121: 名無しさん (バックシ ab1a-9c77) :2019/05/15(水) 08:54:02 ID:cGVd1c7.MM
アライさん「アライさんをここから出すのだぁ!」ギャアギャア!
アライちゃん1「びぇぇぇん!おかーしゃーん!」ジタバタ
アライさん「ちびぃ!大丈夫なのだ!おかーさんが守るのだ」 アセアセ
アライちゃん2「のりゃ!のりゃ!」コロコロコロコロ(^o^)
アライさん一家がハンターに捕まり、ずだ袋で雑にくるまれて運ばれている。アライさんはアライちゃん達を潰れないよう、お腹に乗せて守っていた。
姉のアライちゃんは泣いて甘え、妹のほうはよく事態を理解しておらず、揺れに合わせてコロコロと転がって喜んでいた。
アライさん「おまえー!出すのだ!アライさんが怒ったら強いんだぞ!!」
アライちゃん1「おかーしゃん!やっつけるのりゃ!」
アライちゃん2「たーのしいのりゃー!」コロコロコロコロ
……
ハンターは気にも止めず歩いている、アライさんは腹は立つが袋の中で余計に暴れると子供達を危険にさらすだけだと判断した。
アライさん「くぅ、チビたちだけでも助けたいのだ……。」
アライちゃん1「しょんなこといわにゃいでぇ!おかーしゃん!もいっしょじゃなきゃやらー!」ビェェェェン
揺れが止まり、アライさんは地面に下ろされた感覚を背中に感じる。
袋の結び目がほどけ、外の光景が姿を表した。
アライさん「なんなのだ……ここは?」
暖色の明るい蛍光灯、いくつものデスクにパソコン、スケジュール表はいくつものバツで埋まり、次の後半になるに連れて書き方が雑になっていく。
壁際に冷蔵庫、キッチンシンク、そして奥に幾つかの扉。
それなりのベランダから、ガラス腰に夜のビルが光輝いていた。
デスクの一つに座り、ずっとうずくまってる男がいる。
男「カキカキカキカキカキカキ」
アライさん「ひっ!なんの音なのだ……」
ハンター「連れてきたぞ。」
男が手を止め振り替える、顔色は悪く、頬こそ痩せこけていないものの、目元がクマだらけで窪んで見える。
アライちゃん1「ひぃ!おばけなのりゃ!」
アライちゃんの余計な一言にアライさんは急いで口を塞いだが、そう言われても仕方のない外見である。
男は無言で財布から数万円渡すと、ハンターは部屋から去っていった。
男が無言で、アライさんと向き合う。
アライさん「ひぃ!な、なんなのだぁ!おまぇ!」フーッフーッ
アライちゃん1「ぴぃぃぃ!ひとしゃん!いたいのいやなのりゃー!」ヨチヨチ
アライちゃん2「のりゃ!のりゃ!("⌒∇⌒")」
アライちゃん2だけ自体を理解せず、キッチンの方へとむかった。
男がアライさんと向かい合ったまま、右へ上体をふらりとうごかし
アライさん(……来るのだ……!)
アライさんが構えるも、
ドサッ
アライさん「のだぁ!?」
男はそのまま倒れた。
アライちゃん1「おかーしゃ!すごいのりゃ!さわらずにたおしたのりゃ!」
アライさん「ちび……まだなにもしてないのだ……。」
倒れた男は、今にも消え入りそうな紙風船の空気が抜けるような声で何かをしゃべっている。アライさんは耳をたかむけると、
男「あのぉ……助けてください……」
アライさん「のだぁ!?」
男「終わらないんです……いや始まりもしないんですよ……ネームも出来てなくて……。」
アライさん「…………のだ?」
122: 名無しさん (バックシ ab1a-9c77) :2019/05/15(水) 09:34:12 ID:cGVd1c7.MM
121
男曰く、自分はドウジンシ?の作家で、誰かに助けて欲しく、藁にもすがる想いでハンターに連絡したところ、
「事情はわかった。本来ならなんで俺に連絡したのか正気を疑うところだが、取って置きの奴がいる。ちょいと高くつくがな。」
そして後日、ハンターがアライさん達を連れてきたという。
男「アライさんは元飼いアライさんですよね?。」
アライさん「そうなのだ……でもチビを産んでから飼い主さんがすごく怒って、労働施設に入れられてしまったのだ……。」
アライさんはそこで延々指定された絵柄をなぞって絵はがきを描かされていたらしい。
