
アライさん「やめるのふぁ!ちひぃ!ちひぃ!」
だるまアライちゃん「おがっ……しゃ……。」シーン
だるまアライちゃんは母親のくちにねじ込まれた衝撃で強く出血し、絶命したようだ。
アライさん「ぺぇ!うげぇ!」
アライさんがだるまアライちゃんの死骸を吹き出し。その死骸を胸の上に置いた。
アライさん「なんで止めるのだ……死なせてほしいのだ……ちび達の元にアライさんも送るのだ!」
ピラニア「それはまだ無理だ。お前、まだ腹に子供が居るんだろ?」
アライさん「なっ……」
バレてるんだよ。感じるよ。お腹に力強い生命が。
アライさん「やめるのだぁぁぁぁ!ごのごだげば!ごのごだけばぁ!!」
どうやら自害して俺の目を欺こうとしてたらしい。一か八かだったろうが、俺に殺されるよりずっと生存率はあがる。よく考えたもんだ。だが、
ピラニア「その子は殺さない、間違いなく突然変異種、じゃパリパークでの保護対象だ。」
アライさん「のだ!?」
アライさんはあまりにも意外だったのか、すっとんきょうな顔で俺を見ている。
アライさん「このちびは生かしてくれるのだ?このちびだけは生きてていいのだ!?」
ピラニア「ただし母体のお前はダメだ……産んだらきっちり死んでもらう。」
アライさん「……わかってるのだ……死んでいったちび達にも謝らなきゃいけないのだ。それでも……この子だけは生かして貰えるのは嬉しいのだ……。」
アライさんは優しくお腹に笑いかけていた。俺はもうアライさんは自殺も逃げもしないと悟り、馬乗りをやめた。
それから、俺達は何も話さなかった。
…………
アライさん「はぁはぁ……う……産まれるのだぁ……。」
ピラニア「…………」
俺はバッグを漁り、小型の檻と水と食料を取り出す。
それと発信器、これでパーク関係者が見つけてくれるだろ。
アライさん「ハァ…ハァ…のだぁぁぁぁ!」
アライちゃん5「のだぁぁぁぁぁ!」("⌒∇⌒")
アライさんがアライちゃん5を勢いよく産み出した。
アライちゃん5は全身が白い、耳は赤い模様のアライちゃんだった。
アライちゃん5「のりゃぁ!のりゃぁ!」
ピラニア「さて……アライさん死んでもら……?」
アライさんは既に、息絶えていた。
もともと子育てで無理をしていたのだろう、既に体は縮みアライグマに戻り始めていた。
ピラニア「……」
俺はアライちゃん5を持ち上げ
アライちゃん5「のりゃ?」
檻に入れて蓋をした。
アライちゃん5「のりやぁぁぁぁぁ!のりやぁぁぁ!」
ピラニア「ミライさんなら、絶対に見つけてくれるよ!……」
俺は泣き叫ぶアライちゃん5の檻をその場に置いて、森を出た。
……
道路から森を照らす光がみえる。眩しい。
駆除隊員1「動くな!」
駆除隊員2「対象を発見、直ちに現場に急行せよ!」
駆除隊員3「森の奥からフレンズの反応あり、そちらにも応援を……」
関係者がやって来た。全員重武装だ。
ラッキービースト「周辺ノ道路規制ヲ開始スルヨ」ワラワラワラワ
遠くから一台の黒いバンが遅れてやって来た。複数の隊員と、それと……
駆除隊長「まったくやりたい放題やってくれたなテメェ」イライライライラ
駆除隊員4「うわー生きてたんスねー。とっくにくたばったかと思ってました。」
ミライ「お兄さん……いえ元お兄さん。貴方をこの場で捕獲します!」
お兄さん「やぁ?ミライさん!久しぶり」
俺はにっこりわらって挨拶した。
駆除隊長「あ?てかなんで裸なんだアイツ?」
駆除隊員4「知りませんよーさっきのサンドスターバグの影響じゃないっすかー?」
ミライ「ちょっと!危機感をもってください!彼はフレンズの細胞を自分に」
駆除隊長「んなこたぁわかってるから今全員召集してんだろうが!!いちいち口出すなよガイドのクセによぉ?」イライライライライライライライラ
駆除隊員4「あーこわいこわい」
ミライ「くっ……!」
ミライさんは諦めて、此方に向かってくる。だが隊員よりは前には出ず、拡張機で話しかけてきた。
ミライ「元、お兄さん。あなたはパークから技術を盗み出し、その技術で貴重なフレンズを殺して回った。あなたはどれだけの損失を出したかわかってるの?」
お兄さん「あぁ、わかってる!……ケジメをつけにきた!ここで最後だよ!」
ミライ「やはり他のフレンズは既に…………。」
俺はわざと森の奥に進もうとする仕草を見せる。
ミライ「動かないで!あなたは既に人じゃない!この場での駆除が認められています!」
お兄さん「その場での駆除……ね。」
お兄さん「ミライさーん!俺はミライがフレンズを逃がしたあの日から、ずっとずっと悔やんでも悔やみきれなかった。被害が出てることも!野生のフレンズを殺すのとも」
俺はまたレバーを捻る。さすがにこの距離と大人の重さではみな怯みはしないか。
ピラニア「でもなぁ!ここでぇ!あんたを殺せばぁ!残りは俺と森の奴等だけだぁぁぁぁ!!」
駆除隊長「撃てぇ!」
全員が俺に構える、きっと蜂の巣だろうな
ピラニア「アアアアアアアアアアアアミィラァイィさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
…………
最終更新:2019年05月04日 22:12