アライさんの子供のような拙い可愛らしい絵が、独特の味をだして評判の『絵アラガキ』の仕事だ。だが、
施設監督「アライさん、最近絵が上手すぎるんだよ。もう少し下手に描けないの?」
アライさん「努力はしてるのだ!でも……線を曲がって書いても、途切れさせても、何故かこうなってしまうのだ……。」
アライさんは指定になぞるだけの仕事でむしろ元の絵より綺麗に線を引いてしまっていた。
施設監督「ま、もういいや。アライさんは家族ごと処分ね。」
アライさん「そんな!せめてチビ達だけは助けてほしいのだ!」
施設監督「ダーメ、誰が面倒みるの?誰も面倒見れないし、ペットにするには大きくなりすぎ。せめて君達(の肉)が有効に活用されることを願うよ。」
アライさん「の……のだぁ~~~……」ドナドナドナー
……
男「そこでハンターに連れてこられた訳だね。」
アライさん「死を覚悟したのだ……そしたら自分より死にかけた人間さんと出会うなんて思いもしなかったのだ。」
アライさん「確認なのだ、アライさんの腕を買ってチビたちとアライさんの生活を約束してくれる。それで間違いないのだ?」
男「そうです……助けてください……。同人作家なのでアシスタントを雇おうにも……。」
アライさんは息を吐き出し、気持ちを切り替え、男に笑いかける。
アライさん「アライさんにお任せなのだ。まずどこまで出来てるのか見せてほしいのだ。」
男「……」
アライさん「どうしたのだ?」
男「ネーム……つまり構想を練っている段階です……。」
アライさん「締め切りは?」
男「一ヶ月後です。」
……沈黙が続く、安心したアライちゃん1と元から能天気なアライちゃん2は、キッチンの下で謎のおいかけっこをする。
キャッキャッと嬉しそうな音、沈黙を破ったのはアライさんだった。
アライさん「アライさんは頭が悪いからよく分からないのだ……仮に3週間で出来上がったとして当日までに間に合うのだ?」
男「死ぬほど怒られます!」ピカピカガイコツガオ
……
……
アライさんのつり目が、入れ替わったように垂れた……。
アライさん「……ツラいのだ……。」
123: 名無しさん (バックシ ab1a-9c77) :2019/05/15(水) 10:08:51 ID:cGVd1c7.MM
122
アライさんはパソコンを借り、ネットで男の絵が上手いこと、もともとイラスト専門でやっていたこと、イラストレーターとしては商業デビューしていることを知った。(直接データをみた方が早かったが男はふぇちだのプライベートだのとパソコンを見せてくれない。)
アライさん「ネームのデータは残しているかなのだ?」
男「はい、ありますが?」
アライさん「既存のネームコマやイラストを元にしてパズルのように組み合わせ、大ゴマを多様して、足りない部分だけを新規で書き足す、無理やり構成するのだ。」
男「へ、は、はい。でもなんか手抜きっぽくないですか?」
アライさん「嫌ならもっといい方法か期日を伸ばすのだ。」
男「無理です。」
3日後
男「出来ました!」
アライさん「おお!見せてほしいのだ!」
アライちゃん1「うーうんちなのりゃー」トテトテトテトイレ入りブリブリブリジャー
アライちゃん2「うーうんちなのりゃー」トテトテトテトイレ入り砂場ブリブリブリ
アライちゃん達はアライフを満喫しているので、アライさんは男の原稿を覗き込んだ。
アライさん「の……のぎゃあああああああああああああああああ!」ビクビクビクビク
アライちゃん1「ぴぃ!おかーしゃんしゃけばないでぇ!うぉっしゅれっとのつよくしちゃったのりゃ!」
アライちゃん2「ちゃんとしゅなかけるのりゃ~」ジャラジャラ
アライさんは男が作り上げた原稿を見て驚愕した。
原稿アライさん「ヤメローチビヲコロスナー」
原稿アライちゃん「ピィィィィアシギャァァァァギュルルルビィィィ」
原稿アライしゃん「ジニダクナイノリャ……ビクビクドッタンバッタン」
原稿お兄さん「アラビジハ天下一ダァァァ」
謎のお兄さんがアライさん一家のアライさんの目の前で子供を切って開いて揚げて煮ているではないか……。
アライさん「おまえぇぇぇぇぇ!何てものかいてるのだあああ!」
男「あははは、お恥ずかしい。」
アライさん「お恥ずかしいじゃないのだ!アライさんにアライさん切り刻む漫画手伝わせるつもりなのか!」
男「あれ?昨日僕のpixiv調べてたじゃないですか?」
アライさん「そんなの出てこなかったのだ!数枚のイラストだけだったのだ!」
男はすぐに答えを導きだした。
男「あー!アライさん全年齢見てたんですね!ほら!」
ズラリと並ぶイラストに肉、血、腸、腕、足、目玉、悲痛な顔。
アライさんだけじゃない、人の少女まで悲惨に引きちぎられており、血生臭さが伝わって来そうな絵だ。
アライさん「しばらくお肉は食べられないのだ……。」
男「まあ元々野菜炒め生活なんですけどね……。」
アライさん「……。」
……
……
慣れとは怖いもので、所見こそインパクトがあったものの、ものの数時間で慣れてしまった。
男は下書作業へと移り、アライさんは背景の素材となる写真を外で適当に撮っていた。
アライさん「……なんか買って帰るのだ……。」
124: 名無しさん (バックシ ab1a-9c77) :2019/05/15(水) 10:58:02 ID:cGVd1c7.MM
123
アライさんは業務スーパーで野菜と野菜と野菜とソーセージを買い、外に出る。
数人の男が、アライさんを取り囲んだ。
「くせぇ!くせぇなぁ?アライグマくせぇ!」
「アライさんはディスバッチ?だぁ!」
「アジラビ?だっけつくるのだぁ!」
もはや用語すらちゃんと言えない、見よう見まねのアラ虐。市民権を得てないアライさんが買い物できるはずもないと言うのとに気づかないのだろか?
「しねぇぇぇぇ!」
男の一人が、アライさんにこん棒を振りかぶる。
アライさんは荷物を安全なところに置き……。
こん棒はアライさん後頭部に直撃した。
アライさんはそのまま空中で一周回転し、地面にうつ伏せでおちる。
アライさん「ぐぁぁぁぁぁぁ!なにをするだぁぁぁぁ!」
「さすがアライさんwwwwマジで軽ぃwwww!!
「俺もおれも!デスパッチ!」
もう一人が爪先で脇腹を蹴り飛ばすと、また回転して飛んだ。
「いだいのだぁぁぁぁぁ!脇腹クジキマシター!」
「俺もいくぜ!アラジンにしてやる!」
右腕を蹴り飛ばし、アライさんの腕がブンと一周回転する。
「ああああああ!もっていかれたのだぁぁぁぁ!」
「アライさんマジよわwwww」
「ああ、俺たちが強すぎただけだわwww」
「アラジビだった!名前間違えてたわ!」
三人は市民アライさんだとわかってての攻撃だろう、命までは奪わず、去っていった。
「アライさんよりお馬鹿な奴等なのだ。」
アライさんは三人が遠く見えなくなる事を確認すると、むくりと起き上がり、汚れをはたいて荷物を右手で持ち上げた。
たかだかこん棒の一振りで、蹴りの一発でここまで飛ぶ訳がない。そんなこともわからない子供には受け身をとるだけで十分だ。
皮膚は少しだけ痣ができたが騒ぐほどじゃない。それより精神的に疲れたので、とっとと帰った。
原稿アライちゃん「ハタケノマンマルオイチノリャー」
原稿お兄さん「イキタママアゲルゥゥゥ」
原稿アライちゃん「ピギィィィィアチュイタシュケテェ」
原稿アライちゃん「ニゲルノリャージュゥゥゥヤメテェェェェ」
アライさんがペン入れを始める。元々トレスの類いには自信があったが、この男、本当に線が細かい。この繊細さは間違いなく尊敬に値する。
アライさん「ううううう……目がチカチカするのだ……。」
目の端が眠気と疲れで垂れ下がり始めている……。液タブの厚みがうっとうしくすら感じる。
男「そろそろ寝ましょうか。無理してもいいことないですし。」
アライさん「わかったのだ。眠気で変なもの描く前にそするのだ。」
アライちゃん達は既に布団で眠っており、アライさんはアライちゃん達を抱き抱えるように布団に入った。
男もベッドに入り、就寝の準備に入る。
何か特別な友情を結んだような気がしてここで会話をするのが定石だが、彼らにそんな余裕はなくただ普通に速攻で寝た。
……
男「ぼくらどれだけ寝てましたっけ?」
アライさん「長くとも12時間なのだ……。」
二人はカレンダーを見ながら唖然とする……思ってたより残り日数が少ない……。
アライさん「時が切り取られてるのだ!」
たんに同じことの反復で日数感覚がなくなっていただけのことである。
男「と、とりあえずトーンは幾つか諦めます……でもベタだけは外せないので急いでやりましょう……。」
アライさん「その決断力があるなら早めに線の数を減らしてほしかったのだ……。」
男「妥協はしたくないんです!」ピカピカ
アライさんはこいつの前世は野生のアライさんだと思った。いや多分そうなのだ。
アライさん「不自然だけど途中から背景をいくか簡略化するのだ。背に腹は変えられない……。」
男「遠くのアライさんやアライちゃんのトーンも簡略化します……。」
125: 名無しさん (バックシ ab1a-9c77) :2019/05/15(水) 11:29:27 ID:cGVd1c7.MM
124
アライさんが不敵にギラリと笑う。
アライさん「いや……もはや描くのも時間がもったいないのだ……。ここは……。ちび!こっちにくるのだ!」
アライちゃん1「のりゃぁ!のりゃぁ!」
アライちゃん2「どうちたのりゃ?」
アライさんは姉妹が近づくと、デスクの上にひょいと持ち上げた。
アライちゃん1「のぉぉぉ?たかいのりゃ!」
アライちゃん2「おしょらからとんできたのりゃ!」キャッキャッ
アライさんはアライちゃん達が動き回るすがたをいろんな角度から写真に納め、データを取り込んだ。アライちゃんを切り抜き、アニメーション加工を施して背景のアライちゃんの描かれる部分へと張り付けていく。
男「なんという力業!素晴らしいですよ!」
アライさん「フハハハハハこれで明日には出来上がるのだ!我らの天下なのだ!」
男「できる!できますよ!フハハハハハ!フハハハハハ!」
アライちゃん1「ぴぃ!おかーしゃんたちがこわれたのりゃ!」
アライちゃん2「がいじなのりゃ?」
…………
男は近くの印刷所に頭を下げながら依頼し、印刷所なおじさんのひきつった笑顔が脳裏から離れなかった……。後は数日後のコミケに備えるだけ……。
アライさん「アライさん達はアラフェネ百合の横なのだ……死ぬほど申し訳ないのだ……。」
男「これはポスターのデザインは自重したほうがいいですね……。」
二人は手書きでポスターを作っていた。もう日数もなく、お隣への配慮、車で移動するのに疲れてては問題なので簡単なデザインにした。
……
念のため持ち込むべきものやあると便利なものにチェックシートで確認し、積み込んでいる……。
アライさん「小銭も準備できてるのだ……フハハハハハ!抜かりないのだ!」
男「ツイッターでもしっかり宣伝したのだ!あとはがっぽり儲けるのだ!」
アライさん、男「はははははははは!」
疲れてるわけでも眠い訳でもなく、テンションがおかしくなっている。
あとはアライちゃんたちに留守番をお願いするだけだ。
アライさん「チビたち待ってるのだ!今夜は焼き肉なのだ!」
アライちゃん1「いってらっしゃいなのだー!」
アライちゃん2「うゆ?天下をとるのりゃ?」
アライさん「そうなのだぁ!とってくるのだ!フハハハハハ!フハハハハハ!」
アライさん「ツラいのだ……。」
男「ツラいのだ……。」
男は人気だった。とても。だがビッグサイトにこれる人間がそこまでいるかと言われるとなんとも言えない需要分布である。そして……。
フェネック「はーい新作ですね、はい新作でーす。はい、500円でーす。」
隣のアラフェネ本、あの超有名イラストレーターのフェネックの作品だったのだ。
アライさんのギラギラした目線にフェネックが気付き、笑顔で答えた
フェネック「またやってしまったね、アライさーんw」
アライさん「ちくしょぉぉぉこれならもろなポスターにしてやればよかったのだぁぁぁ!」
男「のぁぁぁぁぁぁ!」
フェネック「完売でーす!それじゃあアライさん、私達は帰るから。今夜は焼き肉だー。」
アライさん・男「ちくしょぉぉぉぉぉぉ!」
がんばれアライさん!負けるなアライさん!まだ13時!やればできる!多分!きっと!
終わり。
最終更新:2019年05月27日 00:05